ペルソナ5 オリジナルパレスもの   作:もぶ

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虎児を得るためには

メンバーを呼び出して昨日の一連の発見を報告する。

やはりというか、今までにない事態にみんな驚きを隠しきれない様子だった。

 

「二人で一つのパレス!?」

「なんだよそれっ」

 

真っ先に反応したのは他のメンバーより怪盗歴が長いからこそ、あり得ないという先入観を持ちやすい二人。

パレスの事について最も詳しいのはモルガナだと理解しているため、二人とも思わずモルガナを見る。

 

「可能性としては二人の認知が完全に一緒か、または同じ場所にパレスを作っているとこうなるのか……こんなことワガハイも初めてであまりはっきりとは言えないのだが…」

「なんだよ使えねーな」

「こらっリュージ!」

 

モルガナも知らないということは本当に誰も知らない事になるという苛立ちからかつい漏れた言葉に即座に杏が反応する。

何時ものことだとこのまま脱線する前に話を戻す。

 

「今日の主題は、このパレスの主はメジエドへの解決の糸口になることはないだろうし、知名度も低い。それでもやるか、だ」

 

些細な言い争いに発展しかけていた二人も裕介も真も、揃って固まった。

そう、エニシダのパレスは極端な話無視しても問題がないのだった。

確かに被害者は居るだろうが、今はXデーという強大で明確な危機がある分、そちらを優先するべきなのではないかという思いもある。

全会一致の掟もある、一人の感情で勝手に決めることはできない。

見捨てるか、見捨てないかその選択を話し合うために集合したのだった。

 

最初に口火を切ったのは杏だった。

 

「メジエドのことを優先しないといけないことは解ってるよ……私たちだけじゃなくて沢山の人に迷惑かけるかもしれないんだから」

 

それでも、と続きそうな言葉を引き継ぐように竜司が続く。

 

「……でもよ、知ってるのに優先度が低いからって見て見ぬふりするってそれじゃあオレらも学校のやつらと同じになっちまうじゃねぇか!」

 

鴨志田の事を放置した大人やバレー部員と同じになると、嫌悪感を露にする竜司。

俗っぽい所もあるが、反対に妙に潔癖な所がある竜司らしい言葉。

 

「正直今の俺たちにメジエドのことについて出来ることはないと思っている。双葉にかけるしかないのなら、無駄に日にちを浪費するのではなくもっと活用してもいいのではないだろうか」

 

冷静に現実を示し、それでもと可能性を提示する裕介。

 

「そうね……闇雲に時間を使うくらいなら双葉の言葉を信じて、私たちは私たちにできることをするべきかもしれないわ」

 

一つ年上だからかメンバーの中で一番大人に近い目線で思考できる真だが、反面熱いところがあるのはみんな知っている。

 

「蓮」

 

モルガナがじっと見つめてくる。

 

「あぁ、行こう」

 

知らせた時点でこうなるだろうと薄々思っていた。

それでも知らせた蓮だって、結局は見過ごせなかったのだ。

 

「おっけー!」

「そうこなくちゃな!」

「もちろんメジエドの対策探しも止めないわよ」

「あぁ」

 

盛り上がるメンバーに釘を刺す真。

こうと決めたら一直線なメンバーが多い怪盗団にとって頼もしい存在だ。

 

パレスの攻略をすると決めたらまず浮かんでくる問題がある。

 

「と、いってもまずはキーワードからなんだけどな」

「宗教だろ?俺全然詳しくねぇんだけど」

「本人のパーソナリティに関係あるもの、かしら?」

「鴨志田が城、班目が美術館、金城が銀行、双葉は墓と……あまり法則性がないな」

 

分かりやすいものもあるが、双葉なパレスは本人の発言がなければたどり着く事ができなかった。

 

「こないだのメメントスの感じからして、お金を欲しがっているっていうのは解るけど……」

「とはいっても金城ほどのものは感じないかな」

「ちょっとアプローチを変えてみましょう。宗教にも種類があると思うけど……幸福の輪は既存の宗教の派生ではなく独自のものみたいね」

「宗教的なモチーフといえば、まず思い浮かぶのは天国と地獄、楽園等だろうか」

「裕介……お前そういえば画家だったな」

「そういえばではない、画家だ」

「こーら話が反れてるわよ」

 

脱線しながらもキーワードを試してみるが、なかなかヒットしない。

 

「あーっもうわっかんね!大体いつもは何だかんだパレスの持ち主に会ってからやってるのに知りもしない人間の欲望なんて解るわけねぇだろ!」

「そう短気を起こさないでよ」

「でも……確かに私達、相手の事も知らずに当てられるほどの経験は無いわ。なんとか会う手段はないかしら」

「虎児を得るには……というやつか」

 

新興宗教、と聞いてしまうと思わず尻込みしてしまうのが日本人的感覚だろう。

それでも蓮達は知りもしない人間のパーソナリティなど想像で当てられるような専門家でもないからこそ敵地に飛び込む必要があるかもしれない。

情報収集で開いていた幸福の輪のサイトをスクロールする真。

 

「基本的に、紹介によって知るパターンのようだな」

「サイトによると、一回目は無料で面会できるみたい」

「だが教祖はパレスの主ではないぞ」

「でも他に何かコンタクト取れそうなとこもないぜ?」

「手詰まりだし……とりあえず行ってみようよ」

 

こうして、怪盗団は幸福の輪に向かうことになった。

 

 

 

 


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