【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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2018年も残すところあと1カ月。
この物語は出来れば2019年中には完結させたいですね。

それでは26話どうぞ。


26. 新授業

新学期が始まった。

初日から夜更かしをしてしまったリリとハーマイオニーだが、体は精神に引っ張られるのか二人そろってツヤツヤとした肌をしている。

それを見てハーレムたちや女子たちは察した。

こればかりは同室である正妻の特権だと諦めるしかない。

ハーマイオニーはそれでなくても元気いっぱいであった。

3年生になって増えた選択授業が楽しみなのだ。

こういったことはリリには共感は出来ない。リリは授業が増えて楽しいとは感じないが、ハーマイオニーの興奮する姿を見られるだけでも良しとしよう。

 

朝食も食べ終えて今年初めての授業は占い学であった。

クラウディアに聞いたところ北塔のてっぺんでやるらしく遅刻しないように急いで向かう。

梯子を上って教室に入るとそこはシェリー酒の匂いで充満した空間だった。

室内には一人ずつ座る丸テーブルに、水晶やティーカップその他いかにも占いで使う様な物が数多く揃っていた。

全員が席に座ると部屋の隅から痩せて大きな眼鏡をかけた女性が現れた。

 

「占い学へようこそ。あたくしがシビル・トレローニー。皆様に占い学を教える者です。たぶん、あたくしの姿を見たことがある生徒は少ないでしょうね。俗世の騒々しさから離れたここで日々、未来について考えていますもの。」

 

トレローニーは生徒たちを見渡し、占い学について話していく。

 

「占い学は未来を見通すもの。魔法という存在の中で最も難解で不可解なものですわ。未来をハッキリとした形で口に出すことはほとんどの魔法使いにとって不可能と言えるでしょう……。」

 

一呼吸おいてトレローニーが告げる。

 

「あたくしでさえ未来を予言することは非常に困難なのです。未来とはあやふや……。夢や幻の様なもの。理論や数字では理解できない。直感や第六感……そういったものが重要なものなのです。今までの“勉強”と同じようなものではございませんの。

それゆえに未来を見通す才が無いものには、教えることはほとんどありませんのよ。書物ではある程度のことしか教えられません……。それでも真に占い学を学びたいというのであればこの場に残る選択をなさいませ。」

 

トレローニーの言葉に何人かの生徒は動揺する。男子生徒の内、数人が去っていった。

 

「よろしいですね? それでは今日は占い学とは、未来とは何なのか、そこから始めていきましょう。」

 

その後の授業は一般的な考え方とトレローニーの持論による占い学と未来についての講義が始まった。

所々で質問や生徒たちとの議論をすることで常に考えさせる授業であった。

 

「それでは最後に簡単な占いをやってみましょう。」

 

お茶の葉占いというカップに紅茶を注いで飲み終わった後に残った葉を見て占うというものだ。

リリは当然ハーマイオニーとペアを組んでやる。

 

「教科書を見るだけでなく自らの直感を第一にするのです。」

 

トレローニーのアドバイスが飛んでくる。

 

それぞれのペアは葉っぱを見て悩んだり話し合ったりしている。

何人かの女子生徒は真剣に葉を睨んでいるが、悩んでいるのが大半だ。

 

「……ダメね、全然わからないわ。」

 

ハーマイオニーがお手上げ宣言をした。

理論や数字といったものを中心に考える彼女にとってはこういった公式やきまりが当てはまらない分野はとことん苦手なのであった。

そこにトレローニーがやって来る。

 

「あなた……。悪いことは言いませんわ。向いていませんことよ。ここで占い学を学ぶよりは他の授業を選択する方が良いかと。」

 

トレローニーの“あなたには才能がない”という宣言にハーマイオニーは一瞬かっとなる。

しかし、トレローニーに真っ直ぐ見られると怒りは静まっていった。

その目には哀れに思うような視線はなく、ただ単にハーマイオニー・グレンジャーという少女を見ていた。

 

「トレローニー先生。ここを出ていくか決めるのはハーミーよ。」

 

「ええ、その通りでしょう。ですが彼女の為を想えばここにいることは有益にはならないでしょう。それよりも、カップの葉はどうです?」

 

リリはカップを手渡す。

じっとそれをトレローニーが見る。

 

「大小二つ……。この二つに何か意味が……。良くない印です。」

 

カップをリリに戻しながら忠告する。

 

「気を付けなさいませ。大きいもの、小さいもの、そのどちらもあなたに不幸をもたらす……。ですがこれが絶対ではありませんこと、それも心に留めておくのです。」

 

それだけ言って他の組を見に回っていった。

 

「リリ信じる? 私には信じられないわ。」

 

「えーと……。分かんない! けど、正直トレローニー先生は面白いかな。占い師って未来はこうだ! とかこれがあれば安心! なんて人かと思っていたけど、未来について独自の考えを持っているし、それが絶対とも思っていない。それに未来を考えるのって楽しいわ。」

 

「ふーん……。ま、リリが楽しそうならいいわ。」

 

そうしているうちに授業は終わり、続々と生徒が出ていく。

リリもそれに続こうとしたがトレローニーに呼び止められた。

 

「リリアン・リンリーさん。お母様はお元気?」

 

「お母様? どっちですか?」

 

「ああ、ごめんなさい。ロザリンドさんですわ。」

 

「ええ、元気ですよ。毎日楽しんで生きていますよ。」

 

「それは何より。あなたたちの未来に幸あれ。」

 

それだけ言って奥に戻っていくトレローニー。

リリとしてはこのように女性にママ(ロザリンド)について聞かれることは何回かあるので昔ママが何かしたのかな程度に思っていた。

 

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選択授業で次に受けたのは魔法生物飼育学であった。

飛行訓練以外では初めての昼間の屋外での授業だ。

禁じられた森の近く、かつて森番だったハグリッドの小屋のそばにスリザリン生と一緒にプランクに連れられてやって来た。

 

「今日はまずは無害な魔法生物に触れあってもらいます。」

 

その後、生徒たちは囲いに放たれていたニーズルやニフラー、パフスケインと触れ合った。

そのモフモフとした感触に多くの生徒が満足気である。

リリは雌の魔法生物に囲まれて埋もれてしまうといったこともあったが概ね良い感触の授業であった。

 

「まずは皆さんに魔法生物と触れ合う楽しさを感じていただけたなら満足です。ですが! 多くの魔法生物はこのような愛らしいものではありません。毒を持ち、凶暴で、簡単に魔法使いを殺せる。そんな生き物が多くいます。今後はしっかりと触れ合う前に講義をします。次の授業で扱う魔法生物について必ず予告しますので羊皮紙一枚分は予習レポートを書くようにしますのでしっかり学んでくださいね。」

 

そう言うとプランクは手を上げて何か合図を送る。

なんだ? と思っていた生徒たちは驚愕した。

2メートルほどのドラゴンがこちらに飛んできたのだ。

それはリリの前に降り立ちその頬を舐めだした。

かつての森番ハグリッドが違法取引をして生まれたノルウェーリッジバック種のドラゴンだ。

生まれてから2年は経過してすっかり人より大きくなっている。

それでもリリにとってはちょっと大きな犬程度の認識でカワイイものであった。

 

「ここまで懐くドラゴンは異例ですが、魔法生物飼育学を極めれば様々な魔法生物と触れ合えることができるようになります。皆さんが魔法生物に携わる仕事を希望するなら私は全力で応援します。」

 

次回の授業はディリコールを扱うことになって授業は解散となった。

城に戻る途中でドラコ・マルフォイと目が合った。

 

「……何か用か?」

 

「ん? モフモフに囲まれた銀髪美少女がなかなか良かったかなって。ああいうのが好きなのかしら?」

 

「なっ!? ち、違う! 別にあんなのは好きじゃないぞ! ただ気持ち良かっただけだ……。」

 

そんなドラコにリリだけでなく多くの女子がかわいいものを見る目で見ていた。

 

 

選択授業の最後は古代ルーン文字学だ。

担当教師はバスシバ・バブリング

内容としては読んで字のごとく古代のルーン文字を読み解いて学ぶものであるが、リリには難しいものであった。

逆にハーマイオニーは目を輝かせながら真剣に取り組んでいることからお気に召したようだ。

 

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新しい教師が就任した最後の授業は闇の魔術に対する防衛術であった。

教室に入るとまだリーマス・ルーピンの姿はなくしばらく待っているとルーピンがやって来た。

 

「やぁ、待たせてごめんよ。今日は早速実習をしてみようと思うんだ。ちょうどいいのがあるから付いてきてね。」

 

目的地までの間のポルターガイストのピーブスへの対処から見た目からの不安も払拭され生徒たちは入学してから初めてまともな闇の魔術に対する防衛術を受けられると期待に胸を膨らませた。

 

目的地は職員室であった。そこに篩箪笥が置かれているが、時折ガタガタと揺れている。不安を覚えた生徒が質問をするとルーピンは落ち着いて返答した。

 

「大丈夫、心配ないよ。中にはまね妖怪のボガートがいるだけだ。」

 

それからルーピンはボガートについて質問しハーマイオニーが答える。いつもながら満点回答である。

 

「これからみんなにはボガートと対峙してもらう。一人ずつだ。複数人で相手するとボガートが何に変身すればいいか混乱しておかしな結果になってしまうからね。ボガートを退散させるのは簡単だけど精神力が必要になる。退治させる呪文はこうだ、私に続いて言ってみようリディクラス。」

 

生徒はルーピンの言った呪文を繰り返す。

 

「うんうん、とっても上手だ。だけどね、本当に必要になるのは呪文じゃなくて笑いなんだ。さっきの呪文だけじゃ意味がない。君たちがボガートの相手をすると一番怖いものに変化するだろう。リディクラスを唱える時にその怖いものを滑稽だと思えるものに変化させるようにイメージしながら唱えるんだ。そうすればその通りボガートが変化するはずさ。ちょっと時間をとるからみんな怖いものとそれをどうおかしくさせるかイメージするんだ。そしたら順番にやってみよう。」

 

リリは何かが怖いか考える。

すぐに頭に思い描いたのは愛するハーマイオニーが死ぬ光景だった。

血まみれで倒れ伏すその光景を想像して嫌な気分になるが、すぐにそれを振り払いどうすれば良いか考える。

すぐに妙案を思いついた。

 

「それじゃあ、ネビル前へ。」

 

それからスネイプがハゲタカのついた帽子をかぶって緑色のドレスを着て赤いハンドバッグを持った姿に、血まみれのミイラはほどけた包帯で転がり、巨大な蜘蛛は足をもぎ取られ、切断された手首はネズミ捕りに挟まれるといった喜劇が職員室で演じられた

 

「さぁ、お次はリリアンだ。」

 

リリが前に出るとボガードはその姿を変える。

予想通りにハーマイオニーの死体が現れた。

リリは覚悟をしていたのでそこまで動揺はしなかったがそれでも気持ちのいいものではない。即座にこれを最高のものにしなくては。

 

「リディクラス!」

 

リリが呪文を唱えると血まみれの死体は綺麗になり普段と何ら変わらないハーマイオニーの姿になる。

ボガードは変身したモノの特性を得る。吸魂鬼(ディメンター)に変じれば完全でなくとも幸福を吸い取る力を得る。

ならばハーマイオニー、つまり人の女性に変身したボガードはどうなるか?

 

「おいで。 ハーマイオニーも。」

 

もちろんリンリーの呪い(魅了)の影響を受けてしまう。

初めて感じるその魅了に抗う術はなくふらふらとリリに近づき抱きしめられるボガードハーマイオニー。そして呆れながらも本物のハーマイオニーもそれに続く。

こうして両手にハーマイオニーという最高の幸せを実現することができて最高に幸せを感じるリリであった。

 

その後も授業は盛況のうちに終了した。

今年の闇の魔術に対する防衛術は過去最高だと皆が認めざるを得ない出来だった。

リリも最後まで楽しくできて満足である。

ちなみにボガードをお持ち帰りしようとお願いしたが、他の寮の授業でも使うとの事で断られてしまった。

 




初日からお楽しみするオリ主とヒロイン。

トレローニー強化。
リリママのロザリンドとの接触によって自分の才能と占い学や未来についてよく考えた気結果原作よりも色々と強化されました。
自分の才能がないこと、自身について客観的に知る(本来の力は知らない)
未来に対する考えを原作以上に学んでいる
限定的ながら本来の力の発揮 などなど
それにしてもお母様と聞かれてどっちってなるのも普通じゃないな。

魔法生物飼育学はハグリッドと違って最初は簡単なものから
ドラゴンは久々の登場。描写がないだけでたまにリリは会っています。
モフモフに囲まれた銀髪美少女(マルフォイ)良いと思います。


闇の魔術に対する防衛術は原作と一緒
リリの怖いものは嫁の死体。
それを怖くないものにするには生きている状態へ→つまり二人のハーマイオニーが!

それでは次回お楽しみ。

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