ターミナル2(中央指令室)・・・・
メカニックスタッフが整備用に着るジャンプスーツ姿で、島村ジョー(009)ジェットリンク(002)アルベルト・ハインリッヒ(004)ジェロニモ・ジュニア(005)グレート・ブリテン(007)ピュンマ(008)海東 大樹、門矢 司、野上 良太郎がネルで顔や腕や手に付いた油汚れを拭き取りながら入って来た。
「・・おお、ご苦労さんじゃな・・・」 「・・お疲れ様・・・」
ギルモア博士とフランソワーズ・アルヌール(003)が迎えて言った。
イワン(001)は眠っている。
「・・ムーンライトシリーズの整備状況はどうじゃね・・?・・」
「・・青ヶ島に向かう予定の12隻については・・・6割がた終わりましたね・・日没前までには大体の眼鼻を付けます・・・新宿から帰って来てから・・・最終調整に入ります・・」
島村ジョーが、手に付いた油を丁寧に拭いながら言う。
「・・ギルモア博士・・俺と海東は、新宿への増援メンバーに入ってないけど、行くつもりだぜ・・・上にも知らせておいてくれ・・」
門矢 司が、ネルをダストシュートに放り込みながら言う。
「・・了解したよ・・・」
アルベルト・ハインリッヒが手袋を脱いで座り、グレート・ブリテンが淹れてくれた紅茶のカップを手に取って言う。
「・・博士はどう思います・・?・・榎本さんは復活した魔星が誰に憑り憑くのかは分からないと言ってましたが・・俺は全部、同盟が取り込むと思いますね・・・」
「・・ほう・・なぜそう思うのかね・・?・・」
「・・そうでなければ、いくら凶皇仏の使い勝手が良いと言っても、同盟がそこまで注力しないと思いますよ・・・いずれ魔星が復活する事は遙か昔から分っていたんだから・・総て取り込むための段取りには・・とっくの昔から入っていると思いますね・・・」
「・・それで・・どこが取り込むと思うのかね・・?・・」
「・・博士には言っていませんでしたが、この事は俺たちの間では暫く前から話していましてね・・・『クロノス』じゃないかと思っています・・・」
ピュンマが、タオルで顔を拭いながら言った。
「・・クロノスか・・・・」
「・・ご承知のように『クロノス』は、アルカンフェルを初めとする古い組織で、同盟の中でも13賢人会同盟のメンバーです・・・彼らは遺伝子レベルでの調製技術で調製体を造り出しますが・・大きい特徴として生殖能力を維持していると言う点があります・・・つまり調製体が子供を作ると、胎児には初めから調製された遺伝子情報が組み込まれ、ゾアノイドとまではいかないかも知れませんが、ある程度調製された個体として出産されます・・・その後どの程度まで調製するにしても、未調製の個体を調製するよりは、それほどの手間を要しなくなると言う訳です・・・」
海東 大樹がジャンプスーツの上着の前をはだけて、大きいグラスで一杯の水を飲み干して言う。
「・・だから魔星の依り代としては、まさに打って付けの素体と言う訳だな・・胎児の頃から精神支配もされているんだろうし・・ある程度調製されているなら、その後のクロノスの側としての教育も容易だろう・・・クロノスは古くから活動しているから、やろうと思えばそのような形態での素体準備は、数百年前からでも出来たはずだからな・・・」
ジェット・リンクが珍しく髪型を気にしながら言った。
「・・う・・ん・・凶皇仏が創られたのも、数百年前だろうと言う話だし・・もしかしたら最初から総て絡めて段取られていた・・のかも知れんな・・・」
そう言いながらパイプを咥えようとしたギルモア博士だったが、フランソワーズが咳払いをしながら睨んだので、断念してコンソールに置いた。
「・・でも・・例え・・解放された108の魔星が・・最初はクロノスに総て取り込まれたとしても・・・戦いはまだ始まったばかりで・・まだまだ長く続きます・・・それに、榎本さんも言っていましたが、力は只の力ですし、人の心や為人は刺激や影響で変わり続けます・・・全部は無理でも何人かはこちらに引き込めると思いますよ・・時間は掛かってもね・・・」
野上 良太郎がそう言い終えてから暫くは、誰も口を開かなかった。
「・・もっとコンパクトで、確実性の高い方法があるよ・・・」
ベビーバスケットがフワリと浮き上った・・イワンが目を覚ましたのだ・・・。
「・・それは、どう言うものかね・・?・・」
「・・ガイアメモリを使うんだよ・・・」
その言葉に、その場にいた全員がバスケットを見上げた。
M A C 01(中央指令室)・・・・
発進デッキから戻ると直ぐに声が掛かる・・・・。
「・・司令・・ニューヨークからなんですが、ジョン・グリア氏の胸部に移殖されているメディアなんですが・・こちらで除去して欲しいとの事です・・・」
「・・向うも医療設備の拡充が必要だな・・・その装置がどこにも接続していない事を再確認した上で、ケタミンを処方してお寝すみになって貰ってくれ・・・状態が安定したら、先ずこちらのセンサーで装置をスキャンする・・・転送しても大丈夫なようなら、こちらの医療室に直接転送で収容する・・・向うにも医療用のトライコーダーがあるだろう・・?・・先に向うで装置をスキャンして、データを送信してくれても良いよ・・・」
「・・了解・・・要撃増援隊の発進準備が完了しました・・第3発進デッキで発進許可を求めています・・」
「・・発進を許可する・・・高速長距離哨戒機を3機、一緒に発進させて周辺を警戒させてくれ・・・」 「・・了解・・」
「・・司令!同盟に動きがあります・・サハラ・ゴビ・アリゾナ・テキサスの地下ドックで格納している艦隊に発進準備指令が出ました・・・」
「・・何隻に出た・・?・・」
「・・待って下さい・・・ざっと・・・300・・いや、400です!・・」
「・・400・・・完了までにはかなり掛かるな・・・サロンミーティングの後からでは後手を踏むと読んだか・・・新宿は勿論、青ヶ島にも間に合わないな・・・パミールを含めて、各地で陽動作戦を仕掛ける為の戦力か・・・・パミールで100隻として・・残り300を10のグループに分ければ、30隻単位で10ヶ所に陽動作戦を仕掛けられるか・・・裏高野・・梁山泊・・聖域・・科学要塞研究所・・早乙女ゲッター線研究所・・大鳥島・・三日月珊瑚礁に通報を頼む・・・それと・・M A C01・02・03の駐留艦隊に向けて、発進準備指令だ・・・それと・・三日月珊瑚礁の南部博士に連絡して・・ゴッドフェニックスと科学忍者隊に、出動待機態勢に入って貰えるように頼んでくれ・・」 「・・了解・・」
「・・アルビオン・・ガランシェール・・ファントムペインでも、子供達の救出にタイミングが合わなければ、彼らに奥の手になって貰うしかなくなるだろうな・・・・」
ギリシャ・聖域(サンクチュアリ)教皇の間・・・・
「・・教皇・・いや、シオン殿・・それは一体何者なのです・・?・・」
「・・カノンよ・・・かつて伏魔塔の麓には・・ガミオと言う名のグロンギが一党を率いて巣食っていた・・・ハーディアスはガミオを謀り、聖闘士を10人殺せばゲゲル達成と見做して『ン』の称号と、それに見合う力と資格を授けると約束していた・・・まあ、ハーディアスならばそれ位の力を授ける位の事は出来ただろう・・・それで・・ハーディアスはグロンギを味方に付け、前聖戦を有利に進めようとしていた・・・そして最終局面に入った・・・アテナとハーディアスの力は拮抗していて、双方ともに余計な動きは採れなかった・・・私達はハーディアスのスペクター(冥闘士)を倒していったが、仲間のセイント(聖闘士)も倒れていった・・・冥闘士の中核に在った魔星を・・私達は伏魔塔に封じていったが、最終的には伏魔塔その物を地中深くに封じ込めなければ・・私達の勝ちにはならない事も判っていた・・・伏魔塔の麓で行われた・・・残った冥闘士とグロンギとの連合を相手にした戦いは熾烈を極め・・・残り数少ない聖闘士は更に減り・・ほんの数名にまでなった・・・ハーディアスはアンノウンさえ召喚して、私達を殲滅しようとしていた・・・だが、アギトが助勢に来てくれて、シャイニングフォームの力でアンノウンを総て排除した・・・早くから私達と共に戦ってくれていたクウガも究極体にまで進化し・・シャイニング・アギトと共にヒュプノスとタナトスを抑えてくれていた間に・・前教皇は隙を観てアテナに具申し・・ある術とその術を行使するためのアイテムを授けて貰った・・」
「・・その術とは・・?・・」と、アイオロス。
「・・セブンセンシズを超えてエイトセンシズ(阿頼耶識)にまで自らを到達させた前教皇は・・アイテムを用い、術を起動させて・・肉体ごとガミオに憑依し・・一体に融合して一つの存在となった・・・抗うガミオの意識を奥底の深くにまで封じ込めた彼は・・自らを『ン・ガミオ・ゼダ』と名乗り・・『ン』の力さえ自らもぎ取った・・・残るグロンギをその場で封滅した彼は・・私達と共に残る冥闘士を圧倒し・・自分自身を人柱として伏魔塔の基底部中央の深くに封じ込め・・伏魔塔封入の術に入った・・・混乱の只中で私達はクウガやアギトの力も借り・・ギリギリのところで残る冥闘士を総て倒し・・魔星を塔に封じ込めた・・・自軍崩壊と観て採ったハーディアスはヒュプノス・タナトスと共に戦陣から退き、冥界へと戻っていった・・・残る私達も、二人だけだったが力を伏魔塔の封入に集中していた時・・前アテナが自らの名で封じの護符を書いて塔に貼り付けた・・・そして塔は・・一息に地下深くに引き摺り込まれていって・・それで前聖戦は終息した・・・その後暫くはその辺りで・・彼の意識を感じ取れていたが・・100年を過ぎた頃からそれも感じ取れなくなった・・・」
話し終えたシオンは、その場で俯いた・・黙祷を捧げているかのようにも見えた・・・。
「・・そんな事があったのですか・・・・」と、サガ。
「・・それでは・・同盟が闇の力を増幅させて、目覚めさせようとしているのは・・?・・」
と、シャカ。
「・・そう・・その彼だ・・『ン・ガミオ・ゼダ』だ・・・・」