受付を済ませて、部屋に荷物を置いて下に降りると既に美女二人はいなかった。
いや、いる。気配はあるのに姿が見えない。隠形?前世でもよく使ってくる奴がいたから対処法も知ってる。
だが、事を荒立てる必要もないし無視に徹しよう。
「こんにちは、坊や」
「隣いいかしら?」
無視に徹しよう。そう思っていた時が俺にもありました。無理だったけど……
一人は金色の長髪と純白の衣装が高貴さを醸し出している、10人中、11人は振り向くほどの美しさだ。
え?人数が多い?あまりの美しさに生き返って墓の下から出てきたんだろう。よくある話だ。
もう一人は、赤い髪をした胸元を無駄に強調した衣服を着こなした隻眼の美女。無駄に育った胸元に視線が行くのは男に掛けられた呪いのせいだ。俺は悪くない。
だが、残念なことに俺には奇麗なだけの美人さんにしか映らない。女神の美しさでも俺の股間は反応しなかった。不能じゃないのは解っているので特に問題はない。俺は一途なだけです。
「どうぞ」
「ありがとう、坊や」
「失礼するわね」
他にも空いている席があるにも関わらず俺と相席するってことは何か用なのかも知れんが、俺には関係ない。
二人からの視線が鬱陶しい。周りの男どもの嫉妬の視線も鬱陶しい。これぞ針の筵か!?
当然のことながら、それらを全て無視して宿屋の主人が作ってくれた食事を食べる。特別美味いわけではないが、別段不味くもない。宿屋で出される標準な味といえる。これが嫌なら外食しろってことだろう。これで食事まで美味かったら今より儲かるだろうが、負担も増える。そこは宿屋の人間が考えることであって、俺が口出しすることじゃない。
食事中も、そして食事が終わった今も二人からの視線が外れることはなかった。
「なに?」
と聞いても、微笑むだけで何も答えてくれない。これだから神は……
試しに殺気を放ったら、更に楽しそうに笑うだけだった。今の俺じゃ絶対に敵わない圧倒的強者。なんだよ、神の中にも面白い奴がいるじゃねえか!
周りで嫉妬の視線をぶつけて来た男共は俺の殺気にビビッて逃げ出していた。情けない。
「降参」
殺気を霧散してお手上げポーズで降参を表明する。
何が気に入ったのか二人は花が咲いたような笑顔だった。
「最高よ、坊や」
「ええ。下界に貴方みたいな優秀な子供がいるなんて思ってもみなかったわ」
「それで?何か用があったんでしょ?」
二人はやはり神だった。俺の勘も捨てたもんじゃないな。
なんでも神々が住んでる天界は、大勢の神が下界へ遊びに行ったので少ない人員で仕事を回さなければならなくなり、奴隷がマシに見えるほどの労働環境らしい。
それで、この二人が下界に降りて、
神は地上で死んだら
「だから、馬鹿をやっている神がいたら遠慮なく殺していいわ。私が許す」
「特にフレイとロキとフレイヤは殺していいわ。この私が許可しましょう」
殺していいといわれてもな。俺には別段そいつらを殺す理由がない。敵対してくるならまだしも、敵対していない、未だに会ったこともない奴を殺す理由は皆無だろう。
という訳で、敵対してきたら殺すけど敵対していない奴を殺すほど暇人じゃないよ。と、二人に告げる。
「それで構わないけど、可能な限り殺してほしいのだけど」
「そうね。誰も殺さないのは私たちとしても困るわ」
「アレ?いつの間に俺が神殺しをする流れになってるんだ?」
「「ちっ、気付いたか……」」
危ない危ない。いつの間にか神殺しをする羽目になるところだった。
二人は頬を膨らませて膨れていた。子供か!
美女二人がそんな子供っぽい仕草をするものだから宿屋の主人が見惚れていた。あ、女将さんに殴られた。
最終的に、オラリオに居る馬鹿やってる神を殺すことで話が終わった。強制的に押し切られた。流されたともいうが、俺の判断に委ねるところは譲らなかった。
オラリオの神の命は俺が握っているが悪い奴はいないかもしれないしな。え?フラグがたった?なんぞそれ?
話が終わったのでせっかくだからということで神々の世界の話を聞かせて貰った。特に刀剣の類を。
神の武器の話なんてそうそう聞けるものじゃないからな。
ほうほう。山を切るための剣。そういうものもあるのか。螺旋虹霓剣?何それ?刀身が炎で出来ている?鞘燃えない?
色々と充実した一日だった。
そうそう、二人の名前が気になったので聞いてみたら快く教えてくれた。
金髪の美女が"ヤハウェ"、隻眼の美女が"オーディン"というそうだ。俺の名前も聞かれたので快く教えておいた。
二人は近いうちに天界へと戻ってしまうのでファミリアを作れないらしく、暫くは俺にくっ付いてくるそうだ。
え?マジで?