正直忙しすぎる。
それでは36話どうぞ。
次の日はどこもかしこも
リリが入学してからのホグワーツでは女子の話題と言えばリリアン・リンリーであることが殆どであることから、今回の件は相当に関心を引いているのだろう。
試合が開始するまで数カ月、ボーバトンとダームストラングがこちらにやって来るまででも一カ月はあるというのに今すぐにでも始まると勘違いしたかのような気分でいる生徒もそれなりにいる。
そんなホグワーツであるが本来の存在理由である生徒への教育は全く待ってはくれない。
リリ達グリフィンドール生は担当の教授が来るのを待っている。
授業は闇の魔術に対する防衛術。毎年担当教師が入れ替わるこの教科は呪われているとささやかれている。
更には去年は凶悪犯を手引きした人狼リーマス・ルーピンが教えていた教科であることからますます引き受ける人がいなく、生徒にとってもいい思い出が少ない。
おまけに今年の新たな教師は見るからに怪しい。
凄腕の闇祓いだろうが見た目の段階で人を選んでいる。
もちろんリリにとってはダメである。
しばらくして問題のアラスター・ムーディ、通称マッドアイがやって来た。
「そんなものは仕舞ってしまえ。教科書だ。そんなモノはこの授業には要らん。」
ムーディが教卓に向かいながら唸るように言った。
生徒たちが一斉に教科書を鞄へと仕舞った。
ムーディは生徒の出欠を確認し授業に入っていく。
「ふむこの嫌な気配……リリアン・リンリー……。ああ、リンリー家の小娘か。相も変わらず恐ろしいものよ。」
リリの番になってあからさまに嫌な顔をして出席を取ったため、ただでさえ高くなかった女子たちからの好感度は一気に最底辺になった。
「去年までの闇の魔術に対する防衛術の内容は把握しておる。基本的なことについては大よそ学んだようだ。だが! お前たちには呪いの扱い方が著しく遅れている!
ワシが教えるのは闇の魔法に対する反対呪文だと魔法省は決めているようだ。
それだけでは足りぬ! 実際に闇の魔法を知り、見て、体験しなければ反対呪文など無意味だ!」
その力説する歴戦の闇祓いの圧に生徒たちは圧倒される。
「さて……魔法法律により、最も厳しく罰せられる呪文が何か、知っている者はいるか?」
何人かの生徒が手を上げる。リリの隣のハーマイオニーもいつもの様に真っ直ぐに手を伸ばしている。
ムーディは一人ずつ指名し、答えさせる。
返ってきた呪文は三つ。
まずは服従の呪文、インペリオ。
ムーディは実際に効果を見せると言って瓶から取り出した蜘蛛を服従させた。
蜘蛛はムーディの手の平の上で踊りだす。その可笑しな様子に教室の生徒が笑うが、ムーディが、もし自分が同じ立場だったらどうなるか問うと一瞬で静かになった。
「
次は磔の呪文、クルーシオ。
またもや蜘蛛を対象にムーディが杖を振るう。
呪文が唱えられた途端、蜘蛛は身を捩りもがき苦しみ始める。
まるでこの世全ての苦痛がその身に襲い掛かっているかのような見ているだけでこちらも苦しくなってくるような悲痛な姿だった。
それを見て嫌な気分になる生徒たちだったが、特にネビル・ロングボトムが尋常ではない様子でそれを見ている。だが、誰もそれを笑ったりできない。
「苦痛……。この
最後の呪文は最悪の呪文。
死の呪文、アバダ・ケダブラ。
ムーティが新たな蜘蛛を取り出す。そしてその呪文を唱えた。
「
緑の閃光が教室中に広がる。
閃光が治まった時には蜘蛛は死んでいた。その体には何一つ傷は無いにも関わらずただ死という結果だけがもたらされていた。
「これが死の呪文、アバダ・ケダブラ。気分が良いものではない。これは相手を問答無用で死に至らしめる最悪の呪文だ。この呪文が真に最悪なのは反対呪文も存在しないことだ。これを受けて生き残った者はただ一人。そう、ワシの目の前にいるハリー・ポッターただ一人だ。」
教室中の視線がハリー・ポッターへと集まる。
ハリーは
「
最後に、これら三つの呪文は許されざる呪文と総称される。魔法使いに使ったら問答無用でアズカバンに永遠に送り込まれるだろう。
決して使うな。もし使ったのならこのワシ自らお前たちをアズカバンにぶち込むと約束しよう。」
その日の闇の魔術に対する防衛術は終了となった。
最初に抱いていたムーティへのイメージはなくなったが、別の方向で危険な人物という評価がされたのは言うまでもない。
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それから一カ月ほどは何事もなく過ぎていった。
もう間もなくボーバトンとダームストラングの両校がやって来る。
それは
生徒たちは日に日に興奮していき、ウィーズリー双子などはギリギリ未成年であるために出場権が得られなかった腹いせもあって悪戯の頻度も上がっていった。
相変わらず魔術に対する防衛術は過激だが、その日は今まで以上なことになっていた。
ムーディが生徒に許されざる呪文である
もちろん生徒は反対するが、ムーディのダンブルドアの許可を取っているという発言で男子は黙り込んでしまった。
「お前たちは呪いをかけられたことがあるのか? 経験無くして進歩無し!」
経験は大事だ。それが
「お前たちは知らんのか? こやつらリンリーを男が服従させることは出来ぬ。また逆もしかりだがな。」
それには生徒たちは驚く。知っていたハーマイオニーとパーバティだけは平然としている。
「まぁ良い。そこまで言うならリンリーには使わぬ。では始めるとしよう。」
ムーディは一人ずつ生徒に呪文をかけていく。まずは男子生徒からだ。
生徒たちは逆立ちを続けたり、踊ったりと珍妙な行動をとらされる。
唯一ハリー・ポッターだけはムーディの
それを絶賛して何度も服従すると、とうとう完全に打ち破っていた。
「よくやったぞ、ポッター! お前は強い意志がある! お前たち、意志だ!
男子と同じように女子にも一人ずつ
しかし効果は男子の時ほどは発揮されなかった。どれも中途半端に実行したり、中には全く動こうともしない生徒までいる。
ハーマイオニーの順番となった。
「
ムーディの一言でハーマイオニーはトロンとした幸福な表情になる。
(私のハーマイオニーにそんな顔をさせるな! 私だけのものよ!)
自分以外にそんな幸せそうな表情をさせるなんて、それも男が!
そんな嫉妬と嫌悪の感情から出たリンリーの呪いが一瞬教室に広がる。
それだけでハーマイオニーは正気を取り戻していた。
「わ、私は……。リリ! ごめんなさい! 私、わたし……。」
「大丈夫、大丈夫よ。ほら、こっちに来て。」
さっきまでの嫉妬の炎も消え
授業中だということも忘れて二人は抱き合っていた。
「まったく! 授業妨害だ! ……聞いておらんな。お前たち今ので解ったと思うがリンリーの呪いは服従でさえ跳ね除けることができる。逆を言えば女限定だがリンリーは服従を上回る影響を与えることができるということだ! それを忘れるな!」
男子は改めてリンリーへの恐怖を刻む。
女子はそんなムーディの言葉など聞こえておらず、二人の事を羨ましそうに見ているだけだった。
その同じ空間にいるのに男女で全く違う光景がリンリーの呪いというものを如実に表していた。
そして10月30日。
とうとうボーバトンとダームストラングが到着する日がやって来た。
ムーディの許されざる呪文回でした。
だいたいは原作と同じ。
唯一にして最大の違いは女子には効きにくくなっていることです。
リンリーの呪いで精神がまともではないのでより強い影響を与えないといけないので力量不足やリンリーがそばにいるとより効果が薄くなります。
歴代最高の呪いを持つロザリンドのそばだとやばい。
リンリーに対しては男からの服従は無意味。これも呪いの副産物。
逆にリンリー側から男に対して服従を含めて精神的な魔法を行使することは自身の呪いを除いて不可能でもあります。
まぁ、普通に精神的なもの以外なら問題ありませんが。
それにリリが直接戦闘する予定もありませんのであってないような設定ですけど。
それでは次回お楽しみに。