アルケミアストーリー~クロとエルの物語~ 作:cloverlight
現在連載中のストーリーとは、前後の繋がりが一切ありませんのであしからず。
話の中の『ユイゼ』さんとそのYOME『セリク』の設定は、ユイゼさん本人への取材を元に構成しています。
ユイゼさんご協力ありがとうございました・:*+.\(( °ω° ))/.:+
クローバーとエルサイスは、さっきまで国境沿いの道で釣りをしていた。しかし、今日の釣りはあまりいい結果ではなかった。次々釣れるレア度☆1の、ウィリスカープに飽きたクローバーは、釣りを諦めて、魚をコインに交換するため、ネコに会いに連邦まで歩いてきた。
城塞都市に入る門のところで、誰かが言い争いをしている。
クローバーはその声の方を見た。
「ユイちゃん!」
「くーちゃん!」
クローバーのことを、あだ名で呼ぶのは、クローバーが所属しているボンド『シルフィード』メンバーだけだ。
「ユイゼさんこんにちは。」
エルサイスが挨拶する。
ユイゼはライトキャメルのショートカットをふわふわさせながら、目を細め、ニッコリ笑った。かわいらしさが滲み出ている。
「久しぶりだね。」
クローバーはそう言うと、ユイゼに笑いかける。
クローバーは女の子に甘い。特にかわいい女の子にはサービスがいい。口調も優しくなるし、笑顔だって見せる。
「どうも、こんにちわ。」
ユイゼのパートナー、セリクが挨拶を返す。金髪のショートカットに、ライトブルーの目、鼻筋の通った好青年だ。
「ケンカですか?」
エルサイスが2人を交互に見ながら聞く。
ユイゼとセリクは、門の下で何か言い争いをしていたようだった。
「いえ、そういうわけではないんですけど…。」
ユイゼは困ったような苦笑いをする。
「エル、そういうこと聞くな。お前はデリカシーがねーなぁ。」
「デリカシーがないとか、クロには言われたくないな。」
クローバーの拳が、エルサイスの腹に飛ぶ。
「ぐふっ……。」
腹パンを食らったエルサイスはゴホッっとむせながら、その場に崩れ落ちた。
「くーちゃん!」
ユイゼとセリクが怯えた表情を見せる。
「いつものことだから、気にしないで。」
クローバーはそういうと、何事も無かったようにユイゼに笑いかける。
「本当に腹パン……ゴホッ…やめて……。」
エルサイスが虫の息で呟く。
ユイゼはオロオロしながら、エルサイスを介抱する。
セリクは自分の腹を押さえて怯えていた。あんなパンチ食らったら、一溜りもないだろうなと思う。エルサイスが哀れだ。
「ケンカじゃないんですよ。」
ユイゼは困ったように笑う。
「セリクが、ネコアレルギーで……」
「ネコアレルギー?」
クローバーが首を傾げた。
「そう。ネコアレルギーで、魚を交換しに行きたいんですけど、一緒に行けなくて…」
「ユイゼちゃん、1人で行かせたくないんだ。」
セリクが真剣な顔でユイゼに言う。
「お前は馬鹿か?」
クローバーが呆れ返ってセリクに言う。
「クーロ、口が……悪いよ……。」
エルサイスはそう言いながら、よろよろと立ち上がった。腹パンのダメージがまだ残っているようだった。
「ここから数十mしか離れて無いだろ。赤ん坊じゃねーんだから……心配しすぎ。」
クローバーの言葉に、ユイゼは「そうだそうだ」と言うように、激しく頷く。
セリクは困った顔をする。2対1とは分が悪い。セリクは味方を増やそうと、エルサイスをチラリと見たが、エルサイスは肩をすくめるだけで、援護は期待出来なさそうだった。
「わかってるけど……こないだのこともあるし……。」
「まだ気にしてるの?もう大丈夫だよ!」
以前ユイゼの身に何かあったようだ。それが心配でセリクは離れられないらしい。
「なんかあったの?」
クローバーがユイゼに聞くと、ユイゼは内緒話をしたそうに、口に手を当てクローバーの耳に顔を近づけた。
「その件でくーちゃんに相談したくて……できれば2人で……。」
ユイゼが内緒話とは珍しい。クローバーは訝しげに思いながらも、「うん」と頷き、承諾した。
「わかった。私がユイちゃんと行ってくるから、お前らここで待ってろ。」
「え、僕も?」
エルサイスが虚をつかれたような声を出す。
「お前もだよ。私はユイちゃんと大事な話があるんだ。」
クローバーはユイゼの肩を抱くと、城塞都市へと入っていく。
「野郎どもはそこで遊んでろ。」
クローバーの言葉に、セリクとエルサイスは、困ったように顔を見合わせる。
そんな2人を置いて、クローバーとユイゼは、街の中へと消えていった。
残された、エルサイスとセリクは、城門前のベンチに座り、休んでいた。男2人で狭いベンチに隣同士で座る光景は、中々しょっぱいものがある。
「君のパートナーは、なんか……男らしいですね……。」
「クロが?そう見えます?」
セリクの言葉に、エルサイスは首を傾げる。
「クロは、あれでかなり、かわいいですよ。」
エルサイスがケロッとした顔で言う。
「腹パンしてくるのに?」
「それは……やめてほしいですけど……。」
エルサイスは苦笑いしながら、さっき殴られた腹をさする。セリクは呆れたようなため息を吐いた。
「セリクさんは、どうしてそんなユイゼさんが心配なんですか?」
エルサイスがそう聞くと、セリクは真剣な顔になる。
「最近、ユイゼちゃんは、ちょっと変な冒険者に付きまとわれてて……。」
「ストーカーですか?」
「そう……あれはそういう類のものですね。」
事態は思ったよりも深刻そうだ。
ユイゼとセリクは、ちょっと前に、公国で新人冒険者の手助けをしたそうだ。ちょっと一緒に、街の外に錬金素材を取りに行っただけの、簡単な手伝いだった。その時、その冒険者とは、フレンド登録をして、すぐ別れた。
しかし、それから毎日のように、その冒険者からユイゼにメッセージが届くようになったのだ。
最初は挨拶、次に冒険についての質問、ユイゼはマメな性格だから、いちいち返信していたらしい。そして、そのうち「2人っきりで会いたい」というようなことが、何度も送るられてくるようになった。
「それ、絶対会っちゃいけないやつですね。」
「デスヨネー。」
セリクがそう棒読みする。
会ったら最後、何をされるかわからない。
「もう無視してるんですけど、まだ送られてきてるみたいで……。」
セリクはそういうと、ため息をついた。
「ユイゼちゃんは優しいし、かわいいから、すぐ狙われちゃうんだよなぁ……。」
「クロだってすぐ狙われますよ。」
「命を?」
「うーん……。そうですね。僕以外はだいたいそっちを狙いますね。」
セリクは頭を抱える。エルサイスでは、話にならない。
「こうなることは、予想出来たのに!」
セリクは、ユイゼに一目惚れしたのだ。
あの日、冒険者になろうと、公国を訪れたとき、大事な髪飾りを無くして、酒場の前でまごまごしていたユイゼに、セリクは声をかけた。
ユイゼが振り返った瞬間、セリクは雷に打たれたような衝撃を受けたのだ。
「そりゃ困ってるところを、ユイゼちゃんから声をかけられたら、惚れちゃってもおかしくないよなぁ……。」
実際は、セリクがユイゼに声をかけたのだが、セリクが言うように、逆の形だったら、更に強烈だろう。
「僕も大概ですけど、セリクさんもけっこう拗らせてますね。」
エルサイスが笑い飛ばす。
「うるさいなぁ…。」
セリクは不満そうにエルサイスを睨む。
「言っちゃえばいいんじゃないですか?そのストーカーに。」
「何を?」
「ユイゼは僕のだ!的な……。」
エルサイスは明らかに笑いを堪えている。
「君さ、面白がってるだけでしょ?」
セリクは大きなため息をつくと、うなだれた。
エルサイスはその姿を見て
「(まだまだ若いなぁ。)」
なんて思いながら、目を細めた。