アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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第41話 乱戦その2

「(鬼だ。)」

戦場を駆け回るクローバーを見て、僕はそう思っていた。

クローバーは、真っ赤な髪をなびかせ、舞うように飛びながら、次々オーガを切っていく。金色の目が、ランランと光っている。

僕は手を休めず、支援と援護を続ける。

「後ろに1匹いるよ!前のは無視しても大丈夫。」

クローバーは振り返りざまに後ろにいたオーガを切りつけると、前方からきた2匹にも追撃を加える。僕はそれをファイアースピリッツを放って援護する。

僕の声がけを、聞いているのか、いないのかわからない。いつもなら、もっとクローバーからの情報提供があるのだが、それもない。

僕は広い視野と、観察眼だけで、この戦況をなんとか見極めようとしていた。でも、取りこぼしは、どうしても出てしまう。その僕の見落としを、クローバーの圧倒的な加速度で、何とか補っているような状況だ。

でも、こんな状況は長くは続かない。

戦闘が始まってから、まだ5分足らずしかたっていなかったが、敵の数は随分減った。あと5分持たせられれば、なんとか切り抜けられるだろう。

しかし、クローバーをこのままにしておけば、あと3分ほどでバテ始める。たった2分の違いだが、それが決定的な敗因になるのだ。

「クロ!!」

呼びかけるが、クローバーは止まらない。

血を飛び散らせ、髪を振り乱し、剣を煌めかせながら敵を倒していく。その姿は、強く、美しく、魅惑的だった。

クローバーが騎士だった頃、それに憧れた人たちの気持ちがわかる気がした。

圧倒的な強さは、甘美な罠のように、棘を持ちながらも、色褪せない美しさがあった。

見とれてる場合ではない。僕は右からきたオーガの爪を避けつつ、前に出て、クローバーに近づく。

「クロ!!回復を!!」

クローバーのHPはもう半分以下だった。普通なら、かなりの痛みを伴うはずだが、バーサーカー状態のクローバーは、それを感じていないようだ。

「うるせぇ!」

クローバーが怒鳴り返してくる。怒鳴り返すということは、聞こえてるということだ。聞ける耳があるなら、まだ止まれる希望はある。

「クロ!!」

肩を掴んで、無理やりこっちを向かせる。クローバーの、瞳孔の開いた金色の目が、僕を捉える。

「(殺されるかも。)」

そう思うくらい、振り返った瞬間のクローバーの目は、狂っていた。しかし、それも一瞬で、瞳に僕の顔が写ると、スっと色だけ残し、光が消えた。

「(大丈夫そうだ。)」

僕はほっとすると、アルカナでクローバーを回復する。

「敵はまだ来る。落ち着いていこう。」

冷静さを取り戻したクローバーが

「うん。ごめん。」

と、素直に謝る。

思ったよりも数倍楽に収まってくれて、本当によかった。僕は思わず微笑む。

クローバーの目から、ギラギラした光は消えたが、色褪せてはいない。まだまだ戦えそうだ。

クローバーの後ろからきたオーガに、僕はメテオフォールを放つ。クローバーが振り返り、追撃を加える。無理のない 滑らかな連携だ。

もう大丈夫だ。

僕らは勝利への道筋を確実に歩んでいった。

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