アルケミアストーリー~クロとエルの物語~ 作:cloverlight
「あやみん胸けっこうあるのね。」
「きゃっ!にもしゃん!?何を!?」
「コラ!揉むな。」
クローバー、にも、Ayamiの3人は、連邦の宿の小さなバスルームにぎゅうぎゅう詰めになりながら、一緒にお風呂に入っていた。
城塞都市の宿屋は、混雑していて、3組分の泊まる部屋はなんとか取れたのだが、その中でバスルームがついている大きな部屋は1つしか取れなかった。仕方ないので、女子3人は無理やり一緒にお風呂に入ることにしたのだ。
「ねぇねぇ!洗いっこしようよ!」
「えー…。絶対自分でやった方が早い。」
そんなクローバーとにもの言い合いを、Ayamiは呆気に取られて見ていた。
「2人はよく一緒にお風呂に入るんです?」
Ayamiが戸惑いを隠せない様子で言う。
「時々ね。」
「うん、そんなに多くはないけど。一緒に入ると楽しいよ!」
家族以外の人と一緒にお風呂に入った経験がないAyamiは、裸が恥ずかしいし、どうしたらいいのかわからないしで、混乱していた。
「あやみん、おいで。髪洗ってあげる。」
クローバーにそう手を差し出された、Ayamiは、恐る恐る、その手を取った。クローバーは自分の前にAyamiを座らせ、彼女のアップルグリーンのツインテールを優しく解くと、丁寧に洗い始める。
「(ちょっと気持ちいいかも……。)」
最初は緊張でガチガチだったAyamiもだんだんリラックスしてきた。なんだかとても心地がいい。
「ほい、流すよ。」
そう言われ、Ayamiはぎゅっと目を瞑る。頭をシャワーで流してもらいながら
「私も姉御に洗ってもらいたーい。」
「後で、順番ね。」
という2人の会話を聞いていた。
「はい、にもちゃんと交代!」
「あ、ありがとうございました。」
Ayamiは戸惑いながらもお礼を述べると、にもと交代して湯船に浸かる。湯船はちょうどいい温度で、Ayamiは思わず「ふー」とため息をもらした。
「ねぇねぇ!あやみんはさ、りゅうさんのことどう思ってるの?」
にもの突然の不意打ちに、Ayamiはキョトンとしてしまう。
「りゅうはあやみんのこと好きっぽいけど、あやみんはそうでも無さそうだよね。」
クローバーがにもの髪を、シャンプーの泡でもこもこにしながら言う。。
「迷惑なら、私がりゅうに腹パンしとこうか?」
「姉御の腹パンはトラウマレベルって、もふが言ってたよ。」
「えっ?!あっ!ち、違います!私、りゅうが好きなんです!」
クローバーの腹パン発言に焦ったAyamiは、思わずそう口に出してしまい、顔を真っ赤にして俯く。それを見たにもは、ヒューと口笛を吹いて
「熱いねぇー。」
と、はやし立てた。
「にもちゃん、からかわないの。流すよ。」
ぎゅっと目を瞑ったにもに、クローバーがシャワーをかける。
「あやみんが、りゅうを拒否してる感じがあったから、嫌がってるのかと思ってた。」
「違うんです。なんか……こう……恥ずかしくて、つい冷たくしちゃうんです。」
Ayamiはそう言うと、表情を曇らせる。ずっとこのままではいけないと、いつか嫌われてしまうと、Ayamiは思っていた。
でも、これはRyuが好きで、好きすぎるからこそ、やってしまうのだ。
「なんかこう、キュンとくる仕草とか、言葉とか言われると、わっー!!ってなっちゃって……。」
そうやって感情が混乱を起こし、つい天邪鬼なことを言ってしまうのだ。
「それちょっとわかるなぁ……。不意打ち食らうと、すげームカつく。」
クローバーが理解を示したので、Ayamiはちょっと嬉しくなる。
「私はわからないなぁー。好きな人にそういうことされたら、嬉しいじゃん!やったー!ってならないの?姉御、交代。」
にもはそう言うと、クローバーの髪シャワーをかけ、洗い始める。
「嬉しいの限界を超えて、腹立たしくなる感じです。」
「理不尽だねぇー。」
にもにそう返されたAyamiは、ぐうの音も出ない。
「クロロんは、どうしてるんですか?エルさんと。」
Ayamiは自分と近そうなクローバーの意見を参考にしたかった。
「え?私?どうもしないよ。そもそも私は、そういうことされてあんまり嬉しくないし。恥ずかしい、腹立たしい以外の感情はないかなー。」
意外な答えにAyamiは驚く。
「えぇぇ!?」
「なんでー?」
「だって、別にエルが好きじゃないから。」
クローバーとエルサイスは、なんだかんだいいながも、好き合ってると思っていたAyamiは、クローバーの言葉に混乱する。
でも、よく考えれば、にもの話も、クローバーの話も、どちらも一貫性があった。にもは好きだから、嬉しい。クローバーは好きではないから、腹立たしい。矛盾しているのはAyamiだけだ。なぜか、好きなのに、腹立たしい。
「あやみんは照れ屋なんだね。」
「でも、それをりゅうさんはわかってるんでしょ?」
「うーん……。多分わかってると思いますけど……。」
あまりはっきり答えられる自信がAyamiにはない。
「あんまり冷たくしてたら、いつか嫌われちゃうんじゃないかって……。」
Ayamiはそう言うと、今にも泣きだしそうな顔をする。
「うーん……。素直になればいいんじゃない?」
にもがクローバーの髪をシャワーで流しながら言う。
「好きなら好きって伝えないと。嬉しいときは、嬉しいって言えばいいんだよ。」
にもが言っていることは、至極当然なことで、なんら難しいことではない。でも、Ayamiにとっては、とてつもなくハードルが高い。
「うーん……。」
Ayamiが悩んでいると
「好きが、恥ずかしいを超えればいいんじゃない?」
と、まだ泡まみれのクローバーが言う。
「もう恥ずかしいとか言ってられない!みたいな感じですか?」
「そうそっ……うっ……シャンプーが目に……。」
クローバーはにもからシャワーを受け取ると、自分で流し始める。
「好きが、恥ずかしいを超える……。」
そう繰り返し呟くAyamiの隣に、にもが入ってくる。
「素直になりなよ。」
さらに、逆隣にクローバーが入ってくる。
「素直になると楽だよ。」
2人に挟まれ励まされたAyamiは、なんだか嬉しくなって、元気が出てきた。
「頑張ります!」
Ayamiはそう言うと、ガッツポーズを作った。