S S D O ストーリー   作:トーマス・ライカー

13 / 32




セカンド・サブ・スペース・フィールド・ディープ・ネットワークミーティング 2

「・・アースシステム・シミュレーションの現況はどうですか・・?・・それについて、田所博士の見解に変化はありますか・・?・・」

藤堂 静女史が、立ち上がって訊いた。

「・・細部に変動はありますが、大筋での変化はありません・・・田所博士の見解にも、変化はありませんね・・・」

「・・シミュレーションの先延ばしプロジェクトの現況についても、お願いします・・」

静女史が、もう一度立ち上がって訊いた。

「・・アースシステム・シミュレーションは現在、第3世代の中核次元コンピューター6台を直列させて作成しています・・・地殻の岩盤に累積する圧力を、こちらから先手を打って解放・放散させる事で、シミュレーションの先延ばしを図る事がこのプロジェクトの概要です・・・シミュレーションを細部に渡って分析し、対処すべきアプローチ・ポイントとアプローチ・タイムを精密に割り出して、そこに量も精密に調節したスパイナーカプセルを封入して仕掛け、爆破して地殻岩盤に掛かる圧力を許容範囲で開放します・・・今迄に18795ヶ所で爆破作業を行いました・・・今後20ヶ月の間に・・1825ヶ所での爆破作業を予定しています・・・それで、これまでにどの程度の先延ばしができたのかと言う点ですが・・・3年と少しです・・・微々たるものではありますが、プロジェクトは今後も継続します・・・他に質問は・・?・・」

「・・ガムトゥーは、変わらず周回していますか・・?・・」

早乙女博士が訊いてきた。相変わらず無精髭が濃い。

「・・はい、周回軌道には・・全く変化がありません・・・」

「・・同盟内各結社の活動に対しての・・こちらの対抗活動について、もう少し詳しくお願いします・・」キングビアルにいる、神北 兵左衛門さんだ。

「・・B G 、シャドウ、B F団、クロノス、ゴルゴム、ショッカー等が画策している破壊活動については・・Mネットを通じて事前に情報を入手し、先手を打っての対抗活動に注力し・・敵の行動の殆どを事前に阻止しています・・・そのお陰もあり、目立って大きく組織的な戦闘は展開しておりません・・・尤も同盟も財団も、まだこちらの実態を掴んではいないので、具体的な戦力の展開ができないと言う事もあります・・・ミケーネスやガイゾックやボアザン帝国やギャラクターの動きが、まだそれほど顕著に見えないのも、その辺の事情に因る所が大きいと思われます・・・クロノス・ゴルゴム等による各国重要人物の調整・改造計画ですが・・現在はその総てを阻止しています・・以前にはこちらの行動が後手に回ってしまい、拉致・誘拐を阻止できなかった事案もありましたが・・現在ではこちらでも整備された深部探査により、当時の対象者の所在を把握・確認できる事もあります・・・その場合にはその対象者を救出・奪還し、逆調整を施して普通の人間に戻すと言う事も行っています・・が、その場合にはその人を元居た実社会に戻すと言う事が実質不可能なので・・合意のもとにこちらのスタッフとして残って貰っている場合もありますし・・過去の記憶に現在の行動の多くが強く影響されていると観て採れる場合には、止むを得ず記憶の操作や消去も行っています・・・アテナは現在、赤羽の里におります・・かの地で3才の誕生日を迎えるまで、養育する予定です・・言うまでもありませんが、赤羽の里の存在だけは敵に知られる訳にはいきません・・・その為に、可能な限りの遮蔽・防衛体制を採り、秘匿します・・」

「・・パミール高原での争乱以降に・・予測されている組織的な戦闘はありますか・・?・・」

ロンド・ベル艦隊のブライト・ノア司令だ。

「・・可能性として最も高く予測されているのはやはり・・N P B 攻略戦であろうと思います・・・先頃から察知されている闇資金の流れから見ても・・財団と同盟がN P B を完全稼働体制に入らせようとしているのは、明白です・・・ご存知のようにN P B が完全稼働体制に入れば・・グランドキャノンの連続使用が可能になり・・我々にとって不利な状況になります・・それに対して先手を打つ意味で・・N P B を攻略して壊滅させる作戦は・・必須であると考えます・・・勿論、同盟や財団が今後複数仕掛けてくるであろう陽動作戦には、充分に注意を払わなければなりませんが、現時点での予測は困難です・・・それでも裏高野・梁山泊・聖域・M A Cステーションが・・攻撃されるであろうことは充分に予想されますので・・対応するための準備は・・でき得る限り調えましょう・・・それでは、他に質問が出ないようでしたら・・ミーティングはここで切り上げようと思います・・・最後に、M A C 02のフェイズ1起動についてですが・・もう準備はできていますので・・Xタイムの24時間前とします・・・他に質問が無ければ、これで終わります・・・」

米海軍太平洋第7艦隊揚陸指揮艦ホワイト・ベンフォールド・ブリッジ・・・

「・・ドラン司令・・原潜部隊並びに対潜哨戒機も共にシーバットを見失いました・・ロストです・・・」ミッチェル大尉が報告した。

「・・そうか・・・エンジン停止してマスカーを掛けての慣性無音沈降・・・深度1000近辺で沈底(ボトム)されたら、こちらからは探知のしようがないな・・・」

「・・それとダラスからの報告ですが・・シーバットをロストして20分後ぐらいに・・シエラ級のエンジン音を後方26000で探知したそうですが、こちらもその後ロストしたそうです・・・またこれは・・探査衛星から送られたデータを解析して得られた情報ですが・・2時間ほど前にウラジオストックからアルファ級が1隻出たようです・・現在は日本海を南下中と見られますが・・ローテから見て・・スコーピオンの可能性が高いと・・・」

「・・足が自慢のアルファ級・・・コサック達もいよいよ本腰を上げたようだな・・・哨戒機は帰投させてくれ・・・原潜5艦と水上艦は青ヶ島に向けて転進だ・・・当該海域に着いたら島を微速で周回しつつ・・対潜水艦探査態勢に入るように・・・原潜はロス級をあと4隻差し向けよう・・・出港には時間差があっても構わない・・・それと・・ヘンリー・ランシング少将とリチャード・ボイス大佐に、私の名前で艦隊運用の要請を頼む・・・麾下の艦隊を青ヶ島の海域に向けてスイングして貰うようにと・・・・」

「・・了解しました・・・」

『たつなみ』・・館山市西方25キロ・深度150・速度15ノット・・・

「・・艦長・・やはり青ヶ島に向いますか・・?・・」

「・・そうだな・・針路青ヶ島・・深度50に着けてくれ・・速度10ノット・・・」

「・・そんな低速で良いんですか・・?・・」

「・・良いんだよ・・電池が勿体ねぇし・・どうせ海江田のヤローはギリギリまで上がっちゃこねぇからな・・・それより、米原潜が何隻集まって来るか、聴き耳を立てておけよ・・」

「・・了解・・先行の5艦は、もう向っているでしょうね・・?・・」

「・・当然だな・・」   「・・後発の原潜も何隻かは出るでしょうし・・・」

「・・俺の勘だがロシア潜も何隻かは出てると思うな・・・こりゃ明日の青ヶ島は派手な祭りになりそうだぜ・・・グズグズしてたらM Jが出張って来ちまうからな・・・ここぞって時にゃ、ダッシュで突っ込まねぇと・・・・」

日本・衆議院本会議・・・

「・・首相! あなたと内閣は、国民にも議会にも党内に於いても、説明も審議も議決も承認も了解も無く、あの原潜をアメリカと共同で開発・建造し、乗組員を海自から編入する事を秘密裏に決定し、海自の潜水艦をその為に自沈させる事までした! これほどに重大で深刻な国民に対する背信行為があるのですか!? あなたと内閣の責任は極めて重大であり、内閣の即刻総辞職と解散総選挙を断固として要求します!!・・」

「・・首相としても、党首としても、内閣のリーダーとしても、一人の衆議院議員としても責任は痛感しています・・何も公表をしないで秘密裏に米政権と事を進めたのは、確かに国民に対しては背信的な行為であったと認識しております・・ですが・・原潜の開発・建造・運用・操艦に関する知識・技術・経験の獲得とその蓄積は・・混迷を深めるアジアの情勢の中で、日本の安全を保障するためには・・必要な事物であったし、今もそうであると確信しております・・・民主的な手続きを経ないで決定し、計画をスタートさせ、実行に移した事につきましては、大変に申し訳ありませんでしたと・・申し上げる他にはございませんが、これは正に予断の許されない急務でありました・・・この上は・・この事態を完全に安全に収束して終息させる事が出来るまでを、私の責任の第一と捉えて考え実行し・・その後に・・私の出処進退を全国民の皆様に・・改めて問わせて頂ければと考えております・・・」

「・・当該原潜は既に・・S S D Oなる団体と契約を締結した模様であり・・原潜もその団体も・・我が日本と対話の上で、契約若しくは同盟を結ぶ用意があるし・・それを望んでもいると言う表明も成されているが・・・政府は当該原潜にどのように対処するのか・・原潜と対話するのか・・それが先ず一つ・・そして、かの団体を現在どう観ているのか・・今後、どのように観るのか・・そして、今後対話する事も視野に入れているのか・・これがもう一つ・・・この二点に付いて先ず答えて頂きたい・・・」

「・・当該原潜の所属と所有権・運用権に関しては・・当然・・米海軍に帰するものであろうと思われますが・・乗組員は日本人ですので・・こちらからの接触は可能であろうと思われます・・・先ずは原隊への復帰を促すのが順当でしょう・・・かの団体に関してですが・・まだ必要とされる情報項目数にも情報量にも到達していないと考えられますので・・・判断や判定のできるような状況にはないと考えています・・・只・・・国家的な観点からの比較として・・・その規模としても程度としても、かの団体が備えると観られる科学力・戦闘力・機動力は・・どちらの許容範囲にも収まり切らないようには感得できると考えています・・ので、対応には更なる慎重さが望まれるでしょう・・・」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。