ハーメルンでもある原作、タイプの小説がランキングに乗るとそれに続くように
次々と同じ原作やタイプが発生する。
その中でも面白いのを見つけるのが結構好きです。
それでは72話どうぞ。
1998年の7月。今年もまた多くの生徒がホグワーツから巣立っていく。
その記念すべき日は雲一つない晴天であった。まるで天も卒業生の旅立ちを祝うかのようだ。
それに反して在校生女子の心は曇りを越して嵐の模様だ。
今年はただの学生の卒業ではない。ホグワーツにとって一つの節目になる。
リリアン・リンリーが卒業するのだから。
ホグワーツに残る女子たちは悲しみを押し殺し、心の涙を満面の笑みで隠し盛大にリリの卒業を祝うことに決めた。
祝うからには過去最高に、男なんて言う存在は忘れて朝から旅立ちの朝まで悔いのないように楽しまなければ。少しでも悔いが残ればリリも悲しむに違いない。そんな事だけは絶対に許せない。
毎年の卒業パーティーは男女共同で大広間で行うものだが、今年はそうはなりそうにない。
リリとの最後の時間は女子だけで集まりたい。今までは寮で別れていたが、その垣根が無い今全員で集まるには広い場所が必要だ。
そこでホグワーツでも1、2を争う便利な存在、必要の部屋の出番だ。
「女の子皆でどんなことでも楽しむ部屋……。」
リリが代表として念じながら8階の廊下を往復する。
3往復すると即座に石壁が変化し扉が現れる。
リリが望んだのはホグワーツの女子全員と楽しく長く過ごせる場所。
現れたのはパーティーに必要なものは何でもそろった部屋だ。
料理にデザート。好きな音楽を自動で演奏してくれる数多の種類の楽器に、望んだように変わる装飾やイルミネーション。服もドレスから民族衣装まで選り取り見取りの品揃え。
部屋の大きさは大広間を優に超え、これまた望んだ椅子や座布団にソファー更にはベッドまで自由自在に顕現させることができる。
特筆すべきなのは以前のパドマが望んだ時以上に時間の流れが遅いことだ。
おまけに男はこの部屋に入ることはおろか近づくこともできない効果まで付属している。これで邪悪な闇の魔法使いがホグワーツを襲っても女子は大丈夫だ。
最後の宴の時間が近づくにつれ続々と女子たちが集まりだした。
それに対して残った男と教師たちは大広間でこうなるのもこれが最後かと少しホッとしつつも寂しんでいたりした。
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「良し! 皆集まったわね! グラスは持ったかしら!?
……私は明日でこのホグワーツを去るわ。確かに皆と今までのように会えなくなるのは寂しい……。でもね! 最後にそんな湿っぽい感じで卒業なんか嫌よ!
だから最後の最後まで楽しみましょう! 乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
リリの号令でホグワーツでの最後の宴が始まった。
皆料理にダンスにゲームに更には部屋の上部を更に拡大し、即席の観覧席まで作ってクィディッチまでして大いに楽しむ。
最も一番のイベントは最後のリリとの触れ合う場だ。
「はぁい、マリーどうしたい?」
「リリ先輩! 一緒に踊っていただけますか?」
「喜んで。」
リリはホグワーツ在校の女子一人一人とじっくりと最後の交流を深めた。
女子の望みは一人一人違う。一緒に食事するという希望だけでも食べさせ合いっこや一方的にリリから餌付けされるようにされたいと欲望は千差万別だ。
他には踊ったり、まったりとただ二人で過ごす、ひたすらに抱きしめて欲しい、手加減なしの魅了でキスが良いなどなど……。女子一人一人に対して望んだことをリリは全力で応えていった。
今日で最後なのだからと誰一人として遠慮をしない。
一緒にいた時間が短い下級生は少しでも思い出が残るように。
一番共にいる時間が長かった同級生はこれからもリリのことを思い続けるようにと最後の最後までこの宴を心の底から楽しんでいた。
その中での筆頭は勿論、ただ一人残されることになるジニー・ウィーズリーである。
最後に残った彼女が何をリリにおねだりするのか全員が興味を持って見守る。
「お姉さま……。愛しているって言ってください。全身全霊を込めて想いの全てを込めておねがいします。」
「ええ、良くってよ。『
リンリーの
その言葉をまるで全て自らの血肉に変えるように全身で感じているジニー。
「私も愛しています。卒業おめでとうございます。」
ジニーは抑えきれなかった涙を流しながらリリに抱き着く。
その勢いで周りの女子も次々とリリに抱き着いていった。
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いくら時間が延ばされても時間が止まったわけではない。楽しい時間はあっという間。
喋って食べて歌って踊って乱れて楽しんで。
いつの間にか朝日が昇ってリリアン・リンリーがホグワーツを去る日がやって来てしまった。
ハーレムと一緒にホグワーツ城を出る。
目にするのは最後になるかもしれないと、人生の半分近くを過ごした千年以上続く立派な城を見上げる。
ハーレムたちもリリと一緒にホグワーツ城を見上げる。
「楽しかったわ……。本当に色々あったわ。ハーマイオニー、パーバティ、パドマ、クラウディア、ダフネ、ジニー。皆と出会って一緒の時間を過ごしたのはここだった。ありがとう、ホグワーツ。」
リリだけでなくハーレムたちも様々な思いを感じている。そこには良い感情しかなかった。
そこに校長のミネルバ・マクゴナガルがやって来た。
「改めて卒業おめでとうございます、ミス・リンリー。」
「ありがとうございます。マクゴナガル先生。」
「あなたが入学してから色々ありましたが……。お母上よりは普通で正直ほっとしました。」
「ふふ、ママはやっぱり常識破りでしたか?」
「ええ。レイラがいなければ魔法界は終わっていたかもしれませんね……。
ミス・グレンジャー。解っているとは思いますが、リンリー家は非常に特殊です。
だから次のリンリーの母になるあなたはもっとしっかりと手綱を握っておきなさい!
あなた達もですよ!」
「「「「「はい!」」」」」
「よろしい。それではあなた達の未来に幸あれ。」
マクゴナガルは笑顔でリリ達の未来を祝福した。
リリ達は最後にもう一度目にしっかりとホグワーツ城の威容を焼き付ける。
そしてリリアン・リンリーはホグワーツを巣立っていった。
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そして数カ月の時が経った。
ハーレムメンバーは学生のジニー以外はそれぞれ仕事やメイド仕事に忙しくしている。
ハーマイオニーは魔法省に就職した。
大臣の補佐をしているアンブリッジに師事して魔法界を根本から改革しようとしているらしい。ゆくゆくはマグル出身初の魔法大臣になるかもしれないと噂がすでにあるらしい。
パーバティは慣れない家事や色々な事務作業で日々翻弄されている。それでも持ち前の行動力や明るさで屋敷全体を盛り上げている。先輩メイドたちにも好評だ。
その妹のパドマは魔法薬の研究をすることになったようだ。それ以外にも色んな魔法具、特にキャロルの能力を活かせないかと研究中のようだ。やりがいがあって充実した顔をしている。
クラウディアはすっかりリンリー邸を支えるメイドの一人として成長していた。
戦闘力も上昇中で一度キャロルとの模擬戦を見た屋敷の全員が引くぐらいであった。
ちなみに甘やかしと女としての色気もマシマシであった。
ダフネはメイドをする選択をしていた。その傍らにかつての実家やドラコにも協力してもらって旧聖28一族が保有する情報や財産をまとめ上げ一つの財団として成立させていた。
その運営とハーマイオニー達魔法省組と合わさって少しづつだが魔法界は発展していった。
ジニーだけは泣く泣く一人でホグワーツで勉強中だ。流石にかわいそうなので休日はクラウディアに迎えに行ってもらってリンリー邸で過ごしている。
そんな忙しくも充実した時間も落ち着いてきた日。
「うぷっ!?」
全員で朝食を楽しんでいたら急にハーマイオニーがトイレに駆け込んでいった。
「ハーマイオニー!? 大丈夫!?」
すぐに魔法薬を飲ますが体調は優れないままだ。
心配でどうにかなりそうなリリやハーレムとは逆に大人たちは笑顔だ。
「心配すんな。ハーミーちゃんの中に新しいリンリーがいるのさ。私もそろそろ引退かぁ……。」
「えっ!? ママ? ええ! それって!」
リリは恐る恐るハーマイオニーのお腹をさする。まだそこに命が存在しているかは分からない。それでも経験者たちが言うのだからそうなのだろう。
「ハーマイオニー!」
「リリ! 私頑張るね。」
二人は抱きしめ合う。周りはそれを祝福していた。
それをきっかけにリリとハーマイオニーの結婚式を行うことになった。
リンリー家はその性質からあまり結婚式をする文化はないがお祝いも兼ねてということで決まった。
身内だけでやることになり、全員がドレス姿で過去最高に目出度いパーティーになったのは言うまでもなかった。
リリ達の卒業回でした。
必要の部屋に頑張ってもらいました。
マクゴナガル先生はホッとしつつも心の底から祝福して旅立ちを見送りました。
ハーレムメンバーたちはリンリーバフでそれぞれ就職先でいい結果しか残していません。
そしてハーマイオニー妊娠。リリが妊娠する世界線もあったでしょうがこうなりました。
それでは次回最終回! お楽しみに。