【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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毎日投稿している人を見ると色々とすげぇって思います。
執筆速度もそうですけど、よくあんなにポンポンと話が出てくるなぁって。

とりあえずは週一投稿は維持していきます!

それでは5話どうぞ。


5. 組み分け

日が沈みホグワーツ生を乗せた蒸気機関車はホグズミード駅に到着する。

ぞろぞろと子供たちが降りていく。

リリとハーマイオニーもその流れに沿って降りていくと3メートルはあろうかという大男が声を上げて新入生を誘導していた。

 

「イッチ年生! イッチ年生はこっちだ! ついて来い!」

 

その大男の案内に従って山道を付いていく。

 

「さあイッチ年生のみんなホグワーツが見えるぞ。この角を曲がったらすぐだ!」

 

山道を抜けるとホグワーツが見えた。その圧倒される光景に周りからは歓声が上がっていた。

 

「綺麗ね! 私たちあそこで魔法を勉強できるのね!」

 

ハーマイオニーは興奮しながらリリに話しかける。

コンパートメントでのやり取りから分かっていたがハーマイオニーは本当に学ぶことが好きなのだと確信するリリ。

リリもホグワーツの威容に感動しながらもハーマイオニーとは全く別の事を思っていた。

 

「確かに綺麗ね。あそこでいっぱい思い出が作りたいわ。」

 

その後はボートで湖を移動することになった。

四人一組でボートに乗ることになったが、ハーマイオニーは確定として残り二人はどうしようかとリリは思案していると声をかけられた。

 

「ねぇ? ご一緒してもいい?」

 

リリが振り返ると黒い瞳に黒い長髪でそっくりな外見をした二人の美少女がいた。

 

「私、パーバティ・パチル。こっちが妹で」

「パドマ・パチル。よろしくね。」

 

早速美少女二人とお近づきになれて上機嫌になるリリ。

 

「私はリリアン・リンリー。リリって呼んで。」

 

「私はハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしく。」

 

4人はボートに乗り込む。

生徒を乗せたボートはゆっくりと湖を進んでいく。

パーバティはおしゃべりなのかリリとハーマイオニーにぐいぐい質問してきた。

 

「ねぇねぇ。二人は魔法界出身? 私とパドマは半純血、パパが魔法使いだったの。

グレンジャーって聞いたことないからマグル出身かしら? あ、リンリーは聞いたことあるわ。何でもすっごい美人ばかりだって!」

 

「私もリンリーは聞いたことあるわ。パパが止めたせいで詳しくは知らないんだけどね。」

 

「私の両親は魔法使いじゃないわ。そういう生徒ってあまり多くないのかしら?」

 

自分の立場が少数の特殊なものではないかと少し緊張するハーマイオニー。

そこにリリが助け舟を出す。

 

「そんなことないよ、ハーミー。ママに聞いた感じだと結構マグル出身の子はいるみたい。私も半分はマグルの血が流れているしね。それに重要なのは血じゃないと思うの。」

 

リリはためを作りハッキリと答えた。

 

「やっぱり女の子は可愛く! 綺麗! それが最重要よ! その点このボートは最高ね。私はホグワーツに着く前から幸せよ。周りがこんなにかわいい子でいっぱいで。」

 

「でもリリが一番かわいいわよ。ねぇパドマ。」

「反論しようがないわね。やっぱりリンリー家ってみんなそうなの?」

 

「ふふ、秘密。これ以上はもっと仲良くなってからね。」

 

その後も四人はガールズトークをして短い船旅を楽しんだ。

 

 

やがてボートは蔦のカーテンをくぐり崖にある入り口に入っていく。

暗いトンネルの先の船着場に到着し、大きな扉の前まで案内される。

 

「よし、全員いるな?」

 

扉を三回ノックし、扉が開くとエメラルド色のローブを着たマクゴナガル教授が待っていた。

その目からいかにも厳しい先生なのだと新入生たちは感じた。

だが、知る人が見ればいつも以上に険しい顔をしていると分かったであろう。

今年は要注意生徒がいるので無理もないが。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです。」

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう。」

 

マクゴナガル教授に案内され玄関ホールを通って小さな部屋に通される。

 

「ホグワーツ入学おめでとうございます。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。

寮は全部で四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン。どの寮も輝かしい歴史があり、偉大な魔法使いを輩出してきました。

寮ごとに生徒に対しての加点と減点があり期末に最も得点を得た寮が寮杯を手に入れます。くれぐれも軽率な行動はしないことです。それでは準備がありますのでしばしお待ちを。」

 

そう言って小部屋を出ていくマクゴナガル。

扉を閉め誰の目がない所に来たところで体中の力が抜けていくのを感じた。

 

(心を強く持たねば平常心も保てないとは……。母親ほどではなくとも相当に強い力です。これでは既に近くにいる生徒には影響が……。組み分け後に早急に対策案の修正をしなければ……!)

 

気を取り直して組み分け儀式の準備を進めるマクゴナガル。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

新入生たちは組み分けがどんなものかお互いに様々な憶測が飛び交う。

呪文を使うテストだの、ものすごく痛いだのと現実的ではない意見も多かった。

ハーマイオニーもブツブツと知っている呪文を口にしている。

その間にリリは周りの女の子とどんどん友達になっていっている。

既に新入生の半分、すなわち全ての女子の顔と名前は把握済みだ。

リリが元のハーマイオニーの隣に戻ってくるとまだハーマイオニーはまだ呪文を口にしていた。

自分が戻ってきたのにそれを気付かないのは面白くない。

 

「えい!」 後ろから思い切り抱きつくリリ。

 

「きゃっ!? え、何? リリちょっと!」

 

「そんなに心配? 大丈夫よ、頑張り屋さんのハーミーなら大丈夫。だから私を見て?」

 

「分かったから、大丈夫だから離れて!」

(うう~頭にあった呪文とか飛んで行っちゃった。でもいい匂い……。体も柔らかいし抱きしめられからなのか緊張ほぐれた。わ、私からもお礼にハグした方が良いのかしら……?)

 

「はい、お終い。大丈夫そうね。」

 

「あ……。」

 

名残惜しそうに離れたリリを見る。

そしてその光景を羨ましそうに見る周りの女子たち。

男子は視界に納めないように考えないように必死に組み分けについて話し続けていた。

 

しばらくした後、マクゴナガルに呼ばれ、新入生は大広間に連れられて行く。

大広間は素晴らしい光景が広がっていた。

何千もの蝋燭が宙を浮き広間を照らす。

中央には大きなテーブルが四つ並んでおり金色の皿やゴブレットが置かれ、上級生が新入生たちを見ながら座っている。天井には本物の空のように見える魔法がかけられ、星々が大広間の上で輝いていた。

 

「『ホグワーツの歴史』に書かれていた通りね! 凄く綺麗!」

 

得意げなハーマイオニーを見てほっこりするリリである。

 

(夜空も綺麗だけど、やっぱり女の子の方が美しいし好きだわ。それにしてもマクゴナガル先生もカッコイイ出来る女って感じで好みね。美老女も素敵だわ。)

 

新入生たちが並んで待っているとマクゴナガルが椅子を置き、その上にかなり古くボロボロになっている帽子を置いた。

新入生たちは何が始まるのだろうと思っていると、次の瞬間に帽子が歌い始める。

 

 

『わたしはきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私を凌ぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツ組み分け帽子

私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを

組み分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目標遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん! 恐れずに!

興奮せずに、お任せを!

君を私の手に委ね(私は手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!』

 

 

歌が終わると、生徒と教員の全員が拍手をおくった。

組み分けの方法が帽子をかぶるだけだと知って周りからは安堵の声が聞こえてくる。

 

「ABCの順番に名前を呼びます。帽子をかぶって椅子に座って組み分けを受けてください。」

 

「アボット・ハンナ!」

 

最初に金髪おさげの少女が呼ばれ帽子をかぶり座る。

一瞬の後帽子は彼女の寮を決定した。

 

「ハッフルパフ!」

 

その後も次々と名前が呼ばれ各寮に組み分けられていった。

上級生たちはその様子を見守っているが、かなりの人数が一人の少女を注目していた。

女は熱に浮かされたかのように、男は化物を見ているかのように。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

ハーマイオニーの順番になった。

帽子はしばし迷ったようだが、適切な寮を選び出した。

 

「グリフィンドール!」

 

ハーマイオニーはグリフィンドールの机に拍手を持って向かい入れられる。

その後も組み分けは続いていく。

しかしリリアン・リンリー、つまりアルファベットのLの順番になってもリリが呼ばれることはなかった。

パチル姉妹はグリフィンドールとレイブンクローにそれぞれ組み分けられた。

そして最後にリリだけが残された。

 

絶世の美少女が一人、ホグワーツ全ての注目を集め立っている。

好意、恐怖、困惑、羞恥、決意、集められた視線には様々な想いが込められている。

マクゴナガルが名前を呼ぶ前にリリはゆっくりと歩きだし帽子をかぶった。

 

(ふ~む? おお、君はリンリー家の者か。どうりで新入生の心が乱れているわけだ。さてどこが良いかのぉ……。)

 

(グリフィンドールでお願い。)

 

(ほう。グリフィンドールを希望かね。……確かに資質はあるが、それで本当に良いのかね?)

 

(ええ。いい人がいるからね。)

 

「よかろう……。グリフィンドール!」

 

その瞬間、大広間に歓声と悲鳴が響き渡る。

グリフィンドールの女子生徒は歓喜し、逆に男子生徒は愕然とする。

他の寮は逆に女子生徒が落胆し、男子生徒が喜びで万歳する有様。

それは寮監たちも同様であった。

フリットウィックやスプラウトは組み分け帽子の判断に喝采し、スネイプは普段見たことの無い笑顔で小さくガッツポーズをしている。

マクゴナガルは……大勢の前だというのに床に手と膝をついて呆然としている。

 

そんな中リリは悠々とグリフィンドールの席に近づいていった。

すぐにハーマイオニーとパーバティが隣同士で座っているのを見つけてその間に入り込んだ。ちなみに座った席の周りは女子しかいない。

 

「ハーミー、パーバティ、一緒になれたわね。嬉しいわ!」

 

「私もよ。これから7年間よろしくね。」

 

「あーあ、私はパドマとは別になっちゃたわ。でもリリがいるならプラスかしらね。」

 

大広間に続く混乱はダンブルドア校長が鎮め、簡単な挨拶の後にテーブルの上の大皿には多種多様な料理が現れていた。生徒たちはそれぞれ自由に食べ始める。

ホグワーツの料理はどれも美味しくリリは満足であった。

中には海外のものだろう見たことも無い料理までもあった。

 

「あ、これも美味しい。」

 

「ねぇねぇ、リリ。それどんな味?」 パーバティも異国の料理に興味津々であった。

 

「ん~と、口で説明するより食べた方が速いよね。はい、パーバティ。あーん。」

 

パーバティは恥ずかしながらも口を開けてリリの持つフォークを受け入れる。

 

「どう? 美味しいでしょ?」

 

「ええ……。」 (味なんて解らないわよ!)

 

それを周りは羨ましそうに見ている。その中でより一層の熱い視線を反対側から感じる。

 

「ハーミーも一口いかが? 恥ずかしがらないで、コンパートメントでもやったでしょ?」

 

「え!? ええと、その……。それじゃあ」

 

顔を真っ赤にしながらお願いしようかと思っているとダンブルドアが立ち上がりパーティーはお開きとなった。

 

「残念……。ハーミー、また今度ね。」

 

ハーマイオニーは今しがたの大勢の前であんなはずかしいことをしようとした自分がどうにかなってしまったのかという思いと残念に思っている自分で頭がいっぱいになってしまって頷くことしかできなかった。

 

ダンブルドア校長の注意事項を伝えていた。

 

「皆お疲れじゃろうから手短にしよう。校内の森への立ち入りは禁止。廊下での魔法禁止、クィディッチについてはフーチ先生から詳細を聞くように。

最後に、とても痛い死に方をしたくない者は、今年は四階右側の廊下は入らないようにすることじゃ。それでは解散! 就寝! 良い夢を!」

 

いつものおちゃめな様子はなく早口で伝えることだけ伝え、足早にその場を後にした。

生徒たちは各寮の監督生に連れられてそれぞれの寮に向かっていった。

リリたちグリフィンドールの新入生もホグワーツ城で最も高い8階の東塔に案内される。その後は数人ずつの部屋割が知らされた。

リリは誰と一緒かなと期待していたが、部屋割りを見た瞬間今日二番目の衝撃を受けた。

おかしなことにリリは一人部屋であったのだ。

リリが監督生に尋ねると人数のせいでこのようになってしまったとの事しか分からないようだ。

なってしまったものは仕方がないと気持ちを切り替えることにした。

 

(一人ということは出入りも自由。誰を連れ込んでも良いし、逆に他の部屋もしくは他の寮にも簡単に行けるということじゃないかしら? ……良いわね!)

 

とりあえずパジャマに着替えたリリはハーマイオニーとパーバティ、それにもう一人ラベンダー・ブラウンの三人部屋に突撃した。

 

「来たわよ!」

 

「リリ!?」

「あらあら噂をすれば。」

「すごいタイミングね。」

 

「何々? どんな話をしてたの?」

 

「えっとね、ハーマイオニーが羨ましいって話。」

「私からしたらパーバティもよ。何よ、ボートが一緒で席も隣って!」

「ちょっと!?」

 

早速3人は仲良くなっているようでこちらも嬉しくなってくる。

 

「ガールズトークね! 私も混ざりに来たのよ。今日は一緒に寝ましょう?」

 

「「是非!」」

「わ、私は明日からの授業があるから、もう寝る! おやすみなさい!」

 

ハーマイオニーはベッドに潜ってカーテンを閉めてしまった。

 

「照れてるハーミーもかわいい……。じゃあ三人でベッドで楽しみましょう。」

 

こうしてホグワーツ最初の夜は更けていった。

 




組み分け回でした。

パチル姉妹は学年一の美少女とか言われているみたいなので登場させました。
これからも原作名有りの女生徒は絡ませていけたらなとは思ってます。
待ち時間で既に同学年の女生徒は全部把握しました。
ちなみに本作ではホグワーツの人数は寮一つにつき一学年が男女20人程度で
一学年の女子は40人ぐらいで想定してます。

組み分けは原作同様に。
リリ(リンリー家)は最後にするのは対策会議で決まってました。
先に組み分けてしまうとリンリーより後の女子は同じ寮に、男子は別の寮にして欲しいと組み分け帽子に懇願するので時間がかかるのと寮に偏りが出てしまうため。
過去そういう事例があったのでこんなことに。

リリはグリフィンドールに。
資質で言えばどこでもやっていけるでしょうけどハーミーがいるグリフィンドールに。

組み分けの結果フリットウィックとスプラウト、スネイプは喜び
マクゴナガルはorz
ダンブルドア校長の注意事項も早口に。一刻も速く離れたかったのです。

リリは一人部屋。つまり連れ込み放題、出張し放題。

それでは次回お楽しみ。

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