機動戦史ガンダム 双眸のガーディアン   作:アルファるふぁ/保利滝良

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第8話 戦場と、星空に住む者達
8話Aパート


 

コロニーとは、植民地を指す言葉である。転じて、旧世紀に開発された、居住用大型宇宙建造物に与えられた名だ。後者はスペースコロニーとも称される。

 

宇宙に浮かぶ巨大な円筒の中には、人間が5桁ほど快適に暮らせるだけの設備が入っている。ゆえに、コロニーは非常に巨大となっている。仮にこれをそっくりそのまま地球に落とせば、未曾有の大災害を巻き起こせるだろう。

 

そんなコロニーが、地球圏と呼ばれる宙域に十万基。その半分以上が人間用の居住タイプ。さらにその周辺には、新資源を内包した小惑星群が存在する。

 

そんなコロニーの一つ、『サンバルタ』の周辺にて、無数の光点があった。光点同士は光線や物体のやり取りをしているが、発射されたそれらをお互い避けている。

 

彼らが今やっているのは宇宙戦争だ。ビームやミサイルを撃ち合い、敵を倒すための行為である。

 

攻撃側はコロニー連盟。連邦所属のコロニーであるサンバルタを攻略するため、艦隊がモビルスーツを展開している。

 

一方の防衛側は地球連邦。コロニー連盟からサンバルタを守るため、防衛部隊が次々と出撃している。

 

「本艦はこの場で待機、砲撃は禁ずる!撃ったらこっちの位置がバレるからだ!いいか、砲撃は禁ずる、わかったか!」

「モビルスーツ各機はそれぞれ現在の位置をキープ。深く切り込む必要はありません。」

「GT-1は引き続き遊撃を頼む。敵部隊を少しずつ潰して回るんだ。防衛隊の被害を抑えてくれ。」

 

ペガリオのブリッジルームもてんやわんや。補給を受けるために訪れた場所で、まさか敵の襲撃が始まるとは思ってもみなかった。直ちに出せる機体を出し、サンバルタ防衛隊の支援に回っている。

 

艦長が大雑把な指示を出し、副艦長が冷静に指揮し、セイヴはGT-1に命令を下す。砲撃をしていないため、外から見れば至って落ち着いているだろう。だが、その内部ではクルー達が忙しなく動いている。

 

そんな母艦ペガリオを背に、3色の軌跡を描いて飛ぶ機影達。GT-1の誇るガンダムチームだ。

 

青い部分塗装のスマイリードッグ。緑の部分塗装のスリーピーラビット。そして赤い部分塗装のダンシングシープ。

 

そのパイロットは、すべて女性だった。

 

「前方、敵部隊。」

「アリス!」

「了解。」

 

4機の敵が集まって近付いてくる。見た目も体型も特に特徴がないそれらは、連盟の主力機ガードⅢだった。全て青く塗り上げられている。

 

そこへ撃ち込まれるビームの塊。巨大な砲撃。当たればタダでは済まぬであろうものだ。

 

「散開っ!」

 

雑兵とはいえ、訓練を受けた軍人である。正面から迫る射撃のいなし方は知っていた。

 

散り散りになるモビルスーツ。虚空を焼くビームキャノン。ガードⅢ部隊はすぐさま態勢を立て直し、ガンダムチームに銃口を向けた。

 

「二人とも、後ろに来て!」

「了解。」

「はいっ。」

 

4発のビームライフル弾が飛んでくる。防ぐのは、3つの盾。ショコラのガンダムのものだ。

 

集中砲火ということは、狙いがわかりやすいということ。そこに防御を集中すれば全て防げる。

 

ビームが盾を焼く。しかし、本体は全くの無傷。

 

「ありがと!」

「いいから行って!」

 

ショコラ機の後ろに隠れていた赤と白の機体が、ブースターやスラスターを吹かして陣形から離れる。そのスピードはその場のそのモビルスーツよりも早い。

 

青の四機は、その方へちらりと視線を向けた。小隊から一機離れたあの機体は、一体何をするつもりだ、と。その一瞬が隙になった。

 

ミサイルが迫る。青の装備のアリス機が放ったものだ。複数の弾頭が、ガードⅢに向かってくる。

 

「敵がこっちに……うわぁっ。」

 

敵機とミサイルのどちらに注意すれば良いか一瞬悩んだ連盟のパイロットは、ミサイルを受けて散った。爆発によって飛び散る破片。

 

他三機はミサイルを交わそうと試みる。そこを、メリーは見逃さない。ビームライフルに対応した右手レバーのトリガーを三度、押した。

 

連邦の次世代機ガンダムのFCSは高性能だ。コクピット、脚部、頭部、狙った場所へ弾を送り届けた。

 

被弾でできた隙。スマイリードッグのミサイルが、またも敵機を捉えた。

 

砕け散る連盟モビルスーツ小隊、それを視認して、ガンダムチームは次の敵を探し出す。

 

「敵小隊沈黙!」

「最寄りの敵部隊は私から見て五時方向。データ送る。」

「サンキュ、アリス!あっ、友軍がやられてる……。」

「これはコロニーの防衛部隊?」

「手酷くやられてるわね…ペガリオのセイヴ大尉、こちらGT-1のショコラ。友軍が敵の攻撃を受けています。援護の許可をください。」

「頼んだ。だがくれぐれも墜とされないでくれ。生きて戻ってくれ。」

「了解!」

「了解。」

「はい、了解です!」

 

三機のガンダムが、宇宙空間を突き進む。連盟の艦隊はいまだ逃げるそぶりを見せず、コロニーを打たんと前進している。

 

ペガリオはサンバルタをあてにしてここまで来た。ここで敵を退けねば、補給は絶望的だ。

 

「先行する。全速力でいくよ!」

「一人じゃ無茶よ!こっちに合わせて……。」

「二人は私に構わず行って。ひたすら撃ってるから。」

「わかった。私が撹乱、ショコラが護衛、本命はアリスの砲撃!どう?」

「それで行きましょ!メリー、行って!」

「りょうか〜い!!」

 

レーダーには最初から見えていたが、目ではっきり見える距離にまで来ると、連盟艦隊はそこそこの規模でしかなかった。大小の宇宙軍艦が7、8隻。コロニーに速攻をかけ、素早く制圧するつもりだろうか。

 

実際、防衛部隊はかなり押されている。正面から来る敵の猛攻になす術なくじりじり後退していた。

 

だが、正面に集中しているということは、側面に意識をやっている余裕がないはずだ。そこを突けば、3機でも相手取れるかもしれない。

 

敵艦の脇腹がはっきり見える。このままぶつかるつもりで、メリーは突き進んでいた。視界の外側を星々が流れていく。だが、視点の中心にある敵艦隊はそこを動かない。

 

その少し後ろでこれも全速力で進んでいるのは、ショコラのスリーピーラビットだった。両手に持ったものとサブアームのアームズシールドが保持するもの、四門のビームガンを、しっかりと見据えた敵に対して構える。

 

さらに後ろには、ビームキャノンを向けたスマイリードッグがいる。メインカメラ、FCS、ロックオンシステムの3つが連邦技術部渾身の新型コンピュータによって99.9998%の同期を成し、今、アリス・サカモトの向こうにいる連盟の軍艦を狙う。

 

射線上から、アリスの同僚二人がどいた。放たれる巨大なビーム塊。両肩にあるビームキャノンの両方が火を吹いた。寸分違わず目標へ進んでいくビーム。それを追うガンダム二機。

 

「弾を惜しむな!圧倒せねば数で劣るこちらが不利だ!」

「艦長、モビルスーツが右翼から接近してきます!」

「前に注力しているのがバレたか……機銃担当は対空砲火急げ!」

「熱源きます!」

 

ビームキャノンは敵艦の横腹を貫いた。グレーの軍艦には大きな二つの穴が空き、射線上の全ては膨大な熱で溶け去った。しかも、どうやら重要な機関をやられたようで、被弾直後に砲撃を止めて沈黙している。

 

「命中確認、敵艦沈黙!」

「了解。砲撃を続ける。」

 

他二人がさらに進んでいくのを見据え、アリスはさらにトリガーを引いた。ビームキャノンが敵艦を貫く。煙を吹く連盟の宇宙戦艦。

 

「ペルガ轟沈!ペルガ轟沈!」

「オルデラ機は何をやっているんだ!砲撃機を迎撃させろ!」

「撃沈されたバザールから救命艇が放出されています、艦長どうしますか。」

「今はSOSに構ってる暇はないんだよォ!」

 

ダンシングシープの隣を、ビーム塊が通り過ぎる。砲撃が敵艦を貫徹する度、コロニーの方へ撃たれるビームやミサイルが目に見えて減る。

 

艦隊へ到達する頃には、敵艦は5隻しか残っていない。このまま一気に全滅だ。

 

だが、そう簡単にはいかない。ダンシングシープの正面方向から青い機影が飛んで来る。

 

「えっ!?」

 

メリーは思わず、シールドを突き出した。ガンダムの左腕に伝わる衝撃。攻撃を受けたのだろうか。

 

青い敵機は、螺旋のような軌道を描きつつ、ガンダムを飛び越えた。宇宙空間を走る青い竜巻。その背中へライフルを向けるが、敵の動きが独特だ。ロックオンサイトの中に入れてもロックが定まらない。

 

でたらめに撃つ。それが当たるわけもなく、青い敵はメリーを無視してショコラへ襲いかかった。

 

青いモビルスーツが両腕のリボルバー型ビームガンを浴びせかける。突然の攻撃に、反撃すら許さない連射。スリーピーラビットには防ぐしかない。

 

「こいつ、ブルー・タイフーン……!」

 

青い機体色に、螺旋機動。ショコラの脳裏には、一人の連盟エースが浮かんだ。相手がそのブルー・タイフーンなら、他の雑兵とはワケが違う。

 

だが、こちらも新型3機。未だ戦場のニュービーとはいえ、彼女らは経験も積んでいる。落ち着いて立ち向かえば勝てない道理はない。

 

「二人とも、こいつはエースよ!ほっといたら味方が危ない。」

「了解っ!3人で畳み掛ければ……。」

「ターゲット視認。砲撃支援でいい?」

「アリスは距離を保って!私達が……っ!」

 

口頭の指示の最中、ぐるぐるしていたブルー・タイフーンが突如スリーピーラビットへ向かってきた。回転する軌道を描きつつ、しかし銃口は相手をしっかり捉えている。

 

ビームリボルバーの弾がスリーピーラビットのシールドを抜けた。防御が間に合わず、本体への被弾を許した。

 

緑色の追加装甲が、焼かれて溶ける。熱による継続ダメージを本体に伝播させないため、被弾した箇所の追加装甲は速やかにパージされる。

 

「当て……られた!」

「ショコラ!こんのぉ!」

 

メリーがトリガーを引く。しかし狙いが定まらない当てずっぽうなビームライフルでは、エースにかすりもしない。相手の激しい軌道にロックオンが追いつかない。

 

スマイリードッグのビームキャノンも避けられる。高速の螺旋軌道相手では、さしものショコラも命中させるのは厳しい。

 

「外した、ごめん。キャノンはもう使えない。」

「私がやる!」

「メリー!何をする気!」

 

ダンシングシープが、腰に手を伸ばした。そこには通常より大きなビームサーベルがあった。

 

どんなに速くとも、近付いて、刃渡りの長いハイパーサーベルで薙ぎ払えば、致命打を確実に与えられる。ショコラもアリスもブルー・タイフーンにあしらわれた。この一振りを避けられれば、あの青いエースに太刀打ちする手段はない。

 

狙いは交差する一瞬。そこに一刀を叩き込む。

 

螺旋軌道で動き回るブルー・タイフーン。二丁のビームリボルバーを仲間に浴びせつつ、ぐるぐる回る動きは一瞬たりともストップしない。

 

メリーは、相手が描く竜巻の中心へ飛び込む。敵が狙いをダンシングシープに変えた。

 

「FCSが使えないのなら、これで……!」

 

メリーがコクピットのコンソールを叩く。武装が変更され、右腕のライフルは放り捨てられた。切り札を引き抜き、後ろ手に構える。

 

前回と、前々回。そのどちらでもハイパーサーベルは彼女のフィニッシャーとして大いに役立った。今回もいけるはず。

 

背中に接続された赤いブースターユニットが、極大の炎を吐き出す。それはガンダムに大きな推進力を与えた。

 

「待って、無茶よ!」

 

ショコラが思わず口走る。彼女は、メリーがやろうとしていることに気付いたのだ。だがそれは無謀だ。ハイパービームサーベルがいかに強力な装備とは言え、激しく動く相手に近接武器を当てることなど、できようものか。

 

アリスも強張った顔でメリー機を見た。ブルー・タイフーンとダンシングシープの距離は400mを切った。もう彼女の賭けを止めることができる距離じゃない。下手に攻撃を撃ち込もうものなら、メリーに当たる。

 

追い詰められたが故の無茶な戦法。目の前の敵が仲間の戦術を淡々と乗り越えてきたから苛立っているのだろうか。少なくとも今のメリーからは、軍人として冷静な判断ができているとは言い難かった。

 

メリーの方へ向かって来る青い機影。渦の機動を描きつつ、こちらに迫る、迫る。

 

ガンダムがサーベルを振るった。アイドリング状態からすぐさまアクティブとなったハイパーサーベルは、その先端から巨大なビーム刃を出現させ、見事宇宙の虚空を払った。

 

避けられた。コクピットの中、メリーの目が開かれた。瞬間的な絶望感。真横を通り過ぎる敵。

 

これを避けられたら、やられる。敵は通り過ぎた後、一瞬振り返り、こちらの背中にビームガンを撃って来るのだ。今の攻撃を避けられたメリーは相手に背中を向け、大いに隙がある。そこに射撃を加えれば。

 

待て。このイメージは自分のものじゃない。

 

「……ふぅッ!!」

 

脚部、腰部、背部。全てのスラスターノズルの推力で以ってガンダムが回れ右する。左腕のシールドを前に突き出し、ハイパーサーベルは握ったまま。

 

さっきまでダンシングシープの背中があったところ、つまり今メリーが構えているガンダムのシールドに、ビーム物質が次々着弾する。

 

もうこの盾の防御力は限界。意識の隅でちらりとそう考えた。その瞬間、メリーはガンダムの右腕を動かした。

 

ハイパービームサーベルは、ガンダムのシールドごと青い敵機を切り裂く。シールドの裏で振り抜かれたサーベルの軌道を、ブルー・タイフーンは読み切れなかった。

 

両足を失ったガードⅢのカスタム機と思われる青い機体は、螺旋機動をやめて直進機動を始める。戦うのではない。その逆、戦略的撤退を始めるのだ。

 

「あ、待て!」

 

メリーの声が届くはずもなく。敵機が向こうへ去っていく。

 

渦を描いて飛び回るスピードを持つだけあり、ブルー・タイフーンはあっという間にガンダムチームを引き離す。そちらの方を見やれば、艦に大打撃を受けた連盟艦隊も、コロニーから離れて行っている。

 

「敵……撤退していきます。セイヴ大尉、追撃はしますか?」

「いや、止そう。双方損害が酷いし……我らペガリオの物資も限界だ。これ以上やるのは、ダメだ。」

「了解、コロニー周辺で待機します。」

「そうしてくれ。ああいや、まだ仕事があるな。撃沈した味方艦のクルーの救助を頼む。」

「了解です。」

「了解……メリー?」

 

通信を終え、戦闘状態を解除するアリスとショコラ。メリーだけは、会話に入ってこない。いつもの彼女らしくない大人しさ。

 

だが当の本人は、その内の動揺を必死に抑え込んでいた。

 

「いまのは……何?」

 

あの時、ブルー・タイフーンへの一振り目を避けられた直後に、脳裏に浮かんできたあのイメージ。あれは自分の中から生まれたものじゃない。まるで、敵の思考を受診して把握したような。

 

未知の体験への恐怖。追い詰められた時の絶望感と合わせ、この戦闘は、メリーの心中に影を落とす。

 

ガンダムが見つめる先で、連盟の艦隊が、推進材の火の跡を残しつつ、宇宙の外側へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

ブルー・タイフーンと呼ばれた男、レフェール・オルデラ。愛機ツウィスターのコクピットで、彼は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

不機嫌の理由は、今回の任務だ。彼とその部下及び仲間の部隊は、地球衛星軌道を周回し、地球から登ってきたり地球へ再突入したりしようとする連邦の部隊を叩くのが主任務である。だが、今回の任務はわざわざその周回コースを大幅に外れ、地球連邦側のコロニーへと攻撃を仕掛けるというものだ。

 

向き不向きという次元ではない。全くもって意味不明である。軍上層部の高度な戦略的考えは全くもって理解できない。

 

おかげで当初10隻あった軍艦は今やたったの半分。損傷を鑑みるに、次の作戦で使えるのは、さらに減るだろう。レフェールの心中には不満と憤りが渦巻いていた。

 

だが、何も言わない。ここで泣き喚こうが叫び狂おうが、いち軍人である自分一人の言葉が何も変えることもできないのはよくわかっている。彼はプロの軍人で、プロの軍人は指揮官や将校の命令に対して大変聞き分けが良いものだ。

 

そうでなくては、軍という巨大な暴力装置は成り立たない。歯車が支えなければ、如何しようもない。

 

「レフェール中尉、ご苦労だった。帰投したらゆっくり休んでくれ。」

 

目前に現れたのは、見慣れた黄色い顔。ブルー・タイフーンの専用機の所属艦であるブルガー級ペルラの艦長様。レフェールの上司にあたる。

 

ビデオ通信のカメラに映る彼は、尊大で、ブリッジの艦長席に踏ん反り返っているように見える。実際そうなのだろう。

 

「了解です。その前に一つだけ報告があります。」

「報告?」

「先ほど接敵したモビルスーツのことです。」

 

コクピット左側の壁に埋め込まれたコンソールをポチポチ押す。戦闘の動画データを簡易的に編集し、指定されたアドレスに送りつけるデバイスだ。報告とは億劫なもので、作戦後のヘトヘトな場合は重宝する。

 

動画が送られたのに気付き、艦長は分厚いコロニースーツから端末を取り出した。

 

「……二本角と二つ目のモビルスーツ?三機もか。」

「新型でしょう。今まで連邦にいた機体には、そんな特徴はない。」

「新型試作機が、部隊単位で運用されている…とみるべきだろうかこれは?」

「パイロットはそれほどじゃありませんが、単機ごとの性能が凄まじい。一機はフネを複数沈め、一機はいくら食らっても壊れそうにないシールドを持ち、一機はツウィスターの両足をでかいサーベルで切り落としました。」

「ペルガとバザールを落としたのがたった一機!?いや、君が大きな被弾をしたのも驚きだな……連邦はそんなものを量産しようとしているのか!」

「まだわかりません。しかし可能性は高い。」

 

歪んだ顔に脂汗をにじませ、艦長は唸る。敵の新たな情報に、恐れおののいている様子だ。

 

「これは上層部に早く報告せねば……それに、残存戦力も足りん!」

「でしょう。なので我々はいつもの軌道周回パトロールに戻って、サンバルタとか新型の相手は他の艦隊に……。」

「上に掛け合って味方を集め、一斉に囲んで潰す!実戦テスト中なら好都合だ。通信終わり!」

「……マジか。」

 

名を知られたエースが、目を覆ってため息を吐く。艦長殿はこの状況を、ピンチではなくチャンスだと捉えているらしい。本作戦において上に何の抗議もしなかった男だが、まさかここまで上に惚れているとは予想外だった。脳みその代わりに忠誠度メーターでも入っているのだろうか。

 

「ま、俺も…ヤツを笑えねえか。」

 

自分だって軍には口答えしない。それを思い出して、レフェールは自嘲する。

 

「次の出撃で死んじまいそうだな、俺ぇ……。」

 

次の作戦、仮病で休もうか。いや、母艦が前線に出れば危険度は変わらない。そんな無駄な思考を重ねながら、連盟エースはブースターペダルを踏み込んだ。

 

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