【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

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もうすぐ10月ですね。
このペースならこの物語は今年中には完結できるかなと思っています。

それでは61話どうぞ。


61. ハーレム六年目

魔法省の大臣室。

そこに備え付けられた高級な椅子に闇の帝王はゆったりと腰を下ろす。

周りには誰もいない。この場所に最も相応しくない敵の首魁がいるというのに警備や闇祓いは誰一人やってこない。

今や魔法省は完全に闇の手に落ちた。

抵抗する者は全て死ぬか服従させられた。

 

ドラコ・マルフォイを発端とする一連の戦いは闇の陣営にとっても、ヴォルデモート卿にとっても確かに重要ではあった。

相手が罠を張って待っているが、それは逆に必ず敵がそこにいるということ。

そこにはダンブルドアもいるはず。

戦力を削ぐには、邪魔者を殺すには絶好の機会だった。

こちらも十分な戦力を投入する。事実スパイのスネイプにはそう伝えていたし、それだけの戦力は用意した。

それでも真実の全てをスネイプには伝えていなかった。疑い深い闇の帝王は完全にスネイプの事を信用していなかったのだ。

更にワームテールを参考に小動物の動物もどき(アニメーガス)を別に送り込んでいた。結果スネイプの裏切りが発覚し、スネイプにはより正確でない情報が流されていたのだ。

 

そして戦いの本当の狙いは敵の殲滅ではない。

真の狙いはハリー・ポッターの、予想外の分霊箱(ホークラックス)の破壊にあった。

敵の数減らしも、ダンブルドアの殺害もあくまで副次的な物。

分霊箱(ホークラックス)とは言え己自身。少ない下僕どもで十分に働いてくれた。その間に自分は別動隊を率いてこうして魔法省を落とせた。

 

確かに向こう側に費やした戦力も少なくない。

それでも闇の帝王は最終的な勝利を確信していた。

騎士団は痛手、ダンブルドアは瀕死、魔法省という政府機関は掌握済み。

こちらの損害はマグルの駒が全部と、巨人族といくらかの下僕。

分霊箱(ホークラックス)が自身を入れて7つになって力を高めたことを考えればむしろプラスである。

 

「さて、チェックだな。」

 

チェックメイト(詰み)まであと一手。後はホグワーツに集まるであろう残党の処理。

そうすれば英国魔法界はこの手に落ちる。いずれはヨーロッパ、そして世界だ。

だが、その前にやらなければならないこともある。支配するに必要なこと。

永遠の命と永遠の支配を両立するための力。

 

「必ず手に入れるぞ。リンリーの力。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「さぁ、急いで! ポンフリー! こちらへ!」

 

ホグワーツ学び舎がまるで野戦病院の様だった。いや、実際野戦病院と言うべきか。

この日の作戦のために聖マンゴ魔法疾患傷害病院から集められた癒者(ヒーラー)が忙しなく動き続けている。

魔法薬も、魔法具も用意していた分がみるみる減っていく。

 

闇の勢力との戦いから帰還した騎士団や闇祓いで無事な者は一人もいない。

裂傷、打撲に骨折、火傷そして呪い。

皆どこかしら負傷していた。

 

そんな中で一際酷い有様なのが、ダンブルドアだ。

ハリー(帝王の分身)からの呪いから仲間を守るため身を挺して庇った結果である。

呼吸は弱く体温も異常なほど高い。体中におぞましい色をした斑点ができている。

一番ひどいのは両腕であった。炭のように真っ黒な塊に成り果てていた。

この有様で生きているのはダンブルドアの高い魔力があるからこそである。

並みの魔法使いなら3回死んでもおつりがくるぐらいの凶悪な呪いがダンブルドアを蝕んでいた。

 

ポンフリーを中心とした癒者(ヒーラー)、呪いに詳しいスネイプや魔法薬学のスラグホーンなども処置に当たる。

 

「夜明けまで保てばいいが……。」

 

誰かがそう呟いた。事実1秒ごとにダンブルドアの命は減り続けていた。精鋭たちがいくら治癒をしようとも限度がある。

 

そこに不思議な歌が響き渡る。不安を和らげるような不思議な音色だ。

出所を見れば不死鳥が舞っている。

 

「フォークス……。」

 

意識をわずかに取り戻したダンブルドアが呟く。そこに不死鳥が舞い降り主の痛ましい姿に涙する。

その涙がダンブルドアに触れると今まで苦しめていた呪いの勢いが止まった。

 

「これは……! 不死鳥の涙! これならば!」

 

その隙を見逃さずスネイプが全力で呪いの解呪を行う。

癒者(ヒーラー)たちも手が空いたものから順番に交代しながら夜通しダンブルドアの治療が続けられた。

 

 

長い夜が明けた。

どうにか負傷者の中から一人も死者を出すことなく乗り切れた。

ダンブルドアも容体は安定した。それでも今までのように戦うことはおろか、動くことさえ困難になるだろう。それに寿命も後一年あればいい方だろう。

 

「治療に携わってくれた全てに癒者(ヒーラー)に魔法大臣として、そして一人の魔法使いとして最大の感謝を。」

 

自身も決して軽傷ではなかった魔法大臣のスクリムジョールが礼を言う。

このまま終われば気分が良いまま朝食にありつけるだろう。

それでも自らの役割としてハッキリ言わねばならぬときがある。

 

「今回の作戦は敵の多くを捕縛した。打倒した! 帝王の分け身であるハリー・ポッターも滅んだ! 結果を見れば我々の勝利だ。だが! 心苦しいが言わねばならぬ!

魔法省が闇の帝王の手に落ちた。」

 

知っていた者も知らなかった者もそのことに言葉を失う。

 

「我々は追い詰められているといっていいだろう。イギリス魔法界を司る魔法省は敵の手に落ちた。戦力は低下している。最大最強の魔法使いは瀕死だ。そして闇の帝王は健在。

最悪だ。

だが! それでも我々は戦う! この魔法界をあんな愚か者の好きなようにはさせん!

断じてだ!」

 

スクリムジョールの啖呵に賛同する者の雄叫びが重なる。

だが、それでも心の中の弱音を隠しきれていなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

イギリス魔法界はどん底だった。

去年の闇の帝王の宣戦布告など比較にならない。

それもあんな発表がされれば仕方がかもしれない。

 

魔法省直々の発表と言うことで日刊預言者新聞や様々な者が魔法省に集められていた。

 

「新しい魔法大臣のご登場です。」

 

皆が一斉に疑問に思う。スクリムジョールはまだ生きているし、前任ファッジと違いまともだ。それなのになぜ?

 

その場にコッ、コッ、と階段を下りる靴音がやけに不気味に響いてきた。

段々と場が静まり始めた。

現れたのは闇の帝王だった。疑問は恐怖に代わり絶望がやって来た。

 

「さて、魔法省は俺様の手に落ちた。この帝王がイギリス魔法界を支配した。前に言ったことをもう一度言おう。降伏し俺様に従え。抵抗するならば殺す。」

 

それだけ言ってヴォルデモートは再び戻っていった。

後に残った者たちに死喰い人(デスイーター)達がこの事実を家族、一族、友人、知人全てに伝えるようにと、闇の帝王に従うか、抵抗して死ぬかどちらかを1週間の間に選べと言って消えた。

突然の連続にしばらくその場から誰も動くことができずにいた。

 

悪い情報は広がるのが速い。あっという間にイギリス全土に混乱と恐怖が伝播した。

まだスクリムジョールも生きているし、不死鳥の騎士団も戦力は十分なのにもかかわらず人々はもう敗北を受け入れ始めていた。

それどころか生き残ることを目的に少しでも闇の帝王に敵対的な言動をしただけで売り渡そうとする臆病者まで現れ始めた。

 

帝王の定めた期限の1週間が過ぎた。

服従を決めた一族は当主が直々に出向いて帝王に跪いた。

そして最期まで抵抗する覚悟を持った誇り高い魔法使いたちはホグワーツに集まっていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツも未だかつてない騒動であった。

いつの間にか教師を含む騎士団たちと闇の陣営の大きな戦いがあった。

その戦いが終わって一夜明けると世界が一変したといってもいい。

ダンブルドアは瀕死、魔法省は闇の帝王の手に。そして自分たちのいる場が最後の砦だという。

 

何が何だか分からない。何をしたらいいかもわからない。

男子生徒は戦うと意気込んだり、逃げようとしたり、闇の帝王に与するためにホグワーツから去ったり、親に連れ戻されたりと様々だ。

抵抗する意志を持った者たちはスクリムジョールがまとめているが、生徒はマクゴナガルが校長代理としてどうにかしようとしているがやはりダンブルドア程の求心力はない。

何時何かのきっかけで崩壊するかもしれない状況だ。

 

逆に女子生徒は異常なほど冷静で平静だった。

それはひとえにリリアン・リンリーがいるからだ。

彼女はこの状況に対して何の不安も抱いていない。ならば彼女の愛を受ける自分たちが不安になってはいけない。そう言う思いから負の感情を隠そうとしているのだ。

特にハーレムや近いものほどリリの愛に包まれて不安は薄くなっている。

 

 

そんなホグワーツにドローレス・アンブリッジがやって来た。

そして生徒や抵抗者を集めて言う。

 

「皆さん、大丈夫です。ここは安心です。」

 

何の根拠もない、ただ不安をぬぐうために言った出まかせにしか聞こえない。

そんな安っぽい言葉ではもはやここにいる魔法使いは誰一人納得などできない。

誰かがそんな無責任なアンブリッジに文句を言おうとした時。

音一つなくなった。

 

魅力的(恐ろしい)な存在がやって来る。

その存在がいるこの場の空気は何よりも幸福に満ちていた(息をするのも恐ろしい)

その存在を前にしては闇の帝王も霞む、闇の帝王などもはやどうでもよい。

 

ロザリンド・リンリーがそこにはいた。

 

「ママ!? なんで?」

 

リリの言葉で目の前にいる女神(悪魔)がリンリー家の者だと理解した。

 

 

「ん~とな。とりあえずこれ以上あのバカが何かすると世界中の女に害が及ぶってドローレスが言うんで出てきただけさ。ま、これだけは言っておくか。

この馬鹿げた戦いはすぐに終わるさ。だから安心しな。」

 

この言葉だけで女は勝利を確信していた。負けるわけが無いと、負けることなど許されないと。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

不死鳥の騎士団や魔法省の生き残りたちは動き出した。

戦争はすぐ目の前に迫っている。まずはホグワーツの防衛の固めと情報収集、それに仲間集めだ。

 

そんな事でいつもの様に夏休みだからと帰ることもせずホグワーツに残り続けることになった生徒たち。

当然リリもそこに含まれる。

 

「大変みたいだけど、来年で私たちも卒業だからたっぷりホグワーツで楽しみましょう。」

 

「ええ。あれこれ考えても始まらないし、いつもと違った休暇を楽しみましょう。」

 

「そうですそうです! お姉さまは後1年で卒業! 今年は私をいっぱい可愛がってください!」

 

世間とは違っていつものリリ達。

大変な世の中を無視して甘い空気の中でリリ達の6年目は終了した。




6章終了です!

残りは7章だけ。
イギリス魔法界は厳しい状態ですがこれからどうなるのか?
ロザリンドやアンブリッジは何をするのか?
そしてリリはどうなるのか?

次回予告!

始まる戦争。

死が迫る中、懸命に立ち向かう。

不和 殲滅 闘争 そして愛

リリは生き残ることができるのか!?

「娘には指一本触れさせん!」

※次回予告が正しいとは限りません。

ついでに今後の展開についてアンケートを作ったのでご協力お願いします。

最終章の展開について

  • 戦争はそこそこ さっさと百合出せ
  • 戦争描写もしっかりと
  • キングクリムゾン! 戦争は吹き飛ばした!
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