今回は長くなっており上下の同時投稿になります。
また、誤字脱字やご指摘等お待ちしております。
感想もね
──朝。
ピピピピピと電子音がけたたましく鳴り響いている。
音の発生源は自分寝ているすぐ右隣り、コンセントから延びる充電アダプタが接続された携帯からだった。
掛け布団を剥いで上半身を起こす。
今もなお鳴り続けるそれを手に取る。
閉じたままの携帯を開け時間を確認する。AM5:00
そして、いつも通り受話器の下がっている絵が描かれているボタンを押す。
それと同時に手に持っている携帯から出ていた音が消え、部屋の中は静かになった。
接続されたままの充電アダプタを抜いて携帯を床に置く、その座った姿勢のまま両腕を上にあて伸びをした。
布団から出ると慣れた手つきでそれを畳み部屋の一角(空いたスペース)に置く。
部屋の電気は付いていないが窓から差し込んでくる日の光で難なく周りは見えたため、馴れた様な足取りでクローゼットのある場所まで移動する。
クローゼットの中はシンプルな構造になっており、右側半分はハンガーで吊るされた衣服が在り、左反面は靴下や下着と言った小物類が小さなタンスと思しき物に段ずつで入っている。
渋々ながら左の段から下着と靴下を取り、ハンガーに吊るされたジャージを手にした。
決して慣れたとは言えないし、現に今も少しばかし抵抗がある。
そう女性物の下着だ。
それが転生してからの最大の悩みでもある。
なまじ今まで着替え悩んだ事もない分その反動はデカく、今も苦労している。
なら、着なければいいと思うだろうがそれはそれでまた違う問題なのだ。
そんなこんなでジャージに着替えた俺は毎度のごとく走り込みを始めるのだった。
走り込みといっても結構簡易なものだ、住んでいるところの周辺をただ走りこむだけだ。
携帯のアラームを20分後にセットして走り出した。
今の季節は春だ。しかし、朝の風は少し肌寒く少し冷たい。
吐く息は白くないがそれでも体感的な温度は寒く感じる。
多分、そう感じるのは今自分の視界に人が映らないせいかもしれない。
目先にあったものが横に、真横にあったものが後ろへ流れていく。
そんな光景は走っていれば当然のことだ。しかし、すれ違う人は全然いない。
自分の視界を流れるよう過ぎていく家や建物。
何処かで鳴いている雀や鳥の鳴き声が空しく響く。
それと連動するかのように徐々に体は熱を帯びていく。
いつしか周りの事など気にならなくなり、気づけば携帯のアラームが鳴っていた。
走り込みを終えると自宅へ戻り筋トレを始める。
腕立て、腹筋、スクワット。あの頃から数をこなし成長と共にその数を増やしていった。
今では70を超えているが、自分の肉付きに目立った変化は無くちゃんと付いているのか不安になってくる。
全てのトレーニングが終わる頃には時計の長針が6を指しており、短針1と2の間にあった。
トレーニングを終えた足でそのままシャワーを浴びに向かった。
下着と靴下以外のものは寝間着と合わせて洗濯機の中へ放り込み、洗剤やその他諸々の過程を行いボタンを押して洗濯開始。
下着と靴下を脱ぎシャワーを浴びた。
シャワーを浴び終えた俺はバスタオルで体拭きつつ濡れた髪のワシャワシャと拭いていた。
ある程度体が乾いてきたところでクローゼット内に吊るされている制服を手に取る。
これから通う学園。そう駒王学園の制服だ。
転生前は原作のイラストやアニメで見たことがあるが、いざ実物を見てみるとやっぱりくるものがある。そして、何よりもこの胸を強調した制服だろうか…
何というか恥ずかしいどころの騒ぎではない様な気がする。
暫しの沈黙の後、…ただの制服だ。そんなものは中学と高校の計4年ほど着ていた。
今更悩む必要があるものか。
俺はそう自分に言い聞かせて制服に着替えた。
──AM7:30。
道路の通行量は増し、人々が多く行き交っている。
学園から近いということもあり、駒王学園の制服を着ている人を数人発見した。
走り込みの時とは打って変わり今は都市特有の活気があった。
そんな中、俺は肩身が狭い思いをしながら学園へと向かっていた。
何故こんなことになっているのか自分でもわかる。
大まかな原因は2つ。
1つ目はこの制服が思った以上に恥ずかしい事だ。
結局あの後、食事を終え食器を洗い髪型を整えていた時、鏡に映った自分の姿を見て急に顔がカーッと赤くなったのだ。
髪型を整えたと言ってもいつも通り背中付近まである長い髪を一つのまとめて結ぶだけだ。
この髪形の総称はオバンテールだった気がする。
顔が真っ赤で鏡が満足に見れなかったが馴れてしまっていたのか難なく結ぶことが出来た。
しかし顔の方は一度自覚したものは中々治らなかった。更には内心パニック状態である。
必死に直そうとしてやっとの思いで治ったものの、いざ外に出てみればこの状態である。
2つめの原因それは視線だ。
周囲からの視線を感じ、今や少し俯きながら登校中している。
多分駒王学園の生徒たちのものだろう。
しかし、学園に近づくにつれ、その恥ずかしさは次第に落ち着いてゆき今は興奮に近い感情が湧き上がってきた。
興奮というよりはむしろ喜びに近い感覚なのかもしれない。
此処には俺が越えようとする目標の一つがある。
転生してから長いようで短かった数年。
俯いていた顔を上げ駒王学園を双眸で見据え笑った。
「待ってろよ。