なかなか無いものになっていると思います。
それでは47話どうぞ。
5年目のホグワーツに出発するためにキングス・クロス駅へと向かうリリアン・リンリー一行。
いつもはキャロルが空間魔法で内部を調整した特別に屋敷の全員が乗り込める車での移動であったり
その方法とは空間魔法を極めたキャロルによる付き添い姿現しである。
何の違和感もなく気が付いた瞬間に、全員が九と四分の三番線のホームに立っていた。
リリの見送りにメイドたちは全員集合だ。今年は一丸となって動いた方がいいという判断である。
リリはメイドの一人一人にハグとキスをして別れの挨拶とする。
最後に両母に抱きしめられる。
「行ってきます!」
「はい、気を付けるんですよ。何かあればすぐにキャロルの魔法具で連絡をしてくださいね。」
「無茶だけはするなよ? ああ、あと一つ。今年の闇の魔術に対する防衛術の教師は女だ。
それとデキる奴だ。頑張れよ。」
教師に女性が追加されるのは喜ばしい情報だ。
それにしてもこのママはいつもどこからこういった情報を入手するのだろうか?
去年の
リリとしては今のハーレムとあと数人の候補で満足なのでママの底知れぬ欲にちょっと引くこともある。
それはともかくいつもの様にハーレムでコンパートメントを占拠して窓を開けて両母とメイドに見えなくなるまで手を振り続けた。
次に会えるのはクリスマス休暇になるだろうか。
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「それにしても暗かったわね。……まぁ、しょうがないかしら。」
ダフネが言ったとおり、例年に比べて九と四分の三番線のホームは暗かった。
ホグワーツに出発する子供も、それを見送る大人も今生の別れであるかのような悲観的な空気を作っている親子が何組かいたのだ。
そうじゃない者たちもいつもの明るさは無く口数少なく、何かに怯えているかのようだった。
リリが来たことで女子生徒たちは幾分か活気を取り戻してはいたが、本調子にはほど遠かった。
「じゃあ、私がすることは一つね! 列車にいる全員と触れ合ってくるわ!」
「あ、リリちょっと待って。試したいことがあるの。」
飛び出していきそうなリリをハーマイオニーが止める。
その手には羊皮紙が握られていた。
「それって開発したっていう連絡手段だっけ?」
「そうね。私とダフネ、パドマそれにキャロルさんとレーナさんに協力してもらって作ったの。まだ試作品だし改良点もあるけど……とりあえずここでテストしてみましょう。
あ、そうだクラウディア。このコンパートメントの内部を女子全員が入るぐらいに広げられるかしら?」
「ん~と……。とりあえずはホグワーツに着くまでならいけるかしらね~。」
「お願いするわ。さてと。」
ハーマイオニーは羊皮紙にリリがいるコンパートメントの場所と要件を書き込んでいった。
しばらくすると内部をホグワーツの大広間並みに広げたコンパートメントに続々と女子たちが集まってきた。
ハーマイオニー達が作り上げた魔法具はこういったものであった。
ハーマイオニーが持つ大元の羊皮紙に書き込んだ文章がコピーした羊皮紙にも書き込まれるといったもの単純な物。
この程度の魔法具ならば他にも存在するが、この羊皮紙の特徴的な点は女性にのみ存在を認識できるという点だ。男相手ならば情報が漏れることも無いし、そもそも女性でリンリーに敵対することなど困難だ。
これを夏休みの内にホグワーツの在校女子生徒にふくろう便でおくっていたのだ。
今のところは文字の表示時間や伝達距離に制限があるのでここは改良の余地ありだ。
呼び出された女子生徒がほぼ全員リリのコンパートメントに集まった。
リリは用意された台の上に立ち皆を見ながら話し始める。
「皆久しぶり! 元気……じゃない娘もいるみたいね。確かに、色々あって不安になると思う。でも私は皆の笑顔が好きだし暗い顔になって欲しくないの。
だから……私が皆を守る、助ける、幸せにする、愛をあげるわ!
私の力はちっちゃい。だから! 皆で助け合っていきましょう。
そうしたら怖いものなんて何もないはずだもの!」
リリのこの発言は昨年度末の団結、手を取り合うというダンブルドアの言葉とほとんど同じようなものだった。
それでも影響は段違いだ。女子相手への影響はリンリーの右に出る存在は0である。
不安で暗い中から愛すべきリリとの久しぶりの再会、そこで愛をあげるという宣言。
暗闇に急激に差し込む太陽光の様に少女たちの心が照らされる。
ゆえに、女子たちの活力は急上昇だ。
最後に一人一人と触れ合って女子たちは全員入ってきた時は真逆の顔で元のコンパートメントに戻っていった。
その後は特に何事もなく順調にホグワーツへと蒸気機関車は進んでいった。
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ホグズミード駅に到着していつもの様に馬のない馬車に揺られてホグワーツ城へ。
そして大広間での新入生を迎える組み分けの儀式だ。
ここまでは例年通り。しかし組み分け帽子の歌が違っていた。
歌詞や曲は毎回変わるが基本的には新入生に組分け帽子の役割と寮の特色を説明する内容である。
そこに今年は警告し結束を促すといった今の魔法界に必要なものを付け加えたのだ。
これには前年度のダンブルドア、行きの蒸気機関車内でのリリの言葉もあって生徒たちは気持ちを引き締めていた。
宴はつつがなく終了しテーブルの上はきれいさっぱり片付いた。
ダンブルドアが立ち上がり話始める。
「さて2年生以上の皆はお帰りなさい、そして新入生の皆はようこそホグワーツへ。
さて今年もいくつかお知らせしなければならないことがある。
禁じられた森への立ち入り禁止にフィルチさんからの要望の廊下での禁止事項など色々とあるのじゃが、全部言っておると明日になってしまうのでの。
玄関ホールに一覧を張り出しておくのでよーく読んでおくように。
さて毎度のことじゃが新しい闇の魔術に対する防衛術の先生を紹介しよう。
アンブリッジ先生どうぞ。」
ダンブルドアの言葉で立ち上がったのは……一言で言うならばカエル人間であった。
実を言えば大半の生徒はその存在の事を大広間に入った瞬間から気が付いていたし、ずっと気にもなっていた。それがまさか闇の魔術に対する防衛術の新しい教師だとは夢にも思っていなかったが。
その新任教師は中途半端にカエルの姿になる呪いをかけられたのか、ヴィーラとの混血がいるようにカエル系の魔法生物の血が混ざった存在なのか、それともこういう生物なのか。
あんまりな容姿にリリを除いてドン引きしている皆が注目する中、カエル人間は少女のような甘ったるい高い声で更に驚くことを話始めた。
「皆様、初めまして。私の名はドローレス・アンブリッジ。またこうしてホグワーツで過ごせるなんて、しかも子供たちに闇の魔術に対する防衛術を教える立場になれるなんて、と感動しています。私については授業でその人となりを見せていきましょう。
その前に……一つ皆様に話しておくことがありますの。
私、魔法省からのスパイとしてここに参りました。」
いきなりの爆弾にダンブルドアでさえ驚いていた。
魔法省から送り込まれた、ということはコーネリウス・ファッジ魔法大臣からのスパイであることは明らかだったが、まさか彼女自身の口から大々的にそれも生徒の前で出るとはダンブルドアも思っていなかったのだ。
「驚かれたでしょうか? スパイならばなぜそんな事を言ったのか? そもそも本当なのか? まぁ、疑うのも無理ないでしょう。私、こんな容姿ですしね。」
自嘲するように笑うアンブリッジ。
だが、それでも目は真剣そのもので話を続ける。
「例のあの人が復活したというのに、今の魔法省は
魔法大臣やその他の古臭い老人たちは幸せで怠惰な時間がいつまでも続くと楽観視しているのです。
私は違う。いえ、ある人のおかげで変われた。
私がホグワーツに来た本当の目的は逆です。ホグワーツの嘘の情報を魔法省に流し、魔法省やその他の動向を真実を知っているダンブルドア校長たちへと伝えるためです。
……なぜそんなことをするのか疑問ですよね? 女の子ならば理解できると思いますよ。
ここにはリリアン・リンリーという私が唯一敬愛する方の一人娘がいます。
その方の幸せを守るためならば……魔法省に牙を向けることも、二重スパイをすることもダンブルドアやファッジの靴だって舐めますわ。
言いたいことは言えました。恐らく私が教えるのは一年で終了となるでしょう。
それではこの一年間、生徒も教師の皆様もよろしくお願いしますね。
……ああ一つ忘れていました。私のこの発言を受けて魔法省に働く親がいれば告げ口をする男子生徒がいるかもしれませんが、オススメはしませんよ。親が無職だと悲しいですわよ?」
言うことを言いきって席に着くアンブリッジ。
大広間の全員が動き出すまでしばらく時間が必要だった。
最初に復帰したダンブルドアの号令でその日は解散となった。
各自がそれぞれの寮に戻る中、女子たちはアンブリッジの覚悟をしっかりと感じていた。
自分たちもリリの為だったら同じようなことができる。それをあの女はやっているのだ。
つまりあの教師は味方であると確信していた。
こうしていつもと違う予感をさせながらリリアン・リンリーの5年目のホグワーツがスタートした。
綺麗なアンブリッジ現る!
はい。というわけで本作のカエル婆ことアンブリッジは綺麗です。
こうなったのもリンリーってやつのせいなんだ! 本当に申し訳ない。
アンブリッジがいつ、どうして、どうやってこうなったのか。
そして魔法省ではどういう立場でどのような働きをしているかは2~3話ぐらい後で書く予定です。
それでは次回お楽しみに。