ここから原作からの変化が大きくなってきます。
それでは32話どうぞ。
最強の魔法使いは誰か?
こう問われて魔法使いは様々な答えを返すだろう。
ある者はホグワーツ創設者であるごドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクローそしてサラザール・スリザリンの中の誰かと言う。
凄腕の闇祓いであるマッドアイ・ムーディも候補だろう。
またある者はかつて歴史上最も危険な闇の魔法使いのリストの頂点に君臨していたゲラート・グリンデルバルドを上げるだろう。
今ではその名が霞むほどの最悪の存在、闇の帝王、名前を言ってはいけない例のあの人、ヴォルデモート卿を想像する者が多くいるのも当然である。
そしてその例のあの人が唯一恐れた今世紀最高の魔法使いと呼ばれるアルバス・ダンブルドアの名もそれに連なる。
だが、今を生きる最強の魔女は誰かという問いに対しては彼女を知る者ならば満場一致だろう。
その魔女の名は
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「キャロル……!」
「はい。お助けに参りました、お嬢様。」
その女性はどこからともなく、それこそ姿現しの音もなくリリたちと
短くそろえた黒髪にツリ目、軍人を想起させる雰囲気をを持ったメイド服の女性。リリたちが良く知るリンリー家の警護担当のメイド、キャロルである。
「でもどうやってここに?」
「話は後に。先にあの不届き者を叩きのめします。」
リリ達の周りに
その眼には一瞬前までのリリお嬢様やハーマイオニー達に向けていた慈愛の眼差しは既になく、そこには零下の殺気しか宿っていなかった。
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一方のシリウス・ブラックとリーマス・ルーピンはいきなり現れたその女を警戒していた。
だが、警戒しつつも事を構える気は微塵もない。
既に裏切り者ピーター・ペティグリューの確保という最大の目的は達成したのだ。
後はシリウスの無罪を証明するためにこの男を生存と裏切りの証明をするだけだ。
今ここで無駄に争う必要はない。生徒などは放っておいて逃げる決断をした。
しかし、この場を離脱しようするが不可視の壁に阻まれここから、正確には新たに現れた女から距離を取ることができなかった。
魔法を使って突破しようした時、身を凍えさせるような殺気を受け振り返る。
女がこちらを向いていた。殺気を込めて。
その顔は知っていた。同年代のホグワーツにいた者ならば知らぬものはいないだろう化物女だ。
「キャロル・フォード……!」
シリウスは苦々しく呟く。こいつが現れてしまってはこの場からの離脱は著しく困難なものになってしまった。まだ
「や、やぁフォード。元気かい? ちょっとでいい! 私たちの話を聞いてくれ!」
ルーピンが元同級生ということで話しかけるが殺気は微塵も収まることはない。むしろ増加する一方である。
「無駄だろリーマス。こうなったら何としても逃げるぞ。」
「そうだな。二人でかかれば何とか……!」
二人は杖を構え、臨戦態勢となる。相手が一人、しかも女性だからと言って手加減をするつもりなど無い。シリウスは殺す気でさえいた。
「
シリウス・ブラックの杖から赤い閃光がキャロルに向けて発射される。
全力でのそれは並みの魔法使いの魔法と比較して強く、そして速かった。
魔法使いの戦いは呪文の打ち合い、そしてそれを防ぐまたは避けるといったものになる。
キャロルが取る手段もその二択であるとしかないはずだが、身動き一つしないでじっと迫りくる光線を見ているだけだ。
キャロルの目前まで迫った呪文を見てシリウスは勝利を確信するどころか逆に警戒を強めた。ルーピンも同様だ。こんな簡単にいく相手ではない。
「————————」
キャロルが呟くと同時に目前の光線は消滅した。
更に同時にルーピンが地面に倒れ伏す。
「リーマス! くそっ!」
シリウスは一目散に駆け寄ろうとするが、ぐっと我慢する。
(冷静になれ……!
杖を構えたままキャロルを睨み続ける。無暗に呪文を放てば先ほどの繰り返しの恐れがある。
だとしても何もしなければ不利になるのはこちらの方だ。今は幸いなことに他の生徒の姿はないが、誰かがこの場を見てしまえば増援は必至。そうなってはどうしようもない。
「
近くにあった石を射出するも、やはり目の前で消失する。
(
かつてホグワーツでトップクラスであった頭脳をフル回転させる。
あと一歩で答えが出てこようという時にシリウス・ブラックの脳内は一つの事柄に支配された。
眼の端にネズミが走り去っていくのが映ったのだ。
「ピーター!!」
復讐という名の狂気に呑まれたシリウス・ブラックは
そんな無防備を晒せば当然どうなるかなど分かり切っていたことだが、今のブラックの頭には裏切り者の事しかない。
いきなりの衝撃で吹き飛ばされながらも眼だけはしっかりと去っていく小さなネズミだけを見続けていた。
「がぁっ!」
5メートル以上吹き飛ばされながらも急いで立ち上がりネズミを追いかける。
再び吹き飛ぶ。
二度目になってようやくネズミを追うにはこの障害物を排除しなければならないと理解する。
「退け、どけ! どけぇえ! 邪魔をするなぁ!!」
次の瞬間、シリウス・ブラックの目に見えた風景は青空だった。
「は?」
疑問の答えは落下する感覚が教えてくれた。体は大地を離れ空高く放りだされていたのだ。
「くそがあああ!」
シリウス・ブラックの心が最初に感じたことは死の恐怖でも、こうなった疑問でもなく、このままでは裏切り者を取り逃がしてしまうという焦りとこんなことをした相手への怒りであった。
そんな怒りなど物理法則には関係ないとばかりに落下速度は上昇し、地面が近づいてきた。
このままでは死、良くても動くことは出来なくなるだろう。
「
どうにか落下速度を低下させ、地面をスポンジのように柔らかくする。
後は受け身を取って一刻も速くこの場から離れるつもりだった。
キャロル・フォードという女が慈愛に満ちていたらそうなっていただろう。
「ごぉはぁっ!」
シリウス・ブラックは固いままの地面に激突した。
受け身を取ろうにも予想外の硬さにうまくいかなかったのだ。
衝撃は凄まじく骨が何本も折れ、内臓にも深刻なダメージが入っている。
肺が酸素の受け取りを拒否しているのか、息を吸っても苦しいままだ。
それでも執念で立ち上がり、動き出す。
それも一歩で終わる。
一歩踏み出した瞬間に体が動かなくなる。
正確には首から下の動きができなくなった。
その体が地面に埋まっていたのだ。
もちろんキャロルの仕業ではあるが、それをシリウス・ブラックは理解する前に
その隣には同じく気絶したリーマス・ルーピンが地面から首だけを出して埋まっている。
時間にして5分とかからずに凶悪な脱獄囚と人狼の教師の捕縛が完了した。
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ことが終わるとキャロルは逃走妨害用の障壁を解除し、リリ達の元に急ぐ。
リリ、ハーマイオニーとパーバティは無傷の様子であったがジニーだけは意識が無かったはずだ。
もしものことがあればリリだけでなくロザリンド達にも合わせる顔がない。
リリ達は呆然とした様子でキャロルを見ていた。その中にいつの間にか目を覚ましたジニーもいたことでキャロルはホッと胸をなでおろす。
「リリお嬢様、皆さまご無事ですか?」
「え、ええ。大丈夫よ。ありがとうキャロル。」
「ジニーお嬢様はちゃんと検査した方がよろしいでしょう。私におつかまり下さい。」
全員がキャロルに触れたことを確認してキャロルは医務室へと姿くらましをした。
残されたのは地面に埋まっている二人の首だけであった。
本作最強の魔女はキャロルであります。
詳しい設定は色々ありますが、ダンブルドアやお辞儀には勝てないけど他には勝てるぐらいの力です。
キャロルが現れたのは夏休みの間に渡されたペンダントのおかげです。
リリたちが助けを求めたり、一定以上のダメージを感知するとキャロルに連絡が行く仕様。そんでもってキャロルは空間魔法が得意なのですぐさま現れることに。
キャロルは最強の生徒だったので当然シリウスたちは知っています。
でも無残に敗北。
キャロルが使った魔法については次回説明すると思います。
予想してみてください。
それでは次回お楽しみに。