【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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7月に突入しましたね。
相変わらず天気も悪く蒸し暑い日々が続いてうんざりしています。

この物語も5章がそろそろ終わり。
一応はラストまで考えているのでエタることはないと思うので
今しばらくのお付き合いをお願いいたします。

それでは52話どうぞ。


52. 少女たちの決戦

とうとうこの日がやって来た。

O.W.L試験である。

 

「う~う~……。」

 

「可愛く唸っても何も変わらないわよ。」

 

今後を左右するテストということもあってハーマイオニーも若干緊張気味である。

それを癒すためかリリを膝にのせて撫でている態勢だ。

 

「むぅ……ありがと。でも2週間もテスト漬けとかやだなぁ。ねぇ、終わったらお祝いしない?」

 

「ふふふ、お姉さま! そう思ってジニーは用意していましたのですよ!」

 

リリの提案にいち早く反応したのはジニーであった。

彼女だけは学年が下でまだOWLもNEWTも先である。

ストレスが幾分少ない彼女はこっそり準備していたリリ(とその他)を労う会を発表した。

開催場所はクィディッチ競技場を使っての星空の下でのパーティーだ。

もちろん許可も取ったし低学年たちでの準備も万端である。

 

「気合を入れて準備をしていますので期待していてください!」

 

「おお~。とりあえずカワイイジニーの為にもサクッとふくろう狩りといきましょうか。」

 

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そうは言っても簡単にいかない。

いつもの学年末テストとはわけが違っていた。

まず、試験官はホグワーツの教員ではなく魔法省の魔法試験局から派遣された役員だ。これについては特に問題はない。

アンブリッジの根回しで彼女に与している者たちが集められたのでホグワーツの現状が明かされる心配はない。

試験会場は大広間だ。いつもの4寮のテーブルは姿を消し、代りに個人用の小さな机が教職員テーブルの方に向けて設置される。監督の先生の机には予備の羽根ペン、インク瓶、羊皮紙の巻紙の他、試験時間を計る為の巨大な砂時計が置かれる。

筆記試験のペーパーには学生にはまず解除不可能なレベルの最も厳しいカンニング防止呪文が掛けられ、自動解答羽根ペン、思い出し玉、取り外し型カンニング用カフス、自動修正インクなどは当然持ち込み禁止である。

単純に試験というだけで嫌になって来るのにここまで厳重で重苦しい空気だと余計に気が重くなる。

 

試験の教科も当然のように多い。もちろんそれを全部受けるなどといった狂人はいない。

リリ達も必須の教科に選択を入れて10という数だ。リリとしてはこれでも十分に多いのではないかと心の底から思っている。

 

止めに試験期間は2週間である。流石に間に休日を挟むとは言え、毎日のようにいつも以上に厳しいテストがあるのだ。

一日に実施されるのはほぼ一教科。これは楽な点であると捉えることもできるが、別の角度を見れば丸々一日を費やしてたった一つの教科の試験をするのだ。

始まる前から生徒たちのやる気を折に来ているとしか思えない構成である。

生徒の憂鬱な気持ちなど無意味とばかりに刻一刻と試験の時間が迫って来ていた。

 

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リリの受ける科目の順番はこのようなものだった。

変身術

呪文学

魔法史

休み1日目

薬草学

天文学

休み2日目

魔法薬学

闇の魔術に対する防衛術

休み3日目

占い学

数占い

休み4日目

魔法生物飼育学

 

ちなみにこの順番はテスト初日に発表されるという意地悪なものだ。

リリの選択した魔法史、天文学、占い学、数占い学は正直に言えばかなりマニアックなものだ。どの科目もその道の専門家に進むのであればかなりの知識が必要になってくるものだが、ほぼ専門家だけが必要なものであるともいえる。

魔法生物飼育学も若干その傾向であるが、これは他の分野にも関わっている。

それらとは別格で就職に関わるのは一年次からの必修の変身術、呪文学、薬草学、魔法薬学、そして闇の魔術に対する防衛術である。

この五つの科目に関しては担当教師の力の入れようも相当なものだった。

 

リリ達が最初の変身術のテストに向かっていた時、担当のマクゴナガルに呼び止められた。

 

「ミス・リンリー。あなたは別の場所で試験を受けてもらいます。」

 

「「「えぇ!?」」」

 

リリ本人、ハーレム、そして周りの女子たちが驚く。

 

「あなたが同じ場所で試験を受ければ女子はいつも以上の実力、男子は本来の力を発揮できません。それでは不公平なので特別に別室でのテストとなります。歴代のリンリー家の者たちも同様でした。お母上からは何か聞いてなかったのですか?」

 

「特に何も言っていなかったような……。先生、どうしてもだめですか?」

 

「駄目です。」

 

「お願いしまう。」

 

「っ……。そんな目で見てもダメです! 他の者たちは速く大広間に向かいなさい! ミス・リンリー、着いてきなさい。」

 

「はぁい……。ゴメンね、皆。頑張ってね!」

 

「ええ、リリも頑張るのよ!」

 

マクゴナガルにとぼとぼと覇気のない歩みでついていく。始まる前から更にやる気が無くなってしまうリリであった。

 

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そしてテストが始まった。

変身術の内容はシンプルだ。

指定されたモノを更に指定されたモノに変化させるということだ。

もちろんシンプルではあるが難易度は高い。

形状、大きさ、色、わざと不自然なモノへの変化、など指定は多岐にわたる。

 

呪文学は今まで習ったことの集大成だ。

5年間で習った魔法の内容を筆記テストし、それを実際に使えるか見るというものだ。

しっかりと魔法の効果を覚えているか、そして使えるのか、そこに追加で魔法の発動速度、威力、正確性、杖の使い方を細かくチェックする。

 

魔法史は睡眠時間というのがホグワーツの極一部を除いて共通認識である。

それはOWL試験でも変わらなかった。

 

 

休み1日目。

 

「あ~……。私、今日ここから動かないわ……。」

 

ハーマイオニーの膝の上で蕩けるようにだらけるリリ。

それをクラウディアとジニーがカットした果物を口に運ぶという甘やかしぶりである。

周りの女子もその光景を見て試験の疲れを癒している。

 

「あと10分ね。」

 

だが、ハーマイオニー()は甘やかすだけではなかった。

まだOWL試験は途中なのだ。本当は自分だって二人きりで部屋で過ごしたかったが、我慢している。

 

テストが再開する。

薬草学は時間との勝負になった。

制限時間内でどれだけ多くの魔法植物を正確に取り扱えるかの試験となった。

たった一人でこれを行っているリリは虚しさと寂しさでかなりミスをしてしまった。

 

天文学は魔法史といい勝負であった。

科目の内容から夜行う。しかも一人。つまり眠いのだ。リリは早々に仕上げて意識を手放した。

ここに他の女子がいたらリリの寝顔を見て試験どころではなかったであろう。

実際に試験管の女はその光景を見て神に感謝していた。

 

 

休み2日目。

 

「…………。もう嫌。」

 

「あらあら、まぁまぁ。」

 

クラウディアを対面から抱きしめ、その豊満な胸に顔を埋めながら全く動かなくなってしまったリリ。

他のメンバーも流石に疲れているのかリリをどうすることもせず、自分たちもリリの近くでゆっくり英気を養っていた。

 

再び試験が始まる。

魔法薬学はいつもより快適だった。

嫌みで男なスネイプに代わり、当然の様にリリの担当の監督官は女性だった。

これだけでリリのやる気は普段より120%UP、絶好調で難しい魔法薬が完成できた。

 

闇の魔術に対する防衛術は模擬戦だった。

派遣された闇祓いや魔法戦士たちと一対一での決闘。

勝敗で成績が決まるわけではない、状況判断力や適切な魔法を選択する力など総合的に判断される試験だった。ちなみにリリの相手は男だ。女相手ではリンリー家を害することが至難なので当然の処置である。

 

 

休み3日目。

ここまでくるとみんな疲れてノイローゼになっているような生徒まで現れ始めた。

リリは自室に引きこもってハーマイオニーを抱き枕にして勉強の事はすっかり忘れることにした。

 

「よしよし。今日は私だけに甘えていいのよ。ほらもっと抱きしめてね。」

 

「……愛してるわ。」

 

「ふふ、私もよ。」

 

 

地獄は三度始まる。

占い学と数占いはいつも通りだった。

特に占い学は授業と何が違うのか分からない内容だった。

トレローニー先生にここまで感謝したことはないだろう。

 

 

休み4日目。

ハーレムたちも疲労がたまっていた。特にNEWTを受けているクラウディアが顕著だった。

流石にそんな彼女たちに甘えるのもどうかと思い、ぼーっとしているとジニーが近づいてきた。

 

「お姉さま、ジニーはバッチ来いです!」

 

「ジニー!」

 

試験をしていないジニーだけは元気ハツラツ。疲れたお姉さまを独り占めできる絶好の機会であった。

この時のために前3日の休日は少し距離を取っていたのだ。

 

(ふふふ……。計画通り!)

 

存分にリリ成分を摂取したジニーは過去最高のコンディションとなっていた。

 

そして最後の試験

魔法生物飼育学はリリの独壇場だった。もっとも相変わらず一人での試験なのだが。

魔法生物と言えど雄は絶対に距離を取るし、恐怖もあってまず逆らわない。

雌は魅了で言うことを聞いてくれる。

どんな魔法生物でもやすやすと手懐けてしまうので試験にもならない有様だった。

 

そしてようやくテスト終了となった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「え~~。5年生はOWL試験、7年生はNEWT試験お疲れ様でした!

他の皆もサポートありがとう! それでは乾杯!」

 

「「「かんぱ~い!」」」

 

打ち上げパーティーはホグズミードから取り寄せたバタービールでの乾杯からスタートした。

 

ジニー達が準備したのはいつものホグワーツの宴に加え、外部から妖精シスターズやサプライズでデラクール姉妹を呼んだりと楽しいものになった。

ちなみにテストの方はハーマイオニーたち上位組は余裕をもって、パーバティたち下位組は妬けになって涙目でパーティを楽しんでいた。

 

「リリ! 久しぶり! 相変わらずいい女ね!」

 

「久しぶり、フラー。そっちも変わらず綺麗ね。」

 

人外級の美人を久しぶりに目にし試験の疲れも吹っ飛んでしまったリリ。

フラーも久しぶりのリリと会えてご満悦である。

その後はテンションがおかしくなったリリが片っ端からキスして回ったり、フラーがリリを拉致しようとしたりと色々あったが、最後はマクゴナガルのお叱りでお開きとなった。

 




OWL試験回でした。

結構内容については独自の捏造設定があります。
実際に描写がどうだったのかとかあまり原作本編では重要な話ではない記憶が……。

この裏でハリーやらダンブルドアやらお辞儀やらが色々やっていますがそれはまた裏の話ですね。

それでは次回お楽しみに。

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