アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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第67話 酒場に集まる冒険者

連邦の酒場は今までにないくらい大盛況だった。

席は2階を含め、すべて埋まっていて、入りきれないお客が、店の外にまで溢れている。

「なんだこれは?」

クローバーが不思議そうに首を傾げる。

「祭りかなんかか?」

「うーん……そういう訳でもなさそうだけど。」

僕は辺りを見回し、様子を伺った。お客はみんな冒険者のようだ。どの人もいつでも戦闘できるような格好で、遊びにきているような感じはしない。

国境沿いで釣りをしていた僕らは、昼食を取りにこの城塞都市へとやってきたのだが、どうやら選択を間違ったらしい。

カウンターの中では、店員たちがてんやわんやで働いていて、次々に料理や飲み物を運んでいく。キッチンは戦場のような雰囲気で、ときより怒号が飛び交い、料理人たちが目を回しながら忙しなく動き回っていた。

この状態では、いつご飯にありつけるのか、まったくわからない。

「うーん……牛車で公国に行こうか?」

気長に待っていられるくらいの、空腹具合でもないので、僕らは諦めてこの場を去ろうとする。

「あ、姉御!!」

聞きなれた声に、クローバーがそちらを振り返る。

「にもちゃん!!」

隅の方のテーブル席に、にもとそのパートナーのもふが座っていた。

「ここ空いてますよ。座ります?」

2人はそう言うと、ベンチシートの上に置いてあった荷物を床にポイッと投げると、無理やりスペースを作る。

「いいんですか?」

「うんうん、いっぱい頼んだから一緒に食べよう!」

にもがそういいながら、大皿の料理をテーブルの真ん中に持ってくる。

僕とクローバーは顔を見合わせると「うん」とうなづき合い、それぞれ席についた。

「姉御に会えるなんてラッキー!」

にもはそう言いながら、隣に座るクローバーにギュッと抱きつく。

「にもちゃん、この混雑ぶりは何?みんな何しにきてるの?」

「あれ?姉御知らないの?」

「知らないできたのなら、とんだ災難でしたね。」

もふはそういうと、最近この辺に出る魔王の話をした。僕と、クローバーは運ばれてくる料理をつまみながら、話半分で聞いていた。

一晩で店の酒を飲み干したとか、カミナリで勇者を圧倒したとか、どれもなんだか胡散臭い内容だ。

「普通の魔王なら、大したことないんですけど、その魔王を封印できたら、報酬もそれなりに期待できるらしいですよ。」

「お前その話、全部信じてるのか?」

「まさか、そんなわけないですよ。」

クローバーの問いかけに、もふはおかしそうに笑った。

「魔王についての噂はどれも眉唾ものですね。でも、報酬については、本当みたいです。実際に連邦の兵士が、その魔王を追ってるみたいですし。」

クローバーが「どう思う?」というように、僕の方をチラリと見てくる。僕は肩をすくめることしか出来ない。

僕らが把握している魔王は3人。

地下工場を縄張りにしていたトッポ。この魔王は、先日公国の桜の木の力で封印し、今は公国の宝物庫の中で眠っている。

もう1人は炎の洞窟で僕らが封印を解いてしまったアスタナ。この魔王は1週間ほど前、この城塞都市に出現し、クローバーが討伐したばかりだ。

残る魔王は、人畜無害な魔王、マイカ。僕らは魔王ちゃんと呼んでいて、クローバーの大事な友人だった。

「その封印されそうになってる魔王って、魔王ちゃんのことなんじゃ……。」

「姉御何か知ってるの?」

にも詰め寄られ、クローバーは困った顔を返す。

「魔王ちゃん、もといマイカさんは、クロの友人の1人なんです。」

クローバーの代わりに、僕がにもに説明する。

「そうなんですか?それなら、この状況はあまり良くないかもしれませんね。」

「こんなにたくさんの人がその魔王を狙ってるんだもん!お友達が危ないよ!」

にもも、もふも、クローバーが魔王と友人同士ということに、特段の驚きを見せなかった。

こういうところが、ボンド『シルフィード』の良いところだ。そのメンバーである彼らは、肩書きや属性で、人を安易に判断したり、差別したりしない。

「お友達に知らせてあげたら?逃げた方がいいって。」

にもの提案に、クローバーは

「でも……」

と、言い淀む。そうしたいのは山々だが、そうすれば、魔王封印の報酬目当てできた、にもともふの邪魔をすることになってしまう。

「にもさんたちは、それでいいんですか?」

僕がそう尋ねると、2人は顔を見合わせ、笑い合った。

「俺らには、絶対に魔王を封印したいなんて強い気持ちはまったくないですよ。」

「そうそう、ただなんとなく、みんな集まってて楽しそうだなぁ!って思ってきただけだし。」

そう笑う2人を見て、僕もクローバーもほっと息をつく。利害関係がなければ、気を使う必要も無い。

「お友達を助けてあげて。」

にもにそう言われたクローバーは、決意を込めた表情で「うん」とうなずいた。

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