ゆきひらに帰り咲く。 作:洛南
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幸平とタクミは、現在飛行機に備えてある厨房に来ていた。
「あのーこんちわーす」
「おい、幸平!些か不作法だろう!」
「ん?君達は?」
「俺の名前は、幸平創真っす。さっき、料理を頼んだんすけど」
「おお!君達が機長から聞いていた助っ人か!助かったよ!!ささ、入って入って!」
「え?ちょ、ちょっ!」
この飛行機の関係者の人に手を引かれ厨房に連れていかれる、幸平とタクミ。厨房に連れてこられるとそこには、三人の料理人らしき人達がいた。
「君達が機長から聞いていた城一郎才波かい?」
その名前を聞いて幸平は理解した。全て親父の差し金なのだと。
「ああ、いえ僕達は」
「それ、俺の親父っす」
「!そうかい。息子か、それで君達料理は出来るのかい?」
幸平もタクミも、料理が出来るのか?と聞かれて出来ないと言う言葉を持ち合わせていなかった。
「勿論!」「Certo!」
「おお、頼もしいものだ。ささ、早速お願いするよ。これから注文が入る予定なんだ」
幸平は、学ランを脱ぎ捨て食事処『ゆきひら』の服装になり手首に巻いていた布を頭に巻く。
タクミも学ランを脱ぎ捨て、『トラットリア・アルディーニ』の服装に着替える。
「さあ、やるぜ!タクミ」
「ふん、遅れるなよ?幸平!」
何故食事を作っている。そんな疑問は、この二人には不要だった。幸平とタクミは、それぞれ厨房で調理を始める。
「おーおー、二人ともやってるな」
「親父!」
「城一郎さん」
厨房に才波城一郎が入ってくると、その後ろから堂島シェフ、薙切仙左衛門、薙切エリナ、田所恵が入ってきた。
「幸平君!勝手な事をし過ぎです!アルディーニ君もよ!幸平君に感化されてどうするのですか!」
何故か薙切は、御立腹だったが幸平が気にする気配はなく、タクミは、少しだけ反省していた。
「まあまあ、良いではないか。エリナよ。この二人を焚き付けたのは、城一郎と堂島なのだからな。そうじゃろ?」
「ははは、まあな。一芝居打たせて貰ったのさ」
「一緒にするな!私はサポートをしてもらおうと思っていただけだ!それに城一郎が元々頼まれた話を俺にも手伝って欲しいと言ってきたんじゃないか!お前は、昔からそうだった、俺を巻き込んでは、何をやるのか伝えずに無鉄砲に突き進み追って!俺がどれだけ苦労してきたのか分かっているのか!?」
「あ、あの冷静な堂島シェフが...」
「少し驚いたわね...」
「まあまあ良いじゃねーかよ、銀。そんだけ頼りにしてるんだからよ」
「良くない!今日という今日は許さん!」
「おっ、なら勝負するか?」
「望むところだ!」
「ならば!その勝負は、わしが仕切らせてもらおう!」
「お爺様!?」
「まず今回の依頼内容だが、わしにも話はきておる。オードブルを二種類作ることじゃ!なので、チーム城一郎に幸平創真、薙切エリナ!チーム堂島にタクミ・アルディーニ、田所恵のメンバーで一人一品作って貰う!今回は、前菜、メインディッシュには肉料理を、最後にデザート。この3品でオードブルを構成してもらう!」
「才波様と同じチーム!なんとか力にならなくては....その為にも、良く話し合って誰がどの品を作るのか明白にしなくては」
「今回は特別にルールを設ける。一つ!私語厳禁。二つ!料理の素材は使う物を順に取ってくるように。予め全ての食材の材料を持ってくるのは無しである!」
「そ、そんなの....同じ品を作っちゃうかも知れないよ」
「確かに、その可能性は充分にありえるだろうな」
「それから!今回の判定は、一品の皿の評価ではなく、三品の総合的な評価で決める。そして特別審査員として機長に来てもらっておる。機長、協力感謝する」
「いえいえ、私共も助かっております。料理長が不在の今、大いに助かります」
機長の隣には、CAの女性が一人と厨房に元々いた、コックが一人立っている。
「はわわわわ、ど、どうすんべ!あ、足さ引っ張らねーようにしねーと!」
「田所」
「....創真君?」
「田所なら大丈夫だって。心配すんなよ」
「ふん、当然だな。田所さんならやってくれるさ、敵なら脅威だが味方ならとても心強いよ」
「アルディーニ君...」
「そうよ、田所さんなら大丈夫よ。むしろ幸平君の方が心配だわ」
「薙切さん....皆」
「何をー!薙切、お前に絶対上手いって言わせてやるからな!」
「静まれい!...ごほん。これよりチーム才波とチーム堂島による料理勝負を行う!制限時間は50分!では!始めい!!」
チーム堂島side。(タクミ)
堂島シェフが最初に持ってきたのは、トマトとバジル。それにオリーブオイルにジャガイモか...。これだけでは、前菜なのかメインなのか判断が出来ん...だが。僕は変わると、あの日誓ったんだ。
秋の選抜で幸平に、あれだけの啖呵を切っておいて無様に負けた。それも魂よりも大切な調理器具まで取られ。そして幸平に取り返してもらった。
無様だった。
悔しくて、悔しくて、悔しくて...何より自分が情けなかった。
だから僕は誓ったんだ。変わるんだって。
堂島シェフの動き、材料、目線の先まで見て予測するんだ。次に何を必要として、何を作ろうとしているのかを。
......!そうか。
それなら僕は、あの品を作ろう。
田所さん、君なら分かる筈だ!
(恵)
わ、分からないべ.....。
これだけの材料で一体堂島シェフは何を作ってるなんて....。た、タクミ君は!....タクミ君、凄い集中力..堂島シェフの動作を見逃さないように見てる。
凄い...。
...!動いた。タクミ君が持って来たのは、ラム肉とナツメグ。それにハチミツ!これって....そうか、タクミ君がフォローしてくれてるんだ。それなら私だって!
(堂島)
さて俺の作る品は決まったが、二人はどうかな?...どうやら前回タクミ・アルディーニ君を見たときよりも、比べ物にならないくらい成長しているようだな。そして、それに答える、田所君も素晴らしい。
ふっ、久し振りだな。こんなに楽しい料理対決は。
だが勝負は、勝負だ!
この勝負勝たせてもらうぞ!城一郎!
チーム才波side。(エリナ)
なんとか才波様の邪魔にならないようにしなくては...それには、作っている品を見分けるしかないけど。
才波様が選んでから少したったけど何故かクレープの生地を焼いているのよね....。これはデザートを作っている。ということで良いのかしら?幸平君も何を作っているのか見ている様子だけど。
「よし!始めるか!」
動いたわね...ただお爺様が睨んでいるから、声に出さない方が言いと思うわよ?
.....?....!?な、どうして....どうしてホットケーキミックスなの!?
「~♪」
鼻歌歌ってる場合じゃないわよ!才波様は、デザートを作っているのよ!どうして貴方もデザートを作り出すのよ!
ホットケーキを焼き上げて何を取りに行く気かしら?......フィレ.....肉?
もう訳が分からないわ...。
いいえ、本当は分かっている筈よ。エリナ。
極星寮で、多くを学んだ筈よ。
やってやるわよ....やってやるわよ!!
(創真)
「~♪」
そろそろ焼いていた肉を一旦出してボウルで密閉させて少し置いておくっと。
「お、創真。お前珍しい焼き方知ってるじゃねーかよ。誰に教わったんだ?」
「十傑第1席司先輩だよ...」
あんま親父には言いたく無かったけど...。
「ははーん。お前その言い方じゃそいつに負けたな~?あーやだやだ。情けない」
「うるせーな!!次は俺が勝つんだよ!」
「うぉほん!!失格にするぞ?」
「でもよー今のは、料理器具持ってなかったからセーフだろ?」
「そんな屁理屈は通らん。良いか?次は失格にするぞ?」
「「すいません」」
「ちょっと幸平君!チーム内でいがみ合ってる場合じゃないでしょ?それよりも料理を完成させるのよ」
「ぷぷぷ、薙切まで喋ってるし。なんだったら俺の方が料理進んでるし」
「そ、それは!!」
「おほん!!」
「っ!!」
全く...幸平君のせいで...でも、そうね。私もそろそろ作り始めなくてわね。
(才波)
「っ!あれは!?エリナ様もデザートなのか!?アイスにフルーツ!?それにあれは、トマト!?」
「ふっ。エリナ、本当に成長したの」
エリナちゃんが作るのは...成程面白いな。こりゃ創真、うかうかしてるとお前の料理だけ見劣りしちまうぜ?
さて俺の方は、そろそろ仕上げだ。
さて被ることなく作り終えることは出来るのか!
そこは次回です!