アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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番外編~Enjoy☆海!! その4~

テイルは、デッキチェアの上でぐっすり眠るソラの隣で、1人ハイボールを飲んでいた。

炭酸のピリピリとした感覚と、レモンの爽やかな香りが、喉を突き抜けていくと、うだるような暑さが、あっという間に吹き飛んでいく。

「はーーー。うまい。」

思わずそう呟きながら、ソラの様子を伺う。

ソラはスヤスヤと規則的な寝息を繰り返し、気持ちよさそうに眠っていた。

その姿がなんだかとても愛おしくなって、テイルはソラの柔らかいブロンドの髪を、優しく撫で付けた。

今までずっと家族で旅をしていたが、こうやって大勢で集まって遊ぶというのは、テイルにとっても、ソラにとっても、初めてのことだった。

それはとても刺激的で、同時にとても穏やかで、素敵な経験だ。

「う……うん……。」

ソラがモゾモゾと動き、寝返りを打つ。

「ソラちゃん?そろそろ起きようか?」

ソラが寝てから、30分ほど経っていた。

「う?……うーん……。」

ソラはまだ眠そうな目を擦りながらゆっくり起き上がる。

「大丈夫?」

「あ!!私寝ちゃった!みんなは!?」

はっと目を覚ましたソラが、慌てたように辺りを見回し、テイル以外誰もいないとわかると

「帰っちゃった?」

と、泣きそうな顔をした。そんなソラを見て、テイルは笑った。

「誰も帰ってないよ。みんなレイドに行ったんだ。」

「よかったー。」

ソラは安心したため息をついた。

「ソラちゃん、海は楽しい?」

「楽しい!!みんなとなら、毎日行きたい!!」

「毎日はさすがに無理だなぁ。」

テイルはそう困ったように笑いながらも、心の中では喜んでいた。

ソラに普通の仲間がいて、一緒に楽しい時間を過ごして、幸せな思い出が作れる。それはテイルが子供の頃は、できなかった経験だ。

「私もレイド行きたかったなぁ。」

「また今度、一緒に行こう。みんなで。」

「うん!」

そう笑顔で返事をするソラの頭を、テイルは優しく撫でた。

 

レイドに行っていた8人が帰ってくると、ソラは大喜びで走っていった。

「くーちゃんおかえりなさい!」

先頭を歩いていたクローバーに、ソラが抱きつく。

「おー、ソラちゃん!ただいま。」

クローバーはソラを優しく抱き上げると、そのままぐるぐる回り、振り回す。ソラはきゃっきゃと声を上げて笑った。

「どうだった?」

テイルが訪ねると

「とても良かったですよ。みなさん総ダメージ上位報酬ももらえたようですし。」

と、エルサイスが答える。

「セリクさんも大活躍でしたし。」

もふがニヤリとしているのを、テイルは呆れた様子で見つめ返す。

「どうせまた、からかってたんだろ?」

「失礼な。ちょっとハッパをかけただけですよ。」

不満そうな顔をするもふに、テイルは嫌そうな顔をした。

「セリクかっこよかった!」

憧れに目を輝かせたユイゼに、そう言われたセリクは、思わず頬を赤く染め、照れたように頭をかく。

「いい経験になっただろ?」

クローバーがソラを地面に下ろしながら言う。

「はい。ありがとうございます!」

セリクはそう返しながら、丁寧なお辞儀をする。騎士らしい、真っ直ぐで整ったお辞儀だ。クローバーはそれを見て満足そうに微笑んだ。

「ねぇ、くーちゃん、私まだ海で遊びたいです。」

ソラが上目遣いで、クローバーの手を引きながら言う。

「うん、遊ぼう!遊ぼう!今日は夜まで遊ぶよ!」

「やったー!」

「姉御行こう!行こう!」

にもがクローバーの手を取り、一直線に海へ走っていく。その後ろから、浮き輪を抱えたソラが続く。

「にもちゃん待って!!私泳げないんだってばっ!!」

「私が教えてあげるよ!」

「わああぁぁ!!キャー!!」

クローバーの叫びを、エルサイスは笑いながら聞いていた。

エルサイスの隣で同じように笑っていたRyuの肩を、Ayamiがトントンと叩く。振り向いたRyuにAyamiは

「りゅう、さっきは起こしてくれて、ありがとう。」

と言いながら、頬染め、すぐに目をそらす。

お互い、さっき抱き合った時の感覚がまだ体に残っていた。なんだか恥ずかしくて、でも嬉しくて、2人は照れたよう笑い合った。

「あやみんさーん!!ここお山作って、水流したいです!」

波打ち際で浮き輪を背もたれにしながら、砂遊びをしているソラが、大きくAyamiに手を振る。

「おっけー。大きいやつ作ろう。ほら!りゅうも手伝って!」

「う、うん。」

いつもより少し素直なAyamiに、Ryuは戸惑いながらも、喜びを感じていた。

「セリク、私たちも行こう!」

ユイゼはそう言いながら、セリクの腕に抱きつく。腕に当たる柔らかい感触に、セリクは思わず『そこ』を見てしまう。柔らかい膨らみが、自分の腕にぎゅっと押し付けられていた。

「(あああああ!!ダメだダメだダメだ!!)」

セリクは叫び出したくなる気持ちを何とか押さえ、腕を振り払い、そっぽを向く。

「セリク?」

振り払われたユイゼは、多少のショックを受けていた。なぜ振り払われたか理解できない。

「どうしたの?遊ぶの嫌だった?」

「あ、いや……。」

顔を真っ赤にしたまま、返答に困るセリクを、ユイゼは不思議そうにのぞき込む。

「(う、上目遣い……!!)」

セリクのライフは既にゼロだ。

「ユイゼさん、セリクさんは少しお疲れのようですから、先にクロたちと遊んでて下さい。」

エルサイスがそう助け舟を出しながら、ユイゼをセリクから離し、海の方に手を振る。

「クロ!!ユイゼさんがそっちに行くよ!」

「ちょっ……今それどころじゃ……ゴホッゴホッ!死ぬ!」

「はーい!」

スパルタ水泳教育を受けているクローバーの代わりに、講師のにもが大きな返事を返す。

「さぁ、ユイゼさんも、クロに泳ぎを教えてください。」

エルサイスはそう言ってユイゼにウィンクした。ユイゼは少し躊躇って、チラリとセリクを1度見たが、最後は

「はい……。」

と返事をして海へとかけて行った。

「まったく……。」

一部始終を見ていたテイルが、呆れたため息をつく。

「ほんとに……勘弁してくれ……。」

そう独り言を言いながら、顔を押さえてうなだれるセリクを、エルサイスともふはニヤニヤして見ていた。

「ソラちゃんの前でそういう破廉恥なことすんなよ。」

「僕は破廉恥なことなんか……!!」

「してるだろ?」

「うっ……。」

テイルに一言も反論できないセリクは、悔しそうに唇を噛んだ。

「まぁそういうお年頃ですから、仕方ないですよ。」

「羨ましいですねぇ。」

エルサイスともふが、涼しい顔でセリクをからかう。セリクの心は今にも折れそうだ。

「まぁ健全な反応なんじゃねーの?この2人よりはマシさ。お前らどーせ、レイドでも、水着姿で戦う女ども見て、心の中でニヤニヤしてたんだろ?」

テイルが、エルサイスともふに軽蔑の眼差しを向けながら言う。

「そりゃあそうですよ。あんな軽装でボスの攻撃に一切怯まないクロ。美しすぎます。」

「波飛沫の中、髪を揺らすにもも、かわいかったですよ。」

ニコニコしながら答える2人に、セリクは戸惑う。どうしたらここまで開き直れるのかさっぱりわからない。

「ソラちゃん行かせなくて良かった。このむっつりスケベめ。」

「ロリコンに言われたくありません。」

そう睨み合う3人を前に、セリクは大きなため息をついた。どうやらまともな大人はここには居ないようだ。

「とにもかくにも、パートナーを悲しませてはいけません。」

「ユイゼさんに、ちゃんと謝ってきた方がいいですよ。」

そう言われたセリクは、海で遊んでいるユイゼを見る。ユイゼは、うかない顔をしていて、笑い方もどこかぎこちない。腕を振り払われたことが、かなりこたえているようだった。セリクの胸が罪悪感で痛む。不可抗力とはいえ、申し訳ないことをしてしまった。

「さぁ!!」

もふにそう背中を叩かれたセリクは、一瞬戸惑って3人を振り返ったが、テイルが

「さっさと行ってこい。」

と言いながら、手をしっしっと振ると「うん」とうなずいて海へと走っていった。

「まったく、世話が焼けるぜ。」

テイルはそうため息をつきながらも、どこか気分が良さそうだ。意外と世話焼きなのかもしれない。

「さぁ、僕らは夕飯の用意をしながら休憩です。」

「暗くなったら花火もやりますから、それまでの体力温存しておきましょう。」

エルサイスともふはそう言うと、順番にあくびをし、デッキチェアに寝そべり合成を始めた。

テイルは2人とは少し離れたシートの上に直接寝転がると、またハイボールに口をつける。

海では、クローバーがにもの地獄の水泳レッスンを受け、セリクとユイゼがそれを笑って見ていて、AyamiとRyuとソラが、その近くで砂のお城を作っていた。

それぞれが、それぞれに海を楽しんでいた。

夜にはバーベキュー、そして最後は盛大な花火で、幕引きだ。

そうして、8人心に、夏の思い出がまた1つと、刻まれていくのだった。

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