本当はもっと明るくていい話が書きたいのに……!
それでは52(裏)どうぞ。
リリアン・リンリーや少女たちがO.W.LやN.E.W.T、学年末試験を受けているのと同時にもちろん男子たちも同じように試験を受けていた。
その中の一人、アルバス・ダンブルドアからは魔法界の行く末を担う運命の子と決めつけられていたハリー・ポッターもO.W.Lに悪戦苦闘していた。
原因はここ数日、嫌な夢しか見ていないハリーは寝不足であったのだ。
悪夢……両親を直接手に掛けたヴォルデモートが笑い、上機嫌になっている光景が広がっている。
そして日に日に声がはっきりと聞こえてくるようになってきているのだ。
「はははっ! よくやったぞ。流石は―――。これで俺様の世界の支配というパズルのピースが一つ埋まろうとしている。」
今は大事なO.W.L試験、闇の魔術に対する防衛術のテストの真っ最中だ。
それなのに今まで以上にハッキリとヴォルデモートの声が聞こえる。
テストどころではない。もっと声を良く聞こうとそちらに集中する。
なぜ夢を見ているわけでもないのにそんな声が聞こえるのかという当然の疑問も頭から抜け落ちひたすらに声に耳を傾ける。
「さて、あと一押しだ。それさえ手に入れてしまえば憂うことも無い。魔法界は俺様の手に落ちるのも時間の問題だ。では行こう。」
見覚えのある場所にヴォルデモート奴が入っていく。
見覚えが……。あれは……魔法省! まさか攻め入るのか!?
「駄目だ!」
試験であるという意識はすっかり消え去り大声を上げてしまう。
「ミスター・ポッター! 今は試験中です。何がダメだというのです?」
監督する魔法省役員の言葉を無視してその場から飛び出す。
向かう先は校長室。このホグワーツで一番に伝えなければならない魔法使いの元へと急ぐ。
校長室へと繋がる螺旋階段の前のガーゴイル像との問答さえ鬱陶しい。
急がなくては、あそこへ行かなくては!
「ダンブルドア! 大変です! あいつが!」
「ハリーよ。落ち着くがよい。まずはそれが重要じゃ。」
ハリーは早口で今までの悪夢や今見た光景を話す。
それは自分が閉心術を習得していないということの暴露でもあったがそんなことは今の状況ではどうでもよかった。
話を聞き終わったダンブルドアは考える。
誰が考えても明らかにこれは罠だ。
ハリーは予想通りならば……最悪なことにヴォルデモートの
その影響なのか繋がりができ、今回の様に思考の誘導をされている。
今も冷静さを欠き魔法省に行きたいという一点に意識が集中されているようだ。
(どうするべきか……。恐らく狙いは神秘部の予言。あやつが直接取りに行くのは考えずらい……。ハリーに取らせるための計画か、それとも別の何かが……?
しかし、これはチャンスでもある。奴らの戦力を測り打撃を与えるという絶好の好機。
幸いなことに魔法省内部もアンブリッジ先生のおかげで準備が秘密裏に進められている。
あやつが把握していない場合はこちらに分があるが……。)
考えながらも今回の事を不死鳥の騎士団員たちとアンブリッジに連絡を飛ばす。
損得を冷静に思案した結果……ダンブルドアは決めた。
「ハリー。まずは騎士団本部へと参ろうか。それからでも遅くはなかろう。」
「でも! あいつが何かしようとしているんですよ! 急がなくては!」
「速さは力じゃ。だが強すぎる力は自らも害する。何事も適当というものがあるのじゃよ。」
集まったホグワーツにいるマクゴナガルなどの騎士団員とアンブリッジの前で即席の
そのまま騎士団本部のブラック邸へと飛ぶダンブルドアたち。
本部にもかなりの騎士団員が集まっていた。
「皆、良く集まってくれた。要点だけを簡単に伝えよう。魔法省にヴォルデモートの一派が現れる可能性が高い。だが、ヴォルデモート本人が現れる確率は低いじゃろう。
狙いは神秘部のあるものと考えられる。
わしらはそこで奴らの戦力を削ぐ作戦じゃ。」
「あるもの?」
騎士団の一人、キングスリー・シャックルボルトが疑問の声を出す。
声に出していない他の者も同様の思いだ。
「予言じゃ。内容は今回の作戦の後伝える。ハリーとあやつに対して密接にかかわっておるとだけ言っておこう。
つまり、今回の作戦にはハリーの参加が不可欠じゃ。むしろ予言を手に取れるハリーの先行無くしては成り立たぬだろう。」
「何を馬鹿な!? 正気か!? ダンブルドア! ハリーを危険な目にあわすというのか!」
「そうですよ! この子はまだ未成年なんですよ。」
「シリウス、モリー。わしはハリーならば困難を乗り越える力があると信じておる。
それに時間も有限じゃ。」
尚もダンブルドアに抗議をする二人。
ルーピンやアーサーも非難の目を向けている。
そこへ一人の女性が姿あらわしをしてきた。
ロザリンド・リンリーの懐刀のキャロル・フォードである。
「御主人様の命で参りました。それとドローレスが魔法省の内の確認を行った結果、不自然に警備状態の穴があるとの事でした。恐らく服従の呪文で魔法省の警備が解除されていると推測できます。どうしますか? 敢えてこのままにするのか、魔法省内の戦力も使用しますか?」
「報告ありがとう。ここは敵の策に乗るとする。わざと手薄なままにして誘い込む。
わしらはそこを叩く。その後に魔法省の戦力も投入してもらうとしよう。」
「分かりました。それでは作戦に参加する女性は何名ですか? 私が守るべきは女性のみとの事なので。」
参加する女はマクゴナガル、モリー・ウィーズリーにニンファドーラ・トンクス、ヘスチア・ジョーンズの4名だ。
彼女たちに防護の魔法具を渡していくキャロル。
その間もダンブルドアの作戦説明が続く。
「よし、それでは行こうかの。」
ホグワーツ生たちが試験に取り組むの裏で魔法界を左右する戦いが始まろうとしていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
僕は一人で魔法省のロビーに入る。
魔法省ここにはいい思い出が無い。
くそデブのダドリーに正当な報いを与えてやっただけなのにまるで悪の魔法使いを見る目で見てきた裁判を思い出してしまう。
それに未だに嘘つき呼ばわりしてくる魔法省など誰が来たいと思うのか。
そんな思いを振り払ってこれからの事を考える。
まずは神秘部の予言の間に行って予言を回収する。その後は逃げるだけだ。
今も姿は見えないが護衛の騎士団員がそばにいるはずだ。
(僕の役割は単純だ。騎士団にダンブルドアもいる。本当は僕も戦いたかった。けれど仕方がない。そんな事よりも!)
僕の役目がただ逃げることよりも! 僕に力が無いことよりも! なんであの裏切り者の殺人鬼までここに連れてきたんだ!
あのシリウス・ブラック! 父さんと母さんの仇!
おまけに人狼まで!
これから戦いがあるっていう大事な時なのに、いつ裏切るかもわからないのに!
何でダンブルドアは信じられるんだ?
……ダメだ、考えるな。目の前に集中しろ。
教えてもらったとおり予言の間に着いた。
どれが目当てのだ?
ああ……。あれだ。あの予言が呼んでいる。
予言には16年前の日付と共に僕の名が刻まれている。
それを手に取った瞬間、仮面を被った
「それをこちらに渡してもらおうか、ポッター。」
「ルシウス~? こんなガキ相手に何丁寧に頼んでんのさ! さっさとぶっ殺してそれからゆっくりと奪えばいいだろう?」
「それはならんぞ、ベラトリックス。我が君はポッターの五体満足が望みだ。」
「ふん。分かっているよ。」
目の前の愚か者どもが悠長に話をしている。僕の事なんか脅威にも思っていないのだろう。
僕は相手にせず走り出す。ここにもう用はない。
「このガキが!」 「待ちやがれ!」 「
流石に見逃してくれないか。でも、問題ない。
「「「
一斉に放たれた
不死鳥の騎士団が突入してきたのだ。
そこからは乱戦、混戦の酷いことになった。
辺り一面にあった予言は多くが砕かれ、神秘部のよくわからない物品も燃え、切り裂かれ、ぐちゃぐちゃだ。
予想以上に
今は神秘部のある部屋で身を隠してながら様子を窺っている。
辺りに何か役に立つモノが無いか見まわす。
そしてそれを見つけた。
それは石の台座が置かれ、その上に石のアーチが立っていた。
そのアーチには黒いベールがかかり、風も無いのに静かに波打っている。
異様で違和感の塊だった。でもそれが怖いものだとは魂から理解できた。それと同時にベールに惹かれるということも。
「ハリー!」
あと少しでベールに触れそうになったという瞬間、現実に引き戻された。
その声は僕にとっては何者よりも耐え難い声だった。
「シリウス・ブラック……!」
「ああ、良かった! 無事だなハリー! さぁ、一緒に逃げるぞ。大丈夫だ俺が付いているもう危険はないそうだこのままどこかに行って一緒に暮らそうそうしよう。」
相変わらず僕に狂気じみた目を向けて支離滅裂に話す。
やはりこいつは狂っている。
腕を掴まれて強引に引っ張られていく。
「離せ! この人殺し!」
「ハリー、ハリー! まだ信じてもらえないのかそうだあいつの死体を見せれば君も信じるはずさ。だってジェームズの子だそうだ俺が悪戯しても最後には許してくれた今回もきっとあいつを殺せば裏切りを殺せば天国で笑ってくれるはずだそうだろうハリー?大丈夫だ行こう!」
「天国にはお前が行きな!」
そこへ
やっぱり騎士団員もこいつの事を信じていないんだ! このままこいつをぶちのめせ!
「邪魔をするなぁああ!
ブラックの杖から緑色の光弾が飛んで行く。
それは騎士団員にぶつかる。そしてその人はピクリとも動かなくなった。
死んだ。死んでいた。遠くから見てもそれを確信できた。
知っていた。この光景を僕は知っていた。
あの日。僕の両親が死んだ日。
母さんがヴォルデモートに同じことをされていた。
目の前の光景と過去の惨劇が重なる。
こいつ、こいつは! この男は! 僕の両親だけじゃなくて! まだ殺したりないのか!
こんな奴は生かしてはダメだ!
「さぁ、ハリー! 邪魔者はいなくな「ああああああああああ! ブラックぅぅ!」
あらん限りの力を使ってこの目の前の悪魔を吹き飛ばした。
出来るだけ遠くへ、この世からも消えるぐらい遠くへ!
呆然としたままブラックは吹っ飛んでいく。その先はあのベールだ。
そのままくぐっていなくなった。この世から。
「はぁ……はぁ……。やった、これで。」
「そうだよくやったぞポッター。これでお前は人殺しの仲間だ。俺様の様に。」
声に振り返る。そこにはいたのは一度見たら忘れられない顔があった。
ブラックを屠れた達成感といきなりの出来事で杖を構える前に武装解除された。
「ヴォルデモート……!」
「そう睨むな。それでどうだ? 名付け親をその手に掛けた感想は?」
「な、何を……?」
「ああ、話すよりこうした方が速いな。起きろ、我が一部よ。」
視界が暗転する。
完全な闇。そこにいるのは薄い僕と半透明なヴォルデモートだけだった。
動けない僕にヴォルデモートが近づいてくる。そして触れる。
その瞬間。今まで、僕がやってしまったことを理解させられた。
僕の中にはずっとこいつがいた。
僕の中の負の感情を、魂を喰らわれていた。
シリウスは無罪だった! (本当か?)
ルーピン先生も裏切っていなかった! (嘘じゃないか?)
ロンも本当に僕の事を心配していたんだ! (騙されるな!)
でも僕の闇が認めようとしなかった。
それもこいつがいたからじゃない。それはきっかけに過ぎなかった。
(いや違う! こいつのせいだ! 僕の中の!)
「いいや違わない。俺様は最早お前の一部。それは逆もまた然り。お前がやったことは全てお前の意志だ。」
(僕の意志……?)
「そうだ。周りを信じられなかったのも、嫉妬も、憎しみも、怒りも、全てはお前が元だ。
そして殺したのもお前の意志だ。」
(そんな馬鹿な! そんな! そんな……。)
「嘆く必要はない。疲れただろう? もうお前は何も考える必要はない。さぁ……楽になれ。」
思考が消えていく。いや吸われ、喰われていく。
「さぁ、これからはお前はヴォルデモート卿だ!」
目の前の半透明のヴォルデモートが色づく。
反対に僕が希釈されていく。
僕という餌で寄生虫は育つ。そして羽化する。
段々と目の前のヴォルデモートと僕の境が無くなっているのを感じる。
僕は誰だ?
「ああ、俺様はヴォルデモート卿だ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ハリー!」
ダンブルドアが
並みの魔法使いとは比較にならない速度で敵をなぎ倒してここに来ることができた。
ダンブルドア以外ではできない芸当だっただろう。
だが、それでも遅すぎた。
「遅かったな。ダンブルドア。」
目の前のハリーが発する声。
いつもと同じ声。
だが、何かが決定的に違っていた。
「お主……。まさか。何ということじゃ……!」
「ふふふ。いい顔じゃないか。さて俺様たちは帰らせてもらうとしよう。目的は達成した。ついでにこの予言もじっくりと聞かせてもらうとしよう。」
「待て! 待つんじゃ!」
とっさに放つ呪文も虚しく空を通り過ぎる。
後に残ったのは自分を呪う愚かな老人だけだった。
この日、ハリー・ポッターは死んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔法省の戦いから数日が経過した。
流石の魔法省も内部で
更に、アンブリッジが集めていた数々の情報から今までの隠蔽や腐敗も暴露されコーネリウス・ファッジやその支持者は一晩でその地位を失い魔法省から追放された。
魔法省は新たにルーファス・スクリムジョールが率いる有能な組織に生まれ変わろうとしていた。
だが、それでも魔法界は暗く沈んでいた。
ヴォルデモートが蘇っただけが原因ではない。
かつて赤子だった時に闇の帝王を打ち破り、今度もそうしてくれるはずと期待されていた英雄。
ハリー・ポッターが死んだというのだ。
ただ死んだだけではない。帝王に屈しその心を喰らいつくされたという噂まで流れている。
魔法界には闇が蔓延しようとしていた。
お辞儀大勝利回でした。
原作と違ってハリーには友達や仲間と呼べる存在がいなかったこと、
綺麗なアンブリッジがいたことでダンブルドアを頼りました。
そして騎士団と一緒に万全の態勢で魔法省に突入。
ここまで全てお辞儀の計画通り。
ここに敢えてシリウスをハリーのところへ行かせるように部下の行動を調整させ
ハリーとシリウスが対面させる。
ここに死喰い人をシリウスにけしかけ、ハリーにはそれが騎士団員と錯覚させるように意識を操作。
ハリーがシリウスを攻撃すれば良し、と言うところでまさかのベールからあの世へ直行。
ここぞとばかりにお辞儀の精神攻撃。
ハリーは哀れ魂をお辞儀に喰われてしまいましたとさ。
今まで負の感情をため込んでいたハリーは知らず知らずお辞儀の欠片を育てていました。
そしてお辞儀復活時の対面でお辞儀自身がそれに気が付いて敢えてハリーを逃がしハリーを喰らうことを計画。
そしてそれは成就しました。
ダンブルドアもまさかここまで魂を喰われているとは思っていなかった。
ハリーをここに連れて来なくても時間の問題でしたでしょう。
そしてここまで主人公にリリには全てどうでもいいことなのであった。
それでは次回お楽しみに。