今回が平成最後の投稿予定です。
それでは45話どうぞ。
45. 忍び寄る闇
1995年8月。
イギリス魔法界はこの時期はホグワーツも夏休みに突入しているのでダイアゴン横丁などの魔法使いたちの店もいつも以上に賑わいをみせる。
そのはずだった。
確かに、人は多い。いつもの買い物客だけでなくホグワーツ生と思わしき子供たちも大勢いる。
彼らの顔の多くは笑顔である。
それでもどこか必死な、怯えるような感情が見え隠れしている。
ホグワーツ生からその家族に伝えられた事柄。
それが正しければ今にもこの平和を崩してしまえるほどの恐怖の存在。
例のあの人、名前を言ってはいけないあの人。ヴォルデモート卿。
それが復活したというのだ。その情報だけで不安にならない魔法族はこの英国にはごく少量だ。今も彼らの中にはただ買い物をしているだけでなく自衛のため、身を隠して生活するのに必要なものを揃えるために訪れている者がちらほらといる。
今は平和な日常が流れている。
しかしそれは嵐の前の静けさというものであることを知る者は理解していた。
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イギリスの山奥にあるリンリー邸。
いつもは主であるロザリンド・リンリーが妻であるレイラや愛人兼メイドたちと楽しくも淫らで欲に満ちた生活をしている屋敷だ。
夏休みに突入したこの時期は一人娘のリリアン・リンリーとその嫁とハーレムも一緒になってより賑やかになっている。
だが、今年は一番のムードメーカーでもあるロザリンド・リンリーが不在であることが多いため幾分か静かな時間が流れていた。
これにももちろんヴォルデモート卿復活が影響していた。
今はまだ、リンリー家に直接の害が及ばないことをロザリンドは確信していた。
しかしながら、世界中にいるロザリンドの愛人が無事である保証はないのだ。
ロザリンドが世界中に広がる愛人ネットワークとメイドたちが持ち帰った情報、そして娘からのヴォルデモート卿復活の情報を聞いてメイドたちと今後の方針について話し合った。
結論として、まずは出来るだけ情報を集め、どんな状況であろうとも対応できるようにすることに決めた。
もちろん家族の安全が第一だが、リンリーとして愛人をないがしろにするという発想は無かった。
そのため、得た情報や対策をもってロザリンドが直接伝える為に、世界中の東西南北あらゆる場所へとふくろう便の梟よりも移動しているのだ。
伝えることは基本的にはシンプルに、イギリス魔法界には関わるなというもの。
イギリス国内なら仕方がないが、国外の魔法界の女たちには極力イギリスに近づかないようにと願った。国内の女たちにはどちらの陣営にも協力せず傍観しろと、もしも闇の勢力に害をなされそうならロザリンドの名を出せと命令した。
この内容の理由にはヴォルデモートとのある約定があったが、リリはまだそれは知らない。
まぁ、この世界中の大移動の理由の数割ほどはこの機に世界中の愛人巡りツアーをしようなどと思ってはいたのだった。
そしてそれはロザリンドの事を誰よりも理解している嫁にはお見通しであった。
出発前には散々色んな意味で搾られたと付け加えておく。
そんな理由で今のリンリー邸にはロザリンドがいない。そして護衛としてキャロルも同行している。
それによってメイドたちの活力が失われているため活気がいくらか減っている。
そしてロザリンドの代わりとしてメイドたちの癒しの先がリリとなっていた。
「お嬢様……。」
「うう……癒される。ああ、でも足りない。」
「はい! 制限時間よ! 仕事に戻る! さて、それではお嬢様次はこのアンを慰めて下さいましね。」
メイドたちは時間を決めて代わる代わるリリと触れ合って生きる気力を補っていた。
ちなみにロリコンのレーナだけはリリを視界に入れるだけで全身の細胞がみなぎっているし、他の少女、特にジニーとのイチャイチャだけで食事なしでも生きていけると豪語するほどだったので特にそういったことはない。
むしろ本人曰く、『あと数年したらお嬢様も成人に……。喜ばしいことですが同時に苦しくもありますね……。』らしい。
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メイドたちとの触れ合い時間も終わってリリハーレムが集合している2階の大部屋に戻ってきた。
ここはリリのハーレム全員が集まって色んな事をするために用意された部屋だ。
勉強会だったり、皆で特大のベッドで一緒に寝たり、ティータイムを楽しんだり、若い情欲を発散させたりとまさに多目的な部屋だ。
(これからするのが楽しいことなら良いのに……。本当にあの人とやらは余計な事しかしないわね。)
愛する女の子たちが一堂に集まっているいつもの幸せな空間だというのに、これから行うのはキャッキャウフフな楽しい美味しい時間とは真逆だ。
育った環境が特殊ということもありリリアン・リンリーは闇の帝王に対しては恐怖ではなく憤りを感じていた。
(ハーマイオニーやパドマ、ダフネは真面目なのよね。そこも好きだけど。)
いつもは真面目とは遠い存在のロザリンドがあんなに真剣に表面上は動いているのを見たハーマイオニーは自分たちも何かできるのではないかと動き出したのだ。
具体的にはまだ何をするかは決まっていないが、とりあえず動かずにはいられないといった感じである。
ついでにフランスのフラーからもボーバトンを無事卒業して今はフランス魔法省でイギリス魔法省で言う闇祓いのような部門で様々なことに対処する仕事に就いてイギリスの問題にも関わるから再会するのも近い、などと言うふくろう便が届いたからライバル心が刺激されたのも大きいのかもしれない。
「よし、みんな集まったわね。それじゃあこれからについて話し合っていきましょう!」
「はい! 具体的にはどうするの?」
「もちろん考えてきたわ! はいこれ。」
ジニーの問いかけにハーマイオニーは用意していた要点をまとめた紙を皆に手渡していく。
そこにはこんなことが書かれていた。
1.能力向上 リリを護るためには力が必要!
2.連絡手段 皆と協力するためには連絡が不可欠 マグルの電話などを参考に出来ないか?
3.情報収集 大人だけでなく自分たちからも色々と知っておく必要はある
その他にもハーマイオニーが思う必要なことが10項目以上がずらっと並んでいた。
その後も話し合いはハーマイオニーが中心となって盛り上がる……というよりはハーマイオニーだけが一人熱が入りすぎているような感じだ。
他のハーレムたちはハーマイオニーの言うことに対して別に否定的ではないし、リリを護るためには必要な事であると認めることだ。
それでもハーマイオニーは熱で空回って冷静さを欠いているように見える。
リリを護るためなら比喩ではなく本当に何でもすると言ってしまうジニーも若干引くほどに力強くこれからについて一方的に考えを口に出している。
「リリ……。」
「分かっているわ。任せて。」
絶賛熱暴走中の正妻を見かねたダフネがリリに耳打ちする。もちろん気付いていたリリはハーマイオニーの目の前に座る。
「ん? どうしたのリリ? 大丈夫よ。私の考えたようにすればきっとうまくいくわ。」
「ハーマイオニー。こっちに来て。」
リリはハーマイオニーの事を誘う様に広げる。
「えっと……? リリどうしたのいきなり。」
「んっ!」
リリは腕を広げたまま催促する。
ハーマイオニーはそれにおずおずとその腕の中に入る。
胸に納まった最愛の嫁を優しく抱きしめるリリ。
「よしよし。いい子よハーミー。いいこ、いいこ。」
「ちょっリリ!? どうしたの?!」
いきなりの驚くハーマイオニーは羞恥からリリの腕から逃れようとする。
それに対してリリも腕の力を強めるだけでなく魅了を強めて抵抗の意志を弱める。
次第に動きもなくなり完全にリリに抱かれて大人しくなる嫁の頭を優しくなでながら、もっと強く抱き寄せて耳元で囁く。
「ハーミー……。あなたは頑張っているわ。えらいえらい。でも頑張りすぎよ。
もっと力を抜いて。そう、もっともっと。焦らなくても大丈夫。私も、皆も大丈夫よ。
ほら今日はもうこのままベッドでゆっくり寝てしまいましょう?」
「リリ……。私、焦ってたのかしら?」
「ふふ……そうかもね。でも今日は何も考えないで夢を楽しみましょう。寝るまで一緒にいてあげるから。」
そのままリリはハーマイオニーをお姫様抱っこをして大部屋に備え付けられているベッドに優しく寝かせる。隣には自分も一緒に入る。
他のハーレムたちは今日は二人の邪魔をしないことを決めて黙って部屋から出て行っているのだ二人きりだ。
「リリ……ごめんなさい。それと、ありがとう……。」
「私の方こそありがとう。ハーミーが頑張ったのも焦ったのも何でも私の為でしょう? 何もするなとは言わないわ。さぁ、明日からは少しづつゆっくりと頑張っていきましょう。」
「うん。」
ゆっくり眼を閉じ意識を閉ざしていく最愛の人を見つめながらリリもまた睡魔に誘われるまま夢の世界へと沈んでいった。
5章スタート! (2回目)
世間はダンブルドアが言ったことと、魔法省が発表したことが真逆だったために混乱中。でも不安が広がっているので暗くなる。
ロザリンドは世界中の愛人ネットワークと財政管理担当で色々な貴族ともパイプがあるアン、そして何より娘からの情報からお辞儀復活を確信。
世界中の愛人や女性に注意喚起。
そのおかげで女性は魔法省よりはダンブルドア支持派。
お辞儀との約定は秘密。知っているのはレイラとメイドたちだけ。
暴走するハーマイオニー。
原作でも結構突っ走っている印象があったハーマイオニー。
それがいい方向に進んだり、ブレーキ役がいれば程よい感じになると思う。
それでは次回お楽しみに。