S S D O ストーリー   作:トーマス・ライカー

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ガイアメモリ(デビルスターズ・カテゴリー)承前

「・・しかし・・目覚めるなら意識はゼダ前教皇のままなのでは・・?・・」

と、アイオリア。

「・・いや・・闇の力で目覚めるのだから、ガミオの意識である可能性の方が高い・・」

と、シャカ。

「・・どちらにしても、目覚めれば人柱としての地縛力は失われて・・塔は地上に出る・・」

と、シオン。

ターミナル2(中央指令室)・・・・

「・・ガイアメモリをどう使うんだい・・イワン・・?・・」

グレート・ブリテンがカップから立ち昇る湯気を顎に当てて、紅茶の香りを確かめながら訊いた。

「・・ガイアメモリに108個の個数限定で新しいカテゴリーを作るんだよ・・・デビルスターズとか名前を付けてさ・・・それで魔星が解放されたら、魔星とメモリが引き合うように、魔星それぞれの性質に適性を合せたОSをそれぞれのメモリにインストールして置くんだ・・・それで魔星が憑依して憑り憑き易い、最もコンパクトな素体が出来上がる・・・後は魔星が解放されて飛び散ろうとするタイミングに合わせて、OSを起動させたメモリを空にばら撒けば・・108個の魔星メモリがスムーズに出来上がるだろう・・・」

「・・そうなれば誰がそのメモリを使っても・・同じ冥闘士としての力を行使できるようになるって訳か・・・」・・・ハインリッヒがやれやれと言う感じで嘆息した。

「・・スペクター・ドーパントか・・・」ジェロニモ・ジュニアが腰を降ろした。

「・・どうやら、イワンのこの話の方が、より深刻な意味で可能性が高いようじゃな・・・上に警告しよう・・・このデビルスターズ・メモリの恐ろしいところは・・・メモリを使う者がミケーネスの戦闘獣や7大将軍・・クロノスの獣神将(ゾア・ロード)・・BF団の十傑衆・・果ては同盟の幹部連中なら一体どんな事になるのか、と言う点じゃ・・・」

「・・あんまり、想像したくないね・・・」ジェット・リンクが座って足を組みながら言った。

「・・ギルモア博士・・・『緯度0エリアコロニー』の人々に・・・助力を乞えないものでしょうか・・?・・」 ジョーが向き直って訊いた。

「・・難しいじゃろうな・・・あそこの人々は確かに高い科学技術力を持っているが・・・自衛以外には争わない・・絶対にな・・アテナが降臨した時・・引き取っても良いような打診があったそうじゃが・・・榎本さんは遠慮したよ・・・それだけ、巻き込みたくないんじゃろうな・・」

「・・α号のマッケンジー艦長とは・・知り合いなんですよね・・?・・」

と、ハインリッヒが訊いた。

「・・そうじゃが、会って話をしたのは今までに3回だけじゃよ・・・」

「・・そうですか・・それじゃ僕たちはもう暫く・・整備デッキに降りて、一仕事してきます・・・みんな、行くよ・・・」

ジョーが立ち上がって、皆に向き直って言った・・皆立ち上がって整備用ジャンプスーツの上着を着込む。

「・・ああ・・新宿に向かう1時間前には上がってくれんか・・・張大人が、夕飯を仕上げて置くからと言っとったからな・・・」

「・・そりゃあ楽しみだ・・仕事にも精が出ますよ・・・」

ジェットがそう言って、左手を軽く挙げると出ていった。

『財団』中央指令室・・・・

「・・本部長!・・発進指令が出たのは437隻です・・・」

「・・編成は・・?・・」

「・・オーディン・クラスが60隻・・・ソール・クラスが90隻・・・ユミル・クラスが110隻・・・キプロス・クラスが175隻です・・・そして、ラグナロクとヴァルハラにも、発進準備指令が出ました・・・」

「・・どちらが旗艦なのかな・・?・・」

「・・分かりませんが・・両方かも・・・?・・・」

「・・う・・ん・・陽動作戦を複数仕掛けるのなら、その可能性は高いな・・・グループ編成は判るか・・・?・・・」

「・・現状でそれ以上は・・・」

「・・分かった・・・その辺のところは、サロンミーティングで決まるだろう・・・」

「・・新宿と青ヶ島には、間に合いませんね・・・」

「・・そちらは向える部隊が、もう準備を進めているだろう・・・」   「・・ええ・・」

「・・そう言えば、グローバーはどうなっているんだ・・?・・」

「・・チャージは、まだ続いています・・・」

「・・発進準備指令は、まだ生きている訳だな・・?・・」    「・・はい・・」

「・・グローバーをパミールに向かわせるか・・ステーションに向かわせるかで・・・戦況は大きく違ってくるだろうな・・・」   「・・そうですね・・・」

「・・ところで・・こちらのAIにやらせていた推測の結果は出たかね・・?・・」

「・・はい・・現状でSSDОと好意的な関係を構築すると観られるのは・・やはり日本ですね・・・双方とも『やまと』との関係があるので・・それほど時間を置かずに接近する可能性が高いと出ています・・・」

「・・オーブについてはどうかね・・?・・」

「・・『やまと』はオーブとの関係を望んでいますが・・SSDОは主体的にどこかとの関係構築を望む、とは表明しておりません・・・ですが、日本とオーブは裏側で関係を構築していますし・・双方とも世界に非公表の秘匿戦力を保有しています・・・『やまと』もその事は知っているものと思われます・・・だから、日本とオーブの名前を同時に出したのでしょう・・・そうは言ってもオーブとSSDОが好意的な関係を構築するかどうかについては・・・短期的にはネガティブですが、長期的な予測ではポジティブポイント1.8ですね・・・」

「・・他の国や地域・自治体・団体・組織・民間企業などについては・・?・・」

「・・ACNが先鞭を付けましたので、追随するメディア・カンパニーが出て来ることは充分に予想できますが・・・具体的にどこの会社か?となると・・現状では難しいですね・・・ただ・・ACNが独占生中継した素材を、後追いで買おうとする局は複数出て来るものと思われます・・・また、SSDОの先進科学技術を欲しがる民間企業がコンタクトを取ろうとすることも予測できますが・・SSDОがまともに執り合うかどうかについてはネガティブです・・・あと気になる組織はと言えば、国連です・・事務総長がオープンチャンネルでの対話で、ある程度感化されているようですし・・・こちらも長期的な予測でポジティブポイント1.6です・・その他の対象については・・現状では予測が立ちません・・」

「・・分かった・・やはり日本については、政治的にも経済的にも軍事的にももう一歩踏み込んで牽制する必要があるようだな・・・サロンミーティングで使う資料に、その旨を書き添えて置いてくれ・・・その他については、引き続き同じレベルでの状況観測を幅広く行い・・・定期的に推測を立てるように頼む・・・」

「・・分かりました・・・」

M A C 01(中央指令室)・・・・

「・・司令・・ニューヨークからMネット経由で通信です・・・」

「・・直接通話か・・?・・」 「・・はい・・」 「・・繋いで・・」 「・・はい・・」

メインパネルにハロルド・フィンチの顔が映し出された。

「・・どうしました?フィンチさん・・グリア氏の件ですか・・?・・」

「・・お忙しいところをすみません、シエン代表・・実はそうなんです・・・」

「・・装置は、どこにも接続されてはいませんか・・?・・」

「・・どのようなレベルのネットワークにも、接続されてはおりません・・・不審な通信波や搬送波を送受信しているような形跡もありません・・・ですが、短い間隔でGPS信号の送受信は、継続しています・・・」

「・・なるほど・・・グリア氏を転送収容しても、位置情報が変われば装置が何某かを起動させる可能性がありますね・・・ポイントAに収容してもそれが起動しなかったと言う事は・・地球上にいるなら問題ないと言う事ですか・・・」

「・・そのようですね・・・」

「・・装置とペースメーカーをグリア氏から除去した場合・・グリア氏の心臓はどうなります・・?・・」

「・・実はそれについてマシーンに診断させたのですが・・問題ないだろうと言うpositive decision でした・・・」  「・・レベルは・・?・・」  「・・8.85でした・・」

「・・う・・ん・・でしたら、大丈夫でしょうね・・・信号送受信の間隔は・・?・・」

「・・30秒です・・・」

「・・そうですか・・それだけの間隔があるなら・・予めグリア氏とペースメーカー・・それに装置とその中のメディア・・・4つの対象にロックを掛けておいて・・・送受信後直ぐにグリア氏をこちらに転送収容して・・ペースメーカーと装置を転送でグリア氏から除去して・・ペースメーカーと装置を分離して・・装置からメディアを転送で回収する・・・事前に段取りを組んでおけば・・次の送受信までにこれ位はできるでしょう・・・」

「・・そうですか・・・その後・・グリア氏の処遇は・・?・・」

「・・眠ったまま、こちらで養生して貰って・・・大丈夫なようなら、そちらに転送で送りましよう・・・」   「・・分かりました・・・」

「・・落ち着いて貰えたら、ケタミンを処方してください・・」  「・・了解です・・・」

「・・他には何かありますか・・?・・」

「・・ACNのデミル社長が、同盟に狙われているとマシーンが出しました・・・」

「・・対処は・・?・・」  「・・トーマス君が5人連れて向いましたが・・・」

「・・そうですか・・ハンド・フェイザーと、パーソナル・フォースフィールドシステムの使用を許可します・・・勿論フェイザーガンは、人に見られないように・・フォースフィールドシステムは、レベル5で最小のものを社長には気付かれないように、身に付けて貰うようにしてください・・・こちらでも、社長はロックしておきます・・・急激な生命反応の低下を検知したら、転送でこちらに収容します・・・同盟に拉致されないように注意してください・・・」  「・・分かりました・・ありがとうございます・・・」

「・・いいえ・・・フィンチさん・・実は私からも、マシーンの生みの親である貴方に、意見を伺いたいのですが・・?・・」  「・・何でしょう・・?・・」

「・・今のサマリタンに真実を伝えた場合・・サマリタンは信じるでしょうか・・?・・」

「・・真実と言いますと・・?・・」

「・・この世界の真実・・・同盟や財団の事などですが・・・」

「・・恐らく・・・信じないでしょう・・・サマリタンは・・言うなれば意固地ですから・・・マシーンから見れば、欠陥の目立つAIです・・・」

「・・そうですか・・・それは少し残念です・・・それでは貴方の判定では・・・サマリタンには・・マシーンと同程度の知性や理性的な判断は、期待できないと・・?・・」

「・・そうですね・・・期待できませんし・・・無いと思います・・・」

「・・分かりました・・それでは引き続き、統合プログラムの構築の方を・・宜しくお願いします・・・」

「・・分かりました・・何を考えていたのですか・・シエン代表・・?・・」

「・・いや・・・サマリタンの知性や理性的な判断能力が・・もしもマシーンと同程度なら・・・マシーンを主体とした理性的で穏便な統合と言うか、融合が可能なのではないかと、考えたのです・・・そしてそれを、マシーンからサマリタンに提案してもらうのも、アリなのではないかと考えていました・・・」

「・・そうだったのですか・・・それは・・理想ですね・・・」

「・・そうですね・・・それでは、グリア氏が落ち着いた状態で眠ったら、連絡を下さい・・」

「・・分かりました・・」そこまで言って、通話は切れた。

「・・司令・・続けてで済みませんが、ターミナル2のギルモア博士からも通信が入っています・・・待機して貰っていますが・・」  「・・繋いで・・」  「・・はい・・」

メインパネル一杯にギルモア博士の顔が映る。

「・・どうも、ギルモア博士・・・どうしました・・?・・準備は進んでいますか・・?・・」

「・・準備は順調に進行中じゃよ・・・予定には余裕で間に合う・・・報せる事があって繋がせて貰った・・・先ず新宿への増援じゃが、門矢君と海東君も行くと言っとったよ・・・」

「・・そうですか・・それは心強い・・・他には何か・・?・・」

「・・ウチのメンバーが話していた事と、イワンが目覚めて語った事を併せての話なんじゃが・・・魔星が解放されると同時に・・同盟がその総てを回収するだろうと・・・」

「・・具体的な方法としては何と・・・?・・」

「・・ガイアメモリの種別に、個数限定で新しいカテゴリーを設定して・・108個の魔星に適性を合わせたОSを・・それぞれ個別のメモリ素体にインストールしておき・・魔星解放と同時に・・108個のメモリ素体を空にばら撒けば・・・」

「・・108個の魔星ガイアメモリの出来上がり・・・」  「・・そう・・・」

「・・ギルモア博士・・・イワンはいつその話を・・?・・・」

「・・つい先ほどじゃが・・・」

「・・ギルモア博士・・実は以前に・・ほぼ同じ内容での警告をマシーンが出しました・・・」

「・・マシーンが警告を出した・・?・・・と言う事は・・これはもう可能性ではなく・・?・・」

「・・はい・・もう既に108個の冥闘士(スペクター)メモリの素体は・・・存在しているものと思われます・・・マシーンの警告を受けて我々は・・翔太郎君とフィリップ君の協力を得て・・彼らが所有する8個のメモリと・・ダブルドライバーにある改造を施し・・少数ですが独自の・・カテゴリーを設定しました・・・」

「・・改造・・?・・それはまさか・・?・・」

「・・はい・・ガイアメモリのサイコフレーム・カテゴリーと・・サイコフレーム・ダブルドライバーです・・・」


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