召喚士とステキな世界   作:ハレル家

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第ニ話:大学デビュー

□□□

□学生寮【ラビリス】裏手

 

「これが魔導タンクか」

 

 あの後、この学生寮の裏手にある魔導タンクをライエルスは見に行った。自身の腰ぐらいの大きさの紫色のタンクが数個並んでいるのを目にした。

 

「ほいほい、ちょっと避けてくれ」

 

 後ろから大型の台車を押しながらラングルトが現れた……今度は服を着ている。

 

「…………」

「ん? なんだ?」

 

 ライエルスの視線に気付いたラングルトが疑問を投げる。

 

「いや、きちんと服を着るんだなって思って」

「おかしな事を言うヤツだな。全裸で人前に出たら変態だろう?」

「残念です、初対面の先輩じゃなかったらブン殴ってました」

 

 本気で言ってるラングルトに皮肉を込めてライエルスは言うも目の前の金髪には疑問符を浮かべるだけで効果は薄かった。

 

「その台車にタンクを乗せれば良いんですね?」

「手伝ってくれるのか? すまないな」

「いえ、良いんですよ別に」

 

 アイテムショップの場所を覚える必要があると判断したライエルスはラングルトの手伝いを申し出た。

 道中、ラングルトがライエルスに話しかけてきた。

 

「今更だが自己紹介な。俺はオロチ・ラングルト、コルデアユニバの3年で召喚士だ」

「あ、同じ召喚士なんですね」

「そうなのか?」

「はい……ロマン・ライエルス、今年からコルデアユニバーシティに入学します。同じ召喚士としてよろしくお願いします」

 

 意外にも目の前にいたラングルトが同じ召喚士だったことに驚くライエルス。その事を聞いたラングルトは嬉しそうな表情を見せる。

 

「そうか、同じ召喚士の後輩が入るのは嬉しいな……召喚に興味は?」

「あるっちゃあ有りますよ……無名ですけど、そういう家系なので少なからず憧れを持ってました」

 

 ……実際、嘘じゃない。オレ自身も幼い頃に憧れて、召喚士になりたくて努力は人一倍にしてきた自負もある……

 

「ほー、なら決まりだな」

「でも、やる気はありません」

 

 ……だが……報われるとは限らない。

 ライエルスの否定的な言葉にラングルトは首をかしげた。

 

「なんでだ?」

「いや……その……オレ、召喚物の制御ができないっだぁ!?」

「ははは! お前さては国語が苦手だろ!」

 

 理由を話そうとした瞬間に察したラングルトに背中を力強く叩かれた。全裸だった時に筋肉質な身体をしていたラングルトの筋力にライエルスは前のめりに倒れかけるがなんとか踏ん張る。

 

「な、なんですか急に?」

「いやいや、だってなぁ……『やりたい』か『やりたくない』かを聞いてるのに『できる』『できない』で返事をするなんて文法がおかしいだろ」

「いや!でも本当に制御ができなくて」

「そんなもんは後からどうにでもなる事だろ」

「どうにでもってそんな簡単に……」

 

 自身の悩みをまるで『からあげか天ぷらのどっちか迷ってる? 両方食えばいいだろ』みたいに言うラングルトに戸惑うライエルス。その様子にラングルトは軽く笑いながら答えた。

 

「最初から出来るものだけ選んでたら何も始まらない、大事なのはお前が興味を持ってるかどうかだろ?」

 

 その表情にどこかデジャヴを感じたライエルスはしばらく無言になる。やがて、アイテムショップまで十数歩になって口を開いた。

 

「……そんなモンですかね」

「あぁ、世の中そんなモンだろ」

 

 その短い会話を聞いた人物はいなかった。

 

□□□

□学生寮【ラビリス】

 

 アイテムショップや周囲の様子を見回ったライエルスは学生寮であるラビリスへと歩いていた。

 

 ……『最初から出来るものだけ選んでたら何も始まらない、大事なのはお前が興味を持ってるかどうかだろ?』

 

 今日の昼に言われたあの言葉がライエルスの頭の中を駆け回っていた。今までなかった反応に驚いた結果なのだろうと自己完結する。

 扉の前に立ち、建物を見上げる。夕陽でオレンジに染め上がった学生寮にライエルスはしばらく見た後に扉に手をかけて中へと入っていった。

 

「あ、戻ってきたか」

「お疲れベアー、ロマン」

「街の地理は理解したか?」

 

 そこには、普通の服装に着替えたエメラルダといつも通りの熊の姿であるシューリング、全裸のラングルトがいた。

 

 ……やっぱり脱いでたか

 

「とりあえず、服を着て下さい」

「さあ、今からお前のちょっとした歓迎会だベア! ちょうど喉も渇いてると思うからたっぷり飲んでくれベア」

 

 ライエルスの言葉をスルーし、笑顔でシューリングは手に持ってた大量のアルコール飲料を広げて酒を勧めてきた。

 

「いいから服を着て下さいよ! ちょっ、今飲むっていいま――!?」

「それ以上は言うなロマン!」

 

 ライエルスが異議を唱えようとしたら、ラングルトがその言葉を両断した。

 

「へっ?」

「俺はお前の答を聞いてないしお前もその答を言っていない……それで皆が幸せになれる。わかるな?」

 

 両手でハートマークを作りながら優しくライエルスに話しかけるラングルト。

 ……イヤイヤイヤ良くねーだろ!? なんだその無茶苦茶な答え!!

 

「いやいや、俺はのまな――」

「言わせるものかぁ!!」

「――フグゥッ!? ゲホッゲホッ、どーするんですか思いっきり飲んじゃいましたよ!?」

 

 ラングルトは酒を飲まないと言おうとしたライエルスの口にお酒を入れることで防いだ。

 

「ちょっといいかな後輩くん。いや、ロマン」

「なんですかッ」

「聞いていると君は目の前の事に対してあまり踏み込まない節があるように見える……自分の領分で出来る事と出来ない事を分けるかのように……」

「ぐ……べ、別にそんな事は……」

 

 冷静に的確にライエルスの考えを読んだエメラルダの考察に図星を当てられ、何とか誤魔化そうとライエルスは目線を背ける。

 

「あるだろうベア? 現に飲みたくない、酔いたくないから避けようとしているベア」

「それは良くないなロマン。時には無謀が活路を切り開く事があるんだ。それなのに全裸で公道を走るのは良くないなどと――」

「それはこっちが正しくないですか!? ともかく! オレは先輩がたみたいなノリには絶対に染まりませんから!!」

 

 シューリングとラングルトの説得を断固拒否する姿勢をライエルスは見せ、そのまま歓迎会という名の飲み会が始まった。

 

 

 

   〜〜それから、どうした〜~

 

 

 

 

「だっしゃあ――――っ! ナンボのもんじゃい!!」

「ヒューッ! やるじゃねぇかロマン!」

 

 そこには、両手に空のビールジョッキを持って身体を大きく伸ばして背ける――イナバウアーの体勢で雄叫びをあげるロマンがいた。

 なお、彼が荒ぶったのは始まってから五分である……即落ちにも程がある。

 

「お? もうこんな時間かベア」

「仕方ない……三時間追加で飲み会続けるか」

「オズさんは遠慮するよ。明日から作業しなきゃいけないし」

 

 いつの間にか深夜を示している事を気付き、一部の人物が部屋に戻ろうと移動を始める。

 

「んじゃ、俺はこれ――」

「おいおい、まだ始まったばっかだゾ」

 

 なお、どさくさに紛れて逃げようとするロマンをラングルトは捕まえ、逃げれないように取り押さえる。

 

「いやいやいや! 俺も明日が初日のガイダンスですから! 朝九時の講堂に間に合わないと困りますから!」

「なに大丈夫だ。まかせておくベア」

「絶対に遅刻しないようにしてやる」

「は? はぁ……」

 

 予定を言うと謎の自信満々な様子で答えるシューリングとラングルトにライエルスは疑問符を浮かべながら、飲み会に強制参加された。

 

□□□

□???

 

「……う……ん?」

 

 翌日、春なのに少しだけ肌寒さを感じる季節だが、ライエルスは飲み過ぎによる頭痛に頭を悩ませながら起きた。

 

「……んん……いっ!? くっそ頭が痛い……あんな飲み会に付き合ったせいだと……今、何時だ……?」

 

 時間が気になったライエルスは腕時計を確認する……八時五十ニ分を示し、眠気が吹き飛んだ。

 

「げぇっ!? 遅刻寸前じゃん! 何が『絶対に遅刻しない』だ――」

 

 不意に周りの視線が気になったライエルスが目を向けると、大勢の新入生がスマホを片手にカメラ機能で写真や動画をとっていた。

 

「…………」

 

 後ろを振り向くと、講堂があった。つまり、自分は先輩達と一緒に講堂前で酒盛りしていたことになる。

 

「な? これなら絶対に遅刻しないだろ?」

「アンタはバカかぁぁぁ――っ!!」

 

 良い笑顔でサムアップするラングルトにライエルスは心からの罵倒を大声で言い放った。

 

「なぜだ。むしろ柔軟な発想力だろうベア」

「どこがですか! よりにもよって初日にこんな……」

 

 全くわからない表情で答えるシューリングに説教を始めようとするライエルス……その様子にラングルトが待ったをかけた。

 

「ロマン、そんな事を言ってると遅刻するぞ?」

「これはお前のカバンと服だベア。ガイダンスが終わったらすぐに着替えるベア……早く行かないと遅刻するベア」

「ああああ! チクショー!! この恨み、忘れませんからね!!」

 

 シューリングに差し出された紙袋を引ったくり、ライエルス駆け足で講堂に向かった。

 

「……これで間に合うな」

「うむ……ん?」

 

 ライエルスの後ろ姿を見送ったラングルトとシューリングは帰ろうとするが、シューリングが何かに気付いた。

 

「どうした?」

「いかんな……オレとした事が間違った荷物を渡してしまったベア」

 

 ラングルトの質問にシューリングは自身の身体の大きさに隠れていた紙袋を見せた。中には財布と着替えがあった。

 

「……なんとかなるだろ」

「そうベア」

 

 深く考える事をやめた二人は、そのまま自分達の学生寮に帰っていった。

 

□□□

□コルデアユニバーシティ 講堂

 

『おい、アイツ凄い猛者らしいぞ』

『あぁ、初日の朝から講堂前で酒盛りしてたらしいな』

『すげぇな……』

『どんな思考回路をしてんだよ……』

 

 パンイチ姿のライエルスは後ろから聞こえるヒソヒソ声に羞恥心で震えながらも耐えていた。

 

 ……シバく……あの先輩どもを絶対にシバき倒す!!

 

 そう考え、元凶である二人に復讐心を燃やしていた。

 

「…………」

 

 その様子を呆れた目で見ていた人物がいた。

 





『オマケ』

「あー、めんどくさ。おはようさん。そして初めまして、早速だがこれからガイダンスを――」
「…………」(パンイチ姿)
「――ガイダンスを始めるぞー」
『『『!?』』』

 始まりはこのぐらい、次回から少しだけ遅くなります。
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