第3の人生は冒険者   作:紫蒼慧悟

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今年最後の投稿です。
 いやー、ギリギリ間に合ったわー


豊穣の女主人

 迷宮都市オラリオ。その街の北西のメインストリート。通称"冒険者通り"と呼ばれる大通りにあるオラリオの運営を一手に引き受け、更にはダンジョンに潜る冒険者のフォローもしている万能組織、"ギルド"。

 その内部は黄昏時という時間帯において、ギルドの職員は戦場に身を放り出すような忙しさに見舞われていた。

 冒険者は、朝早くからダンジョンに潜り、戻ってくるのは大体今の時間帯だ。故に、換金所には長蛇の列が出来ていた。前に居る冒険者のおっさんが金額が少ないだのとギャアギャア騒いでいるのが激しく鬱陶しい。俺より後ろに並んでいる冒険者からの舌打ちを聞くのは何度目だろうか。

 

 一度、あまりにも鬱陶しかったので首根っこ掴んでギルドの外に放り投げたら、かなり怒られた。ギルド職員のお姉さんに。

 怒っていたのは半ば俺の担当になりつつあるハーフエルフのお姉さんだ。いつも通り右から左へ聞き流していたら、案の定息を切らして肩を上下させていた。他のギルド職員はハラハラした面持ちでこちらに注目し、冒険者は今回の説教でハーフエルフの職員が気絶するかしないかで賭けをやっていた。

 いつになったら終わるかな。と、説教をBGMにぼーっとしていたが、思わず欠伸をしたら説教がヒートアップした。勿論お姉さんは気絶した。

 その後、お姉さんの同僚の獣人のギルド職員に怒られた。因みに予想外の結果に冒険者の賭けは不成立になって、苦情が来た。知らんがな。

 

 なので、手は出さない。殺気を向けるだけで止めておく。

 おっさんは一度体をビクつかせ、後ろに居る冒険者(俺たち)を見て小さく悲鳴を上げてそそくさとギルドから出ていく。

 その後姿を尻目に前に進み、今日稼いだ魔石を換金所の受付に出す。

 ザラザラと大小様々な大きさの魔石、あるいはその欠片が魔石を入れる容器に入っていく。器に入りきらずにこんもりと山になって器の外へと零れていく。

 

 「は?……へ!?」

 「え、何あの量……」

 「きっと、何日か潜ってたのよ!そうに決まってる」

 「そうはならんやろ」

 「なっとる!やろがい!」

 

 等々。後ろが騒がしいが特に反応する必要もないので放置。俺にとっては目標の20万ヴァリスに到達しているかどうかが重要だ。

 中層に降りて、アルミラージ、ヘルハウンド、そしてこの前横取りされて殺せなかったミノタウロスを狩りまくった成果はどうなのだろうか。

 

 「19万9千ヴァリスになります。」

 「あ、もうちょい稼いどきゃよかった」

 「「いやいや、十分だろ!!」」

 

 後ろが五月蠅いが関わると後が面倒なのと、何よりもお腹が空いたのでさっさと金を受け取ってギルドを立ち去る。案の定ストーカーが出てきたが、気配を消して人ごみに紛れ込めば直ぐに撒けたので、そのままヘスティア様の下へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 「すごいじゃないかベル君!!」

 

 ヘスティアファミリアのホーム『廃教会の隠し部屋』に戻って、神様(ヘスティア)に今日の成果を報告し、(個人的な)目標を達成できなかったことを謝罪した。

 その謝罪は珍しく遊びに来ていた神ヘファイストスによって中断させられた。

 

 「一日の稼ぎで20万弱……。しかも一人で。こんなことが出来るのは貴方ぐらいよ。それで、どうやって稼いだの?」

 「中層辺りで出てくるモンスターを手あたり次第殺しまくっただけ」

 

 俺の今日の行動にヘスティア様は天を仰ぎ、ヘファイストス様は口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。その後、5分ほどして再起動したヘスティア様に「無理をするな」と怒られ、ヘファイストス様はアホを見るような視線を俺に向けていた。

 説教が一段落したところで、今日の夕食は外食にしようと提案し、可決された。勿論、代金は俺の今日の稼ぎから出る。つまり、本日の夕食代金は20万弱である。まあ、そんなに使わないだろうけど。

 そんな中、帰ろうとして腰を上げたヘファイストス様も(ヘスティア様が)誘って、美味しい料理の出る店に連れて行けと(ヘスティア様が)強請ったので、苦笑しながらヘファイストス様は案内してくれた。店の名前は『豊穣の女主人』という場所だ。

 3人で地下から地上に出て、大通りを進む。今は装備を置いてきている。勿論、剣もだ。うん、すっごい違和感を感じる。剣が傍に無いからだろう。

 真ん中にヘスティア様、右に俺、左にヘファイストス様が並んで歩いている。すまない、訂正しよう。俺とヘファイストス様はヘスティア様に引っ張られているので横一列ではなく、矢じりの形で歩いている。

 満面の笑みを浮かべて、ヘスティア様はスキップしそうなくらいに軽やかに歩みを進める。彼女の両手は俺とヘファイストス様をグイグイと引っ張っていく。どこにこれだけの馬力があるのか甚だ疑問ではあるが、まあいい。

 時折、ヘファイストス様に注意されて道を間違えそうに(ヘスティア様が)なりながらも、無事に到着した。

 『豊穣の女主人』

 そう掲げられた看板の下には入り口が開いており、中の様子が見て取れた。

 酒場兼食事処といった店のようで、店員は見る限りは女性店員オンリー。もしかしたら男は裏方作業に従事しているのかもしれない。

 中では、仕事終わりの冒険者が酒を飲み、料理を食べ、店員を口説こうとしてあっけなく振られている。そして、店に響く大爆笑。他人の不幸は蜜の味とはよく言ったものだ。

 

 「ここよ。」

 「わあ。とても楽しそうな所じゃないか!」

 「ここ美味いんすか?」

 「ええ。私も来るのは初めてだけれどロキのお墨付きよ」

 「「じゃあ、ダメだ」」

 

 ロキ・ファミリアの主神御用達とか。ロキ・ファミリアに対していい印象がないので出来れば別の店にしてほしい。ヘスティア様が嫌がってる理由は知らん。

 まあ、店は変えなかった。ヘファイストス様が問答無用で引っ張っていったからだ。

 

 「3名様、ご案内でーす」

 「「いらっしゃいませー!」」

 

 扉を潜ると、近くに居た銀髪のヒューマンの店員が俺たちの来訪を告げる。すると、他の店員も俺たちの来訪を歓迎するように挨拶をしてくれた。

 銀髪の店員はそのまま俺たちを席まで案内してくれた。店の奥まった場所にあるテーブル席だった。今はここしか空いて無いらしいが正直そんなことはどうでもよかった。

 席に座り、適当に料理と飲み物を注文し店員が去ってから雑談に興じる。この雑談とは主に俺の話だったりする。

 俺の今後の教育に関する話だったり、俺がオラリオに来るまでどんなことをしていたかとかだったり……

 暫くして、飲み物と料理が揃い、乾杯をしてから手を付けだす。

 ヘファイストス様が連れてきてくれただけあって料理はとても美味しかった。

 神ロキが御用達にしてると聞いたときは少し不安だったが……

 そんな時だった……

 

 「御予約の団体様ご来店でーす!」

 

 ロキ・ファミリアが店に来たのは。




次回、ベル君大暴れ(多分)


という訳で今年はこれで最後となります。

また来年お会いいたしましょう。
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