荒廃した地表にて、二つの人影があった。
『いくのか?』
何かの人影が目の前の人影に話しかける。
『……あぁ……』
答えた人影に話しかけた人影はどこか寂しそうな様子を見せる。
『もうしばらく、ここに居てもバチは当たらないと思うが?』
『それでも……充分だよ……』
残ることを勧めようとする人影に別の人影は首を横に振り、上を見上げる。
『多くの喜びに笑った。多くの怒りに憤慨した。多くの哀しみに泣いた。多くの楽しみを味わった。人々の織り成す輝きを私は感じることができた……本来なら、不可能だったがこの偶然に感謝しよう』
そう答えた人影に残ることを勧めた人影は意思の強さを理解し、諦める。
『……寂しくなるな……一つ、約束してくれるか?』
ボソリ、そう呟いた人影は去ろうとする人影に何かを提案してきた。
『――、――』
提案した人影にキョトンとした人影……その言葉に驚いたのだろう。
『……また無茶な約束だなぁ……』
『それでも、できると思う』
『それは私だから?』
『……いや……』
ため息をつくような動作で言うと、提案した人影は頬を掻くような動作を見せ、少しの沈黙の後に答えた。
『……友だからさ』
その様子に人影は口角を上げて笑った。
『フフフ、そうだとおもしろいなぁ』
『あぁ、笑うといい。別れ際に暗い顔など不安をばらまくだけだ』
影が崩れ始める。恐らく別れの時が近付いたのだろう……しかし、二つの――二人の影に寂しさは感じられなかった。笑いながら、お互いに別れを告げる。
『さらばだ友よ。また会う日まで』
『げんきで友よ。縁が重なるまで』
その言葉と共に浮上する感覚と共に一人の影はもう一人の影を残して消えていった。
~―(○■☆■○)―~
「……んぁ……?」
寝ぼけた声と共に褐色の肌にクリーム色のゆるふわヘア。腰にはガンホルダーが巻かれ、アラビアンなランプが収納されており、民族衣装にありそうなポンチョを着ている男性――ロマン・ライエルスが目を覚ました。ガタゴトとリズムがよい揺れる音が響く電車の車内で周りを見渡す。
「寝てたのか……」
実家を離れ、大学に行くことを決めた日の出来事を思い出し、買っておいた飲み物を喉に流し込む。温くなった飲み物が渇きを潤す。
『ご乗車ぁ~ありがとうございま~す。まもなく~セイレム、セイレム、お荷物を忘れぬよう、よろしくお願い致します』
「……着いたか」
目的地が近付いた事を示すアナウンスが車内に流れ、ロマンは多くはないが軽くはない荷物を持って降りる準備をする。
電車を降り、改札口を通ると広場にいた金色の短髪で筋肉質のガタイ良い身体の肌が浅黒い男性――ダビ・ライエルスがロマンに手を振っていた。
「おー、やっと来たか」
「どうも、おじさん」
「大きくなったな、10年ぶりか?」
「それくらいになりますね」
「ロマン、これからは家族だから敬語なんてよせやい」
「……あ……はい、わかりました」
「ハハハハッ! わかってねぇよ!」
笑いながらロマンの頭を乱暴だがどこか優しく頭をなでるダビに恥ずかしさから少し赤くなるロマン。
再会の喜びを味わった二人は車に乗って、移動した。窓から見る景色にロマンは夢中になっており、その様子にダビは微笑んだ。
「ようこそ、ここが俺の家であり、お前の住む家……学生寮『ラビリス』だ」
十分後、ベージュ色の大きな明るい建物――ラビリスに辿り着いたロマンは車から降り、その学生寮を見上げた。
「……ラビリス……」
「立派なモンだろ。俺は車を置いてくるからそこら辺でも見てて、待っててくれ」
そう言って車を走らせて格納しに行ったダビを見送っていると不意に暗くなった。夜にはまだ早いと思って上を見上げると黄色く発光する目を開けた大きな人形の岩がこちらを見ていた。
「うぉっ!?」
「何してるの? 行くよゴーレム」
男性の声に反応して大きな岩の人形――ゴーレムが男性の後をゆっくりと追いながら荷物を運んだり、ハーピーのような鳥人が配達物を手渡し、ストローハットのようなモノを被った男性が小枝ぐらいの大きさの杖から火を放って焼き鳥を焼き、ガテン系と形容する女性が壁に描いた何かの陣に手を合わせるように叩いて両手を壁につけた瞬間、紫電が走って扉を造り出した。
「……すげぇ……」
「おーいロマン何処に行った〜? 先に中に入ってるからなー」
「今行きまーす」
此れから新しい生活が始まるのか、どんな思い出を創るのか、これから始まる自分の人生に胸を弾ませながらロマンは玄関の扉を開いた―――
さ~て、次回は…………
変 態 祭 り !!