【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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2019年も3月に突入しましたね。
もうすぐ平成も終わってしまうとは思えませんね。

それでは37話どうぞ。


38. 選出

デザートまで食べ終わりテーブル上の金の大皿が空になる。

二校の代表候補たちがいる、いつにもまして大勢での宴が終わった。

そのタイミングを計っていたかの様に大広間に二人の人物がやって来た。

 

ダンブルドアたち校長が立ち上がり二人を迎え入れる。

そして注目が集まる二人の紹介がされた。

一人は魔法省の国際魔法協力部の部長であるバーテミウス・クラウチ。

もう一人は同じく魔法省の魔法ゲーム・スポーツ部のルード・バグマンである。

この二人が奮闘したことで今回、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)が数世紀ぶりに再開することになったようだ。

各校の校長と二人を加えた五人で審査を行うことも説明される。

 

「さて、それではフィルチさん箱をここへ。」

 

持ってこられた木箱をダンブルドアが杖で叩くと中身があらわになる。

大きな荒削りの木のゴブレットであった。ただ一点普通とは違っていたのはゴブレットの縁からは青白い炎が舞い踊っていることだろう。

このゴブレットがどのようなものなのか真剣に、興味深そうに見る目が集まる。

 

三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を再開させるにあたってわし、マダム・マクシーム、カルカロフ校長、クラウチ氏とバグマン氏で議論や検討を重ねに重ね、代表選手たちが取り組むべき課題を決めた。」

 

バグマンはドヤ顔で私たちの功績なんだと無言でアピールしている。

クラウチは対称的に表情を顔に出すことなくダンブルドアの説明を聞いている。

 

「みんなも知っての通り、試合を競い合うのは三校の代表一人ずつじゃ。課題は三つ。

選手たちは課題の一つ一つをどのように乗り越えていくかをあらゆる角度から採点され、最終的に三つの総合得点が最も高いものが栄光を勝ち取る。」

 

ダンブルドアは炎が燃え続けているゴブレットを掲げ、全員が見えるようにする。

 

「そして、代表選手を選ぶ公正なる選者……それがこの炎のゴブレットじゃ!」

 

栄光と名誉、そして金。それがその炎の先にあるかのように多くの者が炎を見つめていた。

 

「代表選手に名乗りを上げる者は、羊皮紙に名前と校名を記載して、24時間以内にこのゴブレットに入れればよい。明日、つまりハロウィーンにゴブレットが各校代表に最もふさわしい三人の名が記された羊皮紙が戻って来るであろう。

ゴブレットは玄関ホールに置かれる。もちろん資格を有せぬものがゴブレットに近づけぬようにわし自らが年齢線を施す。」

 

ダンブルドア直々の妨害に資格を有しない者が嘆いている。中にはやる気になっている者もいるが。

 

「最後に、この試合で競おうとする者にはっきりと言っておこう。軽々しく名乗りを上げぬことじゃ。炎のゴブレットがいったん代表選手と選んだ者には、最後まで試合を戦い抜く義務が生じる。ゴブレットに名前を入れるということは、魔法契約によって拘束されるということじゃ」

 

それで説明が終わり宴は解散となった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「それじゃあ、行ってくるね!」

「私がリリちゃんに優勝杯を持ってくるから!」

 

次の日は朝から玄関ホールは資格も無い者たちも含めて多くの人が集まっていた。

男子も女子も魔法の腕に自信のある者たちは念じるように羊皮紙を炎の中へ投じていく。

それを見守る中にリリたちの一団もあった。

 

「本当は女の子には止めて欲しいんだけどねぇ……。」

 

安全対策をしっかりしたとはいえ危険な事には変わりはない。

それでも女子の中で活躍=リリにいい姿を見てもらえるといった図式が広まってしまっていた。特にリリハーレムの中で唯一参加資格があるクラウディアは不参加ということもあって、ハーレムのメンバーには無いアドバンテージを得ることも含めてやる気に満ちていた。

あわよくば優勝してそのままリリのハーレムの一員に、などと夢を見ている女子もいる。

 

「あら、出迎えてくれたのかしら?」

 

リリが心配そうに見守っていると透き通るような声が耳に入ってきた。

振り向くとフラー・デラクールを先頭にボーバトンの一団がやって来ていた。

 

「おはよう。ふふ、これを入れ終わったら早速デートでもしましょうか?」

 

フラーはさっさと羊皮紙を投げ込んでリリに近づいていく。

いきなり現れた女がひょいひょいと近づいてきてデートに誘うなどと、周りは許せなかった。今もリリとのデートは順番待ちで予定は数カ月先までいっぱいなのである。

フラーはそんな殺気さえ込められた視線を余裕で受け流す。

 

「あら、怖い怖い。なら代表選手に選ばれたらデート、ね?」

 

自分が選ばれないと微塵も思っていない圧倒的な自信。事実周りのボーバトン代表もとりあえず炎のゴブレットに投じてみたがフラーほどの自信はないようだ。

 

「いいわよ。」

 

リリはその申し出を断らなかった。ホグワーツにも美人は多くいる。その全てとデートやそれ以上は体験済みだ。

だが、この人とは思えぬほどの美人とのデートなどこちらからお願いしたいほどだ。

他の女の子には悪いが後で埋め合わせすればいいなんてかなり最低な事を想いつつ目の前の美女をどうやって堕とそうかと思案を楽しんでいた。

 

「じゃあ、またね。」

 

フラーに率いられてボーバトン代表団は去っていった。

 

「ちょっとリリ?」

 

流石にハーマイオニーからの怒りの追及が始まろうとしていた。

 

「だってぇ~すっごい美人なんだもん!」

 

「ふ~ん……。へぇ~……。私とどっちが?」

 

「もちろんフラーが。」

 

周りが動きを止めた中リリの言葉だけが続く。

 

「フラーはこのホグワーツの誰よりも美人だと思う。でもね、ハーマイオニー。私が一番愛しているのはあなた。あなたが例え、この世で一番醜くてもそれは変わらない。

愛の前には美醜は関係ない。私は魂からあなたを欲しくなったの。それは外見や性格じゃなくて……運命だと思ったの。」

 

フラーの事の方が美人といった次の瞬間にはリリに一番の愛を受けられると知ってハーマイオニーは気分が一気に高揚したのを感じていた。

 

(分かってはいたけど、もうダメね、私。)

 

自分がいかにリリを中心に物事を考えて、どれだけリリを想って、リリに想われたいか改めて実感した。

そう実感してしまったら、周りが見ていようが何だろうが抱きしめられずにはいられなかった。

 

「まったく……私もリリに弱くなったものね。……私が一番ならもっと愛をちょうだい。」

 

「ええ、無限の愛をあげるわ。」

 

その後、ダームストラングの代表たちが炎のゴブレットに羊皮紙を投じるためにやって来たが、そこにいたのは二人の少女が抱き合って、周りが羨ましそうにしているという初めて見る光景だった。

ホグワーツではよく見る光景ではあるのだが。

その異様さとリンリーの呪いに臆したダームストラング代表たちは足早に去っていく。

ただ一人、ビクトール・クラムだけがそれを見て「尊い……。」と何かに覚醒していた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハロウィンパーティーが終わり、いよいよその時がやって来た。

生徒たちは各々誰が選ばれるか予想してワクワクしている。

リリは女子が選ばれなければ良いと思っている。

金の皿の上の料理がきれいさっぱり無くなると、ダンブルドアがゆっくりと立ち上がる。

それを見て大広間にいる全員が何が始まるのかを察し、ぴたりと声が消えた。

 

「炎のゴブレットは代表選手の選考を終えたようじゃ。さて、名前が呼ばれた者は一番前に来るがよい。隣の部屋で、最初の指示が与えられるであろう。」

 

ダンブルドアが杖を一振りすると、大広間の灯りが全て消え、大広間を照らすのは炎のゴブレットの光だけとなった。

生徒、教員、他校の代表、そしてゴーストにいたるまで大広間の全ての存在がゴブレットへ視線を注いでいた。

次の瞬間ゴブレットが赤く燃え上がり焦げた羊皮紙を一枚吐き出す。

その落ちてきた羊皮紙をダンブルドア先生が掴み取った。

 

「ダームストラングの代表は……ビクトール・クラム!」

 

「やったぜ!」 「流石にクラムだ!」

 

クラムのファンたちが声を張り上げた。

大広間中が拍手の嵐、歓声の渦に包まれる。

クラムはスリザリンのテーブルから立ち上がるとダンブルドアの方に歩いていき、隣の部屋へと入っていった。

歓声が止んだ数秒後に、ゴブレットはまた赤く燃え上がり羊皮紙を吐き出す。

 

「ボーバトン代表は……フラー・デラクール!」

 

ボーバトンから選ばれたのは宣言通りフラーであった。

フラーは自信満々にリリの方を見ながらゆっくりと前に進んでいった。

わざとリリの横を通ってデートね、なんて言って来る。女子からはブーイングこそないが拍手もなし、クラムと比べて寂しいものになっているが当人はまるで気にしていない。

リリは惜しみない拍手を送る。

フラーが隣の部屋に姿を消し、三度ゴブレットが赤く燃え上がる。

 

「ホグワーツ代表は……セドリック・ディゴリー!」

 

セドリックが立ち上がって前に進む。

ホグワーツ生はあまり脚光を浴びないハッフルパフからの選出に驚いているが、それでも拍手を力の限り送る。特に男子はリリアン・リンリーがいるから辛い立場になることも多いのでセドリックには是非とも活躍して欲しいという願いも込めている。

立候補した女子は残念そうにしているが、ある意味リリの希望を叶えたのだからとポジティブに考えを切り替えた。リリは女の子が選ばれなくてホッとしながらも近くにいた立候補した女の子を慰めている。

 

「結構、結構! さて、これで三校の代表選手が決まった。選ばれなかった者も含め、全員が代表選手にあらん限りの応援をしてくれることを信じておる。代表選手へ真摯な声援を送ることで、君らは真の意味で彼らに貢献でき……。」

 

ダンブルドアの言葉に待ったをかけるように、三校全ての代表選手を選び出し、役目を終えたはずの炎のゴブレットが赤く燃え盛った。

その予想外の光景に、生徒だけでなく教師、クラウチやバグマン、ダンブルドアでさえ普段と変わって唖然としている。

リリも何が起きたのかは分からないが、とりあえず女の子に危険が及ばなければどうこうすることも無い。

赤く燃え上がった炎から新たな羊皮紙が出現する。

 

「……。」

 

ダンブルドアはゴブレットから吐き出された羊皮紙を無言で手に取り、それをじっと見つめている。たった数秒という短い時間だが、大広間の全員がそれを見ている。

緊張に包まれる中、ダンブルドアの口から名前が発せられた。

 

「……ハリー・ポッター。」




ということで代表選手の選考でした。
原作と何も変わらずハリーが選ばれる展開に。
リリはオリ主ですが実力が高いわけではないので仮に選ばれたとしても優勝の可能性は0です。

フラーが英語を話せるのは自分を高めるついでに英語を学んでいたのと英国のホグワーツで開催されると知ってコミュニケーションのためにマスターしました。

クラム、百合に目覚める。

それでは次回お楽しみに。

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