機動戦史ガンダム 双眸のガーディアン   作:アルファるふぁ/保利滝良

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第11話 彼方の記憶、貴方の記憶
11話Aパート


闇が全てを覆う、漆黒の宇宙。見渡す限りの星達も、黒い景色の中では寂しく輝いているように見える。

 

「おい!星の光に惹かれてどっか行くなよ」

 

ロマンチックに星を眺めていたサブローを、若々しくも野太い声が咎める。

通信機越しなのにどうして星に惹かれていたとバレたのだろう。

 

「大丈夫、気を付けてるす!スペースデブリにはならないすよ」

「お前とその機体が行方不明になったら、回収するのは俺たちなんだぞ!ったく…」

 

今、サブローとガンダムオーガは、ナルカ共和国艦隊の外縁を周回していた。

狙いは二つある。一刻も早くサブローをオーガに慣らすのと、オーガの索敵性能を活かし、艦隊を狙う敵機の早期発見のための偵察パトロールだ。

 

「外周終わり!帰還しろ」

「ウーッス。平和っすね」

「もうすぐ地球だってのにな」

 

帰還指令を受け、ガンダムオーガは振り返った。

そして、背部の大型バーニアスラスターを吹かし、猛スピードで艦隊の中心へと赴く。

サブローは、彼のいる宙域に最も近い星を見る。

 

「地球…」

 

青い海の中に緑や土色の大地が浮き、その上に塗されたように白い雲。

ナルカ艦隊の進路には、かの星が静かに鎮座している。

 

 

 

 

 

執務室の中で一人、ソーラ女王は画面付き端末を握って作業をしていた。

画面を見つめ、画面上にペン型ツールでサインを行い、画面上端送信ボタンを押す。

これで今日の書類確認は終わりだ。本国の大統領と分担しているとはいえ、国家元首である彼女にはやるべきことが多い。

端末の電源を落とし、デスクから伸びるコードを刺す。そして充電状態となった端末をデスクの上に優しく置いた。

その直後、ドアの方から軽快なノックが聞こえた。

 

「誰ですか」

「ソーラさん、サブローッス。入っても良いスか?」

「サブローですか。えぇ、どうぞ」

 

ドアが横にスライドし、短髪の青年が部屋に入る。地球生まれ地球育ちのサブロー・ライトニング。

ソーラに救われ、ソーラに雇われた、元百姓の若者。

 

「お疲れ様ッス!」

「今日は早いですね、何かあったんですか?」

「やることが少なかったんで、あっという間に自由時間だったんスよ。オーガの整備を手伝って、艦隊の周りをグルグルするだけ」

「そうですか。私も先ほど大方終わったところです。今日はおしゃべりをしましょうか」

「ウッス!」

 

サブローは、部屋の片隅にあったパイプ椅子を組み立てた。ソーラの執務室には彼女用のもの以外は椅子が無い。

よって、こういった場面のためにパイプ椅子が用意されたのだ。

椅子の上に座るサブロー。体格のせいで少し軋むが、全く気にしない風だ。

それだけ、ソーラと話をするのが楽しみなのだろう。

 

「昨日、あるビジョンを見ました」

「ビジョン?」

「はい。おそらく、エスパー能力による未来予知です」

 

しかし、ソーラは神妙な面持ちで言った。

にへらとしていたサブローもその雰囲気を感じ取ったか、たちまち表情を引き締める。

 

「地球にて、戦闘が起きます」

「戦闘って…別におかしいことはないんじゃないすかね?そのために地球に行くんだから」

「そうですね、現在我々は地球の戦線に合流しようとしています。しかし、ビジョンの内容には続きがあります」

 

デスクを挟んで、ソーラとサブローは見つめ合う。年齢自体はサブローの方が年上だが、ソーラの神秘的な雰囲気や物腰はそれを感じさせない。

そんな彼女は目を細め、厳かに話し続ける。

 

「ビジョンの中に浮かんだのは、ガンダムでした」

「ガンダムって…オーガじゃなく?」

「オーガではありません。二本の角と、二つの目。白いモビルスーツでした」

「それって…連邦のやつじゃないすか!ってことはそれが敵なんすね?」

「ええ、連邦はいずれガンダムを戦場に投入してくるでしょう。しかし今の問題はそこではありません」

「いやーガンダムが相手ならオーガでもキツそう…え?そこじゃないって…」

「ガンダムの向こうに、銀色の髪の女が見えたのです。不気味な感覚がしました。気を付ける必要があります」

「銀色の髪の女に気をつけろ…」

 

サブローは首をかしげる。銀髪の女とは一体なんなのだろうか。敵か。

敵だとして、どうやって判別をつければいいだろうか。まさか、その女がそのまんま出てくるということはあるまいが。

ソーラさんの言うことなら間違いはないのだろうけれど、と唸る。気をつけろと言っても気をつけようがない。

 

「なにぶんエスパー能力による予知です。不確かな面が強いので、『そういうこともあるかもしれない』という形で、頭の片隅に置いておけばいいでしょう」

「そう…すか。かもしれない、って感じで…」

 

わかったようで、わからない。脳細胞を使ってなさそうな顔でサブローは頷く。

うっすらとした沈黙。二人の間を、微妙な空気が流れて消える。

 

「話題を変えましょうか。何か、お話の題材は思いつきますか、サブロー」

「そっすね…じゃあ、ソーラさん」

「はい」

 

話題、と言われて、サブローは一つ思いついた。そういえば、自分はソーラのことをよく知らないではないか。

いい機会だ、とサブローは思った。これを期に、ソーラのことを知ってみたい。

 

「ソーラさんが女王になるまで何があったか、知りたいっす!」

「そうですか、私が女王になるまでの経緯、ですね」

 

ソーラは頷いて、サブローの目を見て、口を開いた。

 

「…ところで、サブローには兄がいましたね」

「え?あ、はい。二人いたんすよ」

「私にも兄がいました。ずっと前の話ですが…」

 

ソーラは、あからさまに話題をそらした。

そして切り出したのは、彼女自身の家族の話。サブローは首を捻ったが、ソーラは話し続けた。

 

「とても勉強熱心で、私の父母も、兄を次期王として育てていました。様々なことに精通し、完璧人間といえる人でした」

「へ〜。すごい人だったんすね」

 

相槌を打って、サブローはもう一度首をかしげた。何故、そのお兄様ではなく、ソーラがナルカ共和国のトップに立っているのだろう。

その答えは、ソーラ本人が口にした。

 

「兄は十年前…戦後の混乱で行方不明になってしまいました」

「えっ」

 

サブローは思わず呻く。

十年前、といえば、第一次地球圏戦争だ。コロニーと地球が最初にぶつかり合い、最初にモビルスーツが投入された激戦である。

コロニーセンチュリー115年に終結したこの戦争だが、その10年後に第二次地球圏戦争、つまり今起こっている戦争が開戦した。

10年前は終戦直後。その中で行方不明ということは、難民や戦後処理のゴタゴタの真っ只中だ。

 

「地球への旅行の最中での出来事です。兄はホテルからいなくなってしまい、付き人による捜索も実らず…戦後の状況で満足な捜索隊も出せずにいました。それから5年して、兄の捜索活動は完全に打ち切られ、様々なことが起きました」

「さ、様々なこと…」

「まず、母が…先代の王妃が心労で病を患い、この世を去ってしまいました。私が12の時です」

 

そこまで聞いた時にはもう、サブローの顔は真っ青になっていた。ソーラの話をよく聞いている証拠だ。

彼女の辿った凄絶な足跡を想像して、震えている。

 

「そ、そ、それから…それからどうなったんすか?」

「そして、父も、妻子を失ったことから、徐々に健康を損なっていきました。その時に私は決意したのです」

 

緑の混じった青い髪が揺れる。

ソーラは目を細め、閉じた手に視線を落とした。楽しげな雰囲気は一切ない。

その小さな唇は、小さく息を吐き、ゆっくりと、言うべき言葉を紡ぐ。

 

「私が、私の国を救うのだと」

「そのときに…」

「はい。王位を継承し、女王としてナルカ共和国に尽くすことになりました」

「お、お父さんはどうなったんすか?ソーラ様のお父さんは?」

「死にました」

「えっ…」

「私に王位を渡したあとのことです。この戦争が始まったことにより、精神的ショックが元の急性心不全でこの世を去りました」

 

言い終えた後、顔を上げたソーラは、凛とした表情で、前を見据える。

女王として、国を背負う。兄が就くはずの大きすぎる仕事。だがソーラはそれに対し微塵も物怖じしない。

それが、女王ソーラ・レ・パール・ナルカの決意であるというように。

サブローは、ブルブルと震えだす。もはやソーラと目を合わせられず、顔を伏せて肩を揺らしている。

 

「サブロー?」

 

ソーラは、サブローが泣いているのに気が付いた。椅子に座った男の膝に、数滴ぶんのシミが浮かんでいた。

サブローは大柄な男だ。年もソーラより一つ二つ上だ。だが、サブローはみっともなく泣いていた。

 

「ずいま…っぜぇんっ…ソーラさん…」

「…私の人生に、同情してくれたのですか」

「ずいまぜん…!ずいまぜん…」

 

熊のような泣き声をあげながら、サブローは服の袖で顔を拭う。

ソーラは、自分の過去を話した後は至って冷静であった。まるで物言わぬ絵画のようで、小揺るぎもしない。

だが、サブローは違った。幼い時に家族を失い、少女と言える年でありながら国ひとつを背負う覚悟を背負ったソーラの前に、どうしても涙を抑えられなかった。

 

「良いのです、謝る必要はありません。涙を拭いて、顔を上げてください」

 

兄が消えてしまった時も、母が死んだ時も、父の葬儀でも、ソーラは涙を落とさなかった。女王として生きるメンタリティが備わっていたからだ。

だが、愛していた、尊敬していた家族がいなくなっていく悲しみは、サブローが代わりに受け止めた。

代わりに涙を流してさえくれた。

 

「サブロー、口笛を聞かせてください」

 

ソーラは、しゃくりあげるサブローに呼びかけた。

 

「あなたの口笛を」

「…っはい」

 

サブローは口笛を吹き始めた。物悲しいメロディでありながら、力強さを感じさせる曲。

サブローの父親が好んだという曲。死んだ兄も好きだった曲。

ソーラは目を閉じてそれに聞き入る。その時に浮かんだのは、本心からの笑みであった。

 

 

 

 

赤色をメインに豪華に盛られた装飾品の数々。絨毯や卓上ランプ、大きな執務机と座り心地が良さそうな椅子。

今日も今日とて、ダーリックはデスクの上で思案を募らせている。

傍の小袋を開き、中の菓子を手に取る。それはクリームサンドビスケットだ。

口に入れる。サクサクとした食感と、ふんわりとしたクリームの甘みが、口いっぱいに広がる。

そして、疲れた脳細胞を糖分が駆け巡る感覚。ドラクル公はこの感覚が嫌いではなかった。菓子を食う時に生まれるこの感覚こそが、彼をコロニー連盟の頂点に導くからだ。

 

「ダーリック様」

「待っていたぞ。首尾はどうだ」

「それが…ブルー・タイフーンが撃墜され、我が方の艦隊が壊滅状態に」

「ほう」

 

中空投影型モニターに映し出されるショートヘアの女。ダーリックの部下だ。

彼女の戦況報告を、ダーリックは興味深げに聞いた。

 

「クアロ合衆国のエースなどどうでも良い。所詮一つの駒だ。それで、我が方を打ち破った艦隊は何処に?」

「はい。駐留していたコロニーに戻ったようですが…」

「コロニーに?連邦のか」

「はい、サンバルタというようです」

「そのサンバルタにいる艦隊は、強いのか?」

「そのとおりです。二つの角と二つの目を持つ新型モビルスーツがいた、と…生存者の証言ですが」

 

両手を組んだダーリックは、数度頷くと、納得したような顔をして、頭の中でシミュレートした。

敵を欺き、味方を欺き、如何にして己に利するものを増大させ、そうでないものを削り取っていくか。その方策が、ドラクル公の頭で組み上がっていく。

 

「部隊再編はできますが…如何しますか?」

「せずともよい。その艦隊にはもう手を出すな」

「よろしいのですか?」

「ところで、数日前までナルカ艦隊と合流していたな。向こうの様子はまだ分かるか?」

「は?はぁ、遠距離レーダーによれば、地球への進路をとっています。このままなら、連邦軍の人口衛星とぶつかるようですが」

「そうか。では貴様たちはダイダロスクレーターにでも行ってゆっくり休め。以上」

 

そういうが早いか、モニターの通信は切られ、新しい通信が開始される。

今度は眼鏡をかけた気弱そうな中年男性が現れた。これもダーリックの部下だ。

 

「だ、ダーリック様!どのようなご用件で?」

「潜り込ませた傭兵部隊の様子はどうだ」

「問題ございません、ええ。忠実な仕事ぶりであると…信頼されています、喜ばしいことです」

 

ダーリックは失笑する。今会話の中に出たのは、ダーリックが連邦へのスパイとして送り込んだ傭兵のことだ。

連邦側にいるということは、奴が今撃っているのは連盟の部隊だ。喜ばしくもなんともない。

だが、スパイと疑われるよりかはマシだ。

 

「キューバ近くに動かせるか」

「ええ、まあ。できなくはないでしょうが…どうしてです?」

「虫捕りだ」

「ああ成る程…了解しました、動かします」

 

中年は手元のリストを捲り上げた。その中に、アールデン帝国が送り込んだスパイの情報があるからだ。

ダーリックが今話しているのは、アールデン帝国諜報部。要するに、スパイの巣。情報を撹乱し、操作し、世界を意のままに操るために暗躍する者共が集まっている。

無論、ここにアクセスできるのはダーリックだけで、その上他の何者もその場所や連絡方法を知らない。

事実上の、ダーリック専用のスパイ達だ。

 

「それから、リークをしろ。届け先はコロニー・サンバルタ」

 

リーク、とは無論情報のリークのことだ。

通常、スパイといえば破壊工作や情報の操作隠蔽、といった使い方をする。しかし、ダーリックは敢えて、連邦軍に潜り込ませたスパイを使い、自分達コロニー連盟の情報を送っている。

その情報によって連邦がどのように動くのか、どういう情報をもたらせば連邦が動き出すか、ひいては好きなように連邦を動かすにはどういった情報が入るか。

ドラクル公の策略は、味方を動かすという段階を超えていた。敵さえも、自らの意のままに操っている。

 

「どのような情報を渡すのです?」

「ナルカ共和国艦隊が、人工衛星に接近中。地球降下を図っている模様。全力で阻止せよ。他の部隊を待つな」

「了解です。そのように情報を掴ませておきます」

「手早く頼む」

「はい」

 

またもや通信が切れる。中空投影型モニターは消え、ただ虚空が残るのみ。

その頃には、ダーリックは小袋の中身を食べ終えていた。

デスク据え置きのウエットティッシュで指を拭き、デスクを軽く拭き、椅子のそばに置いたゴミ箱へ、ビスケットの入っていた小袋と共に放る。

 

「手勢が優秀で助かるな」

 

ダーリックは思わずそう呟いた。

ここまで楽に事が運んだのは、ひとえにアールデン帝国諜報部の実力あってこそだ。ドラクル公の覇道を支えているのは巨大な軍事力ではなく、忠実なスパイである。

 

「ナルカの女王、か」

 

ダーリックは、コロニー連盟の同盟国にはスパイを潜り込ませてはいない。理由は二つある。

一つは、スパイを潜り込ませているのが判明した時の制裁を恐れてのことだ。味方の国へスパイを送り込む国など敵でしかない。同盟国全てから袋叩きにされるリスクを侵すくらいなら、最初からいなくて良い、というわけだ。

もう一つは、その必要がないからである。連盟と連邦が戦争を行なっている今、参戦している各コロニー国家軍同士で、頻繁に定例会議が行われている。内容といえば、どういう軍事行動をとるから共同作戦を行えだとか、独自の作戦をとるので邪魔をするなだとか、そういう話だ。軍事作戦情報が連盟の中で共有されるので、スパイを送る必要が薄い。

ダーリックは定例会議においてナルカの女王ソーラと邂逅したことが何度かあった。

小娘とは到底思えぬ、冷たい機械のような為政者の顔。だがその奥には、自国の未来に関係する遠大な企みを感じさせた。

それは恐らくダーリックの利にはならない。ドラクル公はそれが気に食わなかった。

あの小さな女王は言った。例えどんなに仲が悪かった時期があろうとも、コロニー国家同士で争える段階ではない。と。

 

「女王よ。もはやコロニー連盟同士での争いは、今も行われているのだ…」

 

ダーリックは再び思案を募らせる。

将来の敵を排除し、自らがコロニー連盟、ひいては人類全体の頂点を手にするために。

 

 

 

 

宇宙の暗闇に浮かぶ青い水球。千切れた雲やいくつもの大陸が、綺麗な模様にも見える。

それを見る人間は、誰もが醜い戦争を意識しているというのに。

 

「こちらグランガン、カワセ艦長だ。連邦軍の衛生要塞が見えた。各部隊及び艦隊は現在のポジションを維持!7分後に一斉射を行え。降下部隊は後方へ、降りない連中は彼らのために全力で戦え!」

 

がなり声が、ナルカ艦隊の全てに通る。簡潔な音声通信。

それを聞き流しながら、クインスローンⅡ世の甲板に、黒い物体が現れる。

オーガ。黒い体躯、赤い瞳、金色の角。おとぎ話の怪物が現実に現れたような風貌。

それが見据えるは、地球と彼を結ぶ位置に浮く、連邦軍の人工衛星だ。

 

「すぅーっ…」

 

コクピットの中で、サブローは深呼吸をして、両手を組み合わせる。それは祈りだ。

前回の出撃から始めた彼のルーチンワーク。深い意味はない。謝罪か、贖罪か、あるいは自己満足か。

ただ、これから死ぬ人間へのせめてもの行動だ。

 

「エラー。武器に異常です。エラー」

「おん?」

 

そんなシリアスな心持ちでいた矢先に、システムボイスが異常を知らせる。武器に何か問題が出たのだ。

オーガが今持っているのは、ビームライフルとロケットランチャー。どちらもコロニー連盟軍の正式採用モデルで、連盟軍に所属する機体ではポピュラーな装備である。

 

「なんだこりゃ。ちょっと、ちょっとおいジャムノフ!」

「あい、あい…どした!」

「どしたじゃねえよエラー吐いてんだよ!武器が!」

 

通信機にくだを巻くサブロー。実際には、通信機の向こうの相手に文句を言っているのだが。

通信相手はジャムノフ。コロニー連盟の技師。オーガのトラブルをどうにかする役でもある。

 

「エラーナンバーは!」

「は?」

「エラーナンバーはって聞いてんの!」

「3020って出てるけど」

「あ〜。じゃあエネルギーの与えすぎってことか」

「どういうこったよ」

 

おしゃべりの間に、ナルカ艦隊の砲撃準備が整った。

艦隊各艦が、各砲座を敵要塞に向ける。狙いも、準備も、完了済みだ。

 

「撃て!」

 

そしてカワセ艦長の宣言した7分が過ぎた。ナルカ艦隊の軍艦が、ビームやミサイルを一斉に放つ。

線を引いて飛んでいく弾が、地球の方向へ流星群を描いた。

 

「オーガのエネルギー出力が強過ぎて、ビームライフルのエネルギー回線がお釈迦になっちまったんだ」

「つまり使えないってことかよ!」

「そうだな。まさかそこまで強いとは思ってもみなかった。修理だな」

「おい、どうすんだよそれ!」

 

そんな中でもサブローとジャムノフのおしゃべりは止まらない。二人してこの状況に困惑するのみだ。

ジャムノフの後ろから老人の悲鳴が轟く。先代から乗り継いだクインスローンⅡ世整備長が、ぶっ壊れたビームライフルの修理に慄いていた。

 

「砲撃を緩めろ。モビルスーツ隊出撃!」

 

グランガン、ひいてはカワセ艦長の指示により、艦隊各艦からモビルスーツが次々発進していく。

ナルカの戦士は精鋭だ。キビキビと動き、仕事が手早い。

昆虫のような外見のボルゾンが、ブースター光の尾を引いて飛んでいく。

対する連邦要塞も、負けじとミサイルをばら撒いた。壁を形成するように迫る弾頭。

ここに、ナルカ艦隊と連邦軍要塞との戦闘が始まる。

 

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