【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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最近涼しくなってきましたね。
それでも私は汗かきなので歩いているだけで汗が噴き出てきます。
冬が待ち遠しい……。

それでは15話どうぞ。


15. 苦手な教師

新しいホグワーツが始まって一夜明けた。

リリが目覚めると隣にいる最愛の人(ハーマイオニー)はまだ夢の中であった。

時計を見ればいつもよりちょっと早い時間に目が覚めてしまったようだ。

きっちりとした行動をしたいハーマイオニーはきちんと朝早く起きて一日の準備をしたり、授業の予習などをしている。

なのでほとんどリリがハーマイオニーに起こされる側なのだ。

 

「ハーミー……。寝てるよね?」

 

眠っているのを確認してその綺麗な唇に自らの唇を重ねた。

それでも起きないので抱きしめてあげる。ハーマイオニーが起きるまでこのままでいようと思っていたら、寝たままのハーマイオニーが手を背に、足をこちらの足に絡めてきた。

流石に起きているのかと思ったが、どうやら無意識でこちらを求めてきた結果のようだ。

しかもキスからの舌が侵入してきた。

 

「んん!? んむっ! はぁ、ハ、ハーミー?」

 

いつもはこちらが攻めなのに無意識の攻撃にこちらがやられそうになる。

結局目覚まし魔法が発動するまでハーマイオニーの成すがままにされてしまったリリであった。

 

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なんだかんだで大広間での朝食の時間。

朝からいささか体力は使ってしまったが、その分気力は充実している。

朝食のメニューはイギリス式である。朝食だけはイギリスも他国には負けていない。

今日はグリフィンドールのテーブルで食べる日なので隣は勿論ハーマイオニー。

反対はパーバティである。

ジニーがそれを羨ましそうに見ているが、ここで甘やかしてしまうと彼女の為にならないと考えたリリはあえて隣には座らせなかった。

仮にジニーの要望を叶えてしまうと周りのハーレム以外の女の子に対しては不公平であるし、ジニーの成長にもならない。

可愛がりたい衝動をぐっと抑えて朝食を食べていた。

 

フクロウ便が届く時間になり、数十羽ものフクロウが大広間にやって来た。

リリは特に新聞を読むわけでもないし、手紙もあまり利用しない。

隣のハーマイオニーは日刊預言者新聞を購読しており今日も読み始めている。

 

「ほ、吠えメールだ!」

 

誰かがそう叫んだ。

そっちを見るとグリフィンドールの男子が吠えメールを爆弾か何かの様に絶望的な表情で見ている。

震える手で真っ赤な封筒を開けると大広間中に声が響き渡った。

耳を押さえても聞こえてくる爆声によるとその男子、ロン? とハリーというのが車を盗む、マグルに見つかる、学校の木に突っ込むといったあり得ないことを一気にやらかしたらしい。

吠えメールは最後にジニーの入学を祝って燃え尽きた。

というか件のロンはジニーの兄ということになるのようだ。

 

「……恥ずかしい! こんな情けない兄がいるってリリお姉さまに知られてしまったわ!」

 

非常識すぎる身内がいることに耐えられなくなってジニーの目から涙が出てきそうになる。

それを止めたのはリリだ。いつの間にかジニーの隣にやって来て頭を撫でている。

 

「泣かないで、ジニー。せっかくの顔が台無しよ。女の子は笑顔が一番! 私はあなたの兄がどんなのでも気にしてないわ。あなたはあなたよ。」

 

たったそれだけでジニーの気持ちは有頂天であった。

だが、そこに妹を女たらしで最悪の女子と勝手に思っているリリに取られたと思ったロンがやって来た。

 

「おい! ジニーから離れろよ! お前なんかがジニーに近づくな! どうせジニーのこともいやらしい目でしか見てないんだろ!? ジニーもそんな奴とは離れるんだ!」

 

累積される兄の愚行にジニーは耐えられなかった。

ジニーはロンの目の前にやって来てその顔を真っすぐ見据える。

ロンは自分の元にやって来たジニーを見て最初はリンリーより兄である自分を選んでくれたと思い幸福と優越感に満ちた顔になっていた。

しかし、ジニーのその目を見た瞬間、何かが崩れたことを悟った。

兄である自分を見るその目には怒りも嫌悪もなく、逆に親愛といったものも皆無、全くの無関心。決して兄を家族を見る目ではなくなってしまっている。

 

「ジ、ジニー……? なんでそんな、おい! あいつに何かされたのか!?」

 

「ロナルド・ウィーズリーさん。黙ってください。朝食時間なのですから。」

 

それだけ言うと元の席に戻って周りの友達と一緒に朝食を再開し始めた。

こうしてロナルド・ウィーズリーは学校中の女子から無視されるだけでなく、唯一の妹も失ってしまった。

 

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授業は去年と変わらずに行われる。

変身術、呪文学、薬草学、魔法薬学。

これらは授業内容は少し難易度が上がっているが、最優秀なハーマイオニーや勤勉なレイブンクローのパドマ、真面目なダフネがそばにいるのでリリも勉強でそこまで苦労することはない。

 

唯一つの例外は闇の魔術に対する防衛術である。

担当教授のギルデロイ・ロックハートがとにかく不快なのである。

人気者か何か知らないが女子たちにわざとらしい笑顔を振りまいてくるのだ。

無視されていても照れているだけだと一向に止める気がない。

授業以外でもハリー・ポッターに話しかけたりしているので、同じ寮であるリリやハーマイオニーがそれに遭遇する頻度が高いおまけ付き。

おまけになぜかロックハートはリリにまで近寄って来る。それも目の前、ほんの1メートルも離れていない距離に。

 

「やあやあ! ミス・リンリー! 君も女子に人気見たいですねぇ。ええ、分かります! あなたは美しいですからね。しかし! 私の活躍の前ではそれも霞んでしまうでしょう。じきに周りの女の子たちと一緒に私のファンになってしまうかもしれませんね! では、授業で会いましょう!」

 

一方的に話しかけてきて理解不能な言葉を発して去っていく。

普通であれば男はよほどのことが無い限りあそこまでリンリーの近くに来るなどありえないことだ。

それを何事もないように笑顔で話す男など見たことが無かった。

理解不能な言動や、男が近くに来ることからリリは本格的にロックハートが苦手になった。

 

そんなロックハートの授業が始まってしまった。

普段の行動はともかく教科書という名の冒険譚が事実であるのならば優秀な魔法使いなのだろう。

教室には7冊もの分厚い教科書が生徒の数だけ積み上げられた中々お目にかかれない光景が広がっている。

ロックハートは教室に入るなり最前列の生徒の教科書を手に取り表紙の写真とピッタリ同時にウィンクをして話始めた。

 

「私だ。ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞。」

 

それに続く自慢の冒険の話になると男子も女子も誰も聞いていない。

そして気が付いたらテストをすることになっていた。

テストということで隣にいるハーマイオニーは気合を入れているが無駄に終わった。

問題は全部で54問。内容は以下のようなものだ。

 

問1.ギルデロイ・ロックハートの好きな色はなに?

問2.ギルデロイ・ロックハートの密かな大望はなに?

問3.現時点までのギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が1番偉大だと思うか?

 

こんなのが延々と54問。正直最初の授業で自分の事を知って欲しいと思ってこんなことをしているのかと思ってしまう。

リリは興味もないので名前すら書かず白紙のままだ。

もちろん女子たちは全員がテストに取り組んでいる様子ではない。

ロックハートは答案用紙を回収してペラペラとそれをめくっている。

めくるごとにロックハートの笑顔は消えていった。

それでも全部見終わった時にはいつものスマイルが張り付いていた。

 

「これはびっくりだ! ほとんど誰も私の事を知っていないようだね。それとも実物の私を前にして緊張で羽ペンを動かせなかったのかな? よ~く私の本を読んでおくように!

もちろん私の部屋にきてもOKですよ。それでは授業を始めましょう!」

 

覆いのかかった籠を教卓の上に用意するロックハート。その顔はどこまでも得意げで先ほどまでのテストのことなど既に頭にないのだろう。

 

「気をつけなさい! 魔法界で最も穢れた生物との戦う方法を授ける! それが私の使命なのです!」

 

芝居がかった動作で覆いを取り払い中を見せる。

中にいるのはピクシー妖精であった。

 

「先生。そいつらのどこが危険なんですか?」

 

男子の一人がそう尋ねる。他の生徒もピクシー妖精の事を脅威に感じておらず笑いをこらえている。

 

「思い込みはいけません! 連中は厄介な小悪魔になり得ますぞ。

では諸君らの対処のお手並み拝見としましょう!」

 

ロックハートはいきなり籠の扉を開けはなった。

途端にピクシー妖精がものすごい勢いで教室中を飛び回る。

教科書や筆記用具を滅茶苦茶にしたり、男子生徒を吊り上げるなど、もはや授業の風景とは到底言えないものに変貌していた。

 

対してリリの周りだけは静かなものであった。

雌はリリの周りを囲って周りの被害が及ばないように守っているし、雄はそんなリリの周囲に近づきもしない。

 

「いい子達ね。でもそろそろ戻ってくれないかしら?」

 

リリがそう言うと雌たちはすぐに籠に戻っていった。

雄はリリがちょっと強めに呪いを広めただけで我先へと籠に突入し始める。

 

「お見事! ミス・リンリーに10点を上げましょう。さて、授業はこれでお終いにしましょう。ミス・リンリー、これから一緒にお茶でもどうです?」

 

「絶対に嫌です。行こう皆。」

 

リリは女子たちを連れて教室から出ていく。

少しでも早くあのロックハートという人間から離れたかったのだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

新学期の授業初日が終わった。

夕食も終えた後、リリはロックハートのせいで精神的に疲れたので談話室でハーマイオニーに膝枕をしてもらっている。

あまりの心地よさに眠ってしまいそうになる。頭を撫でる(ハーマイオニー)の手がそれを促進させている。

周りの女子はその光景を見守っているが、今年入ったばかりの一年生たちがこちらに近づきたいのか様子を窺っているのが見えた。

せっかく可愛い後輩たちがこちらと仲良くしたいと思っているのだ、誘わないなんてありえない。

 

「一年生の皆。こっちに来て。」

 

そう言うと我先へとこちらに集まってきた。

一人一人と仲を深め全員の顔と名前を覚えた。

 

一日が終わって後輩たちにどんな感じか聞いて回る。

皆初めてのホグワーツに戸惑ったりしながらも楽しめているようだ。

 

「お姉さま、リリお姉さま! ホグワーツは凄いですね。私やっぱりここに来てよかったです!」

 

特にジニーは終始興奮しっぱなしであった。

リリは後輩も新たに加わってホグワーツの生活はますます楽しくなるだろうと思わずにいられなかった。

 




授業開始回。

ロンの愚行によってジニーの好感度はマイナスの極限を突破。
以降は兄とは認識されなくなりました。

リリはロックハートの事を苦手になりました。
本作の設定でロックハートは自分の事を一番愛している、いや自分しか愛していない。
女性たちから声援をもらいたいのもそうした自分が好きだらから。
極端に言えば彼は他人など見ていないのです。それほど自分しか見ていないのでリンリーの呪いも効果が薄いということで。

リリとしてもこんなに近づく男は初めてなので苦手に。
ロックハートは自分を目立たせるためにリリを使えるぐらいにしか考えていません。

それでは次回お楽しみに。

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