アルケミアストーリー~クロとエルの物語~ 作:cloverlight
エルサイス、もふ、Ryuの3人は、このままいけば、3人で1樽空けれれるのではないかと思うようなペースで、ビールを飲んでいた。
「遅いですねぇ。」
もふがアルコールで、白い頬をほんの少しだけ赤く染めながら言う。
「3人一緒にお風呂に入るって言ってましたから、そんなにかからないと思うんですけど……。」
エルサイスは表向きはまったく変化はないが、どこか気分が高揚していて、上機嫌だ。
「一緒に入ったら狭くて大変そうですね。」
Ryuはどれだけ飲んでも、まったく変化がない。3人の中で、1番酒豪そうだ。
「一緒に入るとか……きっと洗いっことかするんでしょうね……。」
「えっ!?洗いっこ!?」
もふの発言を想像してしまったRyuは、思わず頬を染める。
「あー、それ見たいですねー。僕、バスルームの壁になりたいです。」
エルサイスが、とんでもないことを口に出す。
「お2人とも意外ですね。もっと真面目でお堅い方かと思ってました。」
Ryuがそう言うと、エルサイスともふは「ふふっ」っと笑った。
「俺らも、健全な男ですからね。つい、こんな話も出ちゃいますよ。」
「レディの前ではできませんが……。」
2人はそう言うと、ウェイトレスが持ってきたゲルミアヒージョを仲良くつつく。Ryuは2人の返答に笑うと、ジョッキを飲み干し、次の1杯を追加で注文した。
「あの……。」
次のビールがくるまでの間に、Ryuが躊躇いがちに話し出す。
「はい?」
「その……。」
エルサイスともふは顔を見合わせ、首を傾げる。
「なんでもどうぞ。」
エルサイスが先を促すと、Ryuは大きく息を吸って
「あやみんのことを相談させていただきたくて……。」
と、言った。
「ほうほう。」
もふがクロケットを口に放り込みながら合図打ちを打つ。
「あやみんと、クローバーさんは、似たタイプだと思うんですけど……。どう思われますか?」
「ツンツンしてるとこですか?」
エルサイスが、すんなり返す。
「そ、そうです!」
Ryuは大きく「うんうん」と頷く。
「僕もさっき、エリアボス周回しながら、そう思ってたんですよねぇ。」
エルサイスが、口に手を当てながら考える。
「Ayamiは俺のこと好きなはずなんですけど、俺が優しくすると、なぜか冷たくしてくるんですよね。」
「本当は嫌われてるんじゃ……。」
もふが不吉なことを言う。
「でも、好きって告白してきたのはあやみんの方なんですよ?」
「そうなんですか?」
もふは首を傾げる。Ayamiの態度は傍から見れば、Ryuを拒否しているように見える。でも、本当に拒否しているなら、告白なんてしないだろう。
「ツンデレってやつですかね?」
「単に恥ずかしがってるだけかも。」
エルサイスともふが、それぞれ考察を述べる。
「エル殿は、どうしているんです?」
「僕じゃ参考にならないですよ。」
「そもそもクローバーさんはデレないですからね。本気で嫌がってるんで。」
もふの言葉に、エルサイスは落ち込む様子なく、むしろそれを楽しむように笑い飛ばす。
「クロと、あやみさんは、根本的に違うんです。クロは僕を好きじゃない。あやみさんはりゅうさんを好き。でも、好きなら、大丈夫です。きっと気持ちはちゃんと伝わってますよ。」
エルサイスはそう言うと、ニッコリ微笑む。Ryuは納得のいかない顔で「うーん」と唸っていた。
「あやみさんは、照れ屋なだけですよ。」
もふがそう言うと、隣でエルサイスが「うんうん」頷く。
「では、俺はどうすれば?」
Ryuが途方に暮れたような声を出す。
「うーん……。」
3人同時に考える。
「押してだめなら、引いてみます?」
もふがいたずらっぽく笑いながら言う。
「あやみんが、そういう駆け引きに耐えられる気がしないです。」
Ryuが苦い顔を返す。
「もっと単純なのがいいですよ。根本は違いますけど、クロと似たタイプであるのは確かですからね。」
「じゃぁもっと押してみるとか、どうです?」
もふが妙案を思いついたというように、目を光らせながら言う。
「ふむ、それ、いいですねぇ。」
エルサイスも同意する。
「かっこよく、バンっと決めちゃいましょう!」
「バンっとかっこよく?バン……バン……番茶。」
Ryuの返しに、もふは呆れたように首をガクッとし、エルサイスは苦笑いを返す。
「それ、やめた方がいいですよ。」
もふの注意に、Ryuは困ったように眉を下げる。
「無意識なんですよねぇ……。」
この親父ギャグは、特に意味がある訳では無い。笑いを取りたいとか、照れ隠しとか、そういう意図は一切ないのだ。ただ本当に、純粋に、思いついたら口に出さずにはいられなくなる、病気のようなものなのだ。
「うーん……。今夜は、それ封印して下さい。代わりに、宿に着いたらこう言うんですよ。」
もふがそう言いながら、声を低くしたので、3人は額を寄せ合って話し合う。
「上手くいきますかね?」
話し合いが終わると、Ryuが不安そうに漏らす。
「信じるんですよ。」
「何を?」
「2人の好きって気持ちを。」
エルサイスは、そう言って笑った。
Ryuは、Ayamiが好きだ。だからこそ、どれだけ冷たくされても、Ryuは気にしなかったし、Ayamiも本心では自分を好いてくれているはずだと思っていた。自分のAyamiが好きな気持ちと、Ayamiの本心、この2つを、どれだけ信じられるのか、Ryuは今、試されているのだ。
「おい、お前ら、どれだけ飲めば気が済むんだ。」
石鹸のいい香りを振りまきながら、クローバーが3人に伝票を突きつける。その後ろには、同じ香りのにもとAyamiがいる。
「もふ、あのね、姉御に髪洗ってもらった!」
にもは嬉しそうにそう言いながら、もふ隣に腰を下ろすと、その肩に顔を埋めグリグリする。
「よかったねぇ。いい香りがするよ。」
もふはそう言いながら、にもの頭を優しく抱き、スンスンと鼻を鳴らす。
さすがの甘え上手に、Ayamiは目を丸くして驚いた。こんな自然イチャイチャできるにもは、自分とは次元の違う世界を生きてるのではないかとすら思う。
「お前、この飲み代分、1人で炭坑行って、レンガ掘りして稼げよ。」
クローバーがエルサイスの隣に座りながら言う。
「ピッケル500個分な。」
「さすがにそれは辛いなぁ。」
エルサイスは、クローバーの言葉を本気にしていないのか、笑いながら応える。
「おかえり、あやみん。」
「あ、うん。」
Ryuに促され、Ayamiは席につく。Ayamiが動く度、ふわりと広がる石鹸の香りに、Ryuは年甲斐もなくドキドキしてしまっていた。少し酔っているのかもしれない。
「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない。何か飲む?」
香りにぼーっとしていたRyuは頭を振ると、Ayamiにメニューを渡す。
「ビールでいいよ。」
Ayamiはそれを素っ気なく手で制する。クローバーと、にもには「頑張る」と言ったものの、どうしたらいいのかわからない。
そんな2人がまごまごしている間にも、夕げは進む。
「ほら、クロ、もっと食べないと。」
「お前、勝手に皿に乗せんな!」
「あー気持ちいいー。」
「お酒程々にしてね。どうせまた吐くんだから。」
「魚、さかな……もうあさかな(朝かな)?」
「またくだらないこといって……。」
6人はたっぷり食べて、たっぷり飲んで、満足して帰路についた。