それでは51(裏)どうぞ。
夢を見ている。僕のこれまでの人生という、15年間の長い悪夢を。
僕の名前はハリー・ポッター。
生き残った男の子。運命に選ばれた子。英雄。
そんな風に呼ばれていたのが懐かしい。どのくらいの間そう呼ばれていただろうか。
今ではどこにでもいるありふれた一人の魔法使いの子供だ。
僕が育ったダーズリー家は控えめに言って屑だった。
伯父のバーノンと伯母のペチュニアは何かあるたびに僕の事を怒鳴り、時には殴り、自室と言う名の物置から出してもらえないなんて常だ。
食事も最低限、ブクブクと太る恥ずかしい従兄弟のダドリーとは反対に僕はいつもヒョロヒョロのガリガリだった。お腹いっぱい食べたことなんて無かった。
ダドリーとその取り巻きに殴られた回数は両手足の指で数えても十分の一にも満たない。
両親が死んだことも笑われた。馬鹿な親だと、死んで当然だと。
悔しかった。憎かった。
でも僕には力が無かった。
『お前は正しい。そんな愚かで下らんマグルなぞ生きている価値など無い。憎むがいい。』
僕は魔法使いだった。
両親は馬鹿なんかじゃなく立派に戦って僕の事を護ってくれたんだ。
それに僕は皆が知っているほど特別だと知った。
初めて認められた。気分が良い。
ダーズリー家では暴力、暴言。学校では虐めに無視。こんなにも僕の事を見てくれるなんて想像できなかった。
魔法使いの学校にも行けるし、両親は遺産を残してくれていた。これであの家からさっさと出ていける。
『そうだ。魔法使いは素晴らしい。その尊い血は価値がある。』
初めての友達ができた。
ロナルド・ウィーズリー。ロン。
何も知らなかった僕に色々と教えてくれた。友達というのを想像の中でしか知らなかったけれどこんなにも心地いいものだったなんて。
『それは幻想だ。よく見ろ、いや思い出せ。そいつはただお前の名声のおこぼれを狙う卑しい奴だ。他者を信じるな。』
授業は難しかったり、楽しかったり、嫌だったりと色々だったがクィディッチの寮代表、しかも花形のシーカーに選ばれて順風満帆だった。
……でも、どこからかおかしくなり始めた。
あの嫌みなマルフォイと決闘をすることになった。リンリーとか言う異常な女と一悶着あったが、あの憎たらしいマルフォイの顔を歪めてやれると考えると良い気持ちになって来る。
でも罠にかかってグリフィンドールは大量の減点をくらってしまった。
その日から僕に対する目は変わっていった。キラキラした目で目ていたのが蔑むような眼に変わった。
ハロウィーンでまたロンがリンリーのお気に入りのグレンジャーと揉めた。
その時に僕はロンの事を見捨てて逃げてしまった。
後でロンには謝ったが、しばらくぎくしゃくしたものになってしまった。
ロンが悪いのになんで僕がこんな気分にさせられているんだ?
『お前は悪くない。だが愚かな者を友だと思ったのは悪い。所詮はお前を見ていない、お前の名にしか価値を感じていないからそうなるのだ。他の奴もそうだ。誰もお前など見てはいない。もっと正直になれ。』
クィディッチ最初の試合は思い出したくもない。
周りからの評判を戻すために僕の力で勝たなくちゃいけないのに!
結果を言えば……僕は不要だった。
スニッチの点数を上回る点を僕がいなくても取ったのだ。
僕は結局、箒に振り回される、名前だけで選手に選ばれた奴と言われることになった。
『お前は悪くない。その鬱憤は正しい。考えるのはそれを誰に向けるかだ。お前はどうしたい?』
ハグリッドが逮捕された。
一緒に育てていたドラゴンの存在がバレたのだ。
僕らにもマルフォイのせいで罰則が言い渡された。また僕の価値がなくなったように感じた。最早見向きもされていない。
罰則は禁じられた森の調査。よりにもよって僕の事を嫌っているスネイプとだ。
そこで僕はあいつに出会った。
そしてハグリッドから聞いたニコラス・フラメルの名や色々な出来事からホグワーツに隠された賢者の石をあいつ、ヴォルデモートが狙っていると確信した。
この時僕が想ったことはヴォルデモートの復活を阻止することでも、両親の仇を取ることでもなく……僕が石を守ったら皆が認めてくれるということだった。
そしてそれは成功した。やった! 僕はやり遂げたんだ! ダンブルドアも褒めてくれた!
グリフィンドールは寮杯を手に入れたし皆僕の事を見直してくれたはずだ。
それも幻想、すぐに消えた。
リンリーと女子たちはダンブルドアの贔屓だと言ったのだ!
ダンブルドアも秘密とか言って僕の活躍を話もしない!
女子は全員いなくなり、残った男子からも白い目で見られながらの宴が苦しかった。
僕はもう、何もしない方がいいのだろうか?
『お前は間違っていない。周りはお前の偉業を正しく認識できない愚か者の集まりなのだ。もっと力を欲せ。』
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ダーズリー家に戻された。
何で? 僕が何をしたって言うんだ? あいつらも僕がいない方がいいはずなのに? ダンブルドアはそんな事も分からないのか?
『そうだ。あの老いぼれは全てを見通しているようで肝心なことが見えていない。お前の怒りは正当だ。その怒りを忘れるな。』
二年目。
ホグワーツに到着することから失敗続きだ。
訳の分からない屋敷しもべ妖精のせいで監禁されるだけならまだしも、ホグワーツに行けないかもしれないと焦った僕たちは違法な手段で来てしまった。
最悪なのはホグワーツで一番嫌いなスネイプに見つかったことだ。
その後もスリザリンの怪物のせいで、ただ蛇語を使えるというだけで僕は非難されっぱなしだ。信じてくれているのはグリフィンドールの一握りだけ。
クィディッチも女にさせられたマルフォイに負けるなんて結果しか残せなかった。
騒動を解決したのも他の人間。僕と違って学校の女の子からちやほやされているリンリー。
僕は怪物の言葉を通訳しただけ。あれだけスリザリンの継承者だと騒いでいたのに解決したら僕は便利な翻訳機代わりだ。
『蛇語とはサラザール・スリザリンとその子孫だけが使える崇高な言葉だ。それを理解できぬ下等な者など理解する必要もない。お前は選ばれし者だ。』
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また
おまけで醜いデブが追加された。僕が我慢できなくなったのは当然だろう。
僕は悪くない。
『その通り。マグルに魔法を使うことのどこが悪いのだ? お前は悪くない。もっとやるがよい。』
三年目。
父さんと母さんの最期の声が聞こえるから。
でも、その原因を作ったシリウス・ブラックへの憎しみはもっとずっと大きなものになった。
親友を裏切って何でのうのうと生きているんだ!? 死ね、死んで父さんたちに謝ってから地獄に堕ちろ!
父さんと母さんの悲鳴を聞きたくない一心で守護霊の呪文を父さんの親友という新しい闇の魔術に対する防衛術の先生のルーピンに教えを頼んだ。
あの時の交流は心地よかった。僕の事をしっかり見てくれて優しい大人。
まるで父親の様だと感じていた。
でも……僕の人生で最大級の誤りがこの頼みだった。
あの薄汚い人間もどきの人狼野郎は裏切っていた! シリウス・ブラックと仲間だった!
あの二人が憎い。いつか報いを受けさせてやる!
その想いを力に変えるため必死に魔法を、相手を攻撃するための魔法を練習した。
闇の魔法もたくさん学んだ。闇がどうとかあんな奴らに使って何が悪いのだろう?
『そうだ。闇の魔法は決して悪ではない。闇の魔法は素晴らしい。それを認めない世がおかしいのだ。』
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四年目。
ロンがクィディッチワールドカップに誘ってくれた。本当にいいやつだ。
僕を外に連れ出してくれるんだ。とても便利でありがたい。
また事件だ。しかも容疑者扱い。
もう僕の事なんて誰も知らないのか……。
そんな事よりどうやってあの二人を見つけるかが大切だ。
それなのに運命は僕の事がとことん嫌いみたいだ。
何で? 何で僕が選ばれる?
どうしてそんな目で僕を見る? 裏切ったかのように、非難するように、なんでだよ!
我慢の限界だった! 減点がどうした、どうせ僕が寮杯を取っても意味ないんだろ?
だったら僕がどれだけ減点されてもどうでもいいんだろう!?
鬱憤に身を任せ暴れてやった。気持ちが良かった。
『ほうら。魔法を敵に使うのは心地よいだろう? そのままじっくり心の闇を解き放て。』
医務室で目を覚ます。
暴れてスッキリしたのか心が落ち着いていた。自分ではないかのようだ。
それもどうでもいい。こんな運命から逃げられなのなら潰すだけだ。
そうして突き進んだ先はあいつの復活だった。
あの場からどうやって逃げ帰ったかは今でも曖昧だ。
そしてまた裏切りだ。スネイプの事も合わせてダンブルドアは人をちゃんと見ているのか?
あの態度も僕を裏では殺したいんじゃないのか? そうはいくか、死ぬ前に殺す。
……だめだ。殺すのはあの二人だ。
『そうだ。躊躇うな。敵は殺すのだ。そして、お前の敵は誰だ?』
学期の終わりにダンブルドアは団結が大事というが、こんな僕に対して協力する奴なんているのか? 少なくとも僕が真に信じられる人は……いない。
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本当の事を言っているのに世間は何も変わらない。誰も何も言わない。僕は何も知らないままだ。
不死鳥の騎士団というのがあるのに僕は何一つ知らないままダーズリー家に監禁される。
あんなところには一秒たりともいたくないからぶらぶらと外を歩く。
門限までに帰らないと喚くから仕方なく帰ると途中で
誰があの恐ろしい存在から逃げられたというのか。こんなデブには到底不可能だ。
それなのに豚はバカにしやがった。マグルのくせにこの選ばれし僕の事を!
気が付いたら魔法を使って吹き飛ばしてしまった。
裁判になるらしい。知ったことか何が悪いというのだ。
そんな事はどうでもよくなった……。
ああ、憎い憎い憎い!
何であいつらが不死鳥の騎士団にいる?
何でダンブルドアはあいつらを信じた?
父さんと母さんの死はあいつらよりも軽いのか?
おかしいだろう!? 無実? 他に真犯人がいる?
何を言っているんだ!? この世界は何時から都合のいい推理小説になったんだ!?
世界一の魔法使いもそれを信じたのか!? 他の騎士団だって疑っているというのに!
『憎め憎め憎め。その憎しみが力になる。その力がお前の憎む相手を消してやる。』
バーノン・ダーズリーが憎い。
ペチュニア・ダーズリーが憎い。
ダドリー・ダーズリーが憎い。
セブルス・スネイプが憎い。
シリウス・ブラックが憎い。
リーマス・ルーピンが憎い。
『もっとだ、もっとだ! 他にもいるだろう? 憎いだけじゃない、妬ましい羨ましい奴らが!』
ロンが妬ましい。
フレッドが妬ましい。
ジョージが妬ましい。
リリアン・リンリーが羨ましい。
アルバス・ダンブルドアが理解できない。
『そうだ、それで良い。お前の憎しみが心地よい。良い糧だ。順調に育っている。』
……? あれ……? なんで僕はあいつに対して悪の感情が湧かないのだろう……?
『当然だろう? 自分の事は誰だって好きなものだ。そうだろう? ハリー・ポッター。』
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目が覚める。何か悪い夢を見ていた気がする。
今日は……スネイプの閉心術の授業があるな。ダメだ、
今日もどこかで闇の魔法の本でも読もう。
途中で女子に囲まれたリンリーを見た。
それに対して食い入るように見る。
ああ……。僕も誰かとああいう風に囲まれて楽しく過ごしたかった。
ハリーがどう思って、どう感じて、どう負の感情をため込んでいったかの過程でした。
原作と違って活躍もしないし、色々誤解は解けないし、周りもみんなハリーには注目しない。
原作の時点で相当にヤバい人生なのにこれではもうだめかもしれないですね。
それはそうとして『』はいったい誰のセリフでしょうね。
バレバレですが。
それでは次回お楽しみ。