【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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今日は映画を見てきましたが、そういえばハリー・ポッターシリーズの映画は途中で見るのを止めちゃったなぁと思いだしました。
どうにも原作との差異を感じてしまって見なくなってしまったんですよね。
時間がある時にレンタルでもしてこようかな。

それでは31話どうぞ。


31. 試験と小さなネズミと大きな犬

イースター休暇も終わり今学期も終わりに近づいてきた。

ハロウィーン以来シリウス・ブラックが再度ホグワーツに姿を見せたことはなかった。

そのせいなのかホグワーツに配備されていた吸魂鬼(ディメンター)の数が少しずつ減っているようだ。

リリたちが練習した守護霊の呪文が無駄になりそうだが、そもそも使う場面にならないことが一番なのでこれで良いと納得はしていた。

 

去年のように大きな事件は他にはなく、しいて言えばクィディッチの試合でハリー・ポッターが世界最高最新の箒、ファイアボルトを手に入れ一気にグリフィンドールが優勝したことだろうか。

特に最終戦であるスリザリンとの一戦は盛り上がった。

絶好調のグリフィンドールを前にして一歩も引かないスリザリンはすさまじかった。

特に箒の性能差を感じさせないプレーをした白銀の美少女に多くの男子が目を奪われていた。彼女が元は男ということも忘れて。

もちろんリリもその勇姿に大興奮であった。

負けはしたがその勇姿はリリだけでなく寮を超えて多くの生徒が讃えていた。

試合後リリが向かったのは勝負に勝ち優勝を手にしたグリフィンドールではなく、スリザリンの控室であった。

リリが近づいてきたのを本能で察知した男たちはあっという間に控室から出ていき着替えて寮に戻っていった。残っていたのはリリが入ってきたことにも気が付いていないドラコだけだった。

 

「ドラコ。」

 

リリが声をかけてようやく気が付いたのか肩がピクリと動く。

だがそれだけだ。いまだに座ったまま顔を上げようとしない。

その落ち込み様を見ればドラコがこの一戦に力を入れて臨んだのかがわかるというものだ。

リリはドラコに近づき優しく抱きながら頭を撫でる。

ドラコはそれを黙って受け入れる。

 

「……何でここにいるんだ? グリフィンドールが優勝したんだからそっちに行ったらいいだろう。」

 

「優勝のパーティーは後でもできるから。今はあなたに会いたくてね。」

 

「……勝手にしろ。」

 

「うん、する。」

 

その後も会話することなくリリはドラコの事を撫で続けていた。

しばらくして心の整理がついたのかドラコは着替えに戻っていった。

 

(何なんだあいつ。負けた僕を笑いに来たわけでもないし……。)

 

「でも何だか楽になった。」

 

誰もいない更衣室で一人ドラコは呟いていた。

 

 

リリとしては負けて落ち込む銀髪美少女がこのままだと誰にも褒められず、慰められないと思っての行動であった。

ドラコはリリ好みではあるが、他の女子とは違い自分とは距離を取っている。

普通では味わえない微妙な関係ということでこの距離感がリリには楽しいものだった。

嫌悪と恐怖、魅了に抗いながらも惹かれる。そんなドラコの様子を見ているといじりたくなってくるが我慢している。

多分、リリが本気で迫ったら他の女の子と同じになってしまう。

それはつまらないなと思っているのだ。

徐々に、少しずつ自分の方に来るという過程を楽しんでいた。

 

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クィディッチも終わると残すところは期末試験だ。

ハーマイオニーが燃え、パドマも静かに打倒ハーマイオニーで燃えている。

ダフネも真面目な方なので試験に対しては苦に感じている様子はない。

クラウディアはO.W.L試験(ふくろう試験)があるため今年は力を入れている。

リリ、パーバティ、ジニーの三人だけが試験に消極的だが、他のメンバーからの圧力で渋々図書室の机に座って教科書との戦いを繰り広げている。

 

 

期末試験はその年に学んだことの総仕上げである。

変身術であれば年々変身させるものの難易度が上がっていく。

より細かく、より大きく、より精密に、より正確にといった具合である。

呪文学や魔法薬学も似たようなもので基本的には1、2年生の試験が難しくなっただけとも言える。

闇の魔術に対する防衛術はそれらと違って2年生まではまともな授業ではなかったためどんな試験が出るかは過去の傾向などは不明だが、推測することは出来る。おそらく学んだ闇の生物や呪文についてどう対処するかを採点するのだろう。

 

これらと違って全くもってどうなるか未知なのは占い学である。

そもそもが普段の授業からしてよくわからないことが多いのにどうやって試験をするのだろうか、と多くの生徒が悩み中にはぶっつけ本番で特に何もしていない生徒までいる。

 

そしてとうとう試験がやって来た。

変身術、呪文学、魔法薬学はそれぞれ筆記と実技。これは予想通り。

闇の魔術に対する防衛術は実技のみであった。生徒ごとにランダムで選ばれた魔法生物に対処するというものであった。これもまぁ、想定の範囲内である。

想定外だったのは魔法生物飼育学だった。なんと筆記試験のみである。

曰く、『知識の無い者は魔法生物を飼育する資格なし』とのことだ。

そして問題の占い学はというと、

 

「皆様には自身について占ってもらいましょう。どのような結果であれ……点数に優劣はつけませんわ。そんな評価など占い学には不要ですことよ。未来に点数を付けることなど無意味ですもの。」

 

トレローニーが言うにはホグワーツの方針だからテストということにしているだけでこんなこと無意味だとハッキリ断じた。

少々拍子抜けしたが簡単だし良いかとしか思っていない生徒が大半だった。

ただ一人ハーマイオニーだけが不満そうにしているのみだ。

 

 

そんなこんなで期末試験も終わった。

真面目組のおかげでどうにか乗り切ったリリはハーマイオニー、ジニー、パーバティの三人と校庭の湖の畔でゆったりとくつろいでいた。

 

「あ~……。終わった~!」

 

暖かいお日様の下でゴロンと横になる。

試験から解放されポカポカの陽気ではお昼寝タイムとなるのも当然だ。

ちなみに枕はハーマイオニーの膝である。言うまでもなく最高級の枕なんて目じゃない。

ハーマイオニーはリリの頭を撫でながら静かに幸せそうにしている。

パーバティとジニーは眠りそうなリリのため静かにしながら両隣に横になる。

 

このまま夕食までゆったりとした時間となるだろうなと思われた空間は突如として破られた。

 

ヂュー! という耳障りな鳴き声が聞こえてきたのだ。

 

「んもぉ、何?」

 

不快な音のせいでリリは起き上がる。

そこへ小さな何かが飛び込んできた。

 

「んん……ネズミ!?」

 

残っていた眠気も吹き飛んだ。別段ネズミが苦手というわけではないが意識が覚醒していないところに急にネズミが現れたらリリでなくても驚くだろう。

隣にいたジニーがそのネズミは鷲掴んでリリから引き離す。

リリに飛びつくなんて羨ましい……いや下等生物には不相応な事をしたのだ、今すぐにでも目の前の湖に放り込んでやろうとしたところでジニーは気が付いた。

 

「これ……スキャバーズ?」

 

小指が一本かけたそのネズミはかつての(ロン)のペットだったネズミであった。

元々はおさがりだったこともあってウィーズリー家にはかなりの期間一緒にいた存在だ。

流石にそんな存在を投げ捨てるほどジニーは冷血ではない。

とは言えどうしたものか。

 

 

 

悩むジニーがいきなりに吹き飛んだ。

黒い大きな何かがジニーに体当たりをしたのだ。

 

「ジニー!」

 

「ダメよリリ!」

「見て!」

 

リリが駆け寄ろうとするがハーマイオニーとパーバティの二人に止められる。

黒い何かは……大きな犬であった。

それは最初の激突で気を失ったのか動かないジニーを噛み殺そうとでもしているのか大きく口を開けていた。

 

「止めて!! エクスペリアームス(武器よ去れ)!」

 

咄嗟にリリは武装解除の呪文を使う。慌てていたこともあり呪文は見当違いの所に飛んで行くが、黒犬の動きは止まった。だが、それも一瞬。

されど、一瞬。その間にジニーの手からネズミが抜け出してリリの方に向かってきた。

そして黒犬がそれを追うように突撃してくる。

 

ス、ステューピファイ(ま、麻痺せよ)!」

エクスペリアームス(武器よ去れ)!」

 

ハーマイオニーとパーバティがリリを護るため黒犬に呪文を放つが巨体に似合わぬ俊敏な動きで避けられる。

それでも回避によってスピードが落ちた結果、その隙にネズミはリリの足元から遠くへと走り去っていった。

次々に放たれる呪文を避けながら黒犬は苛立った様子で唸り声をあげる。

次の瞬間にはその輪郭が歪み、一人の男がその場に立っていた。

 

手配書よりは整った髪で髭こそ剃ってはいるが狂気を隠そうともしない眼はそのまま。

その人相はこの一年嫌というほど見たものだ。

脱獄囚シリウス・ブラックがその場にいきなり現れた。

 

「どけ……どけぇええ!」

 

リリたちはその怒声に動きを止めてしまう。

ブラックは懐から杖を取り出し……。

 

「待て! 待つんだシリウス!」

 

そこに現れたのはリーマス・ルーピンであった。

その手にはネズミが握られている。

教師、それも闇の魔術に対する防衛術の担当のルーピンが来たことで絶望的だった状況から希望が少し出てきたと思った。

 

「リーマス! 捕まえたんだな! 良かった!」

 

先程の怒気と狂気が充満した顔から一転、喜色満面になって親しげな様子でルーピンに近づいていく。

どう見ても敵対している様子はなく、まるで親友と話しているかのよう。

いや、実際に仲間なのだろう。

 

「そんな……ルーピン先生がシリウス・ブラックの仲間なんて……。」

 

男性にしてはそこそこ信頼していたリリにとっては少しショックであった。

 

「誤解だ。リリアン、信じて欲しい。私は「騙されちゃダメよリリ! この人は狼人間なの!」

 

そのハーマイオニーの言葉に明らかに驚いているルーピン。どうやら真実であるようだ。

 

「リーマス、速く早くしろ! もう待てない! こんな子供たちなんてさっさとどうにかしろ。」

 

「……そうだね。ゴメンね。大丈夫、痛くしないから。」

 

二人がリリたちに杖を向ける。立ち向かおうにも逃げようにも体が動かない。

せめてリリだけは守ろうとハーマイオニーとパーバティが前に出る。

リリも二人を守ろうと前に出ようとする。

 

(神様、いえ誰でもいい!)

 

「助けて!」

 

その願いを消し去るかのように凶悪犯と人狼の杖から光が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫です、お嬢様。」




シリウスは高難易度ダンジョンになったグリフィンドール寮に再度侵入することはありませんでした。
ある人物から聞いていなければ突撃して死んでいましたね。

ドラコ順調に攻略されていく。
リリとしてもただ単純に自分の事を好き好きにならないドラコは新鮮で気に入っています。もちろん外見も好み。徐々に惚れさせていく過程を楽しんでいます。
性格悪いですな。

期末試験も終わってグリフィンドール組でピクニックデート。
そこへ小さな乱入者と大きな犯罪者が。
前回忍びの地図で真相を知り、シリウスと合流できたルーピンも出現
忍びの地図でネズミの位置をようやく補足できたルーピンがシリウスに連絡して追い詰める。逃げたネズミは死にたくない一心からシリウスがリンリーの気配で動きが鈍るかもしれないという僅かな希望からリリのそばに逃げてきました。

リリたちは場数を踏んでいるわけではないので戦闘など無理、呪文もまともに当てることさえ難しい。
更にはシリウスの狂気によって完全にのまれている状況です。

最後のセリフはいったい誰でしょうね。

それでは次回お楽しみに。

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