あまり読みすぎるとそっちでも何か書きたくなってくる。
面白い作品はそれだけでこちらも書こうとする意欲を出すパワーがあるな。
それでは18話どうぞ。
ミセス・ノリスが襲われてからホグワーツでは変化が起きていた。
ハーマイオニー他優秀な生徒が『秘密の部屋』の伝説について伝えた結果、マグル出身者や混血の生徒たちは注意深く行動するようになった。
純血ならば襲われないという憶測から出来る限りそういった生徒と一緒に行動するようにしている。
だが、こんな変化は些細な事である。問題なのはリリアン・リンリーの周りだ。
リリアン・リンリーの生みの親はマグル出身、つまりは混血である。マグルの血が流れているゆえにスリザリンの継承者の敵に該当するのではないかと女子たちは恐れたのである。
リリが移動するたびにその周りを護るように腕の立つ上級生が取り囲み、更にはリリのすぐ近くにはどんな時でも聖28一族の女子が張り付くようになっていた。
移動だけでなく、授業や、食事、睡眠、トイレに至るまでずっと周りに誰かしらいる。
そんな状態ではリリが廊下を通るだけで大渋滞が発生する有様である。
流石のリリも女子に囲まれて幸せだがこれでは他の女子にも迷惑が掛かってしまうと止めるように言うが返ってくる返事は決まってこうである。
「「「リリちゃんのためなら何の問題もなし!」」」
特にすぐ近くにいられる聖28一族、ハーレムメンバーのダフネを除いた、女子たちは不満のかけらもないのであった。
パンジー・パーキンソンやミリセント・ブルストロードといったスリザリンの純血女子たちはダフネに一歩先を行かれていたためここぞとばかりにリリを守るため周囲に目を光らせている。
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それから特に事件も起こらずクィディッチシーズンが到来した。
初戦は因縁の対決。グリフィンドールとスリザリンの試合だ。
スリザリンのシーカーは女になったからとはいえドラコ・マルフォイから変わっていない。
ニンバス2001という最新鋭の箒をプレゼントしたという効果もあるだろうが、それ以上にドラコの箒の腕もシーカーに値するだけのものがあるということだろう。
リリたちが観客席に行く途中に競技場に向かっているスリザリンチームの姿が見えた。
大柄な男たちの仲で一人だけ小柄な少女が緊張でガチガチになっている。
それを見たリリはスリザリンチームの元に歩を進める。
「うぇあ!?」
「に、逃げろ!」
リリはただ近づいただけなのに全速力で逃げ出す男たち。
唯一人残ったのは少女、ドラコ・マルフォイである。
「こんにちは、ドラコ。」
「う、あ……何しに来た。」
「何って、応援しに。初めての試合なんだよね? 頑張ってね!」
「なっ何だよそれ! 意味が分からない! 僕は敵じゃないのか!? こんな体にしてその上!」
リリは激昂するドラコの顔を両手で包み真っ直ぐに目を見る。
リリが真っ直ぐ見つめてくるだけでドラコは身動き一つとれなくなってしまう。
「ドラコ、あなたはどうあがいても何をしても、もう女の子。私は全ての女の子の味方。だからあなたの味方でもある。何もおかしなことはないわ。」
(ふざけるな! 僕は男だ!)
そう言いたいドラコだったが、声は出せず体も動かない。
リリの瞳から目をそらせない。
それにどんどん心臓の高鳴りが大きくなっていく。
しかし決して不快ではない。
ドラコは混乱しっぱなしであった。
「ふふ。あなたみたいに私を全肯定しない人もそれはそれで好きよ。刺激があって楽しいもの。」
最後にリリはドラコの頬にキスをして立ち去っていく。
ドラコは自分の中の男の部分と女の部分がグチャグチャになりますます訳が分からなくなる。
だが、身体には力がみなぎっていくのを感じている。
数分ほどそこで呆けていたがもうすぐ試合が始まることを思いだし競技場に急いだ。
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クィディッチの試合はほぼ互角の展開が繰り広げられている。
最新式のニンバス2001で統一されたスリザリンは去年の雪辱を晴らすために猛特訓したのか、その性能を十二分に発揮させていた。
対するグリフィンドールもリリの応援を受けて気力十分のチェイサー三人娘が頑張ってはいるが、ブラッジャーの一つがシーカーのハリー・ポッターばかりを狙うため
試合が開始して一時間が経過した時点で50対70とスリザリンがややリードしている。
グリフィンドールはそこで賭けに出た。
暴走しているブラッジャーをハリーに任せることにしたのだ。
ハリーは巧みな箒さばきでブラッジャーを躱しながらスニッチを探す。
そうしているうちに同じようにスニッチを探すドラコの近くまでやって来ていた。
「どうしたんだい、ポッター? いつからそんなにブラッジャーに好かれるようになったんだい?」
「うるさいぞマルフォイ! それともドラコちゃんと言った方がいいかい? 君こそあんなリンリーに好かれるようになって最高だろう?」
互いに罵り合いながらもスニッチを探し続ける。
そしてほぼ同時に金色の小さな光を見つけた。
「「!」」
スニッチに向けて二人が風になって飛び出す。
(勝つ! 絶対に勝つ! 僕だってやれるんだって証明してやるんだ!)
ハリーは焦っていた。
ホグワーツ入学が決まってから出会う魔法使いたちは皆が皆、自分の事を生き残った男の子を言う、両親も凄い魔法使いだったと言ってくれる。期待に満ちた魔法界での暮らしが始まるとばかり思っていた。
しかし、いつの間にか悪いことばかりが起こっていた。
マルフォイの罠にはまって大量の減点に始まり、父さん譲りの箒の才能だと言われたのに初戦では箒に遊ばれるだけで良いとこ無し。ドラゴン騒動で魔法界で最初の友人のハグリッドはホグワーツを去ってしまった。おまけに罰則と大量の減点だ。
期末に宿敵のヴォルデモートと対決したがほとんどダンブルドア任せでせっかく勝ち取った寮杯も感動なんてありはしなかった。
今年も最初からホグワーツ特急に乗れなかったり、ロックハートがうざかったり、謎の声に秘密の部屋とうんざりだ!
今の周りからのハリー・ポッターの認識は『生き残った男の子』ではなくただの『問題児』である。
だからこそ、この試合には負けられない!
僕の力で勝って皆の認識を変えたい!
そのためにも全力で飛ぶ!
反対にドラコの心は落ち着いていた。
身体が女になってからは何もかも忘れるためにひたすら箒の練習に打ち込んできた。
箒に載っている間は全てを忘れることができる。
今の自分はただスニッチを掴むだけの存在だ。
そこに男も女も関係ない。
ただただ真っ直ぐに黄金のボールに向けて進むだけ!
二人はほぼ互角のまま徐々にスニッチとの距離を詰めていく。
その速さにブラッジャーはハリーに追いつくことができない。後は二人の実力が勝敗を決する。
箒の才能はハリーが上。箒の性能はドラコが上。
そしてともに練習量では負けていない。
全くの互角と言っていい勝負。
「頑張れ! ドラコ!」
耳に聞こえるは
「いっけぇえええええ!」
僅かにドラコが前に出る。
そして。
『試合終了―! ドラコ・マルフォイがスニッチを掴みました! スリザリン220対グリフィンドール50。スリザリンの勝利!』
最後に勝敗を分けたのはリリの声援だけではない。
女体化したことによる身体の軽量化でほんの僅かにドラコの速度が上回ったのだ。
歓喜に包まれるスリザリンチーム。全員でドラコを胴上げしている。
反対にグリフィンドールチームは失意に沈んでいる。
特にハリーの落ち込み様は酷い有様だ。
そんなハリーに追い打ちでブラッジャーが襲い掛かって腕の骨を砕いてしまった。
ダメ押しでロックハートが腕の骨を消失させるおまけ付きであった。
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クィディッチ試合の翌日の話題の大半がプレーの内容であったり選手を称えたり貶したりといったものである。
しかしこの日は違った。
とうとう秘密の部屋の怪物による生徒の被害者が出てしまったのだ。
グリフィンドールのマグル出身者のコリン・クリービーが石になって発見された。
この知らせはホグワーツ生徒を恐怖に陥れた。
特にマグル出身者や混血の生徒は今まで以上に恐れ団体行動をするようになってしまった。
他には怪物の正体を推理したり、継承者は誰なのか、ホグワーツの警護体制はどうなっているのかなどと話題は尽きそうになかった。
もちろんリリアン・リンリーの周りは今まで以上の警戒態勢である。
もはやどこぞの王族の身辺警護のような有様である。
リリは今回の事件については女の子が襲われなくて良かったと心の底から思っていた。
もし仮に女の子が、ハーレムメンバーが、ハーマイオニーが襲われでもしていたら……。
そう思うだけでとても恐ろしい。
「大丈夫よ、リリ。」
そんな風に思っているとハーマイオニーが優しく抱きしめてくれた。
何も言わずに抱きしめかえす。暖かくて優しい香りがする。
それだけで恐怖も吹っ飛んでしまった。
「ありがとう、ハーマイオニー。でも危ないことはしないでね。もちろん皆もよ。」
そんなおねがいをされてしまっては危険なことなどできるはずがない。
女子たちは寮の垣根を越えて情報共有と防衛について連携することを誓った。
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事件から2週間ほど経過した週末。
掲示板にある報せが張り出されていた。
『ギルデロイ・ロックハート主催 決闘クラブ』
ロックハート主催というのはどうかと皆が思ってはいたが僅かでも戦いの練習になれば良いとしてとりあえず参加することにした。
その日の夜。
大広間は長机は撤去され生徒たちでいっぱいであった。
リリが参加をするということは必然としてほぼ全ての女子が参加するのと同義だ。
その女子生徒の多さに主催者のロックハートは満足そうである。
「みなさん、良く集まってくれました! 私が見えますか? 私の声が聞こえますか?……大変よろしい!」
そしてロックハートはいつものように自慢話を繰り広げ始めた。
その横ではスネイプがうんざりした顔で立っている。
「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう! スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてほんのわずかご存じらしい。模範演技のために、勇敢にもお手伝いいただけるとのことです! ご心配めさるな、私と手合せしたあとでもみなさんの魔法薬の先生はちゃんと存在します!」
誰の目にもスネイプが激怒しているのはよくわかった。
それに気が付かないロックハートは模範戦を始めた。
杖を構え、3つ数えたら術をかける、という説明がされ、二人が相対する。
結果はスネイプの
その後は二人組を作って模擬戦をすることになったのだが、以外にもリリと組みたがる女子は少なかった。
本気ではないとはいえ愛すべき守るべき存在に向けて杖を向けることなど出来るはずがない。結局はハーマイオニーとペアを組んで模擬戦をすることになった。
決闘とは言っても魔法を派手に魔法を打ち合うようなことは出来ずただ単に知っている魔法を使う程度の事しかできない生徒が大勢いた。
リリとハーマイオニーも簡単な魔法を使ってそれをお互いに避けるということを繰り返していた。
なんだかんだと真剣にやっていたらいつの間にかロックハートに連れられてハリー・ポッターが舞台の上に上がってスリザリンの男子と模擬戦をすることになっているようだ。
「それじゃあ、杖を構えて! 1、2、3!」
ロックハート先生の開始の号令で決闘が始まった。
スリザリン男子が呪文を唱える。
「サーペンソーティア! 蛇よ出よ!」
杖の先から黒蛇が現れる。
周りを囲んでいた生徒から悲鳴が上がったり、後ずさりしていく。
「動くなポッター。私が追い払ってやろう……」
スネイプは蛇を追い払おうと前に出るが、それをロックハートが阻む。
「私にお任せあれ!」
ロックハートが杖を振るうと大きな爆発音がして蛇が空中に弾き飛ばされる。
その衝撃で蛇は怒り狂ったよう近くにいたハッフルパフ女子に襲い掛かろうとする。
恐怖でなのか動けない彼女を見てリリは咄嗟に蛇との間に入って守ろうとする。
その次の瞬間、ハリーが何かを叫んだ。
何か、そう言葉では無かった。ハリーの口からはシューシューといったような音が漏れているだけであった。
そのシューシューによって蛇は襲うのをやめとぐろを巻いて大人しくなった。
得意そうな顔をしているハリーだったが、大広間中の女子から敵意を向けられていることに気が付いて動揺し始めた。
「リリちゃんに何するつもり!?」
「リリ逃げて! そいつは継承者よ!」
「早く引き離すのよ。皆杖を構えて!」
次々にリリとハリーの間に女子たちが壁を作る。
最前列にいる者たちは今にも魔法を放つ勢いだ。実際ハリーが何かしたらそうなるだろう。
そこへロンがやって来てハリーの袖を掴むと大広間の外へと逃げるように引っ張っていった。
「リリ平気!? あのポッター……。」
「これからはポッターに対しての監視も必要になって来るわね。護衛シフトの見直しね。」
「
既に女子たちはハリー・ポッターを継承者、そうでなくてもリリの敵としか考えていない。
これが他の女子や男子が襲われていたらここまでにはならなかっただろう。
リリは周りの女子の事よりも先ほど襲われかけていた女の子を心配する。
「アンジー、大丈夫?」
「怖かった……本当に怖かったわ。リリちゃんが襲われてしまうかもしれなかった……。」
アンジーは自分が襲われかけたことよりもリリが守ろうとして自分の代わりに傷ついたかもしれないという事実に涙していた。
そんな彼女を優しく泣き止むまで抱きしめ続けた。
こんなことになっては決闘クラブなど続けられるはずもなくお開きとなった。
リリ警護隊結成
実際原作でもダンブルドアは前回の秘密の部屋の事件を知ってるのに動きが少なすぎると思うんですよ。生徒の警護をする対策ぐらいしてもいいとは思うんですけどね。
クィディッチ開幕
スリザリンは有力な人間がいなかったのでドラコがシーカーのまま
ドラコも猛特訓で原作以上の実力に。
ハリーとの勝負は次があったらどっちが勝つか分からない程僅差でした。
決闘クラブ
殆ど原作と同じ。
ハリーとしては蛇に襲われそうなリリを助けて少しは皆に見直してもらえればなんて考えてましたけど結果は御覧の通り。
それでは次回お楽しみに。