【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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また台風ですよ。
今年は本当に自然災害が怖い年ですね。
頑張りましょう。

それでは17話どうぞ。


17. 開く部屋

競技場での惨劇から一夜が過ぎた。

ドラコ・マルフォイは奇跡的に処置が間に合い命は助かった。

応急処置はしたが、医務室の設備や魔法薬、マダム・ポンフリーの力ではどうすることもできない程の酷い状態であり、即座に聖マンゴ魔法疾患傷害病院に運び込まれた。

現場を目撃していたスリザリンとグリフィンドールのクィディッチチーム男子からの話でホグワーツ中の男たちの股間は震えあがった。

ますますリリアン・リンリーを怒らせてはならないと胸に刻み付けられることとなった。

 

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惨劇の被害者であるドラコ・マルフォイの父親のルシウス・マルフォイはスケジュールを全て白紙にしてホグワーツに急いだ。

ルシウスはホグワーツの理事の一人である。今回の事を受けて相手がリンリー家だろうと何であろうと必ず報いを受けさせてやると心に誓っていた。

だが、ホグワーツに着いて彼を待っていたのは予想もしない展開だった。

 

「アズカバンどころか退学にすら出来ないだと!? どういうことだ、ダンブルドア!!」

 

「そのままの意味じゃ……。リリアン・リンリーを罪に問うことも退学にすることはできぬ。できて精々が罰則を与えること、大幅な減点ぐらいじゃろう。」

 

ルシウスは目の前の老害(ダンブルドア)の言うことが理解できなかった。

なぜ、息子をあんな目に合わせた奴を退学にもできないのだ。

その答えはすぐに知らされる。

 

「お主を除く全ての理事たちが彼女の擁護に回った。」

 

「は……?」

 

今度こそ本当に理解ができなかった。

更に追い打ちが掛けられる。

 

「それにわしも校長として彼女を退学にするのは反対じゃ。なぜなら、彼女がここを去るならば大半の女子生徒もそれに続く恐れがある。そうなってしまえばホグワーツはお終いじゃろう。」

 

「馬鹿な……。そんな馬鹿なことがあるか!? 息子は、ドラコがどんな目にあったのか知らぬとは言わせんぞ。生徒がいなくなろうが、理事が反対しようが知ったことか! 私が直接裁きをくれてやる!」

 

「ルシウスよ、無駄じゃ。これを見ると良い。」

 

校長室から出て行こうとしたルシウスの目の前に羊皮紙の束が現れる。

それを破り捨てて、とっととここから出ていくつもりだった。

だが、そこに記されていた名を見て、流石に動きが止まってしまう。

 

「コーネリウス・ファッジ……だと!?」

 

「それだけではない。魔法省の多くの有力者、他国の魔法省までもがリリアン・リンリーの退学を望んでおらん。」

 

何がどうなっているのか理解が追い付かないとはまさにこのこと。

ルシウスは一連の出来事がまるで悪夢ではなかと、全てがあり得ないことだとしか思えなかった。

そしてかつての主の言葉が脳裏によぎる。

 

『ルシウスよ。リンリーには手を出すな。アレは敵対するよりもっと有効に使うものだ。』

 

ここで全てを無視してリリアン・リンリーにドラコの痛みを味合わせることは可能だろう。

だが、その結果どうなるのか。

恐らくはマルフォイ家は周囲から孤立する。

魔法大臣も、多くの権力者も、他国も、全てが敵に回る結果が待っている。

下手すれば闇の帝王すらも……。

ルシウスはその場に立ち尽くした。

悩みに悩む。10分以上はそうしていただろう。

 

「……すまぬドラコ。臆病者の父を許してくれ。」

 

ルシウスは息子とマルフォイ家の未来を天秤にかけ、一族を選んだ。

ルシウス・マルフォイはホグワーツに来た時の覇気は一欠けらもなく、自らへの嫌悪と後悔がにじむ顔で校長室を後にした。

 

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ドラコ・マルフォイは三日後に意識を取り戻した。

あれだけの傷、それも体だけでなく心にもひどい傷を負ったにもかかわらずである。

同じ聖28一族の男子たちは家族から情報を得ようとしていたが、目が覚めたとは聞かされていたがずっと面会謝絶のままであるとのことであった。

それから更に一週間が経過する。この日にドラコが戻って来るとの噂が流れている。

一限目のグリフィンドール・スリザリン合同での魔法薬学の授業で復帰するらしい。

スリザリン男子は心配、グリフィンドール男子は興味と僅かな同情を持ってドラコが姿を現すのを待つ。女子は言わずもがな。

 

魔法薬学の担当であり、スリザリンの寮監でもあるセブルス・スネイプが教室である地下牢に入って来る。その後ろには銀髪の少女が顔を俯かせたまま続く。

それを見て一部を除いて全員が疑問に思った。

ドラコ・マルフォイはどうした? あの子は誰だ? と。

 

「静かに。……ドラコ・マルフォイは本日をもって復学する。簡潔に事実だけを言おう。我輩の隣にいるのが、ドラコ・マルフォイだ。」

 

教室は数秒静かになった。

その後爆発した。

 

「静かにせんか! 全員から2点減点! もう一度言う、今言ったことは事実だ。リンリー、説明しろ。」

 

興味深くその少女を観察していたリリは突然の要求に驚く。

 

「何でですか?」

 

「マルフォイがこうなったのもお前が原因であろう。さっさと説明をしろ。」

 

「分かりました。えーと、簡単に言うとその子の身体の中の男を殺しました。去勢ですね。

なので後は女の子になるしかないわけです。これでドラコちゃんは女の子になりました。男が減って女の子が増える、喜ばしいことですね。」

 

この発言で男子はドン引きである。女子はリリが幸せそうなのでOKである。

説明を終えたリリはドラコの前に移動する。

ドラコは自分をこんな身体に変えたリリへの嫌悪や恐れと女子になったばかりでリンリーの呪いへの抵抗が碌にできないので、もの凄い魅了によって混乱の中にあった。

 

「女の子の気分はどう? ハーマイオニーに言ったことを謝るなら……もっといい気持にさせてあげるわよ。」

 

「や、やめろ! こっちに来るな! 僕を見るな! 戻せ、僕は……僕は!」

 

「あら、いい声ね。前の声は忘れたけど今の声は好きよ。」

 

銀髪の美少女、声も綺麗。更には一人称が僕というのもギャップを感じてグッド。

怒りか恐怖か歓喜か何なのか分からない感情で震えるドラコの頬に撫でるように触れる。

 

「あっ……あ、ぅん。」

 

リリがそばにいるだけでもいっぱいいっぱいだったドラコは刺激に耐えられなくその場にへたり込んでしまった。

ドラコは再び医務室に連れて行かれることになった。

リリはまた一つホグワーツでの新しい楽しみができたとご満悦であった。

あの少女はこれからどんな反応をしてくれるのか非常に楽しみだ。

 

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日時は過ぎてハロウィーン。

この日のホグワーツはかぼちゃとお菓子の香りに包まれている。

だが、そんな事よりももっと重要なことがある。

昨年のリリアン・リンリーを中心としたトリックorトリート事件だ。

今年はあんな騒動にならないようにあらかじめ公正な抽選会を行っており、選ばれし者だけがリリへの悪戯を許されていた。

そのおかげで今年は落ち着いたハロウィーンとなるはず……だったのだが。

昨年の鬱憤を晴らすかのようにウィーズリー双子が悪戯に全力になってしまったのだ。

とは言え、他人が嫌がることより笑顔になるような悪戯をする双子なので生徒たちは大いに盛り上がった。

頭と胃が痛くなるのは教師と用務員のフィルチだけであった。

 

夕食のパーティーはかぼちゃ尽くしであった。

かぼちゃのポタージュ、かぼちゃのグラタン、かぼちゃコロッケ、かぼちゃプリンにかぼちゃパイ。飲み物ですらかぼちゃジュースである。

海外のものではかぼちゃのテンプラなるものもあった。

そんなカボチャしかないようなメニューではあったが、どれもこれも絶品で飽きずに楽しめた。

 

デザートを食べ終え宴は終了した。

それぞれの寮に戻る途中でなぜか生徒の移動が止まってちょっとした騒ぎになっていた。

寮に戻ったリリ、ハーマイオニー、パーバティは騒ぎの原因が何か知っている子に聞いてみた。

どうやら用務員のフィルチの猫のミセス・ノリスが呪いをかけられたとか。

それでそこにはいつものグリフィンドールの馬鹿二人(ハリーとロン)がいたそうだ。

またもや兄が馬鹿な事を起こしてしまって辛いだろうジニーが可哀そうだなと思い、慰めるため探すが見当たらない。

そういえば、いつもならすぐに近寄って来るのに今日はあまりこっちに来なかったことに思い至った。

 

「でね、リリちゃん。壁にはなんか落書きがされてたって。」

「あ、それ私見た! えーと……『秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ、気をつけよ』だったかな?」

 

「秘密の部屋? ハーミー知ってる?」

 

「確か……ホグワーツの歴史で見たような。確認してみる。」

 

ハーマイオニーは即座に自室に戻って『ホグワーツの歴史』を取ってきた。

それを見るため、という名目でリリに近づくためにハーマイオニーを中心に女子たちが集まりだした。男子も興味あるのか遠巻きではあるがハーマイオニーの話を聞いている。

『秘密の部屋』とは要約するとこんな伝説であった。

ホグワーツの創設者4人。ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリン。最初のうち、4人は仲良くやっていたのだが、じきに意見の相違がでてきた。純血主義者のスリザリンはマグル生まれは相応しくないと考え始めた。残りの三人と反目し、グリフィンドールとの決闘に敗れたスリザリンは学校を去った。だが、スリザリンは他の創設者に知られない、隠された部屋を作ったという。学校に真の継承者があらわれるまで、何人たりともあけられなくした。スリザリンの継承者として認められた者のみがその部屋の封印を解き、その中の『恐怖』を解き放ち、ふさわしくないものを追放する。

その『恐怖』が封印されているのが『秘密の部屋』であるという。

 

それを聞いたみんなの反応は様々であったがとりあえず注意するということで落ち着いた。

リリも女の子たちには危険な目にあってほしくない。特にハーマイオニー()はマグル出身だ。どんなことが起こるか分からないが気を引き締めていくことにした。




ルシウスパパ激怒。だが、どうすることもできなかった。
リリは今回の件を気にしていなかったけど、ハーマイオニーやダフネ辺りがこのままだとマルフォイ家を敵に回してヤバいと考えたのでロザリンドの人脈やら色々と使って事前に対処してました。
リリのママはかなりやばい人です。能力より人脈が。

闇の帝王もリンリーについては色々と考えていました。
それはまた後々に。


ドラコはドラコちゃんに進化した!

リンリーの去勢魔法の真の効力は対象の男性を殺すことで女性へと作り変えること。
更にただ女性になるだけではなくリンリーとしか子孫を残せなくなる。
これによってドラコちゃんの子=リンリー家ということでどうあがいてもドラコからはマルフォイ家の跡継ぎは生まれないことに。
ちなみにちゃんと治療をしないと出血多量で死にます。

秘密の部屋が開かれる。
ハリーとロンは原作と同様の流れで第一発見者に。

それでは次回お楽しみに。

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