【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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今回はサブタイトルはあとがきで明かそうと思います。
そのままサブタイトル使うと内容が予想できちゃいますからね。

それと、今回は痛い話なので気を付けて読んでください。

それでは16話どうぞ。


16. 

新学期が始まってしばらくの時が経過した週末。

アンジェリーナ、アリシア、ケイティの三人からクィディッチの練習が開始するから応援に来てくれないか乞われたリリはハーマイオニーを連れて練習の見学に来ていた。

ついでにこっそりついてきたジニーも一緒だ。

クィディッチ競技場に着いた時間は早朝、まだ日が昇ったばかりだ。

それでもまだ選手たちは練習を行っていない。どうやらクィディッチ狂いのキャプテンオリバー・ウッドが未だに作戦会議を行っているようだ。

 

「ジニー……。」

 

観客席で練習が始まるのを待っているとロナウド・ウィーズリーがやって来ていた。

ジニーに名を呟くがジニーは見向きもしない。

ロナウドはひどく落ち込み何も言わずにリリたちから離れた観客席に腰を下ろした。

それから10分ほどして練習を開始するチェイサー三人に頑張ってと応援すると遠目から見てもやる気に満ち溢れるのが分かった。

そして、ようやくという時に乱入者が現れた。緑のユニフォームを着こんだスリザリンチームだった。

いきなりの登場にオリバー・ウッドは怒り心頭でスリザリンチームに突撃していく。そのまま箒でひき殺さんと言わんばかりだ。

それに続いてクィディッチチームの残りのメンバーとリリたちも続く。

どうやらスリザリンはスネイプから新しいシーカーの育成として許可をもらっているようだ。

 

「新しいシーカー? 誰だ?」

 

姿を見せたのは青白い顔の男子だった。

リリはよく知らないがそのシーカー、ドラコ・マルフォイはどうやら金持ちの一族の息子で最新式の箒ニンバス2001をチーム全員に与えることでシーカーの座を勝ち取ったらしい。

それに呆れたハーマイオニーがきっぱりといった。

 

「呆れるわね。少なくとも、グリフィンドール選手は誰一人としてお金で選ばれたりしてないわ。こっちは純粋に才能でなったのよ。」

 

それを聞いたドラコ・マルフォイが言ってはならない言葉を放った。

 

「誰もお前の意見なんて求めてない。この、生まれそこないの『穢れた血』め!」

 

その瞬間、競技場が凍り付いた。

一人の少女から発する怒気がそうさせている。

男子は恐怖によって指一本動かすができない。それほどの呪いが競技場を充満している。

そんなものを集中的に受けているドラコ・マルフォイは股間から尿を垂れ流していることも気づかず震えるだけであった。

全員が動けない中、リリの口から呪文が発せられる。

 

『終わる。その血はここで終わる。潰えよ。消えよ。その罪はその血脈の終焉を持って濯がれる。』

 

その発せられる単語一つ一つが男にとって致命的なもの、いやそれ以上のものと本能で理解させられる。男たちは恐怖でいうことを聞かない体を何とか動かしてゆっくりとその場から離れていく。

それでも全力の呪いを受けているドラコ・マルフォイは身動き一つとれないまま。

リリの持つ杖がゆっくりとドラコに向けられる。

 

「絶えよ。ルールサス(去勢)。」

 

リリの杖先から漆黒としか言い表せないものがドラコの股間に向けて真っ直ぐに射出された。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

恐怖で動けない。体にいくら逃げるように命令してもどうにもならない。

僕は言ってはならないことを言ってしまったようだ。

 

恐らく僕は死ぬ。

死の恐怖さえ、今目の前にいる化物から解き放たれるなら何の怖さもない。

いつもの僕だったら死ぬような目にあったら喚いて泣き叫んでいただろうな……。

それができないほどに僕の心は恐怖でいっぱいだ。

……父上、母上。先立つ息子を許してください。

 

リンリーの杖から真っ黒な何かが、僕を殺すものが飛んでくる。

それは僕の股間に命中し体を犯し始める。

 

次の瞬間には僕は死ぬのだとしか思えなかった。

でも何も起こらなかった。

 

……変だ。何かが変だ。

さっきまで感じていた恐怖がない!

それだけじゃない。妙に静かだ。それに……なんだこれは?

周りの人間が動いていない? いや、ものすごくゆっくりになっている?

予感していた死は訪れない。感覚がおかしくなっている。

 

困惑するしかできない僕が次に感じたのは、かつてない喪失感。

自分が、自分の未来が、何もかも失ってしまう感覚。

死ではない。それ以上に何かを失ってしまう。

気が付いたら僕は涙を流していた。頬をつたう涙さえ魔法がかかったようにゆっくりだ。

 

そして……それは突然やって来た。

僕の股間にある男子の象徴。それが突然、大きくなった。

何だこれは!? 僕の身体に何が!?

 

(あああああああ! いいたいいたいいたいぃぃ! 死ぬ! 死んじゃう!)

 

大きくなったそれが根元からねじ切られる。トロールに踏みつけられているような力で押しつぶされながら回転を始めた。

当然それはそのような動きをするようにできてはいない。

回転角が大きくなるにつれ、力が大きくなるにつれ、激痛が走る。皮膚が裂ける。血が噴出する。

 

(やめてたすけておねがいとめてしぬ。ああああああああああああ!)

 

絶叫しようにもなぜか声が出ない。それどころか身動き一つとれないままだ。

それなのに感覚だけが鋭敏になり続ける。

最悪なことに回転も力の増加も非常にゆっくりだ。

その分地獄が長く続いた。

体感時間にして10分以上はかかってようやく解放された。

痛みはあるが、もう……ない……。

 

僕の一部はねじ切られ押しつぶされ……。パンツの中に肉の残骸が残るだけだ。

 

ちぎられた痕から鮮血が止まらずパンツやせっかくのクィディッチユニフォームを汚していく。それでも僕は安堵していた。

 

(終わった……。痛い……。早く誰か助けて。ぎご!?)

 

終わってなかった。

股間に残る最後の二つ。

生物の雄にとって命の次に大事なもの。次に繋げるためのもの。

本能で察する。これが無くなれば僕が生きる意味がなくなると。

 

(やめてくれ! もう嫌だ! 止まって! お願いします! どおぉいがああぅおあ!)

 

袋に包まれた片方に激痛が走る。

いくつもの種類の痛みが襲い掛かる。

 

鈍器で殴打される痛み。

徐々に潰される鈍く長い痛み。

刃物で切り刻まれる痛み。

炎で焼かれる痛み。

薬品で溶かされる痛み。

 

それらが同時に、しかしどれもハッキリと感じ取れる。

脳が認識を拒否するがそれを上回る痛みが永遠とも思える時間続く。

最早痛いなどと思うこともできなくなるほどにそれは続いた。

痛みがなくなるころには袋の中はグチャグチャになった何かだけになっていた。

 

(………………。あ、父上……。母上……。)

 

脳裏に浮かぶのは尊敬する父と敬愛する母。

それもすぐに脳から消えた。ただ痛みと後悔と恐怖、ありとあらゆる負の感情だけが残っていた。

 

 

 

そして終わりがやって来た。

ドラコ・マルフォイの中の魔力がたった一つ残った睾丸に集まっていく。

全魔力が貯まったそれは爆発した。

比喩でも何でもなく爆発。

炎を上げ、股間を焼き尽くし、かろうじて残っていた残骸すらも残さず炭へと変え、消失させた。

ようやく意識を失うことを許されたドラコ・マルフォイは股間から溢れた血だまりの中に倒れこんだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

競技場にいた全員が見た。

リリアン・リンリーから放たれた漆黒の何かがドラコ・マルフォイの股間に命中すると、

一瞬のうちにあり得ない程にそこが腫れあがり、ありえない動きをした後……爆発した。

マルフォイは噴出した血の海に倒れこんだ。

その光景を見て男たちは絶叫を上げて走り去っていった。

本能でドラコ・マルフォイが受けた痛みと恐怖を理解してしまったのである。

女たちはそれに恐怖しなかったが、汚物(マルフォイ)をこれ以上見たくないのかリリを連れて競技場から去っていった。

リリはすっきりした気分でそれについていく。隣にいるハーマイオニーはさっきの言葉(穢れた血)がどういう意味であるのか知ってはいたが特に気にも留めていなかった。

リリが怒ってくれた、自分の事を大切に思ってくれていると分かったので嬉しいぐらいだ。

 

 

血の中に横たわるドラコ・マルフォイ以外誰も競技場にはいなくなった。

新品のユニフォームも、チームの為に手に入れた最新式のニンバス2001も何もかも血にまみれたまま放置されていた。

校舎内を狂ったように走って逃げる男子生徒たちを不審に思った教師が理由を聞いてマルフォイを発見するまで大よそ10分間。

その10分間がドラコ・マルフォイという男にとって致命的な時間になった。

 

魔法界の正しく純血の一族、聖28一族の一つマルフォイ家は断絶の未来が決定した。




16話サブタイトル 去勢

去勢魔法

リンリーの呪いを凝縮して放つリンリー家だけにしか使えない対男性最終兵器
代々改良をしているので代を重ねるごとにえげつない効果になっている。
目標の男性を視認し、なおかつ相当の怒りや憎しみを抱かないと使用できない。
但し一度発動してしまえば防御・回避・回復不能かつ遠くまで逃げても必ず当たるように追尾までする。
効果はいくつかの段階に分かれて発揮する。

1.感覚の鋭敏化
自身の身体に対してのみ感覚が鋭敏化する。
これによって実際の魔法の効果は数秒で終了するのに何倍もの時間がかかるように感じる。おまけに痛みもより鮮明に感じる。あくまで感覚だけがすごくなるので体を動かしたり、魔法を使ったりする速度が速くなるわけではない。
この効果の開発目的は短時間で効果を発揮させないと呪いの解除の可能性もあるかも
→速攻で効果が発揮するようにしよう→でも長く苦しませたい→感覚を狂わせてそう錯覚させよう! てな感じ。極悪である。
なおこの効果で痛みや出血でのショック死・気絶を防止している。

2.陰茎の肥大化および損壊
陰茎が勃起と比べものにならない程肥大化する
その後、高圧がかけられた状態で根元からねじ切られる。
もちろん実際は高速だが感覚が狂っているので長時間に感じる。

3.睾丸への痛み
睾丸の内、片方にありとあらゆる痛みが与えられる。
本文の描写以外でも様々な痛みがドラコには襲い掛かっていた。
実際の睾丸もこれで無残な状態になる。

4.睾丸の爆発及び残骸の完全消滅
最後に残った睾丸に体内の全魔力が集中して爆発する。
この爆炎で股間に残っている部分とねじ切られた陰茎が燃焼・完全消失する。
睾丸が一つしか存在していない場合は痛みを与えられた睾丸が爆発する。
睾丸が完全に摘出されていた場合は爆発はしない。
この段階で感覚も元に戻り気絶することが許される。

5.次回明らかに。

穢れた血と言ってしまったことでドラコはこのようなことに……。
ここまでするのかと思うかもしれませんが、この言葉は最上級に酷い言葉と思われます。こんなことを嫁に言われてしまってはブチ切れるのも仕方がないかなと。

ドラコをこんな目に合わせてしまってこれからリリがどうなるのか。
そしてドラコはどうなってしまうのか。

次回をお楽しみに。

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