ゆきひらに帰り咲く。   作:洛南

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二食「退学?」

「それで幸平君、相談とは何かしら?」

 

既に説明してある葉山と汐見先輩も呼んで、説明することにした。

 

「さっき竜胆先輩に聞いたんだけどさ、俺達が現十傑に食戟挑むのは無理みたいなんだよな」

 

「現十傑に挑む!?」

 

「な、何言ってるべさ創真君!わ、私なんかじゃ全然足元に及ばないって」

 

「いやー田所ならいけると思うぜ」

 

「ふん、確かに田所さんならいけるだろう。だが幸平。勝てるとしても、相手が食戟を受けてくれなければ意味がないじゃないか」

 

「問題はそこなんだよなぁ。それでだけど。皆で遠月学園を退学しないか?」

 

幸平の言葉に、薙切もタクミも田所も、言っている意味が理解できず呆然とその場で立ち尽くしていた。その沈黙を破ったのは、タクミだった。

 

「何を言うかと思えば....幸平。ここまでどうして努力してきたのか忘れたのか?」

 

「いや、忘れたわけじゃねーよ。遠月に残るために、薙切に色々教わったしな」

 

「なら!」

 

「でもさ、それって皆がいたからじゃないのか?」

 

「そ、それは....」

 

「俺はさ、葉山と勝負して思ったよ。一緒に研鑽していけばあいつの凄いところ全部吸収してやるって。勿論今までの日々が楽しかったって言うのも確かにあるんだけどさ、皆のいなくなった遠月になんの意味があるんだろうな」

 

「ぐっ...だが幸平!確かにそうだとしても遠月を退学してどうすると言うんだ!」

 

「そ、そうですよ!幸平君!少し驚いて何も言えませんでしたが、それに折角ここまで勝ち進んだのに、それでは意味がないじゃないですか!」

 

薙切もタクミも必死に言ってくるが、幸平だけが思っていた。幸平は、遠月卒業生という名前が欲しいわけではない。

 

ただ一人の料理人として、頂点を目指していただけ。それ以上でも以下でもない。

 

「少し落ち着けよ、二人とも」

 

「葉山君...」

 

「おい、葉山。そもそもお前にも一言言いたかったんだ!」

 

タクミの言葉にたじろぐ葉山、視線をこちらに向けて助けを求めてくるが諦めろ、皆言いたいことは沢山あるんだ。

 

「な、なんだよ」

 

「次は僕達も頼れ!何一人で格好つけているんだ!君は一人じゃない」

 

「っ!.....そうか...すまないな」

 

「うう...葉山くん。良かったよぉぉおお」

 

そうだ、こんな風景を見ながら研鑽していきたいんだ。

 

「よーし、それじゃ聞いてくれ。薙切もタクミも田所にも、出来れば同意してもらいたいしな」

 

「.....は!そ、創真君!流石にそれは」

 

「他の皆は同意したぜ」

 

「....幸平君。それでその内容ってなんなのか教えてくれないかしら?」

 

知っている葉山は目を閉じて壁によりかかり汐見先輩は、祈るように両手を合わせて握っている。薙切とタクミと田所は、知らないから言葉を待っている。

 

「退学に、いやこの場合は自主退学か。した後に皆でさ、うちで働かないか?」

 

「へ?」

 

「え?」

 

「は?」

 

「「「えぇええええ!?」」」

 

三人の声は木霊する。

 

それも当然だろう。食事処【ゆきひら】にスカウトされているようなものだ。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!私は、大衆料理屋で働く気なんてありませんからねっ!」

 

「そうだぞ幸平!そもそも僕は、実家の【トラットリア・アルディーニ】を継ぐんだ!ゆきひらで働くことは出来ない」

 

「そ、創真君。私も....その、ごめんなさい!」

 

想像通りの言葉が返ってきたな、でも少し勘違いしてるな。

 

「なんかお前ら勘違いしてねーか?」

 

「「「え?」」」

 

「一時的に手伝って貰うだけだ。それに場所は変わっても、皆一緒なら研鑽出来るだろ?」

 

「つまり君は、ここでは無くても皆が揃ってれば良い。そう思っているの?」

 

「いや、そうじゃねーよ。遠月で学べることも多いしさ。親父でも届かなかった頂きにも、まだ届いてないしな」

 

「それなら!」

 

「少し落ち着けって。幸平、遠回しに言っても伝わらねーんだ。直接言った方がいいだろ?」

 

「葉山君は、知ってるの?」

 

「ああ、俺も潤もな。じゃなかったら同意なんてしてねーよ」

 

そこまで言って葉山は、此方を見る。自分で説明しろ、という事なのだろう。あそこまで言ったんだから説明してくれてもいいのに。

 

「それ「おー創真。久し振りじゃねーか」....お、親父!?」

 

「才波様!?それにお爺様に堂島シェフまで!?」

 

「....わしは、おまけかの」

 

「何だよじいさん。落ち込むなよ、それより創真。中々面白そうな話してるじゃねーかよ。」

 

突然入ってきたのは、親父と薙切のじいさんと堂島先輩だった。

 

それよりも.....。

 

「髪わしゃってするな!!」

 

「ははは、元気そうだな。エリナちゃんも大きくなったな」

 

「才波様...」

 

「...それで親父達は、どうしてここに?」

 

「それは、私から説明しよう」

 

「堂島先輩?」

 

堂島先輩の話は、現十傑に食戟を受けさせて過半数の十傑の席を奪い薊政権を討ち果たす事だった。その為の手引きもしていたらしい。

だが、中村先輩は、既に別の試験会場に向かってしまったらしく一歩遅かったらしい。

 

「それで幸平君は、どうするつもりなのか聞かせてもらっても良いかな?」

 

「うっす。俺の目的は、今回退学になった奴等全員集めて【ゆきひら】に戻り俺や、薙切、それにタクミと田所も辞める。俺達は、どうでもいいかも知れないけどさ、薙切を手離すとは思えないんす。だから」

 

「成程な。それで【ゆきひら】に中村が来たときに食戟を受けさせて十傑の座を奪って皆も学校に戻れるようにする、か」

 

「おい親父!一番良いとこで人の台詞取るんじゃねーよ!」

 

「何言ってんだよ、別にいいだろ?」

 

「良くねーよ!」

 

「成程な。だが幸平君。その方法は」

 

「そうっす。薙切の協力が不可欠っす」

 

「わ、私は....」

 

薙切は、肩を抱いて震えている。昔何があったのか知らねーけど、薙切は親父さんに滅茶苦茶弱いからな....。

 

「エリナよ」

 

「おじい、様」

 

「たまには我儘も覚えなさい」

 

「っ!我儘.....」

 

「それにお主は、一人では無いのだ」

 

「皆....」

 

「おう」

 

「まあ、色々と迷惑かけちまったしな」

 

「葉山くん!ちゃんと謝らないと駄目だよー!」

 

「ふん、そう言うことなら話は別だ。僕も【ゆきひら】に行かせてもらう。それも皆でな」

 

「う、うん!そうだね!エリナさん。どう、かな?」

 

「皆.....。分かったわ!私も退学して【ゆきひら】に行きます!」

 

 

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