機動戦史ガンダム 双眸のガーディアン   作:アルファるふぁ/保利滝良

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第3話 邂逅、ソーラ女王
3話Aパート


赤色をメインに豪華に盛られた装飾品の数々。絨毯や卓上ランプ、大きな執務机と座り心地が良さそうな椅子。

 

ここを地球の衛星軌道上にある巨大宇宙戦艦の中の一室だと思える人間は、そう多くはないだろう。

 

その中央、執務机に背を向けて、中空投影型モニターに向き合っている男が一人。

 

スキンヘッドに切れ長の目。薄い口髭。何よりごつごつとした動き辛そうな軍服が、彼の社会的地位を示す。

 

男が数秒腕組みをしていると、モニターに眼帯の男が映った。

 

「お、お待たせいたしましたダーリック様。ヴィンヘルト少佐でございます」

「例の件に関する状況報告は?」

「は…フジ基地を制圧した後に調査させましたが、連邦の新型機はありませんでした!申し訳ありません!」

 

禿頭の軍人は、コロニー国家アールデン帝国のダーリック・ランドルフト。同国内の中では非常に高い地位におり、アールデン軍の最高指導者でもある。戦時中の現在ではアールデンの支配者とも言える彼だが、血筋的にも皇帝に近しい出身におり、現皇帝含めて2、3人消せば彼が皇帝になれる。

 

そんなダーリックの肩書きは『竜公』である。アールデン貴族の中でも特に文武に優れた者のみが手に入れられる歴史ある称号だ。この肩書きをもじって『ドラクル公』と陰で呼ばれることもある。

 

そんな彼ダーリックは現在、ある策謀を行なっていた。

 

「言い訳はいい。わかっていることを話せ」

「はっはい!基地内の連邦兵からは、確かにあったがテロリストに強奪されたと…」

「テロリスト?あぁ、陽動に仕向けた連中か。起動状態で持って行かれたなら、捕捉はできなかったのか」

「数機のレーダーログにフジ基地近辺から離脱する機影が確認されましたが…」

「制圧に手間取って追うことができなかったと。戦力を多めに送らなかったのが響いたか」

「申し訳有りません!ま、誠に申し訳ございません!」

 

ダーリックの目的は、連邦の最新モビルスーツであった。

 

鹵獲すれば連盟内で功績が認められるし、研究に使えば独自生産モビルスーツの性能を大幅に引き上げられる。アールデンは独自開発機体を他国に輸出して政治予算を賄っているが、連邦の新型から得られた成果を反映すればより良い機体が生まれるはずだ。

 

新技術が盛り込まれた新型機というだけで大いに使いようがある。奸雄ダーリックの野望を成就する役に立つはずだ。

 

だが、全力で手に入れるほどの価値ではない。精々過激派組織を焚きつけて襲わせ、たまたま近場にいた部隊を向かわせる程度のことしかしない。こういった案件で手段を選ぶのは愚の骨頂だが、連盟内での立場もあった。

 

「強奪された、か。さすがに想定しておいたほうがよかったな」

「テロリスト共がやり手だったのでしょうか…?」

「いいや。フジ基地の練度と装備は低レベルだったらしいな。おそらくそこが原因だろう」

「はぁ…確かに制圧には手間取りませんでしたが…」

「まあ、良い。制圧維持に支障ないレベルで捜索隊を出せ。それから…」

「テロリスト共の始末ですね?基地内の捕虜として捕まっているぶんだけで良いのですか?」

「追いかけて始末するのも手間だ。動きも悟られる」

「了解しました、連邦が捕らえた者は念入りに処理しておきます。では、失礼致します…」

 

通信が終了され、空中投影型モニターが消滅する。端末を懐に仕舞ったドラクル公は椅子に座り、執務机の上に置いてある菓子籠からキャンディを一粒手に取った。

 

これはダーリックのルーチンワークだ。何かしらの策謀を計るとき、彼はいつも甘いものを摂取する。

 

今、彼の頭の中には様々な情報と手段が飛び交っていた。孤立させたのに生きているナルカ共和国のソーラ女王。消耗し始めた前線の兵士達。連邦の新型機。それに対抗した連盟発の新型機。

 

それらがピースとして組み合わさり、おぼろげな目標が確かなものへと変わって行く。

 

地球を制し、その後のコロニー同士の戦争を制し、アールデンを制し、己こそが世界で最も多くのものを握る野望。全てを手に入れる野望。

 

ダーリックには、それができるだけの能力があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族の元を離れてから早三日たった。サブローは現在もガンダムのコクピットにいる。途中の街などで水や食料を買い込んでひたすら南進した。

 

ここいらは過疎地域だったこともあり、バレないように注意すれば騒ぎにはならなかった。見られても作業用機体だと誤魔化してやり過ごす。田舎でよかったと、サブローは思った。

 

モビルスーツを隠せそうな場所で休む時間もあったので、実際の操縦時間は12時間程度だろうか。やたら市街地などに出て騒ぎを起こしたりしないだけの頭はサブローにはあったが、さすがに限界だった。

 

「ぐっぇえ…し、死ぬ…」

 

彼はやはりバカだった。地理的知識がないために砂漠地帯に突入し、水分不足で熱中症に陥った。昨日調子に乗って買った水をがぶ飲みしていたため、持っている飲料水はない。砂漠を抜けるルートを探そうにも、充電できる状況でもないため携帯は電池切れだった。

 

朦朧とした意識の中でなんとかガンダムを歩かせているが、徐々にその足取りはおぼつかなくなって行く。ブースト移動で砂漠を抜けられるか、と思い立ってブースターペダルを踏むが、推進剤は切れているようだ。

 

「警告」

「あん?」

「残存エネルギーが5パーセント以下。即刻の帰還と補給を推奨します」

「あああ…いよいよもって、ダメか…!」

 

AIオペレートによるガス欠のお知らせ。休みを挟み、戦闘駆動で動かさなかったとはいえ、三日も歩かせていればモビルスーツはやがて動かなくなる。

 

そして、ガンダムはついに転倒した。倒れたガンダムの周りから砂が巻き上がり、白い機体の背中に降り注いだ。

 

熱中症もそうだが、逃亡生活でサブローの疲労がピークだったのも大きい。今までのんびりと頭を使わず畑仕事ばかりしていた彼にとって、一歩間違えば命取りの道中は非常にストレスフルだった。

 

もはや指一本動かない。意識もだんだん白く塗りつぶされていく。汗と鼻水と涎で、顔は汁まみれだ。もはや満身創痍。

消えて行く意識の中で最後に見たのは、こちらに向かってくる何かの影であった。

 

 

 

 

 

親衛隊が一人、ヴィクターが発見したモビルスーツ。ヌマズ砂漠に駐泊していたナルカ部隊の皆がその扱いの是非にただならぬ興味を抱いていた。この問題は、下手をすると自分たちの明日の命に関わるかもしれないからだ。

 

センサー類の発光が連邦軍がよく使う黄色であることから、恐らく連邦系の機体であると推測されているが、その外見は既存とは全く異なっている。

 

細身のシルエットに、白を基準としてやたら目立つトリコロール。全体的jにヒロイックな見た目をしている。

 

特に頭部は非常に特徴的だ。二本の角はブレードアンテナで、二つの目は高性能のセンサーカメラアイ。今までのどのモビルスーツにもない面構えである。

 

予想しなくてもわかる。これは新型試作機だ。何故こんな機体がヌマズ砂漠でぶっ倒れていたのか。中のパイロットにはじっくりとお話をしてもらわなければなるまい。

 

「オーライ、オーライ!」

「仰向けにしろー!メカニック以外は離れさせろ」

「ちょっと待ってくれ、砂が口に入った!」

「連邦の機体なんていじったことねえぞ…」

 

駐留艦隊の中央に引っ張ってこられた白い機体。メカニックが胴体をいじっていると、そのコクピットが開かれた。中には、若者が一人。

 

身長は180くらいだろうか。黒い髪は短いソフトモヒカンにされており、黒いライダースーツを着ている。白目を剥きつつ、汗と鼻水と涎にまみれていた。

 

非常に危険な状態で気を失っている。

 

「おい、担架持ってこい!」

「しっかりしろ、大丈夫か?」

「水だ、水を飲ませてやれ」

「いや、起きてからがいい。点滴を用意した方が…」

 

慌てふためくナルカの軍人たち。トラブルを持ってきた男が死ぬのは大損にしかならないし、こんな状態の人間を見殺しにするようなモラリティは持っていない。

 

コクピットシートから抱え上げられ、担架に乗って運ばれる男。その様子を、ソーラ女王はクインスローンから見ていた。

 

傍らに立つ女性親衛隊員が、ソーラの顔色を見た。

 

「どうかいたしましたか、ソーラ様?」

「私は前に、予感を感知したと言いました…確信はないのですが、彼がそうではないのかと思うのです」

「先日おっしゃっていたことですね。彼が、来るべき何かだと言うのですか?」

「確かめる必要があります。彼が私達にとって良きものか、悪しきを運ぶのか。直接会って話がしたい」

 

鶴の一声とはよく言ったものだ。女王はあの男を保護することに賛成のようだ。

 

あの男は連邦の機体を伴って現れた。衣服からして軍関係者ではない。何かトラブルを抱えているのは明白だ。

 

だが皆は容体の優れない男を看病しようとしている。女王は直接面談を望んでさえいる。

 

「ソーラ様、いけません。お考え直しください。連邦のスパイであるかもしれないのですよ!?」

「メイヴィー、地球連邦は愚かな組織ではありません。スパイや暗殺者を送るならもっと静かに送ってきます」

「しかし、そうでなくても…」

「何も一人でとは言いません。親衛隊を信頼しています」

「ソーラ様…」

 

主君から護衛は任せたと言外に言われ、メイヴィー・スノウは何も言えなくなってしまった。

 

かの男がソーラ女王に何か狼藉を働くのであれば、親衛隊が止めればいいのだ。簡単な話だ。彼女らは職務を全うすればいい。そうすれば女王に危害は行かない。

 

さらに信頼しているとまで言われたとあっては、もう何も言えない。メイヴィーとしては、聡明でありながら大胆な女王の護衛は心配が尽きない。

 

「艦長」

「はい、ソーラ様」

「あの男はどこへ置くのか」

「まだ決まっておりませんが…」

「クインスローンには空室が一つあったはずです。容体が安定次第そこに軟禁せよ」

「はぁ、よろしいので?

「親衛隊を信用していますから。それと、あのモビルスーツはどこへ収容するのか」

「艦載機を損耗してスペースが空いているので、『ワーラー』に」

「わかりました。ではワーラーの格納庫へ繋いでください」

「了解です。オペレータ、どうか」

「つながりました」

 

クインスローンのブリッジの中央モニターに、二本角のモビルスーツが無骨な格納庫へ運ばれる様子が映し出される。格納庫とは言ってもスモールサイズ艦が抱えるそれなので、モビルスーツは四機以上入らなそうなスペースでしかないが。

 

映像が出て数秒後、白いひげを生やした煤だらけの老人が画面に現れる。彼こそはワーラーの整備長だ。

 

「はいはいこちらワーラー!どちらさんで?」

「こちらはクインスローン。ソーラ様がお聞きしたいことがあるらしいが、どうか」

「く、くっくくくクインスローン!?ソーラ様がっ直々にぃ!?」

「貴官は整備長であるか?不明機収容、ご苦労。迅速な働きぶり、見事でした」

「へぇゃっ、ソーラ様、これはどうも、もったいなきお言葉を…」

「その機体のことで、今わかっていることを述べてください」

 

ソーラが出て着た途端あからさまに殊勝な態度をとる整備長。その様子からブリッジクルー達は、ソーラのカリスマ力を再認識させられた。

 

「こ…コクピットが開いたので動かせるかと思いましたが、エネルギーが尽きててダメみたいですな。それに指紋やら声紋チェックのセキュリティがあるようでして、そもそもあの若いのでなけりゃ動かせんようです」

「セキュリティはこの際いいとしても、エネルギーの消耗…燃料電池が切れたのでしょうか」

「いや、さっきコクピットの中からこれが出てきたんですがねぇ…」

 

整備長の片手にはそこそこに厚い何かの書類が握られている。整備長は書類を顔の前に掲げた。モニターに映る具合だ。

 

それを見て、クインスローン艦長が目を細める。

 

「マニュアル、でしょうか?」

「その通り。これの記述が正しけりゃ、アレの動力炉は原子力ジェネレータですな。燃料棒突っ込まないとイカンのです」

「ワーラーには予備の燃料棒はあるか」

「へえそりゃ…規格を合わせられるかが問題ですが」

「では、その機体の補給をお願いします。他の作業は優先して構いません」

「ええ、やるだけやってみます!任せてつかあさい」

「はい、よろしくお願いします。通信終わり」

 

モニターから髭が消え、黒いオフ状態に戻る。

 

「彼に聞くことが増えましたね」

「ソーラ様…」

 

不安そうなメイヴィーに比べ、ソーラの声は若干弾んでいるように感じられた。恐らくは、地球の人間との会話で何かを得ようとしているのだろう。

 

女王になる以前から物事への興味が強かったソーラだが、地球に対してのそれは政治的使命感もあってさらに強かった。

 

政治的使命感。ある目的を持った彼女にとっては、かの男がもたらすべき情報は大きな意味を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

どんよりと覚醒する意識。まだ全く見えない視界。自分が目を閉じているのだと気付くのに数秒の時間を要した。

 

目を開いても視界はかなりぼやけている。モザイクのようだ。

 

「あ、今目を醒ましました。意識が回復したようです」

「そうですか。ひとまずは安心ですね」

 

人影が複数。その中の一つは青い影をしていた。話し声と人影が確認できるということは、自分は何者かに助けられたということだろう。

 

もしくはここが死後の世界である可能性もあったが、頭痛が襲ってきたのでそれは無くなった。熱中症が後を引いているのか、頭が割れるように痛い。

 

激痛に顔をしかめ、目をつぶって痛みをこらえる。目を開くと視界がクリアになっていた。周りの景色がはっきり見える。

 

「ここは一体…俺は…」

「気が付きましたか?」

 

最初に目についたのは、正面に立つ少女だった。

 

青緑のロングヘア。大人びた長いまつ毛にパッチリとした瞳。非常に端正な美しい顔立ち。先の青い影は長い青髪によるものだった。

 

その佇まいは気品とカリスマ知性とを感じさせ、表情から神秘的な雰囲気が醸し出されている。一言で言えば。

 

「…かわいい」

 

声がかすれて出なかったのは幸運だった。初対面の相手にそんなことを言うのは失礼だと思う。

 

だが、それにしても目の前の少女は非常に、かなり、素晴らしく、可愛かった。タイプだ。どストライクだ。こんな少女を夜中に夢見て悶々としたものだ。

 

一目惚れとはこういうことを言うのだろう。顔面の位置と角度が固定され、目の前の女性から視界を移すことができない。

 

だが幸福な時間ほど短いのは世の中の掟だ。幸せなウォッチングタイムは、向こうからの言葉で終わりを告げる。

 

「私はナルカ共和国現女王、ソーラ・レ・パール・ナルカです。こちらの二人はナルカ親衛隊のショーン・ザンバーとメイヴィー・スノウ。あなたの後ろにいるのが、軍医のバロット・ドゥルコフ中尉です」

「ナルカ?女王?」

 

声をかけられて、思考が現実に帰ってくる。だが、夢心地以前にその内容についていけない。

 

いきなりの情報量の渦に脳味噌が拒否反応を示す。だがとりあえず相手の名前はわかった。自分が生きているということは、恐らく相手は会話を望んでいる。

 

「ここは私達の軍艦の内部です。モビルスーツの中で気を失ったあなたを拾って、今はこの部屋で軟禁しています」

「う、ウッス。助けてもらって申し訳ないっす」

「気になさらないでください、生きていてよかったです。早速ですけれど…お名前や所属、ここに至るまでの経緯をお話しして頂けますか?」

「あ、ハイ…」

 

女王、と言うことはかなり偉い人なのだろう。敬語がおぼつかない自分が会っていいのだろうか。

 

じろじろ睨んでくる両脇の二人。不思議なモビルスーツに乗っていた初対面の人間は信用できないらしい。当たり前だ。

 

親衛隊員の二人はソーラをしっかりガードできるポジションをキープしている。するつもりはないが、変なことはできそうもない。

 

とりあえずは、包み隠さず全てを話す必要があるようだ。

 

「お、俺はサブロー。サブロー・ライトニング…っス」

 

 

 

 

 

 

 

サブローはとにかく話した。舌が乾くまで話した。途中自分の分であろう食事が運ばれてきたが、水を一口飲むだけで手をつけなかった。

 

話しているうちに、自分が何を言っているのかわからなくなってきた。田舎の百姓の三男坊で、兄二人はテロリスト。連邦基地へテロを起こした兄貴達を止めに行ったら、連邦のモビルスーツに乗る羽目になり、上の兄貴が死んでしまう。そして下の兄貴を家族の元へ帰らせた後、自分は連邦の目を引くために、モビルスーツに乗ったまま逃げ出した。

 

作り話にしても酷すぎる。親衛隊の二人の疑いの視線が痛い。嘘は言ってないのに、不本意にホラ話を吹聴している気分になる。

 

だが、ソーラは興味深そうにサブローの話を聞いていた。まっすぐ真摯に受け止めてくれる。ただただ静かに、相槌も横槍も入れず。

 

最後に、兄が死んだ、自分も家族とはもう会えないことを話したとき、ソーラは一言こう言った。

 

「そうですか、お気の毒でしたね…」

 

それは、サブローの心に、失ったものを思い出させた。一緒に生きて来た兄、会えなくなった家族、壊された日常、置いてきた全て。今まで共に過ごしたものは失われたのだと、しっかり認識させられた。

 

ソーラの慰めはサブローの心を揺さぶった。だが同時に、サブローの悲しみを癒してくれた。

 

「お、俺の話は、俺の話は終わりです。これで…」

「わかりました。ありがとうございます」

 

サブローの顔がくしゃくしゃに歪む。涙が目から溢れ出す。喉から自然に情けない声が出て、様々な感情がごちゃ混ぜになる。

 

悲しみ、恐怖、安堵、喪失感、郷愁。運ばれた食事から湯気は消え、代わりにしょっぱい液体が上に降りかかった。

 

その様子を見ていたショーンとメイヴィーは、睨むのをやめた。この哀れな青年の姿に威圧感を与えるのは、色々と間違っている。

 

「サブローと言いましたね?」

「はっ…ぅぐっ…はい」

「お願いがあります。私は地球のことについてもっと知りたい。また来ます、お話を聞かせてください」

 

ソーラの伸ばした手は、哀れみだろうか。それともこの場の悲惨な空気を変えるアクションだろうか。

 

「はっ、ハイ、よろしく…お願いします…!」

 

生きる意義を失っていたサブローには、断る理由がなかった。

 

高貴な女王の白い手を、サブローのゴツゴツとした指が握った。

 

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