アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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第44話 パーティー

僕は酒場の奥の席に座りながら、ボンド『シルフィード』メンバーのテイルと、にものパートナーもふと一緒に、昼間からビールを飲んでいた。真昼間から飲むこの黄金色の飲み物は、背徳感も相まって、格別に美味しい。

ビーフシチューは完成していたが、食べるにはまだ時間が早いので、クローバーたちは、酒場の一部を貸し切って、アフタヌーンティー用の、スコーン作りをしていた。

テイルのパートナーのソラ、ユイゼとそのパートナーのセリク、そして、もふとパートナーを組むにもの4人が、クローバーにその作り方を教わっている。

「姉御、バターこれ全部入れていい?」

「あ、にもちゃん!全部はダメ!ちゃんと計って!」

「くーちゃん、牛乳取ってくれませんか?」

「ユイゼちゃん顔に粉がついてるよ。」

「嘘?今手汚れてるから拭いてー。」

5人で楽しそうにお菓子作りをしている所を、僕とテイルともふは、目を細めながら見ていた。

「若いな……。」

テイルが漏らす。

「若いですねぇ。」

もふが同意する。

「若いですよねぇ。」

僕が続く。

「そう言えば僕らって、そんなに歳離れてましたっけ?2人とも何歳ですか?」

もふの質問に、僕もテイルも口を閉じる。沈黙。

「俺、聞いちゃいけないこと聞きました?」

もふは、そう言いながらも、悪びれる様子はなくおかしそうに笑っている。

「食えねぇ野郎だな。」

テイルがボヤく。僕は苦笑いを浮かべる。

スコーン作りは生地が完成し、型抜きの段階になっていた。

「姉御!ハートが!ハートがいい!!」

「にもちゃん落ち着いて。好きなので抜いていいよ。」

「ユイゼちゃんこれ使う?」

「うん、セリクありがとう。やっぱりスコーンは丸がいいかなぁ?」

「私は小さいのいっぱいにしますー。」

みんな楽しそうだ。

「そうだ。連邦のことで、何か悪い噂聞きません?」

「何だよ藪から棒に。」

僕の質問に、テイルが首を傾げる。もふも不思議そうな顔をする。僕は、農園であったことを2人に話した。

「きな臭ぇなぁ。」

テイルはそう言いながら腕を組み、考える仕草を見せる。

「よくあることですよ。軍事を拡大したいのは、連邦も公国も一緒です。」

「それはそうですけど、こんな無理な方法で、今すぐに軍事を拡大する意味があります?」

僕の質問に、もふは「うーん」と首を傾げる。

「やっぱあの噂は本当なのかしれねぇなぁ。」

テイルがそう言いながら、苦い顔をする。

「何か知ってるんです?」

僕はそう言って、テイルを見つめた。何か大事な話が聞けるかもしれない。

「いや、こないだ昔の仲間に会ってな。まぁその俺も昔は色々やばいことしてたんだが……」

「野盗時代の知り合いですか?」

僕の言葉に、テイルは顔を歪める。バツが悪そうだ。

「え?テイルさん、野盗だったんですか?」

もふはそう言って驚きながらも、興味津々の目でテイルを見た。

「そこは掘り下げねーからな。」

テイルが先回りして制すると、もふは残念そうな顔をする。

「そいつが言うには、そろそろ戦争が始まるんじゃないかって。」

「戦争……?」

急に降って湧いた言葉に、僕は戸惑う。なぜここにきて急に戦争なのだろう。

「戦争で1番儲かるのはな、裏社会だ。陽の光があたる表の社会を堂々と歩けない奴らが、国と裏で繋がって、金のやり取りをする。」

テイルはそこでジョッキに半分ほど入っていたビールを飲み干し、口元を手の甲で拭う。

「そいつらと同じ裏の社会を生きる野盗も、そのおこぼれに預かれるから、そういう話に敏感なんだ。」

「なるほど。」

僕ももふも真剣な顔で頷く。

「具体的にはどんな動きがあるんです?」

僕の質問に、テイルは「うーん」と考える。

「連邦は金属を買ってるようだ。かなり大量に。出どころが不明の盗品でもなんでも、とにかく買い占めてるらしい。」

それが何に繋がるのかはまだわからない。

「あと公国は、人を集めてる。」

「人を?」

もふが眉を寄せる。

「そう。孤児だとか、捨て子とか、あとは病人とか、無職とか、そういう社会的立場の弱いやつを集めてるようだな。」

「集めてどうするんですか?」

「そこまでは知らねーよ。」

僕の質問に、テイルは匙を投げる。

しばしの沈黙。僕らは、それぞれ考えを巡らせる。

連邦も公国もずっと休戦状態だっただけで、いつまた戦争が起こってもおかしくない状況だったというのはわかる。でも、なぜ今なのだろうか?

休戦している間は、それなりに国も潤い、うまく経済も回っていたはずだ。それを壊してまで手に入れたいものが、他にあるのか。はたまた、潤いも経済も見せかけで、本当はもう破綻しているのか。

「まぁ考えてもわかんねーよ。末端の俺らには。」

「そうですねぇ。どうせ戦争が始まっても、できることは無いですし。」

「まぁそうなんですけどね。」

3人同時にため息をつく。僕らはみんな無力だ。

「エル、ちょっと手伝って!」

クローバーに呼ばれて、僕は急いで立ち上がる。いよいよビーフシチューをお皿に分けるようだ。クローバーが大鍋の蓋を開けると、芳醇な香りが辺りを満たす。自然とお腹が鳴る。

「ねぇテイル見て!小さいのいっぱい作ったの!」

僕の横を、スコーンの生地を並べた天板を持ったソラが通り抜けていった。

「おおー!ソラちゃんは器用だなぁ。」

いつもソラには甘いテイルは、デレデレしながらソラを褒める。

「もふ!ハートにしたの!見にきてよ!」

にもに呼ばれたもふは、優しい笑顔を浮かべながら、にもの隣に向かう。

「ねぇセリク、ビーフシチューにブロッコリー入ってるよね?どうしよう……。」

「ユイゼちゃん好き嫌いしちゃダメだよ。」

ユイゼとセリクは、仲良くおしゃべりしながら、スコーン作りで使った器具を、2人で洗っていた。

僕らはみんな無力だけど、こうやって、それぞれのパートナーと、それぞれの道を、真っ直ぐ歩んでいくしかないのだ。

「ほい、エル、みんなにお皿回して。」

クローバーはそ言うと、ビーフシチューの入ったお皿を僕に渡す。美味しそうだ。

そうして僕らは、みんなで楽しくビーフシチューを食べた。ビーフシチューを食べ終わったら、アフタヌーンティーとスコーンが待っている。今日は1日中パーティーだ。

戦争が始まれば、こんな楽しい時間を過ごすことは、無くなるかもしれない。

だからこそ僕は、この時を一瞬一瞬噛み締めるように味わった。幸せ時間が、いつまでも褪せないように、忘れないように、僕は祈った。

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