召喚士とステキな世界   作:ハレル家

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 今回から投稿してくださったキャラをどんどん出すつもりです! 今回はジャブみたいにいきますが……


第三話:悪友と新友の出会い

 

□□□

□コルデア|UC(ユニバーシティ) 教室

 

 ……オレはロマン・ライエルス……男子高校を卒業し、この春からコルデアユニバーシティという大学に入学した。親元を離れて暮らす未知の領域、希望に満ちた新たな出会いと新たな生活は――

 

『あれが講堂の前で酔い潰れていたっていう……』

『パンイチとはすげぇ男だぜ……』

『初日からとんでもねぇ野郎だ』

 

 ――入学と同時に灰色に染め上げられていた。

 

 哀愁をただ寄せるもパンイチの姿なので伝わらず、周囲にはクレイジーな人物だと認識され、ライエルスはクラスから少しずつ孤立していた。

 

 ……ど……どうする? このままじゃ夢描いていた大学生活なんか……下手すればボッチ街道を特急列車で一直線だぞ!? どうすれば……

 

「やっぱりお前か」

 

 頭を抱えてこの状況を打破しようと考えていたライエルスに声をかける人物が現れた。どこか聞いたことある声に見上げると黒髪のショートシャギーに澄んだ蒼の瞳、173cmのごく平均的な体格で温厚で大人びた顔立ちをし、黒地のTシャツに少しゆったりめのジーンズを着ている青年がいた。

 

「ジンか!? ジンなのか!!」

「……はぁ……同姓同名で間違って欲しかったがやっぱりか……」

 

 黒髪のショートシャギーに澄んだ蒼の瞳の青年――ジン・アトラスハイズと知り、思わず席から立ちあがり、その反応にアトラスハイズはため息をこぼした。

 

「お前って昔から問題を引き起こすよな……高校だった時の『科学室爆発事件』以来か?」

「いや、『理事長のカツラオークション事件』だろ」

「おい待て、なんだその事件は……初めて聞いたぞ」

 

 ライエルスの口から聞き覚えのない事件にアトラスハイズは指摘する。

 

「ともかく、お前に聞きたい事があるんだ」

「……なんだ? 一応だが聞いてやる」

 

 呆れながらもアトラスハイズが耳を傾けると、ライエルスは言った。

 

「どうすれば周囲の評価を挽回できるんだ」

「あばよ、親友だったモノ」

「ワンモアチャンスプリーズ!!」

 

 きびすを返して去ろうとするアトラスハイズにライエルスは両肩を掴んで止めた。

 

「腐れ縁の親友だよなオレ達!? オレの困り事はお前の困り事! お前の服はオレの服! そういう助け合い関係だろ!?」

「クマノミとイソギンチャクの関係を見習ってこい……諦めろ。流石に無理だ」

 

 どこかのガキ大将みたいな理論を言うライエルスに首を横に振って無理だと伝えるアトラスハイズ。

 

「せめて、今の服装をどうにかしろ」

「あ、そういや先輩から服を渡されたんだった」

「早く気付けよ……さっさと着替えてこい」

 

 服装を指摘され、先輩から渡された事を思い出したライエルスはすぐに袋を片手に教室から出る。その様子にやっとマシになるという安心感となぜ気づかなかったという呆れにアトラスハイズため息が出そうになった。

 

『あの摩訶不思議ド畜生がァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 瞬間、教室の窓が震えるほどの大声が校舎全体に響いた。予想外の出来事に固まる教室の生徒達、しばらくしてライエルスが教室に戻ってきてアトラスハイズの肩を掴む。

 パンイチの姿は変わっていない。

 

「……ジン……」

「な、なんだよ」

 

 パンイチの姿なのにどこか真剣な表情のライエルスに戸惑うアトラスハイズ。やがて、ライエルスが重い口を開いた。

 

「着ている物を脱いでくれ」

 

 ライエルスの顔面にアトラスハイズの鉄拳が炸裂したのは、言うまでもなかった。

 

□□□

□コルデアUC 召喚室

 

 コルデアユニバーシティでは学園内で召喚物による事故や事件等が起こった時に対処できるよう、登録が行われる。同時にデータも取られるので召喚士を目指す人物は学園内で召喚できる仮免許を発行して貰える。

 

「殴る事ないだろ」

「黙れ。警察に突き出した方が早いか?」

 

 右頬が赤く腫れ、パンイチからジャージ姿に着替えたライエルスにアトラスハイズは少し怒りながら質問する……前述のような発言をされたら誰だって殴るのだが、ライエルスは気付いておらず、首を傾げる。

 

「番号0421番の人、どうぞ」

「行ってくるから、騒ぎを起こすなよ」

 

 ライエルスに釘を指したアトラスハイズはそのまま指定された召喚室に移動した。

 

 ……さて、どうするか……幸いにも紙袋の中には上下セットのジャージが入っていた……余計なモノもあったが……

 

 アトラスハイズが去った後にライエルスはクラスメイトと交流を深めようと考える。

 

 ……本来ならクラスメイトと他愛ないコミュニケーションを取りたいんだが……

 

 ここに来るまでの光景をライエルスは思い出す。

 

『なぁ、少しいいか?』

『いやぁぁ変態なのだ!!』

 

 銀髪のショートボブに赤の瞳で褐色肌の子どもの様な容姿の女性はライエルスを見た瞬間に悲鳴を上げながら離れていった。

 

「…………」

 

 子供のような姿だが自身と同年代だと知っているが、精神的なダメージは高く、周りにも声をかけるも先程と同じような反応をされてさめざめと涙を流し始める。

 

「ね、ねぇ……」

 

 『このままボッチになるのか』と考えていたライエルスだが、声が聞こえ、俯いていた顔を上げる。

 

「少し、いいかな?」

 

 そこには、背まである紫色のロングヘアをツーサイドアップにして白い星のヘアピンで止め、瞳の色は金色で女性の中では大きめの容姿に紺色のとんがり帽子と星の模様がある魔女の服装をした女性がこちらを心配そうに見ていた。

 

「……………」

「……あ、あの……」

「…………ッ!!」

「えぇ!?」

 

 しばらく固まって反応しないライエルスを心配する魔女の服装をした女性だが、急にライエルスが静かに泣き出して驚いた。

 

「だ、大丈夫?」

「……ぐす……大丈夫だ……人の優しさって温かい……」

 

 彼女は知らないが、ライエルスが声をかけて拒絶させられてばかりで心身まいっていた時に優しく声をかけられ、泣いてしまった事は知らなくていいことなのだろう。

 

「……すまない……ズズ……オレはロマン・ライエルス。よろしくな」

「私はフィル・カシオペヤ、出番が来るまで……話し相手になってくれないかな……って……」

 

 魔女の服装をした女性――フィル・カシオペヤは少し遠慮している様子でライエルスにお願いする。

 

「別にオレじゃなくても、同性のヤツじゃダメなのか? 話しやすいし……何より心配されるぞ」

「その、他の子にも声をかけたけどピリピリしてて……君は他の子に比べて話しやすかったからかな……?」

 

 照れているのか恥ずかしがっているのか頬を指で軽く掻く仕草を見せるカシオペヤ。

 

「ど、どうしたの?」

「何でもない……目頭が熱くなっただけだ。座ったらどうだ?」

「それじゃあ、失礼しますね」

 

 その様子と優しさに泣きそうになるライエルスはこらえ、カシオペヤに心配させないように座るように促す。

 

「…………」

「…………」

 

 座るまでは良かったが、沈黙。その言葉しかなかった。

 

 ……気まずい……他のクラスにいる召喚士のヤツらもピリピリしてるし……会話がない……

 

 コミュ力は低くないライエルスだが、男子校だった為に女性と何を話せばいいのか、わからなくなっていた。さらに言えば、目の前のカシオペヤは控えめに言っても美女の部類にはいる容姿をしており、彼の中にあるヘタレが思考を妨げていた。

 

「そ、そうだ! ちょっと召喚をみてくれるかな!?」

「おう!? いいぜ!」

 

 空気に耐えられずカシオペヤが星のマークが掘られている魔導書を手に取り、召喚を行う。

 

「来て、レオ!」

 

 召喚陣が輝き、魔力が渦巻いて陣から彼女の召喚物が現れ――

 

「ニャオ!」

「きゃあ!」

「ッ!?」

 

 ――ると思いきや、茶色い毛並でライオンのようなたてがみが少しある猫がカシオペヤの胸の谷間から顔を出した。

 

「……そいつは?」

「この子はレオです。よしよし」

 

 ライエルスが引きつった笑みで猫に指で示すとカシオペヤはたてがみが少しある猫――レオを可愛がり始める。しかし、ライエルスは言いたいのはそこではない。別に動物は嫌いじゃないのだが……カシオペヤに見えない角度でレオはライエルスを見ている。

 

「ニニャリ」

 

 男をあざ笑うような顔でだ。まるで『羨ましかろう?』と言わんばかりの表情で見るレオにライエルスはこらえる。

 

 ……落ち着けオレ……ここで手を出せばまた孤立してしまう……たかが猫だろう……年齢的に母性に飢えているだけなんだ……大人の対応で応えるんだ……

 

「か"わ"い"い"な"ぁ"……ッ!!」

「あ、あの、大丈夫ですか? 目から赤い涙が流れてますけど……」

「ニャオォ……」

 

 心は冷静だったが、本能までは落ち着けなかった……血涙を流すライエルスを心配するカシオペヤとまさかの反応に呆れるレオ。

 

「……一つ聞いていいですか……」

「なんだ?」

 

 血涙を着ているジャージの裾で拭くライエルスにカシオペヤはどこか悲しそうな顔を見せながら、話しかけた。

 

「……私の召喚物ってなぜか『マスコット並みに小さかったり』、『知能が赤ん坊レベル』だったりと性能に問題があるんだ……いつも失敗ばかりで……召喚士向いてないんかな……」

「……ニャア……」

 

 冗談ではなく、本気で言っているカシオペヤにライエルスは少し無言になる……しばらく二人の間に重い空気が流れるが、ライエルスは口を開いた。

 

「……オレが一番最初に召喚したのは、どこか変な教師だった」

 

 ライエルスの言葉にカシオペヤは首をかしげながらも耳を傾ける。

 

「すごいモノを召喚したくて一生懸命頑張ったのに……召喚されたのは強くもなくて、魔力を大きく消費するモノだった……周りのやつらは強そうだったり、カッコ良かったりが多くて……つい、『お前を召喚しなければ良かった』って言っちまったんだ」

 

 その言葉に、カシオペヤとレオは固まる。

 

「……本当なら、召喚されたくて召喚されたワケじゃないのに自分勝手に言った……キレられて当然だった。下手すれば最悪な事だって起こる……だけど――」

 

『……ごめんねご主人』

 

「――……謝ったんだ……怒って当然なのに……困惑していたオレにそいつは続けて言った」

 

『私達はワケあって(・・・・・)弱い姿なんです……ご主人は周囲の目を気にしてたんですよね……でも、これだけは覚えて欲しい。私達は、少なくとも私はご主人に救われました』

『周りも暗く、その先も暗く、夢も希望もなく、光なんて一切ない空間で何年も何十年、何百年もずっと孤独だった私をあなたは引き寄せてくれた。召喚されて目に映る光ある光景を見せてくれた……それだけで私はあなたに尽くせます』

『ですから、どうか腐らないでください。あなたが私達を信じて諦めない限り、私達もあなたを信じて諦めません……ですから、泣かないでくださいご主人。好きな事に対して正直な光あるあなたが、私達は大好きなんですから』

 

 その言葉を懐かしむかのように語るライエルスをカシオペヤは呆然と見ていた。目の前の人物は詳しく知らないが、まるで違う人物が途中から変わったように思えた。語り終えたライエルスがカシオペヤに目を向ける。 

 

「……そのレオってニャン公も、お前の力になりたいから呼ばれたんだろ……だったら、オレ達が信じなきゃ、バカにされた時にそいつは誰を信じれば良いんだよ?」

「……あ……」

 

 その言葉にカシオペヤは少しだけ思い出した。自身が初めて召喚し、レオを可愛がり、苦しい時も悲しい時も慰め、側にいてくれた事を思い出した。

 

「……ニャゴ」

「……ごめんね……ありがとう」

 

 カシオペヤを気にかけるレオを平気だと伝えるかのように頭を優しく撫でる。

 

「番号0678番の人。どうぞ来てください」

「呼ばれたから、行くね……ありがとう」

「休みの日に学生寮ラビリスに来いよ。召喚士の先輩がいるから、コツを教えてもらおうぜ」

 

 再会を約束して手を振るライエルスにカシオペヤは手を振り返して召喚室へと向かった。すれ違いにアトラスハイズが帰ってきた。

 

「おうロマン。何もなかったようだな」

「フッフッフッ……ジンよ」

 

 何も起こさなかったライエルスにホッとするアトラスハイズだが、ライエルスが怪しく笑い始める。

 

「ど、どうした」

「お前が向こうでやっている間に……オレは友人ができたぜ」

 

 サムアップして起こった事を言うライエルス。だが、アトラスハイズは妙に生暖かい目を向けて、ライエルスに優しく話しかけた。

 

「……イマジナリーフレンドは含まれないんだぞ」

「パンイチにしてやろうか?」

 

 アトラスハイズの言葉にライエルスがキレたのは余談である。





 さ~て、次回は……一言で……

 乱・闘・騒・ぎ!!
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