第3の人生は冒険者   作:紫蒼慧悟

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オラリオ

 眼前に聳え立つのは、石造りの巨大な城壁を思わせる壁。都市をぐるりと取り囲んでいる"ソレ"は、"守る"ためのものではなく"出さない"ためのものであるらしい。

 "迷宮都市"という名の他にも"城塞都市"という名があっても不思議ではないほどの立派な壁。間違っても城壁ではない。ここには神はいれど王はいないからだ。

 さらに言うなら、城壁があるのは隣国のラキア王国なのだが、これよりもしょぼい張りぼてのなんちゃって城壁らしい。

 流石は世界の中心と呼ばれるだけある。

 朝早くからオラリオに入るための長蛇の列が出来ている。最後尾に並んだと思ったら、俺のすぐ後ろに商人が来て更に後ろにと来ているので、既に最後尾は見えなくなった。

 オラリオには8つの門がある。バベルを中心に8本のメインストリートがそれぞれの門へと伸びている。だから、この長蛇の列が8つあると思うと、どれだけの人がオラリオにいるのか想像もつかない。

 前世に訪れたことのある王都も人が多かったがオラリオに比べると天と地ほどの差がありそうだ。

 未だにオラリオに入るまで時間があるのでオラリオへと至るまでのことを話そう。

 

 ヤハウェとオーディンの二人は一月もいられなかった。餞別にヤハウェから一振りのシンプルな槍を贈られた。何でもこの槍で神に傷をつけると強制的に神の力が発動する状態になるらしく天界へ強制転送されるらしい。

 半信半疑だったが、一人旅の最中に(性的な意味で)襲ってきたイケメン神に使ったら天界へと強制転送された。その神の名はフレイというらしい。

 他にもいろんなことがあった。

 道を間違えてオラリオに向かっていたと思っていたら、テルスキュラにいたり……

 ようやく元の道に戻ってきたと思ったら、「正義執行!」とか言いながら盗賊相手に無双している女神が居たり……

 「像の頭をした息子によろしく!!」とか手紙を押し付けてく神の夫婦と出会ったり……

 本当にいろいろとあった。

 

 「次の者!」

 

 おっと、ようやく俺の番か。待ちくたびれたぜ。

 朝早くに並んだのにもうお昼時だ。お腹すいた。

 

 「オラリオに来た目的は?」

 「冒険者になりにきた」

 「そうか」

 

 門番の人の質問に答えていくと、質問は終わり簡単にオラリオに入れた。

 入るときに、門番の人から小声で激励を貰った。良い人だ。

 さて、冒険者になるには"ファミリア"に入らなきゃいけないんだが、ツテはない。いや、少しだけだがある。ただ、主神に対して取り次いでくれる可能性が低いだけで……

 それに、恩恵無しでどこまでいけるか気にもなるし、ここは宿屋に荷物を置いてダンジョンに潜るのもありか?

 方針は決定した。まずは、宿屋探しだ。この広さの町を探し回るのは面倒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オラリオで一番高い場所ともいえるバベル50階層。ここはとある女神の居住空間であった。

 いつも通り、女神は自分の城から地上を見下ろしていた。ただの気まぐれだった。偶然だった。ただ、女神はその時の偶然に感謝した。

 そこに居たのは今までに見たことがない輝きをした魂。その輝きに、女神は見惚れた。

 どこに居てもわかるほどの輝き、未だにその輝きはオラリオの外だが、あの様子からして今日中にはその姿が見えるだろう。

 女神は自分の体を抱きしめる。恍惚の表情を浮かべ、今か今かとその姿が現れるのを待つ。

 遂にその姿が見られたのは、太陽が中天を過ぎたあたりだった。

 現れたのは白髪に赤眼の少年。どこにでもいそうなただの少年。そう見えるのは少年の表面しか見ていないものだけだろう。だからこそ騙される。それこそ、神であっても……

 女神が初見で抱いたのは守ってあげたくなるような印象だった。だが、その思いは覆された。少年の視線が女神に向いた。ただ、バベルを見ていたのかもしれないと思ったが違った。少年と視線が合った。そういう確信があった。

 女神の口が歓喜に震えた。少年の口が動いたのを女神は確認した。

 

 『鬱陶しい』

 

 女神は少年が自分にそう言ったのだとわかった。女神の口から恍惚のため息が漏れる。

 神すらも歯牙に掛けないその言動に女神の独占欲が刺激された。彼が欲しい。自分のためだけに動いて、自分だけを見てほしい、自分だけを愛してほしい。

 だが、いまは動けない。今じゃない。彼に接触するのは今ではない。

 彼と邂逅するその日を想像して笑みを浮かべる。女神のその笑みは老若男女問わず魅了してしまうような美しさだった。

 オラリオ最強の双璧。ロキ・ファミリアと対をなす、フレイヤ・ファミリアの主神。美の女神、フレイヤ。

 ベルに見惚れた一柱の女神がそこにはいた。

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