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□コルデアUC 進路指導室
「失礼しました」
コルデアユニバーシティの進路指導室。その部屋から一人の男――ライエルスが退出した。
「……たく、ひどい目にあった。望んでスク水を着たわけじゃないのに……Tシャツを貸してくれたのはすごくありがたいけど……」
悪態をつきながらもスク水からTシャツと半ズボン姿になったライエルスは表情に疲労の色を見せながら教室へと歩いている。
余談だが、警備員がライエルスに行った事情聴取は要約すると以下のようなものであったらしい。
『貴方が騒動の主犯ですか?』
『YES』
『なぜこんなことを?』
『むしゃくしゃしてやった。反省はしている』
『そうですか。ところで他の生徒達から動画や証言を頂いており、初犯である所から罰を軽減しようと考えております。今日中に反省文を5㎝以上書くか、貴方の保護者に今回の件を伝えて実家で謹慎処分とするべきか、どちらを選びますか?』
『…………今すぐに反省文をください! 裁判長!』
『警備員です』
結局、警備員とあの騒動を知る教師や生徒の証言や動画の提供で罰は軽くなったが、薄い反省用紙に水増しながら格闘して退出許可をもらった時にはすでに夜の6時半を越えていた。
「……コールディア、フロー」
「ゲロ」
誰もいない廊下に小さく呟いたライエルスは召喚物であるフローを召喚する。フローはライエルスを見た瞬間に跳び、彼の顔を長い舌で舐める。
「舐めるな舐めるな、頭の上に乗って良いから舐めるな」
「ゲロ」
ライエルスから注意を受け、フローは一先ず舐めるのを辞めて彼の頭に乗る。大きさは自在に変えられ、手乗りサイズまで小さくなったが重さは変わらず、ライエルスの頭に相応の重さがのしかかるも気にしない様子をみせる。
「どうせ、帰り道は一人だからな……気晴らしに歌ってくれよ」
「ゲロ……ゲッ、ゲッ、ゲッゲッゲッゲッゲー」
「それはある意味危ないから他ので頼む」
誰もいない廊下や教室をカエルの鳴き声による歌が響く。少し寂しそうな表情をみせるライエルスだが、ふと、校門に誰かの人影を見つける。
「遅かったな」
人影の正体はアトラスハイズだった。高校でも変わらなかったなと、内心思いながらライエルスは答えた。
「初犯だから説教で済んだんだ」
「俺、お前が犯罪者にならないか心配だわ」
「余計なお世話だ」
「お前らもそう思わないか?」
アトラスハイズが後ろに声をかけるような形でいう様子に疑問を浮かべるライエルス。すると隠れていた人物が現れた。
「やっと来たか……待ちくたびれたぞ」
「長かったですね」
「さっさと来いって」
「まぁまぁ、ここは一旦水に流そう」
隠れていた人物はカシオペヤと召喚室で共に戦った三人だった。まさかの人物にライエルスは目を点にする。
「……待ってたのか?」
「急ぎの用はないし、一日ぐらい待ってても別にいいだろ」
「そうそう、それに待っている間にフィーが見せてくれた手品は上手くて良かったしよ!」
「え、えっと、褒められる程の腕前じゃないですけど……」
「謙遜する必要はないよ! とても楽しめる腕前だよ!」
ライエルスの疑問に赤いつり目の少年が答えると各々が次々に話す。その様子に呆然としていると頬を軽く叩かれる感覚と共に意識を戻した。
「ゲコ」
フローがこちらを見ていた。表情は変わらないが、目は心配していた事を察したライエルスはフローの頭を優しく撫でる。
「……行こうか、フロー」
「ゲコ」
なでると目を閉じて気持ち良さそうな様子を見せるフローに少しだけ笑いながらも、ライエルスはアトラスハイズ達と帰路に着いて歩き始める。
「そのカエルもお前の召喚物か? どんな変態なんだ?」
「なんでも変態で認識するな。能力を除けばこいつは珍しく普通だ」
「腹へったし、どっか食べないか?」
「……食べれる場所ってあったかな……?」
「そういや、ラビリスっていう学生寮知らないかな? 場所がわかんなくて……」
「それについては頼みがある……オレが住んでいるラビリスまで連れてってくれ」
「普通逆じゃねぇの!?」
「あ、そういや紹介してなかったな……ロマン・ライエルス。一応召喚士だ」
「フィル・カシオペヤです。召喚士でフィーと呼んでください」
「ジン・アトラスハイズ。召喚士でロマンとは腐れ縁の悪友だ」
「宗形 暁。召喚士で一年間、宜しく頼む」
「ズミ・ザブンブルグ。水の召喚士だ」
「ライカ・アーヴァイン。召喚士でちょっとした地域じゃ
赤目の少年であり、鬼武者の召喚士――
青いメッシュの青年であり、水の召喚士――ズミ・ザブンブルグ。
銀髪セミロングの両目隠れ、頬に"機"の一文字が彫られたタトゥーの少女であり、鉄人の召喚士――ライカ・アーヴァイン。
新たにできた仲間に人知れず微笑むライエルスだった。
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□学生寮ラビリス
「“
「“乾杯”と読む!」
「せーの、カンパァァァイィィィ!!」
熊と全裸――シューリングとラングルトがビール缶片手に飲んでいた。
空いていたラーメン屋で夕食を済ました六人はスマホの地図を利用して学生寮まで帰ってきたのだが、予想だにしない目の前の光景と人物に固まっていた。
「……待て待て、なんで酔っ払ってんだこの人達。アルコールの匂いがこっちにきてんぞ……てか、熊がいるのはツッコミをするべきか?」
「まだ夜の20時だよな?」
「酔い具合から結構前から始めていたようだね……」
「……なるほど……」
意識を戻した宗形はアルコールの匂いに引き、アトラスハイズは時間を確認し、ザブンブルグは酒を飲んだ時間を現時刻から逆算する。そして、一つの答えに宗形と他の二人は辿り着いた。
「「「「つまり類友か」」」」
「そんな訳あるか、全員こっち見るな」
意図せず重なった言葉と視線に否定するライエルス。アーヴァインもこちらを見るがカシオペヤがいないことに気付くも、この光景が見たくないから外にいるのだろうとライエルスは判断する。
「ただいまおじさん。
管理人である叔父を呼ぼうとした瞬間に太く強靭に鍛えられた四本の腕に身体を掴まられた。
「うぇるかぁぁむぅぅ~……」
「待ってたベァァ~……」
まるで奈落の底から現れたゴーストのような声に固まるライエルスだが、二人はライエルスを持ち上げ、走り出した。
「主役が帰ってきたぞぉー!!」
「宴の仕切り直しベアー!!」
酔ったテンションなのか高めに声を上げて去る二人に、他の五人は呆然としていた。
「……熊につれていかれたな」
「あと、全裸にもつれていかれた」
去った後を眺める宗形とアトラスハイズ。すると、寮長であるダビが姿を現した。
「おぉ、君達か! おかえりなさい。荷物は届いてるから、今日はゆっくり休むといいよ」
「あの、すみません……ロマンが連れていかれたんですが……熊と全裸に引きずられて行かれたんですけど……」
アトラスハイズ達五人の姿にダビは部屋に荷物が届いてる伝を言うと、アトラスハイズが謎の熊と全裸にライエルスがさわられた事を伝える。
それを聞いたダビは頭に疑問符を浮かべながら答えた。
「……いつも通りだけど、どうかしたのかい?」
「なんてこった。想像以上の解答だった」
「……アイツよりも上の人物がいるわけないと思ってたら……世界は広いな……いや、この場合は狭いが正しいのか?」
「さぁ、ここで立ち話しないで部屋を案内するよ。先に女性側の部屋を案内して行くから男性陣は少し待っててね」
予想外な反応に戸惑う男性陣にダビは待つように言うと、先に女性メンバーであるアーヴァインとカシオペヤを女子寮のエリアに案内する。
「あの、ライエルスくんはどこに連れてかれたのですか?」
「ロマンかい? 恐らく自身の住んでる部屋だね」
「となると、男性側の部屋か?」
「違う違う、彼は男性側の部屋に住んでなくて……取り壊し予定だったけど上級生の飲み会場になっている離れに住んでいるよ」
行方が気になったカシオペヤとアーヴァインが質問すると、ダビは遠くの窓から見えるボロい離れを指差した。
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場所変わって、学生寮ラビリス離れ兼ロマンの部屋にライエルスを担いだシューリングとラングルトが入ると、三人の人影が待っていた。
「ただいまベアー!」
「件の新入生を連れてきたぜー!」
二人の声に三人の人影が担がれたライエルスを確認する。
「む、来たか!」
「なるほど、彼ですか……」
「……とりあえずパンツを着ろ」
緋色のセミロングだが、後部へ垂れたケモ耳の様な大きなクセ毛と、パイロットゴーグルが衆目を引く女性が二人に声を上げて。
細身の長身で、白い眼鏡をかけた長髪の美丈夫が担がれているライエルスに視線を向け。
銀髪のオールバックで両眼が黄色の瞳に筋肉質で身長が高い男性が座りながらラングルトに服を着るように注意する。
「えと、あなた達は……?」
「私は2年のシュメイヴと言う者だ! どうかよろしく!」
「私は……カインズ。カインズ・アルベルト……同じく2年です」
「3年のカルゴ・グリード……ラングルトが迷惑をかけてすまない」
ゴーグルの女性――シュメイヴ・バルドガングは声を高々に凛とした雰囲気を表し、白い眼鏡をかけた長髪の美丈夫――カインズ・アルベルトはメガネを軽く上げて挨拶し、筋肉質で身長が高い男性――カルゴ・グリードはラングルトの行動に謝罪した。
「他のメンバーも呼んだんだが……どうも集まりが悪いベア……」
「結局は召喚科のメンバーしか集まらなかった」
「すいません。下を履いてくれますか? 話が入ってこないです……」
変わらずにいつもの熊のキグルミ状態と全裸で会話する二人にライエルスはラングルトに下着を履くように伝える。
「早い話、貴方に祝杯をあげたくてあの二人は私達を呼んだのです」
「……祝杯?」
アルベルトはライエルスが呼ばれた理由を説明する。
「お前と他の三人が他クラスの連中と戦って勝った話をこっそり見ていた人達から聞いたんだ……初日に予想を越えた行動に喜んでいるらしい」
「……酒が飲める理由が欲しいだけなんじゃ……」
「否定はしない」
グリードの言葉に評価されてた事に内心だが少しだけ嬉しかったが、酒を飲むラングルトとシューリングの姿を見て、その嬉しさは消えていった。
「細かいことは無しにして飲むがいいライエルス一年! あの二人から期待の一年として話は聞いている!」
「……期待の一年?」
バルドガングの言葉にライエルスが首をかしげると、バルドガングは詳しく説明した。
「なにせ【パンイチ】と言う文字通りの裸一貫を通し、相手へも下着一丁を推薦しただけに止まらず、スク水で悪漢にトドメを刺したという―――時代をさかのぼりし勇士だと!!」
その言葉を聞いたライエルスは思考停止し、床に膝から崩れ落ちた。
「…………どうした? そんなこの世の終わりの様な顔をして?」
「それ以上傷口抉らないでやれ……」
「……スク水はオレのせいじゃない……オレのせいじゃない……」
崩れ落ちたライエルスを可笑しく思うバルドガングにグリードはストップをかけ、虚ろ目でブツブツと呟くライエルスにこれ以上追い打ちしないように注意する。
「しかし、オズも参加しないとはな……もうすぐ“五月祭”があるってのに……」
「……五月祭?」
ラングルトの口から出た言葉に反応し、ライエルスは意識を取り戻す。
「ここの地域だけのお祭りだ。ダビさんも屋台として参加するから、その手伝いに必要でな……大学も創立記念日でちょうど休みになるんだ」
「へぇ……そんなのがあるんですか……」
「大学もそれにノッて催しをしていますからね」
地域限定の祭りがある事を初めて知ったライエルス。アルベルトの言う催しに興味を持つとシューリングが酒を勧めた。
「さて、酒を飲もうベア」
「断固拒否します」
迷いなく言うライエルスに首をかしげるラングルト。
「む? なぜだ?」
「当たり前ですよ……『遅刻しない』という言葉を信じた結果が! 講堂前での酒盛りですよ!!」
「そんな事したのか!?」
ライエルスの言葉にグリードが驚くも二人は目を点にして首をかしげていた。
「我ながらナイスアイデアだと思ったのだが……」
「バッドアイデアですよ! とにかくオレは飲みません!」
「……スピリタスもあるんだぞ? 強炭酸コーラもあるんだぞ?」
「酔わせる気満々か!」
いやが上にも酒を勧めてくる二人とライエルスは頑なに拒否する姿勢を崩さない。
「むぅ……仕方ないベア。では、こうしよう……飲み比べで俺達に勝てたら――」
「何度も言いますけど、オレは――」
「――合コンをセッティングしてやるベア」
「――駄犬とお呼びください!!」
「掌を返すのはやっ!?」
即落ちと言っても過言じゃないスピードで土下座での服従を示したライエルスにグリードは驚いた。
「それでこそライエルスベア!!」
「かかって来てください! 逆に酔わせてやりますよ!!」
「その意気やよし! 私も参加してやろう!!」
「宴だァァァ!! レッツパーリィ!!」
「……ここに馴染んだ理由がわかった気がする」
「類友のようですね」
酒を片手に阿鼻叫喚の飲み会が始まり、その様子をグリードとアルベルトは呆れた様子で傍観に徹した。
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「……んがっふ?」
奇妙な声とともにライエルスは目が覚めた。いつの間にか眠っていた身体の上体を起こし、周囲を見渡すと片付けられた跡があり、いつの間にかパンイチになってた自身にタオルケットがかけられていた事に気付く。
「……痛っ!? ……そういや、先輩方と飲み比べで酔い潰れたんだっけ」
頭に突然襲いかかる頭痛で眠る前の記憶を思い出したライエルス。
「……外に出るか」
酒を飲んだ影響なのか身体が熱く、冷ます為に脱ぎ捨てたTシャツと半ズボンを着てから外に出た。草木も眠る丑三つ時だが、時おり吹く冷たい風が熱くなった自身を冷やし、その涼しさに思考が少しずつ回り始める。
「……」
不意に自身の召喚銃に視線を向けながら、ライエルスは今日の事をあわせて考え始めた。
……フローとアカリ……この一匹と一人だけは基本的に話を聞いてくれる……逆を言えば、残りは聞いてくれない問題児ばかりだ。
……特に最初に召喚したあの人物は中学時代からは全く召喚していない……召喚したら間違いなく……背筋が寒くなってきた……
謎の悪寒に襲われて震えるライエルス。すると、後ろに人の気配を感じた。
「そこにいるのは誰だっ!?」
素早く召喚銃を構え、いつでも迎撃できるようにする。暗闇から現れたのは、寝間着姿のカシオペヤだった。
「……なんだフィーか……」
「……目が覚めちゃって……ライエルスくんも?」
「同じようなものだ」
お互いが警戒していたが、自身の知る人物だと知って気が緩んだ。
「……なぁ……」
ライエルスがカシオペヤに一つの疑問を投げた。
「召喚士ってなんなんだろうな……」
その疑問にカシオペヤは疑問符を浮かべた。
「……それって、どういう意味?」
「
その疑問は今に始まったばかりではない……召喚士の存在意義については五本指に入るぐらい議論されていた。未知の存在へのコンタクト説、偉人に遭遇して正しい歴史への修正説、幻想生物を操る戦略兵器説、様々な憶測が飛ぶも未だに判明されず、なかば都市伝説に近くなっている。
冗談だと思ったカシオペヤだが、自信がなかった自分を励ました時と同じ真剣な目をしたライエルスを見て、冗談ではないと理解した。
「……『運命を変えるのは誰かではなく、自分の意思』」
カシオペヤからの言葉をライエルスは静かに耳を傾けた。
「……頭の中に残ってた言葉です。私はその言葉のような召喚士を目指しました……多分ですが、召喚士になる理由なんて色々だと思います」
「……お金の為だったり、好きな人の為だったり、家族の為だったり……みんな、決まった色で目指さないと思います」
「……多くの色があるから、大勢の召喚士がいるんだと、私は思います!」
その言葉に、ライエルスは不思議とピースがハマったような感覚になった。くしくもその感覚は二度目だった……そして一度目の事を思い出し、再び自身の答えを理解した。
「……なるほど……盲点だったな……確かに同じ理由で召喚士になるヤツなんてあまり見ないな」
そう言って思い浮かぶのは自身の身内である兄と妹だった。よく考えれば二人の召喚士を目指す理由がバラバラだった事も思い出し、意外に答えが身近にあったことに少し笑う。
「……ありがとうな。お陰で少し楽になった」
「いえ、他クラスの人物に私がバカにされた時に誰よりも怒ってくれたじゃないですか……こちらこそ、ありがとうございます」
ライエルスはカシオペヤに礼を言うと、カシオペヤもあの時の騒動について伝えられなかった感謝を笑って伝えた。
「……決めた! オレはこの大学で何を目指すべきかを見つける!」
「その域です! 頑張りましょう!!」
「よぅし、頑張るぞ!!」
夜遅くだが、再出発を決めた二人が深夜にやる気を燃やした。これを見ている人物がいたら、微笑むだろう光景である。
「「えい、えい、おー!!」」
瞬間、手に持ってたライエルスの召喚銃がボフン、という音とともに黒煙をあげた。
「……」
「……え?」
驚きながらも静かに視線を向けると黒煙をあげ、魔法陣が消え、本体のボディの至るところにヒビがはいり始めた。
「……」
「……」
召喚銃の異常にライエルスとカシオペヤはあまりの衝撃に固まり、沈黙する。静かにだが、自分達の顔を見合わせる。
「……えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
まさかの故障にライエルスは叫び声をあげてしまった。深夜に大声が響くも幸運にも、その叫び声で誰も起きなかった。
諸事情により、次回から新連載『魔法少女えぐぜ∀ななか』スタート!!
ウソです(笑)