第3の人生は冒険者   作:紫蒼慧悟

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転生

突然だが質問だ。"転生"という言葉をご存じだろうか?

因みに自分は2回程経験した。え?嘘をつけ?まあ、信じられないのもわかる。自分自身でも信じ切れていないのだから。

まあまあ。落ち着いて話を聞いてくれ。聞くだけ損かもしれないが、もしかしたら聞く価値のある話かもしれないぜ?

 

一度目の人生は平凡。これに尽きる。

平和な世界で平和な日常で、時に笑い、時に泣き。それだけの自由が保障されたぬるま湯のような優しくも残酷な世界。

争いごとはあったが彼の周囲では起きていなかった。偽りの平和を信じ込まされ、享受していた哀れな男。

だが、唐突にもその人生は幕を閉じる。25という若さで男はこの世を去った。

ここで男の物語は終わる。そのはずだった。そうならなければいけなかったのに、男は何故か転生してしまった。

天上の神々にでも気に入られたのか、前世から続く呪いなのか、それとも天文学的な確率での偶然か……

まあ、理由はどうであれ彼は転生してしまったのだ。いくら喚こうとその事実だけは変わらない。

 

彼の二度目の人生は剣聖。

ぬるま湯から無理やり引き上げられたような違和感。彼にとっては二度目の人生は地獄に見えただろう。

彼が生まれ落ちた世界は、前の世界風に言うなら"剣と魔法のファンタジー、上級者向け"といったところか……

ある王国貴族の中でも異端と蔑まれていた下級貴族の家があった。

その家に生まれた彼は、幼少期から過酷なほどの剣の修練を強要された。

兄と妹も同じ内容をやっていたが、ある程度時が経つとそれぞれ別な内容の修練を課された。

掌には肉刺が出来、さらにそれが潰れ血まみれになる。だが、それでも修練は緩まない。

弱音を吐こうものなら厳しい罰が待っていた。

三人ともそれがわかっていたので一切の弱音を吐かなかった。

その御蔭か、はたまた天性の才能なのか、彼は剣の扱いが上手かった。

数えで10の頃には最下級とはいえ竜種を狩って見せたのだから。

それからはいろいろとあった。

兄が討伐の最中に亡くなり、兄の婚約者と結婚して当主とならなければならなくなったり、妹が夜這いしてきて兄妹の一線を軽々と飛び越えてこようとしたり、王都に行ったら上級の竜種に襲われていたので首を切り落として瞬殺したり。

それから王に気に入られ、王子の剣術指南役として仕事を賜ったり、そのせいで他の貴族が嫌がらせをしてきて全て返り討ちにしたり、騎士団全員を治療院送りにしたり、騎士団が動けない状態で隣国が戦争を仕掛けてきたので一人で全滅させたり。

誰が呼んだか、"不敗の剣聖"。

だが、彼も純粋な人族。寿命には逆らえなかった。

3人の妻には既に先立たれ、初老に入った息子夫婦に幾人かの弟子、国王となった元王子に見守られながら息を引き取った。

彼の二度目の人生は、大往生で終わった。

 

3度目の人生は、これから始まる白紙の冒険譚。

彼は一人の老人に育てられた。今生の名は、ベル・クラネルという。

白髪に赤眼のただの少年である。

 

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