アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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番外編~Enjoy☆海!! その3~

合図の鐘がなる。

砂浜に現れた、巨大な魔物、トコナツミ。赤い色をしたゲルミ族で、麦わら帽子にスイカの浮き輪と、可愛らしい格好している。しかし、その見た目とは対照的に、すごく強い。さすがレイドボスだった。

クローバーはフォアフロントを唱えたあと、クロスブレイドでトコナツミを切り裂く。どちらもヘイトがつく、特別なスキルだ。

「火力はタゲが安定するまではクリティカル重視で。にもさんデバフ優先でお願いします。りゅうさんはHP減るまで攻撃してていいですよ。」

エルサイスが滑らかな指示を出す。

にもがスモックボールで敵の攻撃力を低下させている横で、もふが涼しい顔で流水剣を放つ。特攻武器&弱点属性のクリティカルヒットで、かなりのダメージを与えていた。

「もふは強いなぁ!」

にもはそう言いながら「ひゅー」とはやし立てるように口笛を吹いた。

「にも、集中しないと危ないよ。」

「大丈夫、姉御が守ってくれる!」

「そんなんで死んでも知らないからね。」

クローバーがカレッジブレイドで攻撃しながら、にもに言い返す。にもはおかしそうに笑うだけで、全然気にしていない。随分余裕がありそうだ。

一方Ayamiは、初めてのレイドに緊張していた。震えだしたくなる両手を、キツく剣を握り締めて、押さえ込む。足がすくんで、中々攻撃できないでいるAyamiの隣で、Ryuが

「トコナツミ……トコナツミカン。」

と、小声で言いながら、ライトニングアローを放っていた。Ayamiは思わず、脱力して、ため息をつく。

「どうしたの?あやみん?」

Ryuが不思議そうに首を傾げながら聞く。

「別に、何でもない!」

いい感じに力が抜けた。もう震えはこない。

「(りゅうのくだらない親父ギャグも、たまには役に立つ。)」

Ayamiはそう思って、ほんの少しだけ微笑むと、ウォータースラッシュでトコナツミに斬りかかった。

「ナツミ出現。」

クローバーの報告に、セリクは緊張する。

「セリクさん、一撃で倒せる位まで、ナツミのHP減らしといて下さい。」

エルサイスの指示に、セリクは

「は、はい!」

と、緊張で裏返りそうな声をなんとか押さえ込んで返事をする。

「セリク?大丈夫?」

「大丈夫。」

心配そうなユイゼに、セリクは無理やり笑顔を返す。ここで弱みを見せたら、男がすたる。

セリクは自分を奮い立たせるように、力いっぱい剣を振り上げ、氷晶刃でナツミに切りかかった。半分ほどHPを削って、待機する。

「タイミングきたら合図します。」

エルサイスの指示を待ちながら、セリクはタイミングを見計らっていた。

トコナツミが両手を上げ、ウネウネとダンスを踊るような仕草をする。

「津波がくるぞ!」

クローバーがそう叫ぶ。その後ろで、エルサイスがエアシールで風印を付け、回復の準備をしていた。

「くっ……。」

「きゃっ……。」

トコナツミが呼び寄せた津波の威力は中々だった。激しい水流に揉まれ、何人かは怯む。

「セリクさん!」

エルサイスに言われる前に、セリクは波をかき分け、ナツミに流水剣で切りかかっていた。

「あっ……。」

それは思わぬ失敗だった。

「おい、ビビってんじゃねーぞ。」

クローバーが笑いながらセリクを揶揄した。

「ご、ごめんなさい!」

セリクは、涙目になりながら謝罪する。

「大丈夫です。そのまま放置で、次のタイミング待ちましょう。」

「気にしない。気にしない。」

エルサイスと、にもが、励ましの言葉を送る。

セリクが切りかかったタイミングはバッチリだったが、ほんの少しだけ攻撃力が足りなかった。ナツミを一撃できず。倒せなかったのだ。

それでも、休んでいる暇はない。全員津波でびしょ濡れになりながらも、戦闘を続ける。

「にもさん、メンテナンス使えます?」

「おっけー。」

にもが攻撃力低下のデバフを一時的に解除する。

「一気に叩き込め!」

クローバーがクロスブレイドでトコナツミを切り裂きながら叫ぶ。クローバーの言葉に反応して、ユイゼがバフ付きの嵐を食らわせる。防御無視の多段攻撃で、ユイゼはかなりのダメージを叩き出していた。

「ユイゼさんは強いですねぇ。」

もふはそう言いながら「あなたはどうですか?」というように、セリク様子をチラリと伺う。安い挑発だ。でも、セリクはそれに乗った。一瞬ムッとした顔をすると、トコナツミにウォータースラッシュを放つ。

「もふさん、若人をからかってはいけませんよ。」

エルサイスがウォールで、津波のダメージを回復しながら言う。

「エルさんだって、人のこと言えないでしょう?」

「まぁそうですけど。」

「まったく。嫌なやつらだよ。」

クローバーがうんざりしたように漏らす。AyamiとRyuは、困ったような苦笑いを返した。

「ほら、くるぞ。次は仕留めろよ。」

クローバーがそう言った直後、津波が全員を襲う。

激しい水流の中、セリクは目を凝らしてナツミに狙いを定めた。オーシャンリッジの一撃で、ナツミは黒い霧になった。

「クロ!!」

エルサイスの呼びかけに、クローバーはすぐ反応して、ディフェンススタンスで自身の物理防御力を上げる。エルサイスは、すかさず暗い霧を唱えて、トコナツミの攻撃力を下げた。

「Ryuさん多重回復を。」

「はい!」

攻撃力が超絶アップしたトコナツミが、クローバーに次々攻撃を加える。攻撃種類よっては、1000以上のダメージを食らっているが、クローバーはまったく怯まない。減ったHPは早打ちでスキルの回転率をあげたRyuが回復する。

「さすが姉御!!」

にもはなぜか嬉しそうだ。

「相変わらずの鉄壁ですねぇ。」

もふはそう言いながらも、トコナツミへの攻撃の手を緩めない。次々にスキルを使い、ダメージを与えていく。

「ナツミ復活。」

クローバーの報告とほぼ同時に、セリクが動く。

「いい動きだ。」

クローバーが満足気に微笑む。

「津波きます。」

「痛てぇぞ。全員頑張って耐えろ。」

クローバーはそう言いながら、プロテクションで全員の防御力を上げる。超絶アップはしていないが、トコナツミの攻撃力は高いままだ。さっきの津波とは比べ物にならないくらい重い波が、パーティーメンバーを襲う。

「ぐぅ……。」

「いたーい!」

膝を付かなかったのは、クローバーとセリクだけだった。セリクは波に顔を歪ませながらも、一直線にナツミに向かい、黒い霧へと変える。

「やれば出来るじゃねーか。」

「セリク……!!」

ユイゼの尊敬の眼差しを受けて、セリクは嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに頬を高揚させた。

「ゴッホっ……被害報告。最大ダメージでHPの60%喪失。」

エルサイスが、波にむせながら報告する。

「デバフ後回しで、回復優先にしろ。私は自分で何とかする。」

「了解。りゅうさん、僕も補助ヒーラーするので、クロ以外のメンバーのHPを次の津波まで90%回復させましょう。」

「はい!」

Ryuはウォール、エアシール、ペールと順番に唱え、あっという間に全員のHPを回復させていく。

「あやみん大丈夫?」

次の呪文を準備しながら、Ryuは膝をついてヨロヨロしているAyamiに手を貸した。

「わっと!!」

RyuがAyamiの手を力いっぱい引っ張って起こしたため、勢い余ったAyamiはバランスを崩し、Ryuに抱きつくような格好になってしまう。Ryuも思わずAyamiを抱きしめて、その体を支える。

「「あっ……。」」

照れて顔を真っ赤にする2人の間に

「おい、イチャつくのはあとにしてくれ。私が死ぬ。」

と、HPが半分ほどまで減っているクローバーが割り込んでくる。

「あぁ!すみません!」

「い、イチャついてなんかいません!!」

2人は慌てて離れると、それぞれ回復と攻撃を再開した。クローバーは呆れたため息をつく。他のメンバーはニヤニヤしながらその様子を伺っていた。

「にもさんクールタイムが終わり次第スモックボールでデバフをお願いします。火力はDPS優先で回転率上げてください。」

「はーい。」

「ほいっ。」

「はい!」

エルサイスの指示に、それぞれが返事を返す。

「あと少しだ。出し惜しみすんな!ぶっ倒せ!」

クローバーがそう声をかけると、全員が一気にトコナツミにスキルを叩き込む。

そうして8人は、小さな連携を幾重にも積み重ねながら、勝利への道を突き進んでいった。

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