アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

96 / 145
このお話は番外編です
現在連載中のストーリーとは、前後の繋がりが一切ありませんのであしからず

ゲームの中でも、ユイゼさんAyamiさんが妙にエル推しなので、反撃に書きました(^ω^)
内容はユイゼさんへの取材を元に構成されています
ユイちゃん甘いのがお好き笑


番外編~乙女達のアドバイス~

時刻は午後4時。

お昼と夜のピークタイムの狭間のこの時間帯は、いくら人の多い公国の酒場でも、閑散としがちだ。

そんな静かな酒場の端の席で、エルサイスは優雅にコーヒーを嗜みながら、うら若き乙女達の会話に耳を傾けていた。

エルサイスの向かいの席には、ボンド『シルフィード』のメンバー、ユイゼと、Ayamiが座っていて、レモネードを飲みながら、お互いのパートナーの話に、花を咲かせていた。

「えー!!りゅうさん急に大胆!!」

「でしょ?いきなりそんなことするからさ、私も……パニックになっちゃって……その……きっ、キスを……。」

「きゃー!あやみんすごい!」

「(あやみさんと、りゅうさんが勢いでキス……。)」

エルサイスは、大事そうなところだけ頭にメモとして残し、あとは小鳥のさえずりを聞くように、きゃーきゃー言い合う2人の会話を、聞き流していた。

エルサイスのパートナーのクローバーは、夕食の買い出しに出掛けている。今夜はハンバーグだと言っていて、エルサイスはそれが楽しみだった。

ユイゼのパートナーのセリクは、騎士時代の友人と偶然会い、そのまま剣の稽古に、AyamiのパートナーのRyuは錬金素材の買い物に、それぞれ出掛けていた。

パートナーに置いていかれた3人は、たまたま酒場に居合わせて、こうして午後のブレイクタイムを共にしている。

エルサイスは、年の離れた妹を見る様な気持ちで、ユイゼとAyamiを見ていた。

「(ルルが生きてたら、こんな感じだったのかな……。)」

そんな感傷にひたりながら、少し冷めたコーヒーを飲んでいると

「エルさんは、どうなんです?」

と、ユイゼが聞いてくる。まったく話を聞いていなかったエルサイスは

「何がです?」

と、聞き返す。

「クロロんとどうなんです?」

Ayamiは興味津々の様子で、少し前のめりになっている。

「どう、というと?」

話が見えないエルサイスは、首を傾げた。

「くーちゃんとどこまでいってるんですか?」

ユイゼがどこか期待した目で、エルサイスを見つめる。

2人のキラキラした目に晒され、エルサイスは苦笑いを浮かべた。「どこまで」と聞かれても、困る。そもそもクローバーとエルサイスは、そういう関係ではないのだ。

しかし、その説明をしたところで、まだまだ若い乙女のこの2人は理解できないだろう。エルサイスはそう思って

「さぁ、どうでしょうね?」

と、誤魔化してニッコリ笑うだけにする。

それを見たユイゼと、Ayamiは不満そうな顔をした。2人とも、もっと甘くて、キラキラした、幸せな話を望んでいるのだ。

「エルさんはいつもそうやって誤魔化して!ずるいです!もっと素直になって、クロロんにアピールしないと!」

そう語気を強めるAyamiがおかしくて、エルサイスは思わず吹き出した。一体どの口が言うのだ。素直になった方がいいのは、Ayamiの方だ。ツンデレなAyamiは、いつも天邪鬼な言動で、パートナーのRyuを振り回していた。

「笑い事じゃないですよ!くーちゃん何だかんだで鈍そうなんですから、はっきりアピールしないと!」

ユイゼの言葉に、エルサイスは堪えきれず、声を上げて笑った。鈍いのはユイゼの方だ。天然鈍ちん、伝説のフラグクラッシャーは、何度もセリクの恋心を折っていた。

「「エルさん!」」

笑っているエルサイスに痺れを切らした2人が、同時にそう責め立てる。

「はいはい、すみません。つい、笑ってしまって。」

エルサイスが目の端の涙を拭いながら言う。

「真面目に考えてください!」

「大事なことなんですよ!」

なぜ2人がこんなに真剣なのか、エルサイスにはさっぱりわからない。女心というものは、不思議なものだ。でも、嫌ではない。むしろ、エルサイスは、どこかワクワクしている2人の様子を、楽しんでいた。

「では、どういうアピールをしましょうかね?」

エルサイスがニッコリ微笑みながら、ユイゼとAyamiに質問をぶつける。

「「うーん……。」」

2人が同時に考え始めた隙に、エルサイスはクッキーをつまむ。Ayamiの手づくりクッキーは、ココア風味のちょっとビターな味わいで、コーヒーによく合う。

「簡単なとこでいうと、頭なでなでとか?」

ユイゼがAyamiの頭をよしよししながら言う。

「こうやって優しく撫でられると、安心します!」

そう言うユイゼの言葉に、Ayamiが「うんうん」と首を大きく縦に振り、同意を示す。

「軽くぽんぽんするのもいいよね!」

Ayamiがそう言うと、2人は顔を見合わせ「ねー」と頷き合った。

「(姉妹みたいだな。)」

エルサイスはつい、話と関係の無いことを考えてしまう。

「あとは……お姫様抱っことか!」

「お姫様抱っこ!いいね!憧れる!」

Ayami提案に、ユイゼが目を輝かせる。

「お姫様抱っこですかぁ……。」

随分ハードルが高い要望だ。

「どんなときにやればいいですかね?」

エルサイスがそう聞くと、2人は待ってましたと言わんばりに話し出す。

「怪我した時とか「無理するな」とか言って、強引にグイッと抱き上げるとか!」

「うんうん、それいい!あとは、戦闘でピンチのときに颯爽と駆けつけて、ひょいっと抱えるとか!」

どれもエルサイスには無理そうな話だった。

「エルさん聞いてます?」

気のない様子でコーヒーをすするエルサイスに、Ayamiが口を尖らせならがら聞く。

「ええ。つまりお二人は、セリクさんや、りゅうさんに、そうして欲しいんですね。」

「「え?」」

エルサイスの思わぬ反撃に、ユイゼとAyamiは目を点にして固まってしまう。

「ちちちちっち違います!私はそういうつもりじゃ!!そんなんじゃありません!!」

Ayamiは慌てた様子で、手を大袈裟に振って、否定する。

「え……?セリクに……え……?」

ユイゼは自分の気持ちがまだ理解出来ていないようだが、わからないなりにも、照れているようで、頬を赤く染めていた。

エルサイスは戸惑う2人を見て、満足気に微笑む。若人をからかうのは、中々楽しい。それは大人の余裕がある者の、特権的な遊びなのだ。

「ユイゼちゃん、遅くなってごめんね。」

「あやみーん、ただいマーリンソテー。」

あたふたしている2人の元に、セリクとRyuが大きな荷物を抱えて戻ってくる。

「どーも。」

あまりのタイミングに固まっているユイゼとAyamiを差し置いて、エルサイスは2人に挨拶を返す。

「いやー、疲れた。ちょうどさ、2人に会ったから、6人分のハンバーグの材料買ってきたよ。」

クローバーが、セリクとRyu間から顔を出し、固まっているユイゼとAyamiに目を止める。

「何?この空気?」

「さぁ?」

エルサイスは知らないふりをする。

「ユイゼちゃんどうしたの?」

セリクはそう言いながら、ユイゼの頭を優しく撫でる。

「あやみん熱でもある?」

りゅうがAyamiの額に手を当てる。

「「な、何でもないから!!」」

顔を真っ赤にしながら、声を揃えてそう叫ぶユイゼとAyamiに、エルサイスは声を上げて笑った。

「お前、2人に何したんだよ。」

「僕は別に何もしてないよ。うら若き乙女達の素敵なアドバイスを、真摯に受け止めただけさ。」

そうイタズラっぽくウィンクするエルサイスに、クローバーはうんざりしたため息をつく。

「まったく、嫌なやつだ。」

そう言うクローバーの後ろで、ユイゼはセリクの胸に顔を埋め赤い顔を隠し、AyamiはRyuを突き飛ばし、恥ずかしさを誤魔化していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。