【完結】魔法界に百合の花が咲く   作:藍多

68 / 77
原作を知らなくても読んでいて引き込まれる二次小説は凄いですよね。
原作を知った後でもう一度読むと更に驚かされる。

逆に原作が多くの人に知れ渡っていると面白いの難易度が高くなる気がする。

それでは64話どうぞ。


64. 愛とは呪い

どうしてこうなった。

 

それがイギリス魔法界を恐怖に陥れた闇の帝王ヴォルデモート卿の率直な思いだった。

復活してからは何もかも順調だった。

予言による宿敵(ハリー・ポッター)も取り込んだ。運命の予言も手に入れた。

目障りだった不死鳥の騎士団は旗頭のダンブルドアを失ったも同然だ。

魔法省も掌握した。

後は生き残りを葬ればイギリスは我が手の中のはずだったのだ。

 

それが……いつの間にこんなことに。

 

なぜだ? いつだ? いつからこんなことになっていた?

思い返しても分からない。違和感こそあれ明確な答えにはたどり着けない。

ヴォルデモートは頭の中でこれまでとこれからについて考えを巡らす。

今の事態を少しでも打開するために考え続ける。

 

「いたぞ!」

最終目標(ヴォルデモート)は後回しだ! 少しでも数を減らせ!」

 

帝王の必死の考えを中断するように追撃部隊が現れる。

そう、追撃だ。

 

今……ヴォルデモートは逃げていた。

全力で、必死で、無様で。

かつてない屈辱を感じながらそれでも逃げていた。

 

二度目の布告の後始まった戦争(虐殺)で数時間もしないうちに、大小問わず拠点と呼べるものは制圧された。

巨人や吸魂鬼(ディメンター)も気づけば根絶やしにされたようだった。

残った安息の地は側近と呼べる者たちで固めた魔法省だけだった。

そこも今や大人数による大量破壊魔法の一清掃射で瓦礫と化している。

闇の帝王は命からがら逃げるしかなかった。

 

数日前までは我が城としていた魔法省や数多の闇の拠点は既に無く。

今まで追い立てていたマグル生まれのように森の中を隠れるように進むしかない。

周りにいるのは長年の部下、仮にも優秀と呼べる純血の者たち。

 

「ごぁっ! ……我が君万歳……。」

「ロドルファス!」

 

だが、それも一人一人減っていっていた。

 

純血は低俗なマグルの血が流れる下賤な者よりは優秀だったはずだ。

それなのにどうして容易く蹴散らされる?

なぜ、ここまでの速さで追い詰められているのだ?

敵は数が多いとはいえ不死鳥の騎士団の方がよっぽど手強かったというのに!

帝王だけでなく死喰い人(デスイーター)も、誰もその疑問に答えることは出来なかった。

 

 

その理由の答えは簡単だ。士気の差である。

極一部を除いて恐怖や服従の呪文(インペリオ)で従わせた者たちと統一された目的のために集まり、訓練を数年間この時のためにし続けた集団では気迫も練度も段違いである。

更には集団による戦術・戦略と言うものを魔法使いは熟知していなかったのだ。

古臭い決闘やただ単純な戦闘程度では戦争に勝てるはずもない。

 

索敵は宣戦布告前にすでに終えている。

世界連合だけが使える感知魔法具もイギリス全土に設置済みだ。

戦力が少ない拠点には数で一気制圧。

強敵は複数で、不意打ちで、罠で、確実に消していく。

ヴォルデモートなどの自分たちより強い者が前線に現れれば迷わず逃走を決める。

そしてその繰り返しを膨大な構成員で行う。

 

闇の帝王と言う強大な個に支えられていただけで一部を除き協力することを覚えていなかった死喰い人(デスイーター)はあっけなく数を減らしていった。

戦う前から闇の陣営は負けていたのだ。

今やイギリスを覆っていた闇はわずかになっている。

 

 

こんな負け戦が決まったような状況でもヴォルデモートは諦めていなかった。

残りの戦力でもホグワーツならば落とせると思っていた。

そしてホグワーツならばどのような攻撃も守り切れると。

ホグワーツに対して妄信していたのだ。

しかも情報によればホグワーツにはロザリンド・リンリーがいる。

あの力を我が物に出来れば……。

そして敵の結束も裏にはリンリーの力がある。そう確信していた。

あれを攻略すれば全てがこちらに向く!

 

敵から姿を隠しながらヴォルデモートとその狂信者は進む。

 

その先に死が待っていると薄々感じながらも歩みを止めることは最早できなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

もちろんその移動も目的もすでに筒抜けである。

ホグワーツに設けられたイギリス奪還作戦本部では様々な国の魔法使いたちが忙しそうに動き回っている。

その中心には一人の女の姿があった。

 

「アンブリッジ殿! 敵本隊は三日後の深夜にはホグワーツ付近に到着すると推測されます。」

 

「結構。作戦は予定通りに。開始と同時に一気に殲滅させます。」

 

「了解!」

 

今もこうして動きを読んで作戦が進められている。

指示統制のトップはドローレス・アンブリッジだ。

この集まりを作った要因こそロザリンド・リンリーだが、それを纏め機能させたのはアンブリッジの手腕だ。

 

作戦本部には正式なイギリス魔法省の人員としてスクリムジョールや役員たち、そして不死鳥の騎士団員も集まっていた。

本来、イギリスのトップとして敵を打倒す指揮する立場にいるはずだったスクリムジョールや不死鳥の騎士団は見ていることしかできない。

その間にも次々に一般人の救助や敵の捕縛、無力化の情報が舞い込んでくる。

 

「さて……。あらかた片付きました。後はヴォルデモートのいる本隊だけですね。

不死鳥の騎士団や闇祓い達は城の防衛をお願いします。打ち漏らしがあった場合に仕留めてください。」

 

「我々は用済みだと?」

 

「いえいえ。適材適所です。連携がとれぬ部隊など邪魔でしょう? それならば別の役割を与えるだけです。個々人の能力であればそちらの方が上ですから。」

 

それだけ言うとアンブリッジは次のため別の場所に移動していった。

残された騎士団たちはもう自分たちではどうにもならない悔しさを感じていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

推測通りの三日後。

ヴォルデモートはホグワーツ内の禁じられた森に身を潜ませていた。

忍び込んで敵の本部拠点の襲撃とロザリンド・リンリーの確保をして離脱。

正面切って戦うこともせず臆病者のように振舞うのは業腹だが気持ちを切り替える。

 

「お前らは陽動だ。手当たり次第に暴れて気を引け。」

 

一部の配下に命令を出す。

残り僅かになったベラトリックスなどの部下と共に突撃するまであと数秒という瞬間。

彼らの周囲が闇で満ちた。

星や月の光も城から漏れる光も何もかも消えた。

何のことは無い対象の周囲の灯りを消し、暗闇を創り出す魔法だ。

学生でもできる大したことの無い魔法である。

即座に解除し臨戦態勢を整えようとする。

 

だが、その数瞬の隙が命取りになった。

 

光を取り戻した彼らに四方から数メートルはある炎の壁が迫りつつあった。

追加で頭上にはクィディッチコート程度はある謎の塊が降ってくる。

 

「う、うぁああああああ!」

「助けて助けて! あつぃぃぃ!」

ボンバーダ・マキシマ(完全粉砕せよ)! ボンバーダ(砕けよ)! ボンバーダぁああああああ(砕けろよぉおおおおお)!」

 

迫る炎は悪霊の火、容易く消すことは叶わない。

頭上の大質量は魔法的な保護をかけられた金属に巨人やドラゴンといった魔法耐性を持つ生物の組織でコーティングしたもので破壊は難しい。

その場に立ち止まれば圧死。逃げれば焼死。

姿くらましも阻害されたこの場を逃れる方法は塊が落ちる前に炎の壁を飛び越えるだけだ。

だが、魔法使いが空を飛ぶ方法は実のところ少ない。

箒を使うか空を飛べる魔法生物にまたがる程度で他の手段は低速な浮遊魔法程度だ。

 

「おのれぇええええ!」

 

唯一の例外はヴォルデモートが編み出したオリジナルの飛行魔法だ。

これを配下全員に習得させていれば戦況はまだましになっていただろう。

ヴォルデモートは自らだけを特別視していたためそんな事をする気も、また時間も無かった。

結果として今の攻撃を逃れられたのは闇の帝王ただ一人であった。

彼が降り立った場所にすぐに敵が現れた。

数は……魔法使いの戦いとしてはあり得ない規模だ。

たった一人を殺すために百を超える人数を集めるなど狂気の沙汰だ。もちろん控えもまだまだいる。総数で言えばいくらになるだろうか。

 

「ふ、ふふふ。ははははははは!」

 

その光景に闇の帝王は笑った。

 

「滑稽だな! この帝王を殺すのに臆病な貴様らはこれだけの数を用意せねばならんのだ! 貴様らの中に純血はどれだけいる!? 汚らしいマグルの血が入った下賤な者どもにはこの帝王は敗れはせん! さぁ、打ち滅ぼしてみよ!」

 

「総員! 戦闘開始!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

闇の帝王はすさまじかった。数の差を感じさせない戦いを繰り広げた。

まさに一騎当千。まさに帝王。その力は後世の歴史に必ず語り継がれるだろう。

それでも数の差は埋めがたいものがあった。それが連携を取って来るのだ。10や20程度ならば打ち破ることもできたであろうが、限界は誰にでもある。

ヴォルデモートは焼け残った森の中で地面に横たわっていた。

敵は今も止めを刺そうと探しているだろう。

 

パキリと枝を踏む音が聞こえた。

自分を殺す者がやって来たのだろう。

だが、己には分霊箱(ホークラックス)がある。この体が滅んでもまだ機会がある。

不死なる帝王は有限の生を持つ愚か者とは違う!

 

音の方を見るとそこに一人の少女が立っていた。

 

「……誰だ? お前は……。」

 

「ハリー・ポッター。」

 

驚愕した。ハリー・ポッターは既に魂を喰われて死んでいるはず。

その魂も捨て去った。そもそもハリー・ポッターは生き残った男の子だ。女ではない。

何がどうなっている?

 

「あなたには愛を教えてあげる。そのために来たの。」

 

「愛……だと? はっ、ダンブルドアの様な事を言う。不愉快だ! アバダ・ケダブラ(息絶えよ)!」

 

この体に残った最後の力で死を放つ。謎の少女は避けるそぶりも見せずそのまま命中し……死ななかった。

それどころか死が跳ね返ってきた。

 

10年前の再現だ。砕け散る帝王の肉体。

黒い靄の様なゴーストにも満たないヴォルデモートの魂の残骸がそこには残っていた。

逃げようとするそれを少女は抱きしめるようにする。するとそれは吸い込まれるように少女の身体に溶けていった。

 

「これであなたは私。そうすれば一緒にあの方からの愛がおくられるわ。」

 

 

それから数十分後。

少女からの連絡で状況を確認したアンブリッジは帝王の敗北を宣言。

これでイギリス魔法界は闇から解放された。

戦争開始からわずか1週間後の事であった。




戦争終了。

戦いは数。しかも相手はこの時のためだけに訓練してきた特殊部隊。
仕込みもバッチリ。索敵、傍受、情報操作、隠蔽、連携何もかもお辞儀側は買っている要素が無い。……あ! 純血の人数は勝ってるか。
最初から勝率などゼロだった。

それでもお辞儀は諦めない。ホグワーツの結界ならどうにかなるなんて思いこもうとしている。お辞儀は結構ホグワーツに対して妄信している気がする。

ちなみにお辞儀が手に入れようとしていたリンリーの力ですが、極論言ってみれば魅了の力を解析して誰も彼も自分を崇拝できるようになればいいなんて考えてました。
ロザリンドとの協定も世界を支配するまで女に手を出さない代わりに世界を支配したら協力しろと言うもの。ロザリンドも世界征服なんて無理だと思ってたけどとりあえず女のために協定は結んでいた。
裏のリンリーの設定としてお辞儀の望みは叶わなかったとだけ言っておきましょう。

そんでもって雑に残りの死喰い人の処分。
別に闇の魔法や巨人の死体の再利用は悪ではないよね、ってことで潰れてもらった。
もちろんこれも事前準備と大人数でやり遂げました。

そしてお辞儀たった一人の最終決戦。
数には勝てなかったよ……。

止めはハリー(女)
ハリーの魂はお辞儀に食われましたが、女体化の時にお辞儀の魂とまとめてリンリーの呪いでいじくられた。最早お辞儀でもハリーでもない別人と考えていい。
それでも残っていたリリーの加護と追加でリンリーの加護でアバダケダブラを跳ね返す。
原作最終と違って分霊箱が残っているので前と同じく肉体だけ滅ぶお辞儀。
逃げる魂は食われたハリーの時と逆にハリーに吸収。

これにて戦争終了! 次回は戦後処理、その後はひたすら卒業までイチャコラだ!

それでは次回お楽しみに。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。