ゆきひらに帰り咲く。   作:洛南

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一食「新しい道」

二年生に上がる為の進級試験で葉山アキラと熊肉のお題で2対1で勝利し秋の選抜の雪辱を果たした幸平創真は、葉山アキラのいる待機室に向かっていた。

 

今回の勝負で葉山に勝ちはしたが葉山の頭の中に、幸平創真はいなかった。それどころか対決中にも関わらず他のことを考えていた葉山に2対1とギリギリだった。幸平なりに限界を越えて研鑽に研鑽を重ねて辿り着いた熊肉料理。

 

それが2対1では、素直に喜ぶ事は出来なかった。

 

携帯の着信音が鳴。

薙切アリスと表示された携帯を見て足を止めて電話に出る。

 

『......幸、平君。どうだったかしら?』

 

電話の奥から聞こえてくるのは、何時もの気さくな声ではなく、必死に涙を堪えてる声だった。

 

『なんとか秋の選抜の雪辱を果たしたって感じだな』

 

『そう、おめでとう。良かったわ。.....それとごめんなさい...私もリョウ君も』

 

『負けちゃった....』

 

退学。

 

その二文字が重くのしかかる。だが今回の結果は相手と真剣勝負で負けたから退学になる。別に卑怯な手段を用いられて負けた訳じゃない。だから相手に対して何かを言うつもりはない。

 

だけど。

 

納得はいかなかった。

 

『一つ聞いても言いか?』

 

『....なに、かしら?』

 

『今回の勝負で退学になるとしてアリスや黒木場は、どこに行くんだ?家が校内にあるけど。校内にある、家に戻るのか?』

 

『それは無理ね..。薊おじ様に喧嘩を売ったんですもの。あの家には、いられないわ。それに、えりなにとって私達は、邪魔だと思われてるみたいだし』

 

『家に戻れないってのは、酷すぎないか?』

 

というかそんなこと、娘大好きなアリスの親父が許さない気がするが。

 

『また北欧に行くと思うわ。そうしたら、もうえりなには....皆にも』

 

北欧...確かデンマークだったか。

 

『ならさ、アリス達が良ければ------------』

 

 

 

 

 

 

アリスから電話を貰った後、幸平は待機室に来ていた。待機室には、幸平、葉山、汐見先輩がいる。

 

そんな暗い空気の中を壊すように扉が荒々しく開かれた。

 

「はあはあ...幸平君。結果は?」

 

「どうした薙切。走ってきたのか?髪ボサボサだぞ?」

 

茶化すように言った幸平にえりなは、頬を染めながら答える。

 

「当たり前でしょ!....それでどうだったの?」

 

「なんとか秋の選抜の雪辱を果たしたって感じだな」

 

「そ、そう。良かったわ」

 

 

「葉山君。おうち無くなっちゃったね」

 

「悪いな、潤」

 

「じゅ、潤って呼ぶなー!私の方がお姉さんなんだよ!それに、セントラルに入ってた葉山君より今の方がずっと良いと思う」

 

葉山が負けたことにより、汐見ゼミは、解体。

 

「ならさ二人とも極星寮に来れば良いじゃん。極星寮のキッチン使えば今まで通り、研究もできるし、汐見先輩は極星寮OGなんすから問題ないっすよ。部屋も空いてるところ使えばいいし」

 

「幸平....その言葉だけで救われたよ。ありがとな」

 

「葉山?」

 

待機室がノックされて薊総帥の側近である男が入ってくる。

 

「葉山アキラ君分かってますね?」

 

その言葉を聞いて頷く葉山。

 

「君には、退学になってもらいます」  

 

「どうして葉山が退学にならなきゃいけねーんだよ!」

 

「幸平創真君。だったね、君には関係のない事だ。それに君も人の心配をしてる場合じゃ無いんじゃないのかな?各会場での結果が報告された。新戸 緋沙子、黒木場リョウ、薙切アリス退学決定。更に水戸 郁魅、イサミ・アルディーニ、伊武崎 峻、青木 大吾、佐藤 昭二、吉野 悠姫、榊 涼子、丸井 善二以上の面々も退学決定です」

 

「そんな...皆が」

 

「おう、お前ら他所のルートばっかり心配してて良いのかよ」

 

「竜胆先輩」

 

「アルディーニと田所ちゃんの相手。この竜胆先輩だったんだぜ?」

 

思わせ振りな表情と言葉で取り繕っているが、中村先輩の側近がタクミと田所の名前を出さなかった時点で二人は合格じゃないのか?

 

「二人とも...」

 

「薙切?」 

 

薙切は、血相を変えて走り出していく。

 

「ん?幸平は行かねーのかよ」

 

「ん?ああ、俺は良いっすよ。やることありますし」

 

「やること?」

 

「竜胆先輩。俺とタクミと田所、そして薙切で現十傑に食戟って出来ますか?」

 

「ん?あははは。幸平、流石にそりゃ無理だぜ~。私的には、面白そうだと思うけどな」

 

「そこをなんとかならないっすか?」

 

「無理無理。そんな勝負絶対受けさせてくれねーよ。ま、残念だけど諦めるんだな」

 

「いや、諦めないっすよ。だから動くことにします」

 

「ん?」

 

それじゃ、と軽く挨拶してタクミと田所が受けた試験会場に向けて走る。

 

と、その前に。

 

携帯を取り出して葉山に電話をする。

 

『どうした幸平。何かあるなら戻ってくれば』

 

『ああ、いや。そこに竜胆先輩いるし言いにくいんだよ。葉山、それと汐見先輩も------------』

 

 

 

 

 

これで良し、と。

 

 

通話を終えた幸平は、試験会場に急いだ。

 

 

 

 

「幸平君!何をしていたのですか!」

 

試験会場に着いてそうそう、薙切にお説教である。そして何故か....。

 

「そ、そうだべ!創真君!少しくらい心配してくれても良いだべ!」

 

田所までも怒っている。

 

「いや、俺はタクミと田所なら勝てると思ってたし、側近の人は二人のことを不合格って言ってなかっただろ?」

 

「あ、そういえば....」

 

「そんなことよりも、幸平。君の方はどうだったんだい?」

 

「なんとか勝てたよ。でも...納得はしてない。今回葉山は、集中してなかったし、久我先輩と中華研の人達が手伝ってくれたおかげであの料理を完成させることが出来たけど、それでも2対1。はは、まだまだだよ」

 

「幸平...」

 

「でもさ、勝ちは勝ちだ。そして俺はまだ強くなる。その為にも皆に相談がある」

 

「「「相談?」」」

 

 

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