第3の人生は冒険者   作:紫蒼慧悟

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出立

 さて、数奇な運命という名の神の悪戯ともいえる天文学的確率の下に3度目の転生を果たし、今世では"ベル・クラネル"という名を貰った俺だが、その生活はまさに農民である。

 片田舎に育ての親である祖父と二人で暮らし、朝日が昇るとともに起き、畑を耕し、木を切り倒して薪を確保し、他の農民と交流し、暇が出来ると剣を振り、極稀に村に迷い込んできた魔物を切り殺す。そんな生活である。

 前世の魔物とは比べ物にならないほどに弱すぎるソレは、無造作に払った一閃で簡単に死んでしまう。

 拍子抜けにも程がある。

 試しにどれほど弱いのか調べてみたが、小石を頭に投げつけただけで死んでしまった時は、余りの弱さにその場で呆然としてしまった。

 それと、祖父のことだ。どうやらただの人間ではないみたいだ。村の他の人間とは何かが違うが、正直育ての親に恩義や家族愛を抱くことはあっても、気味の悪さを抱くことはない。育ててくれるだけありがたいものだ。

 その祖父は夜になると、寝物語に"迷宮神聖譚(ダンジョンオラトリア)"という昔話をしてくれる。中々面白い話が盛りだくさんで、飽きることのない話を毎夜聞かせてくれる。

 だが、その祖父の悪癖の一つが、女癖だ。畑仕事が終わって家に帰ると知らない女性とお茶してたり、一度だけあったのは祖父の寝室から喘ぎ声が聞こえた時は静かに家を後にして、庭で剣を振っていた。

 煩悩退散とか思って振ってたわけじゃない。前世の全盛期に少しでも近づけるために振っていた。身内であろうと他人の情事に興味なんて無いし。

 その御蔭か、前世で最初に覚えた技の"燕返し"ぐらいなら出来るようになった。前世よりも劣化しているが。

 この技の元は、前々世の娯楽作品からだった気がする。もうすでに前々世のことはほとんど覚えていない。名前も、親の顔も覚えていない。

 

 そして、ある日のこと。

 

 「ベル。お前、オラリオに行ってみんか?」

 

 祖父の言葉に首を傾げる。

 オラリオといえばそこらの子供でも知っている、この世界で一番有名な都市の名前だ。

 "迷宮都市オラリオ"

 世界で唯一の迷宮が存在する、世界の中心とも呼ばれる都市。迷宮の真上に"バベル"という塔が建っており、バベルを中心とした円形の都市だったはずだ。後ついでに神がいるとか何とか。

 

 「なんで?」

 

 俺の疑問に祖父は不敵な笑みで答える。

 別に俺の村はさほど物資が足りてないわけでもないし、基本自給自足だ。月一で来る行商人に足りないものを売ってもらえばそれで済む。

 

 「理由は? 爺さんが神であることとなんか関係あるの?」

 

 続けての疑問に祖父は目を見開く。

 正直、祖父が神かどうか確信が持てなかったが、俺の勘が当たっていたようだ。

 

 「いつ、気づいた?」

 「カマかけただけ」

 「むうぅ」

 

 悔しそうな顔して唸る祖父を見て苦笑する。

 見た目は老人なのに内面はまるっきり子供なんだよな、この人は……

 

 「俺が邪魔になったって訳じゃないんだな?」

 「うむ。それだけは絶対にない!」

 「じゃあ、いいよ」

 

 俺としても迷宮都市には興味はあったし、今の状況じゃこれ以上強くなれそうにないし。

 

 「良いのか?」

 「別にいいけど?断る理由もないしね」

 「ならば前々から言ってる通り、ハーレムを作ってくるのじゃ!!」

 「ボケたのか?」

 

 祖父の女好きには困ったもので、ことあるごとにハーレムハーレムうるさい。

 俺としては前世の記憶があるせいか恋愛ごとに興味がない。別に枯れてるわけでもなければ、男じゃないとダメなわけではない。

 前世の妻を3人とも愛していた身としてはアイツラ以外を愛せない。

 ようは、他の女では性的興奮が得られないのだ。

 試しに二番目の妻との初夜を思い出したらバッキバキだった。俺は決して不能ではなかった。

 多分、あの3人の全てを凌駕する女が現れたら結婚してもいいと思うんだが、いかんせん未だにそんな女は現れてないから何とも言えない。

 

 「なんじゃいなんじゃい!!ハーレムの良さがわからんとは!!ベルよ、お前はそれでも儂の孫か!?」

 「孫だよ」

 「くうぅ」

 

 変な唸り声をあげて癇癪を起こした祖父を軽くスルーして、自分の寝室へと向かう。

 もう夜中だからな。明日からはオラリオに向かう準備もあるし早く寝てしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 準備も済んで、村への挨拶も済まして、いざ出発。

 村総出で見送りされた。村は爺さん婆さんが中心だが若いのがいないわけじゃない。

 年上のお姉さん方からは別れのキスを頂いた。俺にとっては挨拶程度の意味しかないが、目を潤ませているお姉さん方にとっては一世一代の告白だったのかもしれない。

 まあ、お姉さん方でも俺の心は動かないので、その思いは受け取れないんですけどね。

 というか、俺はまだ13なんだが、いろいろと大丈夫なのだろうか、このお姉さん方は……

 因みに、お姉さん方からのキスラッシュで祖父が一番嫉妬していた。落ち着けよ。

 

 挨拶も済んだので、月一で来ていた行商人のおじさんの馬車に便乗してオラリオへと向かう。

 祖父から餞別代りに貰った剣と一緒に。

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