【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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今回で5章終了です。
残すところは2章!
頑張って書ききってしまいたいです。

それでは53話どうぞ。


53. ハーレム五年目

2週間もの長いOWL試験もようやく終わり、後は学年末パーティーまでゆったりと時が流れるだけ。

リリとそのハーレム、そしてホグワーツの女子たちは今学期の残り僅かな時間を穏やかに過ごそうと思っていた。

リリ達は身支度をしてみんなと一緒に朝食を食べるために大広間に向かおうとしていた所だ。

 

「ハリーが! 例のあの人も! 魔法省が認めた! ハリー……ハリーが!」

 

リンリーがいるから女子は楽しく高揚し、男子は真逆に得体の知れない恐怖に耐えるといういつものグリフィンドール談話室だったが、テスト明けということで男女ともにいつも以上には心が弾んでいた。

それが飛び込んできたロナルド・ウィーズリーの言葉で先程までの談話室の雰囲気は戸惑いと恐怖に様変わりした。

闇の帝王が復活したことを疑うホグワーツ生は少なかったが、それでも今まで全く認めていなかった魔法省が認めたということでいよいよ戦争状態になってしまうのかと怖がる生徒たち。

しかし、続くハリー・ポッターがどうしたということについては皆が疑問に思う。

実際テストの途中で出ていった後は誰も姿を見ていなかったのだ。談話室の全員がロナルド・ウィーズリーの次の言葉を待った。

 

「ハリーは……ハリーは死んだ。いや、もっとひどい。こんなことって……。」

 

死。それだけ聞けば十分だった。

ハリー・ポッターが、赤ん坊の時に帝王を打ち滅ぼし、今度も救世主になるかもしれないと期待されていたハリー・ポッターが……死んだ。

男子は言わずもがな、女子も少なからず衝撃を受けていた。

ロナルド・ウィーズリーの言葉を嘘と反論しようにも、その顔が涙でぐちゃぐちゃになった酷い顔であったので誰も何も言うことができなかった。

 

ただ、ハリー・ポッターの死が事実ということだけが伝わってきた。

 

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その日からホグワーツは不穏な空気に侵され始めた。

ハッフルパフ生たちは怯え疑心暗鬼になりながらも信頼できる仲間を集め始めていた。

レイブンクロー生は平静を装いながらもいつも以上に勉強に打ち込んでいた。もう期末テストも終わったというのに、何もかも忘れたいかの様に。

グリフィンドール生が一番の酷いことになっていた。ハリー・ポッターと近かったということもあり、少しの事でスリザリンに対して闇の魔法使いだと、攻撃を放つ有様だ。

それらとは逆にいつもと変わらないのがスリザリンだ。まるで自分たちが優位に立ったかのようにふるまう始末だ。

 

これらの動きは全て男子生徒の間だけで起こっていた。

リリは全校の女子と一人ずつ一対一でじっくりと話し合い、触れ合い心を落ち着けていった。このカウンセリングのおかげでほぼほぼ平時と同じぐらいにまでは女子たちは落ち着きを取り戻していった。

 

その後に女子たちはリリアン・リンリーを中心に結束を更に強めていった。

特にスリザリン女子とは今まで以上に仲を深めるように注意していた。

闇の帝王の復活、魔法界に闇が蔓延する。聖28一族や純血の貴族が多くいるスリザリンは表立っては言わないが多くが闇の陣営だ。

だからこそ、スリザリンにいる女子たちは危険だとリリは直感した。

今もダフネを中心としたスリザリンの女子たちに囲まれてのお茶会で仲を深めている。

 

「みんな、馬鹿なことはしちゃ嫌よ。もし家族が何かさせるようなら私に言って。」

 

「もちろんよ。言うまでもないけど、純血主義や闇の魔法なんかよりあなたの方が魅力的なんだもの。ここにいる女子であっちに行こうなんて間抜けはいないわ。」

 

ダフネの言葉に全員が頷く。

女子たちは寮同士の諍いとは無縁だ。

だが、男子たちの馬鹿な争いに巻き込まれる可能性はある。

 

「はぁ……。ホグワーツが女子だけの学校にならないかしら。」

 

「良いわね……それ。」

「そしたらさ、古い寮制度も廃止になって皆リリちゃんと一緒にいられるわね!」

「リリちゃんが卒業しても学校の運営側としていれば安泰じゃない?」

 

リリの何気ない一言だったが、下手をすればホグワーツの一部が独立して新たな魔法学校を立ち上げるなんてことにもなりかねない。

教師がこの場にいたら速攻で止めに入っただろう。

 

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ホグワーツ女子とは違ってイギリス魔法界はパニックに陥っていた。

今まで魔法省が発表していた闇の帝王が復活などしていないというのが嘘。

ダンブルドアたちが警告していたことが真実。

もはや何を信じればいいのかさえ分からなくなりそうな有様だ。

おまけの今回は前回の戦争の様に英雄が倒してくれるなんてことも期待できない状況だ。

ダンブルドア率いる不死鳥の騎士団とトップが入れ替わった魔法省がこの戦争の早期の終結と敵勢力の打倒の声明を出すが、焼け石に水どころの効果もない。

 

だがそれでも、魔法省だけは混乱などしていなかった。

元々コーネリウス・ファッジ元大臣に懐疑的だった者やアンブリッジの裏工作や根回しの結果、各部署の重鎮や歴戦の猛者たちは何時かはこうなると分かっていた。

準備はとうにできていた。だからこそ魔法省の襲撃をきっかけに彼らは即座に動いた。

無能な官僚や闇に近しい純血主義と言った腐敗は徹底的に除去された。

今回は不死鳥の騎士団任せではない。魔法省の力を闇の勢力に見せつけてやるという気概が溢れていた。

 

 

 

「皆さん、時は来ました。聞くまでもありませんが、あの方の為に命を使う覚悟はありますね? たとえ、あの方が望まれなくとも。」

 

「「「はい!」」」

 

「よろしい。ならば戦争です。」

 

その裏で闇を打倒するために別の勢力も動き始めていた。

 

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大なり小なり混乱は続いているが、それでも時間は過ぎていく。

リリ達の五年目も終了だ。

大広間で学年末パーティーが行われているが、男子生徒の落ち込みによって盛り上がりに欠ける。今年で卒業するウィーズリー双子が悪戯で場を盛り上げようとしているが、効果はいまいちだ。

 

宴も終わり、テーブルの上はきれいさっぱり片付けられる。

ダンブルドアが立ち上がると生徒たちは一斉にそちらに目を向ける。

帝王の復活以来ホグワーツにいることが少なくなったダンブルドアからどのような言葉を聞くことができるのか皆一生懸命耳を澄ます。

 

「……皆が言いたいこと、聞きたいことは山ほどあるじゃろう。だがその前にアンブリッジ先生からのお話がある。」

 

魔法省送り込まれていたアンブリッジは本人が言っていた通りに今年度いっぱいでホグワーツを去ることになっている。

今後は魔法省の役員として魔法界の為に力を費やすということは生徒たちはすでに聞いていた。

魔法省の人間ということもあってダンブルドアと同じぐらい彼女からの言葉にも大広間の全員が注意する。

 

「エヘン。もう周知していますが、わたくしは今日限りで闇の魔術に対する防衛術の職を辞することとなっております。一年という短い間でしたが未来あるあなた達を教えられたことを誇りに思います。

まぁ、こんなありふれた言葉を聞きたいわけではないですよね。

それではまず大前提として。

敵は強大です。魔法省は今までの腐敗がありました。英雄はいなくなりました。

それでも……魔法省は戦います。負けるつもりなどありません。

そのためには皆さんの、その家族の力も必要になってきます。

私がこの一年間で教えたことを少しでも活かして、闇になど屈しないでください。」

 

「その通りじゃ! 今、我々は脅威にさらされておる。だからこそ何度も言おう! 団結し一つになって立ち向かわねばならん。我々を信じて強く心を持って欲しい!」

 

ダンブルドアの続く言葉にグリフィンドール男子を中心に賛同とやる気の声があがる。

それは他の寮にも派生し一部のスリザリン男子を除いてホグワーツは闇に対しては一丸となって戦く覚悟が決まった。男子と女子では守るべき対象は違っているが、敵は同じだ。

宴は始まった時とは変わって活力に満ちた終わりとなった。

 

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宴が終わって、生徒たちが奮起しているというのにダンブルドアは一人校長室で嘆いていた。

もちろんハリー・ポッターについてだ。

生徒たちの前であれだけ啖呵を切ったというのに一人になると弱気になってしまう。

ハリーの事を気にかけてきたつもりだったが、自分は何も見ていなかったのではないか。

分霊箱(ホークラックス)の事も確信を持っていたのに何も話さなかった。予言の内容についても秘密にしていた。もう少し何かしていればこんなことにはなっていなかったのではないか?

そんな考えばかり浮かんでは消えていく。

しかし……今は嘆く時間すら許してくれない。

嘆いては何も解決しない。こうしているうちに脅威は増し、生徒やその家族の命が危険にさらされる。生き残った者たちはかつての、妹を失った時の自分と同じ気持ちを体験することだろう。

 

それではダメだ。それだけは絶対に認められない。

 

『より大きな善の為に』

 

かつての友と語り合った時の言葉が思い出される。

守るためには今のままではダメなのかもしれない。

だが、それでもアルバス・ダンブルドアは最後の一線だけは超えることはしたくは無かった。

 

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マルフォイ家の別荘。

その屋敷は一族と極近しい者たちしか知らない秘密の場所だった。

今の主はマルフォイ家の当主ルシウス・マルフォイではない。

闇の帝王ヴォルデモートが支配する場となっていた。

 

そこに死喰い人(デスイーター)達が呼び集められていた。

大ホールに集まったのは50を超える死喰い人(デスイーター)

呼ばれた理由は不明だ。幹部たちもそれは知らされていない。褒美かそれとも罰か、様々な憶測が飛び交いざわめきが止まらない。

 

扉が開く。一瞬で静寂が場を支配した。

入って来るのは主たるヴォルデモート卿。死喰い人(デスイーター)たちは一斉に膝まづく。

その後の続く人間を見た瞬間、驚愕でほとんどの死喰い人(デスイーター)が声をあげた。

 

「ハ、ハリー・ポッター!?」

 

「黙れ。」

 

主の一言でピタリと再び静寂が戻って来る。

 

「さて、貴様らを呼び寄せたのはこの者の紹介だ。最初に一番大切な事だけ言っておこう。何があってもこの者を守れ。お前たちの命よりこの者の方が価値がある。」

 

「わ、我が君それはどういう……?」

 

「ハリー・ポッターは死んだ。こいつは俺様だ。この体の中には我が魂の一部が入っている。この体は最早我が物、つまり俺様だ。頭の悪い貴様らが理解する必要はない。だが、こいつの言葉は俺様の言葉と同じ価値があるということは理解しろ。」

 

「そ、それはその小僧が我らの上ということですか?」

 

クルーシオ(苦しめ)!」

 

突然の磔の呪文。疑問を呈した死喰い人(デスイーター)が苦痛で叫びながらのたうつ。放ったのはハリー・ポッターだ。

 

「俺様の言葉が聞こえなかったのか? 本体ではないとはいえ俺様もヴォルデモート卿。疑問に思うことも許さん。」

 

声はまだ少年の声だというのに、それを聞いた瞬間に魂が目の前の小僧が主と同質のものだと理解させられた。膝まづくしか死喰い人(デスイーター)に選択肢は無かった。

 

「さて、次だ。魔法省には警戒を怠るな。あそこはかつての砂で出来た城ではない。難敵へと生まれ変わった。

そして相手が敵対せぬ限り女は殺すな。服従も磔も無しだ。

最後に、次の目標は……ダンブルドアだ。」

 

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ロンドンへと向かう帰りの蒸気機関車では卒業した女子たちがリリに慰められていた。

今までの平和な世の中ではない。これで会えるのも触れ合えるのも本当に最後になるかもしれないのだ。

 

「リリちゃん……」

「リリ! リリ!」

 

一人一人をしっかりと触れ合う。それぞれの希望に合わせて抱きしめ、撫で、キスをする。

何者にも侵されないようにと気持ちを込める。

キングス・クロス駅に到着するまで時間の限り少女たちはリリを求めた。そしてリリはその全てに応えていった。

 

キングス・クロス駅 九と四分の三番線に降り立ったリリとハーレム一行。

 

「さーて。帰ったらクラウディアの事もしっかり愛してあげるわ!」

 

ハーレムの一員のクラウディアも今年で卒業だ。

先程の場は友人たちに譲ったが家に帰れば自分を優先してくれると約束してもらっていた。

 

「ふふふ。お手柔らかにね~。ゴメンね~みんな。」

 

正妻や他のハーレムに申し訳なさそうにする。

それに対してハーマイオニー達は

 

「良いのよ。来年からはホグワーツに来れないんだから。」

「そうそう。逆の立場ならリリを攫ってどっかに逃げちゃうかもしれないし。」

 

「ありがと~。あ、でも私がリリちゃんを篭絡したらわからないわよ~?」

 

「あら、ちょっと楽しみ。さぁ、帰りましょう!」

 

出迎えてくれたリリの両母とメイドたちに向かって走っていった。

世の中は暗い闇が迫っていたが、この一族とその周りはそれが全く無意味な物であった。




5章終了!

ロンがハリーや色々知っていたのは不死鳥の騎士団所属の父や兄たちに必死に聞いたため。そして秘密と言われたが感情を抑えきれなかった。

ホグワーツ内の女子は結束が強いが男子は色々とギスギス。
ドラコが一番立ち位置としては微妙で大変なのかも。

魔法省は新生。そして別の勢力も。

ダンブルドアは皆の前では勇気をもって闇に立ち向かうリーダーだけど、一人になると考えすぎてしまって一人で抱え込んでしまっている。

そしてお辞儀サイド
お辞儀inハリーがお辞儀の右腕として君臨。というか実質お辞儀が二人に増えたので
死喰い人のストレスがヤバい。

そしてリンリーサイドはいつもと同じ。

次回予告!

宣戦布告。

変人出現。

悩む銀髪美少女。

闇と光の攻防。

そして女。

次回 6章 プリンセスになって出直せ

それでは次回お楽しみに。

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