ガタゴトと車輪が回る。
この世界の道は都市レベルでもない限り舗装はされていない。だが、道が無いわけではない。獣道以上、街道以下といったところだ。
なので、デコボコした道が殆どのため、徒歩で消費する体力が倍以上になる。
だったら馬車に乗れば楽だって?
そんなわけないだろう。延々と上下に振動している椅子に座っている状態を想像してほしい。振動の度合いはランダムだ。
そりゃ、酔うさ。慣れていなければ出立して一時間以内にダウンだ。酷いと五分でダウンだ。
そんな訳で俺は……
「本当に乗らなくていいのか、ベル?」
「いい。楽しすぎると弱くなりそうだし」
歩いてます。
馬車の速度は俺の歩く速さより僅かに早いくらいなので丁度いいくらいだ。
行商人のおじさんとは知らない仲ではないので、気安いものである。
世間話をしながらオラリオに向けてガタゴトと馬車の車輪の音をBGMに進んでいく。
おじさんの話は行商人だけあって多岐に渡る。オラリオのことだけじゃなく、ラキア王国の話もしてくれた。
"ラキア王国"
神アレスを信仰する国家系ファミリアらしい。時たま、オラリオに戦争を仕掛けては悉く返り討ちにされる迷惑国家らしい。
そんなに迷惑ならその神アレスを殺せばいいんじゃないだろうか? 神殺しは人に許された数少ない特権だと思うのだが。
数日掛けて、近くの大き目な街についた。ここからはおじさんとは別の道を行く。
おじさんはここから別の町に行くので、オラリオ方面とは別の道を行くそうだ。つまり、ここからは一人だ。
「大丈夫か、ベル?」
「大丈夫だよ。おじさんと一緒に居て野営の仕方も覚えたし、オラリオまでは一本道だしね」
おじさんと別れて、今日は町の宿屋に泊まり明日出立しよう。
ふと、背後に居るはずであろうおじさんの方へ視線を向けると、おじさんは一人の男と話していた。
祖父と似たような気配だったので、あの男も神なんだろうと当たりをつけ、興味を失ったので視線を目の前に戻す。
さて、宿屋はどこだ?
「彼、恐ろしいね……」
男は先ほどの光景を思い出し、顔を引きつらせていた。
気配には十二分に気を配っていた。万が一にも気付かれる素振りは見せていない。
なのに気付かれた。
「一度、モンスター10体ほどに襲われたんですよ」
「君が倒したのかい?」
「いえ、数十秒でベルが片づけました」
男は隣に居た行商人姿の男を見た。その顔は嘘を言っていなかった。
そもそも顔色を窺うまでもなくこの男には嘘をつけない。ベルが睨んだ通り、この男は神なのだから。
その名をヘルメス。
ヘルメスは自分の眷属が嘘を欠片も吐いていないことをわかっているのにも関わらず、信じれなかった。
彼は
想像するだけで身震いするヘルメス。その顔は新しい玩具を見つけたようなワクワクした少年の顔だった。
「これからが楽しみじゃないか」
「あんまりちょっかい掛け過ぎて殺されないでくださいよ?」
「あはは。神を殺す
ヘルメスは自分の眷属がまたもや嘘を言っていないのはわかっていた。だからこそ、笑って誤魔化した。自分の
冷や汗をかきながら、ヘルメスは雑踏の中に消えたベル・クラネルへのちょっかいは細心の注意を払ってかけようと心に深く刻むのだった。
やっとのことで宿屋を見つけた。なんで街の端っこにしかないんだよ。それなりに大きめの町だから結構歩く羽目になった。
宿屋に入ると、食堂らしき場所に美女が二人いた。祖父と似た気配だった。この世界本当に神が多いな。
特に興味もないので受付だけ済ませよう。二人の視線が背中に刺さってるが無視だ。無視。