【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

43 / 77
4月。
新人が入って職場環境が変わり始めましたね。
しばらくは忙しくて週一ペースが厳しいかも。
出来るだけ週一は続けていきたいです。

それでは43話どうぞ。


43. 混戦乱戦な第三課題

第二課題が終わり、リリはハーレム全員に心配されてもみくちゃにされていた。

普段はあまり感情をむき出しにしないパドマやダフネでさえうっすらと目に涙を浮かべている。ジニーだけは大粒の涙を流しながらリリの胸に飛び込んでいる。

こんなのを見せられては割り込むこともできずフラーは静かのその場を後にした。

その夜はハーレム全員でこっそりと寮を抜け出して必要の部屋で全員揃ってリリを求めて一緒にベッドで夜を共に過ごした。

 

 

第二課題も終わり束の間の日常が戻って来る。

今度の第三課題には第二課題とは違って特別準備することはないらしい。

ただ、万全にどんなことにも対応できるだけの力を備えるようにとのお達しということで心身の健康のためにとフラーはリリとの距離をこれまで以上に詰めて来ていた。

それ以外に特に何かが起こるわけでもなくいつものリリを中心とした騒がしくも楽しい日常であった。

ホグズミードに行ったり、ハーレム+フラーで一緒に仲を深めたり、試験結果に一喜一憂したりと学生らしい楽しい日々だった。

この間に順調にフラーとも仲を深めてはいるが、中々に最後の最後までは堕ちてくれない。

ママが言ったようにかなりプライドが高いようだ。またそれも一興で楽しんでいるリリであった。

 

 

そしてとうとう三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)最後の課題の日がやって来た。

試合の会場はつい先日まではクィディッチ競技場だった場所だ。

それが今は巨大な生垣で作られた迷路になっていた。

パンフレットによるとこの迷路の最奥に置かれた優勝杯を手にしたものが勝利者となるようだ。今までの課題での得点が多いものから順に迷路に入って競い合いがスタートする。

迷路には様々な罠や魔法生物が配置され挑戦者を阻む。

よりゴールに近くなおかつ容易な道を選ぶ運と障害を乗り越える実力が必要になって来る最後の課題にふさわしいものだった。

迷宮の障害の場所には観客用の魔法具があり、巨大水晶に投影された映像で挑戦者が障害に挑む戦いが観戦できる。そしてゴールの優勝杯も映し出されている。

スタート順はフラー、ハリー、クラム、セドリックの順だ。

それぞれポイント差×1分の間隔をあけてのスタートとなる。

トップのフラーと最下位のセドリックでも8分差。十分にセドリックにも優勝を狙うチャンスはある。

 

 

現在、既に一番手のフラーが迷宮入口で待機している。

リリがフラーの勝利を願っているとお馴染みのバグマンの実況が聞こえてきた。

 

『さぁ~て! 皆さん大変お待たせいたしました! 長かった三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)もいよいよ今日をもって決着となります! 歴史に残る栄光と羨ましい1000ガリオンを手にするのはいったい誰になるのか!?

ここで各選手の現在の得点を振り返ってみましょう!

一位! ボーバトン代表! フラー・デラクール選手!

第一課題 43点。 第二課題 42点。 合計85点!

 

二位! イレギュラー代表! ハリー・ポッター選手!

第一課題 42点。 第二課題 41点。 合計83点!

 

三位! ダームストラング代表! ビクトール・クラム選手!

第一課題 40点。 第二課題 42点。 合計82点!

 

四位! ホグワーツ代表! セドリック・ディゴリー選手!

第一課題 38点。 第二課題 39点。 合計77点!

 

この順番で選手は迷宮に入り仕掛けられた罠や難問を突破して優勝杯を手にした選手が優勝だ! つまり現在最下位であろうとも実力させあれば優勝することも不可能ではなーい! 全員気を引き締めてくれ! 熱い戦いをここにいる全員が期待しているぞ!』

 

そしていよいよ一番手のフラーが迷宮の入口に歩を進めた。

それと同時に会場は一気にヒートアップ。バグマンの実況もこれまで以上に熱が入っている。

最後の試合ということで三校の校長が立ち上がって一斉に杖から合図となる光と号砲を放った。

フラーが迷宮に消えていく。

二番手のハリー・ポッターがその次に控える。

三、四番手のクラムとセドリックも準備運動をしたりと体を温めている。

そして8分後には代表選手全員が迷宮の中に入り、最後の戦いが真に始まった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

観客からは選手が障害と対峙したところしか見ることができない仕様だ。

それでも選手たちが知恵と勇気でそれらを乗り越えていく様に大いに盛り上がる。

今もフラーが巨大な蜘蛛を吹き飛ばした瞬間が映り男どもの歓声が爆発している。

今のところは全員が特に怪我や呪いでリタイアすることなく順調に進んでいるようだ。

 

ただ、ハリー・ポッターだけは運がいいのかあまり障害に遭遇していない。

観客の中でそれに気づいている者は少ない。そしてその少数でさえ会場の熱気と他の代表の活躍に意識が割かれほとんど認識しているとは言えなかった。

 

『おおっと!? ここで予想外の出来事だ! 

なんと広い迷宮内でばったり選手同士が遭遇だ! これは一波乱ありそうだ!』

 

バグマンの宣言と同時に観客用の巨大水晶に写されたのはまた一つ障害を突破したフラーとセドリックが鉢合わせたところだった。

この課題は選手同士の妨害が認められている。よほどの傷害や殺害でなければ相手を気絶させて課題事態をリタイアにさせることも可能だ。

もちろん安全対策として行き過ぎないように監視付いているし、気絶したら即座に迷宮から回収する手はずになっている。

 

これまでの課題は目標をクリアするというもので代表選手同士の直の戦いは無かった。

それが今まさに真っ向勝負で互いの実力差がはっきりするという場面である。

これには観客も大興奮だ。

フラーとセドリックはお互いに眼を離さず隙を伺っている。

リリも固唾をのんで見守っていると思わぬ展開となった。

 

『おお!? これは誰が予想しただろうか! 睨み合う両者に更なる混沌のプレゼント! ビクトール・クラムの参戦だ!』

 

実況の通りに現れたのはクラムだった。しかもこの状況を見て逃げるそぶりなどせず、迷いもせずに二人の所まで進んでくる。

これにはますます会場も盛り上がる。

イレギュラーだったハリー・ポッターを除いた三校の代表が一堂に集まっている。

これから始まるのはまさに選ばれた代表の力比べだ。

三者がそれぞれ自分以外を打倒し勝つつもりでいる。負けるつもりなど微塵もない。

三者のにらみ合いが発生して時間にして僅か1分ほどだろうか。ようやく膠着状況が崩れた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

最初に仕掛けたのはクラムだった。

自身の全力最速の失神呪文(ステューピファイ)。それがセドリックに強襲する!

並みの学生であればそれで失神KOだ。

だが、これまで再開とは言え代表に選ばれたセドリックは並みではない。

呪文も使わず、最小限の動きだけでこれを避けた彼はお返しとばかり失神呪文(ステューピファイ)をクラムに飛ばす……と思いきやフラーに向けてそれを放った。

クラムの攻撃に合わせるようにフラーがセドリックを狙っていたのだ。

自身の攻撃のタイミングを失ったフラーはセドリックからの攻撃を避ける。

その次の瞬間にはクラムを自由にさせまいと攻撃を放つ。もちろんクラムもそれを余裕で躱す。

この三者の攻防は僅かな時間。その一瞬の出来事に観客も実況も更に盛り上がる。

 

「やるじゃない。少し見直したわ。」

 

「ぼーくはまけませーん。」

 

「まぁ、これまでビリだったからね。全力でやるだけさ。」

 

三人は短く言葉を交わすがすぐに魔法での打ち合いに発展した。

一人が誰かを狙えばその隙に別の誰かに狙われる。時に二人同時に攻撃されるもそれを凌ぎ切り反撃を受けた一人が他の二人と戦う。

三人の戦場は巡るめく移り変わる。時に1対1対1。また、2対1になったりと実況が追い付かない程だ。

それだけでなく魔法生物が強襲し三人で力を合わせこれを撃退するなど観客たちを飽きさせることなく戦いは激しさを増していった。

そうして一進一退の攻防が10分ほど続いた。

誰も彼もが肩で息をして戦闘当初の勢いはない。

ここでセドリックが杖を降ろして提案を投げかけてきた。

 

「二人ともちょっといいかい?」

 

「なに?」

「なんでーすか?」

 

「このまま続けていても消耗するだけだと思うんだ。ほら、ハリーがこのまま独走しちゃんうじゃないかな? それは本意じゃないだろ?」

 

「それは……。」

「……。」

 

セドリックの言うことももっともだ。ここで他二人を潰してもまだ、ハリー・ポッターが無傷で残っている。下手をしたら優勝杯のすぐそばにいるのかもしれない。

三人はにらみ合いながらも別々の道へと進んでいった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そのハリー・ポッターは順調に、いや順調すぎるほど迷宮を進んでいった。

出くわした試練はスフィンクスとボガードぐらいのものだ。

ハリー自身も僅かながらの違和感は感じていた。

だが、それももうすぐ訪れるだろう栄光で吹き飛んでいた。

そう、ハリーのほんの10メートルほど先には煌めく優勝杯がある。

 

(あれを手にしたら……僕が優勝だ。これで誰にも文句は言わせない! 僕だってちゃんと力があるんだ! 贔屓でも何でもない! 僕の、僕の力で勝ったんだ!

これで周りの奴らに僕の事を見返してやる! クソなスリザリンやあのスネイプに!

……ああ、そうだ。ダーズリーの屑どももどうにかしてやろう。そうだ、僕は選ばれし者なんだから!)

 

心の奥から湧いてくる暗く、濁った感情のまま優勝杯に触れる。

その瞬間ハリー・ポッターはその場から消えた。

観客たちの歓声が会場に広がる。

ここまでは問題ない。勝者は優勝杯と共に迷宮の入口に姿を現すことになっているからだ。

だが、いくら待ってもハリー・ポッターの姿が現れることはなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

会場と観客はざわめきに満ちていた。

教員や魔法省の職員があわただしく行き来している。

迷宮から出てきたハリー以外の残りの3人も何が何だか分からない。

ただ一つ分かっているのは優勝したはずのハリー・ポッターが消えてしまったという事実だけだ。

普段は冷静で、何もかも分かった風なダンブルドアもスネイプやマクゴナガルらと何かを真剣に話している。

 

そうして何も分からないまま1時間ほど経過したとき、唐突にハリー・ポッターが現れた。

手には優勝杯。

だが、体はボロボロで泥だらけ。見るからに疲労困憊で立ち上がることもできないでいる。

会場中が驚き見ており、ダンブルドアやマクゴナガル、親友のロナウド・ウィーズリーが駆け寄る中、選ばれた少年の口から聞きたくなかった最悪の言葉が発せられた。

 

「ヴォルデモートが戻ってきた! あいつが帰って来たんだ!」

 

その言葉は魔法界に嵐がやって来ることを宣言していた。




第三課題回でした。

迷宮に突入する感覚は本作の設定です。
そして突入する順番も違っていますね。
原作ではハリーの障害を予め排除したり、クラムに服従の呪文を使ったりと暗躍していたジュニアですが、今作でも大して変わりません。
ただ、セドリックとクラムに対して弱く服従させてフラーと衝突するようには仕向けていました。
なぜ弱く服従だと言うと、本格的に服従させると本来の力が発揮されずにフラーに負けてしまうかもしれないかと考えたからです。
私の考えでは服従の呪文で操り人形にしてしまってはその魔法使いの性能を完全に引き出せないのではないかと思います。
なので弱く、ルートをこっちにしよう程度に誘導させて、フラーにぶつけてからはほとんど自分の意志で行動しています。
そのおかげで十分にハリーは進んで無事優勝からのお辞儀復活です。

ちなみにこれまでの課題でも原作と同じようにハリーに対して助言などでジュニアが助けています。
第一課題でハグリッドの代わりにドラゴンを教えたり、箒の有用性を説明したり、
第二課題で鰓昆布を勧めたりとか、全体的に魔法技能をレベルアップさせたりと。

さらにおまけで、お辞儀の元に転送されて待っていたペティグリューは変装していたのでハリーは未だにペティグリューが生きているとは知らないまま。
これはせっかくペティグリューが死んでいると思われているならその方がいいという判断。

そしてお辞儀復活。その後の展開はほとんど原作と同じ。
但し一点だけ違う点が。
4巻後にハリーかお辞儀視点の話を入れてもいいかも。

それでは次回お楽しみに。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。