アルケミアストーリー~クロとエルの物語~ 作:cloverlight
現在連載中のストーリーとは、前後の繋がりが一切ありませんのであしからず
ゲームの中でも、ユイゼさんAyamiさんが妙にエル推しなので、反撃に書きました(^ω^)
内容はユイゼさんへの取材を元に構成されています
ユイちゃん甘いのがお好き笑
時刻は午後4時。
お昼と夜のピークタイムの狭間のこの時間帯は、いくら人の多い公国の酒場でも、閑散としがちだ。
そんな静かな酒場の端の席で、エルサイスは優雅にコーヒーを嗜みながら、うら若き乙女達の会話に耳を傾けていた。
エルサイスの向かいの席には、ボンド『シルフィード』のメンバー、ユイゼと、Ayamiが座っていて、レモネードを飲みながら、お互いのパートナーの話に、花を咲かせていた。
「えー!!りゅうさん急に大胆!!」
「でしょ?いきなりそんなことするからさ、私も……パニックになっちゃって……その……きっ、キスを……。」
「きゃー!あやみんすごい!」
「(あやみさんと、りゅうさんが勢いでキス……。)」
エルサイスは、大事そうなところだけ頭にメモとして残し、あとは小鳥のさえずりを聞くように、きゃーきゃー言い合う2人の会話を、聞き流していた。
エルサイスのパートナーのクローバーは、夕食の買い出しに出掛けている。今夜はハンバーグだと言っていて、エルサイスはそれが楽しみだった。
ユイゼのパートナーのセリクは、騎士時代の友人と偶然会い、そのまま剣の稽古に、AyamiのパートナーのRyuは錬金素材の買い物に、それぞれ出掛けていた。
パートナーに置いていかれた3人は、たまたま酒場に居合わせて、こうして午後のブレイクタイムを共にしている。
エルサイスは、年の離れた妹を見る様な気持ちで、ユイゼとAyamiを見ていた。
「(ルルが生きてたら、こんな感じだったのかな……。)」
そんな感傷にひたりながら、少し冷めたコーヒーを飲んでいると
「エルさんは、どうなんです?」
と、ユイゼが聞いてくる。まったく話を聞いていなかったエルサイスは
「何がです?」
と、聞き返す。
「クロロんとどうなんです?」
Ayamiは興味津々の様子で、少し前のめりになっている。
「どう、というと?」
話が見えないエルサイスは、首を傾げた。
「くーちゃんとどこまでいってるんですか?」
ユイゼがどこか期待した目で、エルサイスを見つめる。
2人のキラキラした目に晒され、エルサイスは苦笑いを浮かべた。「どこまで」と聞かれても、困る。そもそもクローバーとエルサイスは、そういう関係ではないのだ。
しかし、その説明をしたところで、まだまだ若い乙女のこの2人は理解できないだろう。エルサイスはそう思って
「さぁ、どうでしょうね?」
と、誤魔化してニッコリ笑うだけにする。
それを見たユイゼと、Ayamiは不満そうな顔をした。2人とも、もっと甘くて、キラキラした、幸せな話を望んでいるのだ。
「エルさんはいつもそうやって誤魔化して!ずるいです!もっと素直になって、クロロんにアピールしないと!」
そう語気を強めるAyamiがおかしくて、エルサイスは思わず吹き出した。一体どの口が言うのだ。素直になった方がいいのは、Ayamiの方だ。ツンデレなAyamiは、いつも天邪鬼な言動で、パートナーのRyuを振り回していた。
「笑い事じゃないですよ!くーちゃん何だかんだで鈍そうなんですから、はっきりアピールしないと!」
ユイゼの言葉に、エルサイスは堪えきれず、声を上げて笑った。鈍いのはユイゼの方だ。天然鈍ちん、伝説のフラグクラッシャーは、何度もセリクの恋心を折っていた。
「「エルさん!」」
笑っているエルサイスに痺れを切らした2人が、同時にそう責め立てる。
「はいはい、すみません。つい、笑ってしまって。」
エルサイスが目の端の涙を拭いながら言う。
「真面目に考えてください!」
「大事なことなんですよ!」
なぜ2人がこんなに真剣なのか、エルサイスにはさっぱりわからない。女心というものは、不思議なものだ。でも、嫌ではない。むしろ、エルサイスは、どこかワクワクしている2人の様子を、楽しんでいた。
「では、どういうアピールをしましょうかね?」
エルサイスがニッコリ微笑みながら、ユイゼとAyamiに質問をぶつける。
「「うーん……。」」
2人が同時に考え始めた隙に、エルサイスはクッキーをつまむ。Ayamiの手づくりクッキーは、ココア風味のちょっとビターな味わいで、コーヒーによく合う。
「簡単なとこでいうと、頭なでなでとか?」
ユイゼがAyamiの頭をよしよししながら言う。
「こうやって優しく撫でられると、安心します!」
そう言うユイゼの言葉に、Ayamiが「うんうん」と首を大きく縦に振り、同意を示す。
「軽くぽんぽんするのもいいよね!」
Ayamiがそう言うと、2人は顔を見合わせ「ねー」と頷き合った。
「(姉妹みたいだな。)」
エルサイスはつい、話と関係の無いことを考えてしまう。
「あとは……お姫様抱っことか!」
「お姫様抱っこ!いいね!憧れる!」
Ayami提案に、ユイゼが目を輝かせる。
「お姫様抱っこですかぁ……。」
随分ハードルが高い要望だ。
「どんなときにやればいいですかね?」
エルサイスがそう聞くと、2人は待ってましたと言わんばりに話し出す。
「怪我した時とか「無理するな」とか言って、強引にグイッと抱き上げるとか!」
「うんうん、それいい!あとは、戦闘でピンチのときに颯爽と駆けつけて、ひょいっと抱えるとか!」
どれもエルサイスには無理そうな話だった。
「エルさん聞いてます?」
気のない様子でコーヒーをすするエルサイスに、Ayamiが口を尖らせならがら聞く。
「ええ。つまりお二人は、セリクさんや、りゅうさんに、そうして欲しいんですね。」
「「え?」」
エルサイスの思わぬ反撃に、ユイゼとAyamiは目を点にして固まってしまう。
「ちちちちっち違います!私はそういうつもりじゃ!!そんなんじゃありません!!」
Ayamiは慌てた様子で、手を大袈裟に振って、否定する。
「え……?セリクに……え……?」
ユイゼは自分の気持ちがまだ理解出来ていないようだが、わからないなりにも、照れているようで、頬を赤く染めていた。
エルサイスは戸惑う2人を見て、満足気に微笑む。若人をからかうのは、中々楽しい。それは大人の余裕がある者の、特権的な遊びなのだ。
「ユイゼちゃん、遅くなってごめんね。」
「あやみーん、ただいマーリンソテー。」
あたふたしている2人の元に、セリクとRyuが大きな荷物を抱えて戻ってくる。
「どーも。」
あまりのタイミングに固まっているユイゼとAyamiを差し置いて、エルサイスは2人に挨拶を返す。
「いやー、疲れた。ちょうどさ、2人に会ったから、6人分のハンバーグの材料買ってきたよ。」
クローバーが、セリクとRyu間から顔を出し、固まっているユイゼとAyamiに目を止める。
「何?この空気?」
「さぁ?」
エルサイスは知らないふりをする。
「ユイゼちゃんどうしたの?」
セリクはそう言いながら、ユイゼの頭を優しく撫でる。
「あやみん熱でもある?」
りゅうがAyamiの額に手を当てる。
「「な、何でもないから!!」」
顔を真っ赤にしながら、声を揃えてそう叫ぶユイゼとAyamiに、エルサイスは声を上げて笑った。
「お前、2人に何したんだよ。」
「僕は別に何もしてないよ。うら若き乙女達の素敵なアドバイスを、真摯に受け止めただけさ。」
そうイタズラっぽくウィンクするエルサイスに、クローバーはうんざりしたため息をつく。
「まったく、嫌なやつだ。」
そう言うクローバーの後ろで、ユイゼはセリクの胸に顔を埋め赤い顔を隠し、AyamiはRyuを突き飛ばし、恥ずかしさを誤魔化していた。